サスペンス。
関沼慶子は、元・恋人の結婚式に銃を持って現れた。そのころ織口邦男は、関沼慶子の所有する銃を奪うために、彼女の帰りを待っていた。同じころ、織口邦男の同僚・佐倉修治は、店の苦情処理にあたっていた。そして心の奥底で、織口邦男に対するある疑問を抱えていた……。
事件もさることながら、心理面で読ませます。
とにかくおもしろい。
SFミステリ。
ニューヨーク・シティの刑事ベイリは、ロボットのR・デニールをパートナーに、宇宙人(かつての地球移民の子孫)殺害事件の捜査にあたることになった。シティに渦巻いているのは、支配者となった宇宙人に対する反感。そして、自分達から職を奪っていったロボットにたいする憎悪。ベイリも、例外ではなかった。
推理より、世界観が心地よかったです。
サスペンス。
高村薫の『マークスの山』『レディ・ジョーカー』にもでてくる合田雄一郎(刑事)が主役の一人。
合田雄一郎は、女が電車にはねられる現場に居合わせた。そのとき、女と共にいた男に殺人の容疑がかかる。雄一郎は、その男の妻・佐野美保子に心ひかれるが、美保子は、雄一郎とは幼馴染みの野田達夫と親密な関係にあった。
なんだか前哨戦って感じでした。合田雄一郎ファンは大満足でしょうけどね。
キテレツ系のSF短編集。17本、収録。
表題作の「どろぼう熊の惑星」は……肉体的な危険はまったくない〈どろぼう熊の惑星〉には、惑星の名の由来でもあるどろぼう熊が住んでいる。どろぼう熊は、大型のモモンガに似ていて、風に乗って滑空する。そして、あらゆるものを盗むのだ。ありとあらゆるものを。
3月からコツコツと読み続けて、1ヶ月目にして読み終えました。
いきおいつけて……より、ときたま一遍ずっつ読みたくなる作品集です。
【2021年10月10日追記】
収録作品
「このすばらしい死骸」
「秘密の鰐について」
「寿限無、寿限無」
「コンディヤックの石像」
「とどろき平」
「また、石灰岩の島々も」
「世界の蝶番はうめく」
「処女の季節」
「意志と壁紙としての世界」
「草の日々、藁の日々」
「ダマスカスの川」
「床の水たまり」
「どろぼう熊の惑星」
「イフリート」
「公明にして正大」
「泉が干上がったとき」
「豊かで不思議なもの」
映画化もされた、人類のドラマ。
宇宙空間より採取され生物科学兵器として開発された「MM−八八菌」は、摂氏5度で異常な増殖と猛烈な毒性を示した。ハツカネズミによる動物実験では、感染後5時間で98%が死滅。あまりの威力に、実用化にはいたっていない。
その「MM−八八菌」を搭載した小型飛行機が、冬のアルプス山中に墜落した! 破損した積み荷のことは誰も気にとめず、春を迎えてしまう。
菌は、インフルエンザを隠れみのに世界各地を襲いはじめた。人類はなすすべもなく絶滅する……南極にいた1万人たらずの人々を残して。
マイクル・クライトン『アンドロメダ病原体』に(非公式に)影響を及ぼしたようです。しかし、スケールの大きさは言うに及ばず、メッセージの強さも際立ってます。
だいたいの結末はよめてしまうんですけど、おもしろいのは、結末ではなく経過。
絶品。
アン・マキャフリイの代表作である《パーンの竜騎士》シリーズ第二作。
惑星パーンに死をもたらす「糸胞」が降りはじめてから七巡年後。400年の過去から救援のためやってきた竜騎士と、現代の竜騎士とが対立。そんなおり、周期をはずれた糸胞がパーンを襲来する。
幾人もの登場人物が動きまくって、ヤマがいくつもやってきます。
