《魔王子》シリーズ(全五巻)の第一巻。
マウント・プレザントは、人口5000人の小さな町だった。人々は平和に暮らしていたが、ある日、その暮らしは一変する。極悪非道ぶりから“魔王子”と恐れられている五人に目をつけられ、要求を拒んだがために壊滅させられたのだ。
町は滅び、生き残った人々も奴隷として連れ去られた。
その悲劇から祖父と共に生きのびた少年カース・ガーセンは、生涯をかけた復讐を誓う。
そして、34歳になった年、スメード亭で思わぬ名前と出会うことに……。その名は、アトル・マラゲート。“魔王子”の一人、災厄のマラゲートに雇われた人物との出会いだった。
“魔王子”たちも大変な人を敵にまわしたものだ……という一冊。
ガーセンは執念でもって敵を追い詰めていきますが、同時に、マラゲートへの手がかりを持っているために追われる立場にもあります。そのかけひきが、また絶妙。
こんなにおもしろいのに、現在では古書店でしか手に入らないとは、残念でなりません。
エイリアンに地球を侵略され、人類は太陽系の八つの世界に散らばり暮らしていた。最前線である「月」世界では新聞記者のヒルディが、地球侵略二百周年の特集記事のための取材を行っていた。
その最中、月のセントラル・コンピュータはヒルディにある事実を告げる。それは、ヒルディが何度も自殺未遂をくり返しており、その現象は全人類に広がっている、というものだった。
ヒルディは最初は男性として登場し、途中から女性に性転換します。それがこの世界での日常であり、地球侵略以前からの生存者がいるのも、ふつうのこと。
ヴァーリイのおもしろさはここでも健在。
ただし、ヒルディの独白風に物語が展開するので、それが気になると上下巻はちと長過ぎる。
四光年彼方のアルファケンタウリに住むトソク族が人類に接触してきた。単なるファースト・コンタクトではない。壊れてしまった宇宙船の修理協力を要請するものでもあった。
計画は順調に進む中、事件は起きた。
最初の接触にも立ち会った天文学者クリータス・カルフーンの残殺死体が発見されたのだ。場所は、トソク族の滞在する施設。容疑者として逮捕されたのは、トソク族のハスクだった。ハスクはカルフーンを殺したのか?
基本はSFですが、法廷ものです。
カルフーンには申し訳ないですが、事件が起こるまでは少々単調で読むのがつらかった……。もちろん、事件が起こった後はちがいます。
ソウヤーのおもしろさ全開。
大人に疎まれる「感応力」は、子供にだけ備わった特別な力だ。19歳の誕生日を間近にひかえた少年・三日月は、感応力が失われる不安におびえていた。
仲間だった中川は感応力を失い、無表情に、仮面をかぶったようになってしまった。自分もそうなるのではないか?
三日月は、同級生たちとの危険なゲームにひきずりこまれていく……。
もっと若いころに読むべきだった一冊。
表代作「マイノリティ・リポート」は……
三人の予知能力者を使った犯罪予防局では、犯罪を未然に防ぐために日夜データを分析していた。局長のアンダートンは、何気なく見た分析カードで驚愕の未来を知る。自分が“まったく知らない相手を来週に殺す”というのだ。
誰かの陰謀なのか?
鍵は、他の二人とちがった未来を予知した少数報告「マイノリティ・リポート」にある。アンダートンの調査がはじまった……。
映画「トータル・リコール」の原作となった短編「追憶売ります」も収録されています。ディックの世界は映像化しやすいのかもしれませんが、原作には文字独自の味があります。
森井みどりと早川修三は互いに結婚を考えていたが、足りないのは先立つ資金だった。みどりの現在の住居は安い三畳間だったし、修三も、独身寮から世帯寮に移れる見込みがなかった。そんな二人にふってわいたのが、修三の後輩、大羽弥太郎の“お願い”だった。
弥太郎の実家は旧家なのだが、父・弥左衛門が危篤におちいり、弥太郎は帰郷することになった。それも、嫁になる女性をともなって……。彼女がいると嘘をついてきた弥太郎は、みどりと修三に偽の嫁になる“お願い”をしたのだ。見返りは二百万円+α。
結婚資金のために協力することに決めたみどりと修三だったが……。
とても厚い本なのですが、厚くなったのは、発表前に削除された部分も載せているため。貴重な資料なのかもしれませんが、本当にその部分の掲載が必要だったのかどうか、首をかしげざるを得ません。
内容的にはとてもおもしろいです。
ハプニング続きの中、よくできた嫁を演じるみどりが圧巻。
2002年12月20日
アーシュラ・K・ル=グィン(小尾芙佐/訳)
『言の葉の樹』ハヤカワ文庫SF
科学技術の進んだ大宇宙連合・エクーメンは、惑星アカと接触した。以来、アカは伝統的な文化を捨て、新たな道を歩みはじめる。
エクーメンの女性観察員・サティは、焚書のつづく世界で、伝統的な独自の文化を調査しようとするが……。
《ハイニッシュ・ユニバース》 もの。
最初から情緒的で、理解するのに時間がかかりました。何回か読むためにある本なのだと思います。