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2003年の記録
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このページの本たち
モナリザ・オーヴァドライヴ』ウィリアム・ギブスン
ホクサイの世界』小松左京
わが名はコンラッド』ロジャー・ゼラズニイ
長いお別れ』レイモンド・チャンドラー
逆まわりの世界』フィリップ・K・ディック
 
五分後の世界』村上 龍
惑星カレスの魔女』ジェイムズ・H・シュミッツ
時の顔』小松左京
2061年宇宙の旅』アーサー・C・クラーク
銀河遊撃隊』ハリイ・ハリスン

 
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2003年06月21日
ウィリアム・ギブスン(黒丸 尚/訳)
『モナリザ・オーヴァドライヴ』
ハヤカワ文庫SF

 サイバーパンク。
 13歳の久美子は、大物ヤクザの娘。組織上層部の抗争が勃発し、単身ロンドンに渡った。父からのはなむけとして贈られたのは、ゴースト。51世代目のマース=ネオテク・バイオチップが描き出すゴーストの少年コリン。ロンドンで久美子をかくまうのは、父の子分のロジャー・スウェイン。そして、久美子を街に連れだしてくれるボディガードは、ミラーシェードを埋め込んだ女、サリイ・シアーズ。
 一方、スリック・ヘンリイは、大きな借りのあるキッド・アフリカから荷物を預かった。荷物とは、サイバースペース(電脳空間)にジャック・イン(没入)し続ける謎の男。この男こそ、伝説的ハッカー、ボビイだった。
 そしてまた、売春婦のモナは恋人のエディと共に不法居住区に暮らしていた。モナは、センス/ネットの大スター・アンジェラに対し、特別な感情を抱いている。というのも、自分がアンジェラに似ているから。ある日、エディとモナの元にプライアーと名のる男が現れる。男に雇われ、二人はテキサスに向かうが……。

「ニューロマンサー」『カウント・ゼロ』に続く、電脳空間三部作の完結編。バラバラに登場する人間たちの関係が、しだいに収束していくさまは圧巻。ただし、覚えねばならない登場人物が多いくせ、登場人物紹介のような便利なものは付属していないので苦労させられました。
 疾走感あふれるシャープな展開が持ち味らしいのですが、それに乗りきれないと、辛く厳しい読書時間に陥ります。
 一通り読んだ後の再読でようやく評価できる一品。


 
 
 
 
2003年06月22日
小松左京
『ホクサイの世界』
ハルキ文庫

 ショート・ショート集。
 表題作の「ホクサイの世界」は……
 図書館の古書部で見つけた20世紀の画集は、葛飾北斎のものだった。たちまち虜になった僕と妻は、北斎のフジヤマを見るために、タイム・マシンで出かけたが……。

 ショート・ショートはその短さのために、波長が合わないとなかなか楽しめないと思うのですが、当書も御多分にもれず。おもしろがれるもの、理解できないもの、ごった煮状態でした。


 
 
 
 
2003年06月28日
ロジャー・ゼラズニイ(小尾芙佐/訳)
『わが名はコンラッド』
ハヤカワ文庫SF

 コンラッドは、地球美術遺蹟史料局長。休暇中を呼び戻され、ベガ人のミシュチゴを地球観光に案内することになった。〈三日戦争〉で壊滅した地球を。地球側はミシュチゴが密命を帯びているのではないかと疑うが……。

 読む人を選ぶ作品。
 どうにもとっつきにくいのは、この作品に選ばれなかったから、としか言いようがない。


 
 
 
 
2003年07月16日
レイモンド・チャンドラー(清水俊二/訳)
『長いお別れ』
ハヤカワ文庫HM

 ハードボイルド。
 フィリップ・マーロウは、私立探偵。ひょんなことから知り合ったテリー・レノックスと飲み友だちになった。テリーは、億万長者ハーラン・ポッターの娘シルヴィアの夫なのだが、そのシルヴィアが惨殺されてしまう。
 無実を主張するテリー・レノックス。彼をメキシコへと逃すマーロウ。だが、テリーはメキシコで自殺してしまう。自分がシルヴィアを殺したという遺書を残して。
 テリーの自殺によって事件が解決したかに思えたころ、マーロウは、ベストセラー作家ロジャー・ウェイドの妻アイリーンから、仕事の依頼を受けた。ロジャーは、妻にもはなせない秘密があるらしいのだ。
 ウェイド家の仕事をつづけるうちにマーロウは、ふたたび、テリー・レノックスの事件に接することになるが……。

