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2001年の記録
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このページの本たち
スノウ・クラッシュ』ニール・スティーヴンスン
20世紀SF・1』1940年代SF傑作選
20世紀SF・2』1950年代SF傑作選
竜の挑戦』アン・マキャフリイ
R.P.G.』宮部みゆき
 
エリコ』谷 甲州
20世紀SF・3』1960年代SF傑作選
ボートの三人男 −犬は勘定に入れません−』J・K・ジェローム
キャプテン・ジャック・ゾディアック』マイクル・カンデル
冷たい方程式』SFマガジン・ベスト

 
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2001年08月22日
ニール・スティーヴンスン(日暮雅通/訳)
『スノウ・クラッシュ』
上下巻・ハヤカワ文庫SF

 ポスト・サイバーパンク的SF。
 高速ピザ配達フランチャイズの〈配達人〉ヒロ・プロタゴニストは、世界最高の剣士。サムライの刀ひとそろいで身を守る。そして、腕利きのハッカーでもある。
 もう一方の主役Y・Tは〈特急便屋〉の少女。高速走行中の車を利用しつつ、スケートボードで縦横無尽に走りまわる。仕事のことはママには内緒。
 ヒロは仮想空間のメタヴァースで、新種のドラッグ「スノウ・クラッシュ」をすすめられた。それを無視したヒロの前に、かつての仕事仲間・ジャニータがあらわれる。「スノウ・クラッシュに近寄るな」という忠告をひっさけで。
 そして、ちょっとした気紛れからヒロを助けたY・Tも、スノウ・クラッシュをめぐる事件に巻きこまれていくことに……。

「世界」をつかむまでは理解するのが大変でしたが、あとは一直線。心地よい疾走感があります。納得しがたいところもありますが。


 
 
 
 
2001年08月25日
1940年代SF傑作選
(中村 融&山岸真/編)
フレドリック・ブラウン/アーサー・C・クラーク/アイザック・アシモフ/レイ・ブラッドベリ/ロバート・A・ハインライン/
C・L・ムーア/ウィリアム・テン/A・E・ヴァン・ヴォート/
エドモンド・ハミルトン/シオドア・スタージョン/チャールズ・L・ハーネス
(安野 玲/酒井昭伸/小尾芙佐/安野 玲/白石 朗/伊藤典夫/南山 宏/大森 望/中村 融/訳)
『20世紀SF・1』河出文庫

 1940年代の、SF短編集。

 さすがにSF的には古めかしいものの、名作揃い。一読の価値あり。
 収録作品は

フレドリック・ブラウン「星ねずみ」
アーサー・C・クラーク「時の矢」
アイザック・アシモフ「AL76号失踪す」
レイ・ブラッドベリ「万華鏡」
ロバート・A・ハインライン「鎮魂歌」
C・L・ムーア「美女ありき」
ウィリアム・テン「生きている家」
A・E・ヴァン・ヴォート「消されし時を求めて」
エドモンド・ハミルトン「ベムがいっぱい」
シオドア・スタージョン「昨日は月曜日だった」
チャールズ・L・ハーネス「現実創造」


 
 
 
 
2001年08月29日
1950年代SF傑作選
(中村 融&山岸真/編)
レイ・ブラッドベリ/ロバート・シェクリイ/フィリップ・K・ディック/リチャード・マシスン/ゼナ・ヘンダースン/クリフォード・D・シマック/フレデリック・ポール/C・M・コーンブルース/エリック・フランク・ラッセル/アルフレッド・ベスター/ジェイムズ・ブリッシュ/コードウェイナー・スミス/シオドア・スタージョン/ポール・アンダースン
(中村 融/浅倉久志/大森 望/安野 玲/深町眞理子/小尾芙佐/伊藤典夫/白石 朗/酒井昭伸/広田耕三/訳)
『20世紀SF・2』河出文庫

 1950年代の、SF短編集。

 読むのに時間がかかります。でも、一読の価値あり。
 収録作品は

レイ・ブラッドベリ「初めの終わり」
ロバート・シェクリイ「ひる」
フィリップ・K・ディック「父さんもどき」
リチャード・マシスン「終わりの日」
ゼナ・ヘンダースン「なんでも箱」
クリフォード・D・シマック「隣人」
フレデリック・ポール「幻影の街」
C・M・コーンブルース「真夜中の祭壇」
エリック・フランク・ラッセル「証言」
アルフレッド・ベスター「消失トリック」
ジェイムズ・ブリッシュ「芸術作品」
コードウェイナー・スミス「燃える能」
シオドア・スタージョン「たとえ世界を失っても」
ポール・アンダースン「サム・ホール」


 
 
 
 