似たような名前が次々とでてきて混乱させられるんですけど、それを差引いてもありあまるほどのおもしろさ。つづきが楽しみです。
ユーモア系の刑事もの。短編集。
御茶ノ水署・生活安全課保安二係は、2人だけの小世帯。斉木警部補と梢田平刑事は、小学校の同級生で、いじめられっ子といじめっ子の関係にあった。斉木は、かつての恨みを果たすべく、梢田の出世を妨害し、仕事ぶりにケチをつける。
二人の会話がおもしろいです。上司と部下とはいえ、同級生同士。タメ口でかけあい漫才のような会話が繰り広げられます。ある意味、息はぴったり。斉木は、梢田にいじわるをするものの、さらりと書かれていて陰湿さはありません。出世の邪魔はあの手この手でがんばってますけどね。
バカSF短編集。
解説やあとがきも含めて1册の本に仕上げた、遊び心いっぱいのおもしろ本。
「脳光速 サイモン・ライト二世号、最後の航海」……2349年。ファントムと呼ばれる精神生命体が現れた。それに襲われた人間は、外傷もなく死亡してしまう。攻撃策はただ一つ。人間の脳波を集めて機械的に増幅し、バリヤとして張り巡らすのだ。サイモン・ライト二世号は、そのための人間の脳を1000個搭載し、ファントムに立ち向かう。
「銀河帝国の弘法も筆の誤り」……2235年。シラカベ星系から、亜空間通信がもたらされた。人類外知的生命のファーストコンタクトに人々は色めきたつ。しかし、メッセージはなぜか、弾問答だった!
「火星のナンシー・ゴードン」……2055年。泥棒、ナンシー・S・ゴードンは、一時身を隠すため火星に降りたった。しかし、無人のはずの火星には謎の組織シグ・ァッコーの軍事施設があり、ナンシーは組織の重要人物と間違えられてしまう。
「嘔吐した宇宙飛行士」……2252年。宇宙軍附属研修用宇宙ステーションの鬼教官を見返すべく、李・バイヤはピザの大食い競争に挑む。翌日、宇宙歩行訓練が控えているにもかかわらず……。李は、競争には勝利したものの、訓練中、宇宙服の中で大量嘔吐してしまった。
「銀河を駆ける呪詛 あるいは味噌汁とカレーライスについて」……2563年。宇宙戦艦「ユダ」と遭遇した知的生命体の第一声は「見つけましたよ!」だった。乗組員はファーストコンタクトに感動する。しかし、その知的生命体は「食人鬼」だったのだ。かくして人類最後の闘いが始まる。
『鋼鉄都市』の続編。SFミステリ。
人口2万人に対して2億台のロボットがいる星・ソラリアで、有史以来初の殺人事件が発生した。しかしソラリアには警察がなく、地球からイライジャ・ベイリ刑事が呼び寄せられる。かつてベイリと共に難事件を解決したロボット・ダニール・オリアヴァーもオーロラ星からやってくるが、ロボットであることは伏せられていた。
SF的要素とミステリ的要素がバランスよく織りまぜられてあって、大満足の一冊。
どっちか一方しか読まない人にはつらいかもしれませんが。
小野不由美の代表作である《十二国記》シリーズ第一作。
平凡な高校生・中嶋陽子は、連日無気味な夢を見ていた。闇の中、異形のものたちがせまりくる。日に日に近づいてくるそれらにおびえる陽子。そんなある日、突然現れた見知らぬ男・ケイキに連れ去られ、どことも知れない国に連れこまれてしまう。
なにも知らされないままはぐれてしまった陽子は、ケイキをさがしだすためにさすらう。帰るために。裏切りにあい、獣と闘いながら……。
初出は、講談社X文庫ホワイトハート……つまりジュブナイルで、加筆訂正しているとはいえ、その色はぬけきれてません。
おもしろいんですけどね。セリフが多くってすぐに読み切れてしまうので、もっとじっくりひたりたいところ。