サスペンスの逸品。
未亡人となった母に男がいたことで衝撃を受けた小川兵介は、女嫌いとなり、ヒッピーをしていた。そして、飲み過ぎて新宿の路上で寝込んだ翌朝。目覚めると、見知らぬ家の屋根裏部屋で、見知らぬ若者、そして見知らぬ遺体と一緒に転がされていた。
見知らぬ若者は、一木久留美。遺体は警察本部長だった。
なんとか脱出に成功した二人(+死者)だったが、警察と、彼らを罠に陥れようとした組織から追われるハメになる。生きるための逃避行がはじまった。
殺伐とした設定ながらやわらかい語り口で、好感持てます。
絶品。
異星の冒険ものSF。
キンタグリオ三部作の一作目。
恐竜(キンタグリオ)のアフサンは見習い占星師。真実を求めてやまない少年だ。
アフサンは、危険な巡礼の船旅にでかけたおり、船長から最新発明品である遠見鏡を借りることができた。それでもって詳しく天体を観察し、従来とはまったくちがう世界の構造を思いつく。しかし、それは、民衆から支持されている宗教の教えとは相容れないものだった。
高い評価の反面、絶版になっていたのですが、最近になってようやく重版が決まりました。おもしろくって、哀しくなります。
奇想天外なSF。
どうにも作品の題名が決められないまま締切りを迎えてしまった作家・小松左京の元に、二ヶ月後の自分から手紙が届いた。題未定のまま始めざるを得なくなった雑誌連載のために、これから「厄介事」が起こるというのだ。かくして、小松左京は過去へ旅することになった。
少々物足りない面あり。
モダン・ホラー。
シーズン・オフの観光地・スノーフィールドは、住民500人あまりの田舎町だった。妹と共に帰宅した医師・ジェニファーは、家政婦の死体を発見した。やがて、住人すべてが、死者か行方不明者になっていることに気がつく。スノーフィールドにいったいなにが起こったのか?
一応ホラーですが、こわくなかったです。SFとして読むとおもしろい。
SFくさいミステリィ。
ウイルスがコンピュータを狂わせたために、高校生が怪我をしてしまった。ウィルスは「おきのどくさまウィルス」と呼ばれあちこちで発見されるが、既存のワクチン・ソフトが通用しない。そんな中、発見わずか1週間後に、「ファインソフト」から拡張ボードつきの効ウィルス・ソフトが発売されることになった。
ファインソフトの新人社員・室伏は、採用試験と思ってつくった「おきのどくさまウィルス」のことで心を痛めていた。金もうけをたくろむ社長・照井を見返すために、ワクチン・ソフトをフリーウエアとして世に出すことを決意する。そのころ、最初にウィルスを仕掛けられたパソコン通信ネットの事務局スタッフ・桜木は、ファインソフトが犯人ではないかと疑いをいだいていた。
一方、JCNの研究員・平石は、コンピュータ上の仮想生命A−LIFEをベースにしたソフト「ALPHA」を開発していた。共同開発者の八木が、この「ALPHA」に「おきのどくさまウィルス」とワクチンソフトを与えたことから、驚異の新型コンピュータ・ウィルスが誕生し、ネットにばらまかれてしまった。
ネットのこと、パソコン通信のことはもちろん、数年前にA−LIFEの専門書を読みあさったおかげか、起こっていることの理解は楽にできました。反面、登場する専門家による説明セリフが数多く、文量のわりに充実感がないです。
設定・展開的にはおもしろいんですけどねぇ。
《ホーカ》シリーズ、第三弾。
チャーリー少年は父親と共に、貨物宇宙船にのりこんでいた。船が惑星ニュー・レムリアでしばらく停泊することに決まると、家庭教師であるホーカ人・バートラムと共に、ちょっとした旅にでることを思いつく。旅は、平穏無事に終わるはずだった。なんにでもなりきってしまうバートラムが、レムリア人から聞いた赤毛の救世主とチャーリーを同一視するまでは……。
自分に自身の持てないチャーリーの成長物語。おもしろおかしいです。
快作。
不可思議ミステリィ。
S新聞千葉木更津支局の新人記者・関口邦夫は、上司の垂水キャップと共に、第二房総導水路の建設の背景でうごめく利権を追っていた。大手ゼネコン、政治家などが暗躍した噂があるのだ。