2001年09月02日
アン・マキャフリイ(小尾芙佐/訳)
『竜の挑戦』ハヤカワ文庫SF

 アン・マキャフリイの代表作である《パーンの竜騎士》シリーズ、第八作。

 南の大陸で発見されたコンピュータ・アイヴァスは、パーン社会を一変させようとしていた。人々は長きに渡り糸胞の襲来と闘ってきたが、その驚異をパーンに近付けないようにするというのだ。
 アイヴァスは計画達成のために、失われた知識を明らかにしていく。また、人々はさまざまな工学技術を学びパーンの発展にも貢献するが、変化についてこられない人間もいた。

 ファンタジー的要素の強かった《パーンの竜騎士》シリーズですが、本書でやはりSFだったと再確認。歴史絵巻的展開は変わらず、パーンの過ごす時が感じられます。


 
 
 
 
2001年09月03日
宮部みゆき
『R.P.G.』
集英社文庫

 ミステリィ。
 カラオケボックスで、アルバイトの大学生・今井直子が絞殺された。その三日後、建築中の建て売り住宅内部で、会社課長・所田良介の刺殺体が発見される。当初は別の事件として捜査されていたが、やがて、接点が明らかに……。さらに、所田にはネット上に疑似家族がいたことが判明する。遺族の知らない疑似家族たちの事件との関係は?

 著者が宮部みゆきだと思うと、少々物足りない一冊。


 
 
 
 
2001年09月09日
谷 甲州
『エリコ』
早川書房

 近未来バイオ・サスペンス。
 22世紀、大阪。女として生きることを選択した男・北沢エリコは、美貌を保ち、高級娼婦として生きていた。非合法に性転換した弱味を札付きの刑事につかまれたエリコは、上海黒社会に娼婦として雇われるべく面接にむかうことになる。試験には受かったエリコだったが、身辺では奇怪な事件が……。
 上海黒社会のボス・ローが、エリコの遺伝子から作ったクローンに脳を移植し、今またエリコを必要としているらしいのだ。そもそもエリコには、クローンを作った覚えがない。いつどこで作られたのか。また、なぜエリコだったのか?

 力作。
 娼婦が主役なだけに性描写が多いのですが、まったく厭味なし。


 
 
 
 
2001年09月10日
1960年代SF傑作選
(中村 融&山岸真/編)
ロジャー・ゼラズニイ/ハーラン・エリスン/サミュエル・R・ディレイニー/アーサー・C・クラーク/J・G・バラード/ケイト・ウィルヘルム/R・A・ラファティ/トーマス・M・ディッシュ/ゴードン・R・ディクスン/ラリイ・ニーヴン/ロバート・シルヴァーバーグ/ダニー・プラクタ/ブライアン・W・オールディス/ジャック・ヴァンス
(浅倉久志/伊藤典夫/酒井昭伸/中村 融/安野 玲/小隅 黎/訳)
『20世紀SF・3』河出文庫

 1960年代の、SF短編集。

 読むのに時間がかかります。でも、一読の価値あり。
 収録作品は、

ロジャー・ゼラズニイ「復讐の女神」
ハーラン・エリスン
 「「悔い改めよ、ハーレクィン!」とチクタクマンはいった」
サミュエル・R・ディレイニー「コロナ」
アーサー・C・クラーク「メイルシュトレームII」
J・G・バラード「砂の檻」
ケイト・ウィルヘルム「やっぱりきみは最高だ」
R・A・ラファティ「町かどの穴」
トーマス・M・ディッシュ「リスの檻」
ゴードン・R・ディクスン「イルカの流儀」
ラリイ・ニーヴン「銀河の〈核〉へ」
ロバート・シルヴァーバーグ「太陽踊り」
ダニー・プラクタ「何時からおいでで」
ブライアン・W・オールディス「賛美歌百番」
ジャック・ヴァンス「月の蛾」

 【追記】ジャック・ヴァンス「月の蛾」は……
 エドワー・シッセルは、惑星シレーヌにおける母星連合の領事代理。シレーヌでは、人々は仮面で素顔を隠し、楽器をもちいて歌いながら話す風習がある。
 シッセルの身につける仮面は、悲しげで滑稽な〈月の蛾〉。仮面にはストラクー的な価値があるのだが、シッセルにはまだストラクーが理解できない。月の蛾は、同じ外星人である宙港長エステバン・ロルヴァーが貸してくれたものだ。
 ある日、シッセルの元に一つの知らせが届いた。凶悪な犯罪者、ハゾー・アングマークがシレーヌに向かっている、というのだ。しかも、宇宙電報は三日前の日付だった。大慌てで宙港に向かうシッセル。しかし時すでに遅し。アングマークは仮面をつけて逃亡した。
 アングマークはシレーヌの商事代理人だったことがあり、外星人ながらも風習には馴染んでいる。そして、外星人の水死体が見つかった。この死体は一体誰なのか?

