収録作品は以下のとおり。
「はじめに」(アルジス・バトリスによる序文)
「カンザスの幽霊」
「空襲」
「逆行の夏」
「ブラックホール通過」
「火星の王たちの館にて」
「鉢の底」
「歌えや踊れ」
「汝、コンピューターの夢」
「残像」
ジョン・ヴァーリイといえば〈八世界(エイト・ワールド)〉です。
〈八世界〉とは……2050年、地球は異星人に侵略されてしまう。月の植民地に残された1000人あまりの人類は、長い年月をかけ、太陽系にちらばっていく。すなわち、水星、金星、月、火星、タイタン、オベロン、トリトン、冥王星の八つの世界に……。
本作品集でも 〈八世界〉ものがいくつか含まれています。「ブラックホール通過」は、長篇『へびつかい座ホットライン』の関連作品です。
ジョーダンとトリーモニシャは、太陽から300億キロの地点に設けられた2つのステーションで別々に暮らしていた。そこで、垂れ流しにされている謎の情報通信(通称“へびつかい座ホットライン”)を拾っているのだ。孤独な日々がつづくさなか、ステーションの側をブラックホールが通過していき……。
『へびつかい座ホットライン』の別の側面を見たような、とても興味深い作品でした。
大長篇の一部……といった感じで、コメントのしようがない一冊。
コメントといっても、いつもたいしたことは書いてないんですけどね。
環境汚染により、1988年の世界は危機に瀕していた。
物理学者ジョン・レンフリューは、過去へ通信を送る実験を始める。光よりも速い粒子タキオンを使えば、モールス信号の要領でデータを送信することができるのだ。
一方1962年の世界では、物理学者ゴードン・バーンスタインが核磁気共鳴実験に混ざる雑音に悩まされていた。実験を続けるうちにバーンスタインは、それが単なる雑音ではなく信号ではないかと、気がつく。
とにかく暗い作品。
未来に希望のない1988年の世界が暗いのはあたりまえながら、1962年で変人扱いされるバーンスタインも暗い。
落ち込んでるときにはあまり読みたくない一冊でした。
地球は異常気象に見舞われていた。
ニューヨークでは摂氏82度の高温を記録し、通勤者は小型クーラーを背負わなければ出かけられない。国連は、来る地球の滅亡に備え、人間が生き延びられそうな星に選抜懲募法によって強制移住をすすめている。
不毛の惑星に送り込まれた移住者にとって、ドラッグは必要不可欠だ。人々は、P・P・レイアウト社の販売するパーキー・パット人形とドラッグ“キャンD”の組み合わせを用い、現実逃避を計っていた。
そんな中、プロキシマ星系から飛来したらしい宇宙船が、冥王星に不時着したというニュースが流れた。乗客は、10年前にプロキシマ星系に出かけていった星間実業家、パーマー・エルドリッチらしい。しかも彼は、新種のドラッグ“チューZ”を持ち帰ったという。
危機感を覚えたP・P・レイアウト社の社長、レオ・ビュレロは、真実を確かめようとする。
レオの元で流行予測コンサルタントを務めるバーニイ・メイヤスンは、この機会にキャリア・アップを目論むが……。
短編「パーキー・パットの日々」が原形の退廃的な作品。
エリートで未来予知者でもあるのに泥沼にはまっていくメイヤスンが見物。
バーバラ・ウエルズは、ファーナム家に招かれ夕食を共にしていた。平和な一日だったが、家長のヒューバートは、戦争に備えて防空壕を掘り食料を備蓄している。その行動を笑う長男のデューク。
しかし、食後のブリッジに興じる一同のもとに、第三次世界対戦勃発のニュースがとびこんだ。
地下シェルターに逃げ込み最初の水爆をやり過ごす面々。高温もなんとか耐え忍んだ彼等だったが、地上に出てみると、そこには廃虚ではなく、大自然が広がっていた。
タイム・トラベルもの、兼、サバイバルもの。と思いきや、実は……という大長編。ヒューバートがある意味イヤな奴なんですけど、デュークがダメ男のため、読み終わるまで気がつきませんでした。
おもしろくもあり、つまらなくもあり。
《銀河帝国興亡史》シリーズ、第五巻。
前作の『ファウンデーションの彼方へ』で、人類の代表として、銀河の未来を“ファウンデーション”ではなく“ガイア”に託したトレヴィス。彼の、たぐいまれなる直感力で選ばれた“ガイア”は、惑星全体が一つの精神を共有する特殊な世界だ。
トレヴィスは“ガイア”を選んだことに自分自身でも納得できないずにいた。そして、まったく同じ直感力は、すべての鍵は“地球”にあると告げているのだった。