取材を進めるうち関口は、第二房総導水路環境アセスメントの再調査をしている瀬下と知り合う。しかしその数日後、瀬下は遺体となって下水処理施設で発見された。さらに、第二房総導水路建設反対運動をしていた諫于博士が、謎の死をとげる。
関口は、斡旋収賄で疑惑をもたれている千葉建設共同懇親会世話役・都築裕三に、殺人のうたがいを抱く。しかし、その都築も、何ものかに殺されてしまった。しかも、地下水道に流されたはずの遺体は行方不明になり、2ヶ月後、肋骨を一本欠けさせて海岸で発見された。
旧約聖書と符号する数々の出来事。
神宿る房総半島を舞台に、史上最長6.5キロの密室大トリックに挑む。
まるで細切れに連載されていたように、くり返しの説明文が多く、辟易させられました。つまらないわけではないんですが……。
2つの時代をまたにかけた、冒険もの。
18世紀末フランス。存亡の危機にさらされた修道院には、宇宙を司る8の公式の謎を秘めた伝説のチェス・セット「モングラン・サーヴィス」が隠されてあった。院長は、モングラン・サーヴィスを守るため、修道女たちに駒を持たせて旅立たせる。修道女たちの行く手には、フランス革命の嵐が待ち構えていた。
一方、20世紀アメリカ。コンピュータ専門家・キャサリンのまわりでは不可解な出来事が起こっていた。知らぬ間に、モングラン・サーヴィス争奪戦の渦中の人となっていたのだ。キャサリンは、アルジェリアで「モングラン・サーヴィス」の秘密を握る人物を探しあてる。そして、隠された駒を求めて砂漠へと踏みこんだ。
どちらの時代も少しずっつ語られていくので、ジリジリしながら読み進めました。とにかくおもしろい。
ただし、チェスのルールは知っているので話題にはついていけるものの、登場人物たちをチェスの駒にたとえるのはいささかこじつけがましく感じました。敵が「白のクイーン」だの「白のキング」だのなら他のなんの説明もいらないのか???
チェス文化圏にいれば、頭からのみこめるのでしようが。
2001年06月12日
宮部みゆき
『心とろかすような』創元推理文庫
犬の視点で書かれる、ミステリ短編集。
『パーフェクト・ブルー』の続編。
登場するのは、蓮見探偵事務所の所長・浩一郎、所長の長女であり調査員でもある加代子、次女で高校生の糸子、そして、元警察犬のマサ(ジャーマン・シェパード)。
「心とろかすような」…いつまでたっても帰宅しない糸子を心配した加代子は、方々をさがしまわった。そして、糸子と少年・諸星進也が、ラブ・ホテルからでてくる場面に遭遇する。二人は事件に巻き込まれたと主張するのだが……。
「てのひらの森の下で」…加代子とマサは、おきまりの散歩コース・てのひらの森で、倒れている男を発見した。マサには、その死体らしきものが死んでいないことは分かっていたが、加代子に伝えるすべがない。加代子と、そのとき同行していた藤実が電話をかけに走り去ると、男が起きだし、マサは何ものかに殴り倒されてしまった。
「白い騎士は歌う」…宇野友恵の依頼は、失踪した弟・敏彦の借金の理由を探ること。敏彦は借金が原因で人を殺したと指名手配中だった。
「マサ、留守番する」…慰安旅行のため閉められた探偵事務所で、近所の人に世話をされながらマサは留守番をすることになった。そして留守番初日の翌朝。事務所前に、幼いウサギたちが置き去りにされる。誰がなんのために、ウサギを捨てていったのか?
「マサの弁明」…マサが語る、宮部みゆきの秘密。(フィクション)
中には殺人事件がからむものもありますが、やわらかい文体で、殺伐とはなりません。
犬に思考があったらきっとこんなだろうと、納得させられます。
名作。
アン・マキャフリイの代表作である《パーンの竜騎士》シリーズ第四作。
音楽を愛する少女・メノリの物語。
メノリの才能を認めていた老竪琴師ペティロンの死により、メノリは大好きな音楽を取り上げられてしまう。女では竪琴師になれないからだ。メノリは両親に反抗し、砦をとびだした。
いくつもの障害を乗り越えていくメノリの生きざまが、印象的。
すぐにラストがきてしまうのが惜しいくらい。