今までずーっと絶版扱いだったのですが、読者アンケートにより見事復活した短編集です。SF。おもしろい。でも、絶版になったのもなんとなく理解できる。と同時に、復刊されたのも納得。
個人的には…ラファティの日本人版って印象、ですかね。(え? ラファティを知らない?)
長篇SF。未来もの。「鬼才最大の問題作!」とは作品紹介の言葉。SFを読んでいると(?)、ふつうなら「問題」になるものも「問題」に思えないから不思議。
ディックの最高傑作は『高い城の男』(ハヤカワ文庫)らしいのですが、わたしはこっちの方が好きだな。納得できたから。
タイムパトロールがでてくる22年前のSF。歴史改編もの。改編のスケールたるやすごいよ。これぞSF。
ただし…パトロール隊員が任務中恋に落ちるのを許さない人には、後味が悪い。めちゃくちゃ悪い。
脊椎動物の進化についての図表にR・T・バッカーの名前があったのは、個人的に衝撃でした。なにを隠そう、バッカーの『恐竜レッドの生き方』(新潮文庫)を買い逃したのはこのわたし。読んでみておもしろかったのは確認済だったのに、買う決心をしたときには絶版……。
(後ほど、古書店で入手できました!)
14年ぶりに復刊した本格SF。『山の上の交響楽』のように、読者アンケートだかで復活しました。さすがに、しょっぱなからおもしろい。
まずあるのは、2種でてくる地球外生命体。片方は地球を滅ぼし、もう片方は人類を助ける。ただし、どちらも謎につつまれている。滅ぼした理由は? 助ける理由は?
とてもおもしろく思ったのが、記録複写を伴うクローニング技術。主役のリロは何度か死に至り、その都度、保存された記憶のところから復活する……。
やりなおす…というと大原まり子『タイム・リーパー』(ハヤカワ文庫)にもでてききましたね。あちらはクローニングではなく、タイムトラベルがらみでの復活だったと記憶してますが。
頭の中をまぜまぜすれば、他にも類似するはなしがでてきそう……。単なる偶然か、影響か、それは作者に聞かないと分からないけど、そうした連鎖性って悪くない。と思う今日このごろ。
84年の「海燕」新人文学賞受賞作。
この人は、芥川賞候補(小説伝)になったり三島由紀夫賞(カブキの日)をとったりいわゆるそっち系の人で、当然、このはなしもふつうのエンターテイメントとは違いました。
正直なはなし、あまり積極的に読むジャンルではないのですが、小林恭二だけは別。SFっぽいからかしらねぇ。理由は不明です。あ、たまに読む村上政彦もそっち系の人だなぁ……。
当書は「電話男」と「純愛伝」の2本だて。どっちも電話男のはなしです。
電話男っていうのは、電話の相手になってくれる人たちのことで、女性もいますし、若者もいますし、ご老人もいます。職業らしいんですけど、給料がでるわけでもなくって……どうやって食ってるんだろう? って不思議に思うんですけど、小林恭二(の書く人物)に「なんとかなるよ」とか言われちゃうと、なんとかなるような気になっちゃうんだよねぇ。
まぁ、おもしろかったです。
設定は……。
だって、なんか『ゼウスガーデン衰亡史』(ハルキ文庫)と似てるんだもん。いくら同じ人が書いたからって……ちょっと物足りなかったです。始めての人は楽しめそうですけど。
たくさんの賞を受賞、もしくはノミネートされた短編をまとめた、オムニバス長篇。
今にも絶滅しそうなアフリカの一種族、キクユ族のために作られた小惑星「キリンヤガ」が主な舞台です。主役は、この楽園を護ろうと悪戦苦闘する、ムンドゥムグ(祈祷師)。
人々が移住してきた最初のうちは、楽園は楽園として機能しているんですけど、だんだん設立当初の目的とはちがうものになっていって、その過程がいくつかのエピソードで語られていきます。
とにかく、人間の心のうつろいがおもしろい。わたしにとっては最上級…とは言いがたいのですが、恋愛してるのか読みたい、とか、冒険してるのが読みたい、ということがないなら、おすすめできます。
第32回日本推理作家協会賞受賞作。
映画『大誘拐-Rainbow Kids-』の原作です。
映画で観たからいいかなーと思って、今まで手付かずでした。
誘拐した大富豪の老女に翻弄される3人組と、誘拐犯に翻弄される警察のおはなしです。犯罪者なんだけど憎めないタイプの3人組、金だけではなく人望の老女、老女に恩義を感じている和歌山県警本部長…と登場人物をざっと見渡しただけでもすでにおもしろそう。事実、おもしろいです。展開よし、伏線よし、文章よし……久しぶりに1日で読んでしまいました。
当時「サイバーパンクの旗手」と騒がれたギブスンの《電脳空間》三部作の二作目。
カウント・ゼロというのは新米ハッカーのハンドル名なのですが、新米ハッカーのはなしなのかというと、そういうわけでもない……。
前作の『ニューロマンサー』はもちろん読んでありますが、ほとんど記憶に残ってなくって、一気に三部作読みふけった方がよかったかもなぁと少々反省してます。でも、完結編の『モナリザ・オーヴァドライヴ』に手がのびないのはなぜだろう???
構成的には、三人の主役の別々の人生が徐々に徐々にからみ合っていっておもしろいんですけど、ギブスンのはなしはどうも、中だるみする特徴があるようです。途中であきて、でもがんばって読んだら終盤おもしろかった。価値観の相違かしらねぇ。
個人的には(同じ手法の)『あいどる』の方が気に入ってます。
不思議な能力を有する一族をめぐる、連作短編集。
不思議な能力というと、まぁ、たいていは超能力のことで、この本にでてくる不思議な能力もつまりはそういうこと。ただし趣はぜんっぜんちがう。
超人的イメージとは相反する超能力者像というと、たとえばわたしは神林長平の『ライトジーンの遺産』あたりを思い出してしまうのだけど、それともちがう。
彼らはふつうの人たちの中に埋もれるようにして暮らしていて、紙面を満たすのは穏やかさ。そして哀しいんだすごく。メチャクチャ泣きました。(北原文野のPシリーズもやさしかったけど、それともちがう)
やさしい気持ちになりたい人におすすめ。
柔らかい雰囲気に包み込まれたい人にもおすすめ。
電車で読むのはやめよう。
世界的な大ベストセラーの児童文学。
優秀な、魔法使いと魔女の息子であるハリーのはなし。
両親を亡くしたハリーが「自称まともな人間」の伯母夫婦の元で虐げられながら暮らしていると、ある日、魔法魔術学校の入学許可証をたずさえた大男が現れて…。
おもしろいです。伏線もあるし、ひねってあると思うし、ほろりともきました。でも、やっぱり“子供むけ”だなぁ…って感じでした。もちろん、世間の評価どおり、大人の観賞にも耐えうる作品ですけどね、ガツーンとくるものがなくって、ちょっとものたりなかったです。趣向の問題かなぁ……。
そういえば盗作疑惑がありましたが、あれはどうなったんでしょう。