ジュブナイル系ファンタジー。
ある夜、空から降ってきた光は、翌朝、人々の額に宝石のような存在となって現れた。全世界が騒然となる。「星虫」と名付けられたそれは、宿主の感覚を増幅させるために一旦は歓迎されるが、日に日に変態・巨大化し、やがて拒絶されていく。
ひそかに宇宙飛行士を夢見つつ優等生を演じる高校生・氷室友美は、星虫を肯定的にとらえ、額からとること=星虫を殺すことを否定しつづける。友美のカンを信じる相沢広樹も星虫をとることを拒否するが……。
ジュブナイルとしては標準的でしょうが、読んでるこっちが恥ずかしくなる青さ。
純粋さに心打たれるには、ちと歳をとりすぎたようで(単なるひねくれもの?)どうせなら10代のころに読みたかった一冊。
時間ものSF。
西暦19352年、時間航行の方法が発見された。人類が進化したデイネリア人は、時間航行を禁止ではなく規制する方針をとる。そのため、時の航路を監視する時間管理局が設立されることとなった。
無任所職であるエヴァラードは、タイム・パラドックスを防止すべく、さまざまな問題を解決していく。
誰にとっても傑作……とは言いがたいものの、ぜひ読んでおきたい一冊。
社会派ミステリィ。
サントリーミステリー大賞を受賞した『火の壁』の続編。
保険調査員・相沢志郎は、横浜の大病院の院長から調査依頼を受ける。それは、奄美大島の病院で働いている息子の結婚相手に関する調査だった。
筋違いのはなしにしぶる相沢だったが、仕事上のつきあいもあり、断ることができない。仕方なく、息子のお相手、看護婦・高屋扶由子の身辺を探りだす相沢。やがて、扶由子の長姉・葉留子の店が放火され、次姉・奈津子が焼死体となって発見される事件が起こる。
放火犯は誰か? 院長がかたくななまでに息子の結婚に反対する理由は?
あっとおどろくどんでん返しはないのですが、調査と共に真相があぶりだされていく過程がおもしろい。
現役の保険調査員が書いただけあって、現実味ありあり。
戦争ものSF。
昆虫型異星人バガーに攻めこまれた人類は、優秀な司令官を育成すべく、有望な子供たちを集めたバトル・スクールを設立した。「本命」としてひそかに選ばれた天才児エンダーは、数々の試練を与えられ成長していく。
人類は生き延びることができるのか?
エンダーが、大人びた中に子供っぽさを残していて、ちょっと不思議な感じがしました。全体的におさえ気味で、ひっかかりが少ないです。
好き嫌いが別れそうな……。
退廃的な連作短編集。
ゴミ埋め立て地の上につくられたニュータウンは、地盤沈下と地震のために廃虚となった。そして、いつしか子供たちの楽園・ネバーランドとなっていた。
そこは、現実と夢とが交錯した世界。
言葉と幻想と死が飛び交う。
彼らはドラッグを常用し、自らのことを「マウス」と呼んでいた。
佳作。おもしろい。
《空飛び猫》シリーズ3册目。
負けん気の強い猫・アレキサンダーは、探検にでて迷子になってしまった。しかも、犬から逃れるために登った木からおりられなくなる。
翌朝。翼のある黒い子猫・ジェーンが、アレキサンダーを助けてくれた。しかし、ジェーンはかつての恐怖の体験から、口がきけなくなっていた。
挿絵も豊富で、猫好きにはたまらない一冊。
タイムマシンがらみの歴史もの。
神秘主義者・カールは、タイムマシンのテスト飛行で、29年のエルサレムを目指して旅たった。キリストの最期を見届けるために……。しかし、到着の衝撃で機械は壊れ、狙いの年より早くついてしまう。
カールは、キリストを見い出すべく、ナザレにむかった。
カールの回想的な現代と、カールの現在が混在した作品。
カールが歴史にとりこまれていく様子が不可分なし。
冒険ファンタジー。
平穏な毎日を送っていたホビット小人族のビルボは、縁者である魔法使い・ガンダルフにまるめこまれて、冒険の旅にでかけることになった。13人のドワーフ小人族たちと共に、竜にうばわれた宝を取りかえすために。
子供むけ……ということで、書き方に少々物足りなさが残るものの、やっぱり名作。おもしろい。
SF。
宇宙空間に突如として現れた謎の巨大物体「SS」……。人類は、それとコンタクトをはかるために、人工実存HE2を送りだす。
本全体が序章といった感じ。
はたして名作になるのか迷作になるのか……今後の展開次第。
米ソ冷戦を舞台にしたSF。
アメリカの神経物理学者モリスンは、ソ連の科学者ボラノーワに声をかけられた。モリスン独自の脳波分析法を、ソ連で生かさないか、と……。
ソ連では、ミクロ化技術が実用化されつつあり、モリスンの理論を必要としていたのだ。
学会から異端視され、出世どころか仕事先にも不自由しているモリスンだったが、ボラノーワの申し出を断った。ミクロ化の成功は信じがたく、また、興味もない。
しかしモリスンは、誘拐同然にソ連へと連れだされてしまった。
映画のノベライズだった『ミクロの決死圏』が気に入らなかったアシモフが、構想も新たに書き直した逸品。
ミクロ化技術を使って人間が人間の体内に入るのは、前作と一緒。その点のわくわく感がない分、人間ドラマで読ませます。
久しぶりに、ラストが気に入る作品と出会えました
旧約聖書を知らないと、なんのことやらチンプンカンプンなオチですが。