トレヴィスは、友人ペロラット、ガイア人ブリスを伴い、忘れ去られていた“地球”の探索に乗り出す。
ううむ、なんといおうか。
アシモフにしては駄作ではないかと思うのですが、まったくつまらなかったかといえば、そういうわけでもなく……。最初の三部作(『ファウンデーション』『ファウンデーション対帝国』『第二ファウンデーション』)に感動した人にはきついのではないかと、思われます。
同じシリーズなのに、こうまで違うとは。
《銀河帝国興亡史》 第六巻。
“ファウンデーション”の設立者ハリ・セルダンが、心理歴史学を完成させるまでの物語。
数学者大会のために、惑星ヘリコンから銀河帝国の首都惑星トランターにやってきたセルダン。大会で、人類の未来を数学的に予言できる可能性について発表したために、故郷に帰ることができなくなってしまう。セルダンの示した心理歴史学は実用的なものではなかったが、権力者たちには魅惑的にとらえられたのだ。
皇帝クレオン一世は銀河の恒久平和を願い、帝国に反抗的なトランター・ワイ地区の権力者ラシェルは、帝国の転覆をたくらんでいた。それぞれに捕われそうになったセルダンは、自称ジャーナリストのチェッター・ヒューミンの助力を得て、逃避行を開始するが……。
どんでん返しの連続技。
最初の三部作(『ファウンデーション』『ファウンデーション対帝国』『第二ファウンデーション』)に感激した派としては、ちょっと物足りなさも残ります。おもしろいんですけどね。
人口が減り続けている銀河帝国は、滅亡の危機に瀕していた。帝国は、哺乳類の知能を操作して人間の代りとする一方、支配下の惑星から人間を税金として徴収している。しかし、それでも人間は足りず、かつては35コあった宇宙艦隊も、継ぎはぎだらけの五艦隊が残るばかり。
第十艦隊の提督を務めるアーチャーはベテランの21歳。エスコリア星域の反乱鎮圧のため、全権を与えられ艦隊を動かす。
一方、エスコリア星域の地球では、ヘボ・キメラ技術者によって造られたパウドがいた。パウドは、偶然から手にいれた銃“禅銃”を持ち、恩をうった伝説の超戦士“小姓”をしもべとする。
アーチャーとパウドを中心に、アイデアてんこもり。めくるめくスクリーン・バロックの世界。
めくるめく世界。
登場人物全員が主役のような、散漫とした印象は拭えないものの、やっぱり傑作にとても近い。
《人類補完機構》
収録作品は
ロジャー・ゼラズニイによる序文「コードウェイナー・スミスのこと」
「クラウン・タウンの死婦人」
「老いた大地の底で」
「帰らぬク・メルのバラッド」
「シェイヨルという名の星」
表代作の「シェイヨルという名の星」は……犯罪者が最後に送られる星、生きて出られない星、究極の刑罰の星“シェイヨル”の物語。
マーサーは、帝室一族に対する名もない犯罪のために“シェイヨル”に送られた。そこで、同じく囚人である前皇后レイディ・ダーと出会う。レイディ・ダーの口癖は「人の命は永遠ではない」。
マーサーが“シェイヨル”で目撃した刑罰の正体とは?
傑作の棚に並べたくなる一冊。ただし、コードウェイナー・スミスは非常に好みの別れる作家なので、万人にはお薦めできないのが哀しいところ。
木更村は、町から遠く離れた夏森村の、さらに奥深くにあった。そこは芸術家たちが創作に浸る聖域で、他者を拒絶している。
有馬麻里亜は、かつての事件で傷付いた心を癒すために一人夏森村の旧友を尋ね、そして木更村に迷いこんだ。麻里亜は画家のモデルとして木更村の滞在を許される。
一方東京では、一人旅にでたまま自宅にも下宿先にも戻らない娘を心配する両親がいた。木更村という居場所は分かっているものの入村することもできず、父親は、麻里亜の大学の仲間たちに救援を依頼する。
こうして木更村に向かった英都大学推理研究会の一行だったが、ただ一人だけが麻里亜との接触に成功した夜、橋が濁流に飲み込まれてしまった。夏森村と木更村は、ただ一本の橋だけでつながっていたのだ。そうこうするうち、完全に孤立した木更村で殺人事件が起こり、そしてまた、夏森村の残された仲間たちも殺人事件に巻きこまれてしまう。
物語が動き出すまでが、非常に読みづらい一冊。キャラクター先行なので、彼らに惚れこまないと少々きつい。推理部分がおざなり……ってわけではないのですがね。
25ミリもある厚い本なのに、時間をかけずに読み切れてしまう点に物足りなさを感じてしまうのでした。