小野不由美の代表作である《十二国記》シリーズ第二作。
前作『月の影 影の海』より時代は遡ります。
天啓によって王を選び仕える神獣・麒麟。まだ産まれる前の災害により蓬莱国(日本)に流されてしまった泰麒は、10歳にして戻ることができた。しかし、人間として育ったために麒麟としての力を発揮することができない。やがて、自分に自信が持てないまま、戴国の王を選ばなければならない日がやってくる……。
幼い麒麟の成長物語です。
泰麒の心理状態がよくでていて、好感持てます。
小野不由美の代表作である《十二国記》シリーズ第三作。
第一作『月の影 影の海』に登場した、延王と延麒の物語。
前王の狂乱などによりすっかり荒廃してしまった雁国。その雁国の新たな王となった尚隆は、宰輔の延麒と共に復興に励む。しかし、延麒が罠に落ち、連れ去られてしまった。唯一無二の宰輔を人質にとられ、雁国は騒乱にまきこまれていく……。
仕えながらも延王に懐疑的な延麒や、諜報活動に励む延王だのが、軽いタッチで描き出されていきます。人間の心理にバシバシ迫る力作。
ちょっと軽すぎるのは初出がジュブナイル系文庫だったからだろうな、と思うともったいない。
小野不由美の代表作である《十二国記》シリーズ第四作。
第一作『月の影 影の海』に登場した、景王・陽子の物語。
蓬莱国(日本)で産まれ育ったために慶国のことが何一つ分からない陽子は、国民のことを知るため、身分を隠し街で暮らしはじめた。一方、目の前で両親を殺されるまで芳国公主だった祥瓊は、逃亡のはて、慶国にたどりついた。そのころ、才国から慶国まで旅してきた鈴は、友を殺され仇討ちを誓っていた。
三人はやがて出会い、戦いに身を投じていく。
祥瓊と鈴の成長が克明にでてます。圧巻。
ある意味、水戸黄門的。
小野不由美の代表作である《十二国記》シリーズ第六作。(第五作は『図南の翼』)
第二作『風の海 迷宮の岸』にでてきた泰麒、李斎と、第一作『月の影 影の海』第四作『風の万里 黎明の空』につづき景王・陽子がメイン。
戴国復興に燃える新王・驍宗は、反乱鎮圧のため文州に赴むく。まもなくして、幼い宰輔の泰麒のもとには王の悲報が届いた。泰麒は自らも窮地に陥り、大鳴動と共に行方知れずになってしまう。王と麒麟を失った戴国では偽王の圧制が始まった。
六年後、景王・陽子の元に、瀕死の戴国将軍・李斎が助けを求めに来る。しかし、陽子の慶国はいまだ貧しく、また他国に軍を送ってはならない天の掟があるため、思うままに助けることができない。
次作の前哨戦、といった感じ。
泰麒は蓬莱国(日本)で発見されるのですが、泰麒側から見たはなしが新潮文庫から『魔性の子』として出版されています。
舞台祝典劇『ニーベルングの指輪』の第一作。
川底の黄金を守るラインの娘たちは、ニーベルング族のアルベリヒに黄金の秘密をもらしてしまう。黄金からつくられた指輪を持つものは、無限の力を手にすることができるのだ。ただし、指輪をつくりだせるのは愛を断念したもののみ。
アルベリヒは、その醜さゆえにラインの娘たちにからかわれ、ついにその思いを断ち切り黄金を奪い去る。そうして指輪がつくられたのだった。
まるで台本のような本で、ある程度はなしを知ってないときびしいです。セリフにリズムがあって、読みやすいんですけどね。
2009年4月、ヨーロッパ素粒子研究所のロイドとテオは、ヒッグス粒子発見を目的として、大イオン衝突型加速器実験検出器を作動させた。まさにその瞬間、全人類の意識が数分だけ21年先の未来に飛んだ。
ロイドが見た未来では、もっとも愛するミチコとは別の女性と結婚していた。そのためにロイドは、ミチコとの結婚に踏み切れずに悩む。
テオの未来は暗闇だった。テオはそのとき、死んでいたのだ。自分が殺されたことを知ったテオは、21年後の出来事をさぐろうとする。
未来は、変更可能なのか?
おもしろいものの、ソウヤーとしては少々おとなしめ、の印象がぬぐえません。
物理学者を主役にした、物理学的絵本。
おしのびで中国を旅するアメリカの物理学者と、牧童の少年の問答。
夢枕獏が文章を、たむらしげるがイラストを担当しました。そのあざやかな絵もさることながら、装丁・デザインが秀逸。もちろん、文章も。
どちらかというと、大人むけ。
もっとも長い小説、《宇宙英雄ローダン》シリーズの200巻目。「銀河警報」と「薄明の人類」の二本を収録。『ローダン・ハンドブック』で200巻までのあらすじがたどれます。
訳者の癖なのか原文がそうなのか、体言止めの嵐で、読むのに苦労しました。
古代中国の商(殷)周革命を舞台にした歴史小説。
商王の人狩りのために一族を滅ぼされた少年・望は、復讐をちかった。商王を殺す……。のちに太公望と呼ばれることになる望は、さまざま苦難を乗り越えていく。
登場人物が多めなので多少の努力が必要になりますが、その分平易な文章でカバー……といったところ。結末は歴史的に確定しているので、そういった好奇心は湧きませんが、経緯がおもしろです。
秀作。
多世界もののコミカルなSF。
月にむかったはずのロケットが地球に墜落した。その場にいたキースは、べつの地球にとばされてしまう。そこは、アルクトゥールス星と戦争を繰り広げている地球だった。
キースは、世界の知識を仕入れる前に、アルクトゥールス星のスパイとまちがえられてしまう。スパイは、発見次第射殺されるのだ。
キースの、生きるための戦いが始まった……。
傑作。
パロディ部分があるので、元ネタを知っているとさらに楽しめます。