 もしかすると、仰々しさが好きなのかもしれません。異質な文明や価値観は、SFの醍醐味の一つ。楽器を奏で歌いながら会話する人々が、抜群におもしろい。
 まだ会話術がヘタで、行く先々でトラブルを起こすシッセル。まさに、月の蛾にふさわしい滑稽さ。
 あまりのおもしろさに、何度も読んでしまう作品です。
※この書込みは、かつて愛読書コーナーに掲載されていましたが、コーナー閉鎖のため、こちらに追記しました


 
 
 
 
2001年09月11日
ジェローム・K・ジェローム(丸谷才一/訳)
『ボートの三人男 −犬は勘定に入れません−』
中公文庫

 ユーモア小説。
 ジョージとハリスとぼくは、ある日、健康状態について議論した。三人とも気分がすぐれず、どこかが悪いようなのだ。過労と自己診断した三人は、休息と気分転換を兼ねて河にいくことにした。かくして、犬をお供にテムズ河をボートで漕ぎだした三人。歴史ある地方をたどりつつ、河の旅は愉快に、滑稽につづいていく……。

 物語の面白みはさておき、とにかく笑える一冊。
 なんでもないところでも思わず笑みがこぼれてしまうから不思議。


 
 
 
 
2001年09月13日
マイクル・カンデル(大森 望/訳)
『キャプテン・ジャック・ゾディアック』
ハヤカワ文庫SF

 スラップスティック・コメディSF。
 ついにロシアと開戦したアメリカ、午前二時。爆弾が落ちる光景を目の当たりにしたクリフォード・クスヴィツキーは、生粋のアメリカ人名前に改名しようと決意した。そして、一念発起して恋人マーシャの家を訪れる。妻と離婚したクリフォードは、二人の子供(一人はモール・ゾンビ、また一人は宇宙士官候補生)を連れ戻し、マーシャと四人で幸せな家庭を築きたいのだ。ものすごく。
 結婚に猛反対するマーシャの亡き母を説得するために、クリフォードは漆黒のトークン片手に地下鉄D線に乗り込んだ。そこからあの世へと旅立てるのだ。もちろん、往復切符で。
 深刻化する核戦争も、クリフォードの「新しい家庭を築く夢」を止めることはできないのだった。

 さまざまな逸話がてんこもりの、ちょっと複雑な構成。
 分かりにくいけど、おもしろい。クリフォードの奮闘に注目。


 
 
 
 
2001年09月14日
SFマガジン・ベスト
(伊藤典夫&浅倉久志/編)
トム・ゴドウィン/キャサリン・マクレイン/F・L・ウォーレス/ポール・アンダースン/アルフレッド・ベスター/ロバート・シェクリィ/アイザック・アシモフ
(斎藤伯好/稲葉明雄/伊藤典夫/訳)
『冷たい方程式』
ハヤカワ文庫SF

 SFマガジンに掲載された、傑作中短編集。
 表題作の「冷たい方程式」(トム・ゴドウィン)は……緊急発進艇パイロットに課せられたのは「艇内で発見された密航者は、発見と同時に直ちに艇外に遺棄すること」という掟。艇外は宇宙空間。待ち受けるものは死だ。しかし、そうしなければならない理由があった。
 そして、パイロットの彼は、密航者を発見する。それは、たった一人の兄に会いたいがために規則を破った、若い娘だった……。

 他に、キャサリン・マクレイン「接触汚染」F・L・ウォーレス「大いなる祖先」ポール・アンダースン「過去へ来た男」アルフレッド・ベスター「祈り」ロバート・シェクリィ「操作規則」アイザック・アシモフ「信念」……を収録

 名作ぞろい。表題作は泣けました。

 【追記】ロバート・シェクリィ「操作規則」は……
 パウエルはヴェンチャー号の艇長。ヴェンチャー号は、アメリカで唯一完全な状態にある宇宙船だ。部下は、航宙士ダントンと動力技師アリグリオの2人。そこへ、司令部の命令で追加乗員を加えることになった。
“プサイ”のウォーカー。
 念動能力の持ち主だ。
 たいていの宇宙飛行士と違わず、ダントンもアリグリオも保守的で排他的。歓迎などするはずもない。一方の“プサイ”には、適応障害があった。
 パウエルは、ウォーカーが仕事を果たせば燃料の節約になると、部下たちを説得する。しぶしぶ認める2人。パウエルは、与えられた“プサイ”の操作規則書を熟読するように求め、従わせることにも成功する。
 そして迎えたウォーカーは、尊大だった。しかし、最初の飛び立ちでウォーカーは力加減を間違い、ヴェンチャー号は土星近くまで達してしまった。目的地は火星だというのに!
 帰還できる見込みはない。ウォーカーが再度仕事をしないことには。パウエルたちは、操作規則書を元に打開を計る。一方のウォーカーはすっかり自信喪失してしまい……。

 名作とは言いがたいものの、精神的に弱い“プサイ”をなんとか扱おうとする乗組員たちが滑稽で、おもしろいんです。何度も読んでいるせいか、結末にも結論にも意外性があるとは思えません。もう半世紀も前の作品だし。
 でも、好き。
※この書込みは、かつて愛読書コーナーに掲載されていましたが、コーナー閉鎖のため、こちらに追記しました

 
 

 
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