 名作。
 ただし、諸手を上げての大傑作かというと……。


 
 
 
 
2003年07月17日
フィリップ・K・ディック(小尾芙佐/訳)
『逆まわりの世界』
ハヤカワ文庫SF

 SF。
 1986年、それは起こった。後にホバート位相と呼ばれることになる時間逆流現象により、世界は逆まわりに動き始めたのだ。墓からは死者が甦り、人々は日々若返り、子宮へと戻っていく……。
 ヘルメス・バイタリュウム商会は、民間の再生施設だった。甦った死者を墓から助け出す仕事だ。そして、必要とする人に売りさばく。その日常の業務をこなしていたセバスチャン・ヘルメスは、墓場で、今にも甦りつつある死者を見い出した。
 その死者の名はトマス・ピーク。
 熱狂的な信者を持つユーディ教の教祖だった。やがてセバスチャンは、再生したピークを巡る争いに巻き込まれていく……。
 ピークを得るのは、公安機関〈消去局〉か、狂信的なユーディ教指導者か、はたまたローマ教会か?

 逆に動く時の流れをうまく処理した作品。
 ディックにしてはかなり読みやすい。ディックを読み慣れているなら、そこが不満に感じてしまうでしょうけど、それもまたディック。


 
 
 
 
2003年07月20日
村上 龍
『五分後の世界』
幻冬舎文庫

 五分だけ遅れている世界が舞台のパラレル・ワールドもの。
 五分後の世界は、第二次世界大戦で日本は降伏せず、地下都市を建設して国連と闘い続けている、というもの。主役は、その世界に迷いこんだ「五分前」の世界に生きる男で「五分後」の世界に生きる日本人たちの協力を得て、自分の元いた世界に帰ろうとする。

 何年か前に読んだときには傑作だと思ったのですが、今になってみると、ちょっと微妙。美化された日本人がはなについてしまうのでした。
 おもしろいんですけどね。


 
 
 
 
2003年07月22日
ジェイムズ・H・シュミッツ(鎌田三平/訳)
『惑星カレスの魔女』
創元SF文庫

 スペースオペラ。
 パウサートは、ニッケルダペイン共和国市民で、有力者アンズウッド上院議員の娘イリーヤという婚約者がいた。パウサートは、上院議員に資金援助をしてもらい事業を始めるが、大失敗してしまう。そのため、老朽船ベンチャー号で交易にでかけることに……。
 パウサート船長は商売に大成功するが、惑星ポーラマで三人姉妹、マリーン、ゴス、ザ・リーウィット、を助けたのが運のツキ。若い奴隷が貴重な昨今において全員が破格の値段だったのには、彼女等が、惑星カレスの魔女だという理由が!
 惑星ポーラマを立ち去る際、魔女たちのあやつるシーウォッシュ・ドライブを使ったことで、ベンチャー号は各方面の注目を浴びてしまう。たった28秒間で2光週間移動する新型の“宇宙航行装置”を、誰もが欲しがったのだ。
 どうにかして、三姉妹を惑星カレスに送り届けたパウサート。故郷のニッケルダペインに戻ると、イリーヤはラポート上院議員夫人になっていた。しかも数々の告発が行われ、故郷にはいられなくなってしまう。
 かくして、パウサート船長と、ベンチャー号に密航していたゴスとの大冒険がはじまった……。

 ヒロインが少女ということもあって、とにかくやわらかい仕上がり。“魔法”という、機械とは対極にあるような小道具とうまくバランスがとれた一品。
 表紙が宮崎駿で、その雰囲気に引きずられてしまったのは、未熟な読み手ゆえか?


 
 
 
 
2003年07月26日
小松左京
『時の顔』
ハルキ文庫

 短編集。
「時の顔」
「御先祖様万歳」
「地には平和を」
「痩せがまんの系譜」
「哲学者の小径」
「愚行の輪」
「比丘尼の死」
「骨」
「お茶漬の味」
「失われた結末」
「ホムンよ故郷を見よ」
以上、11作品を収録。

「時間」がかかわっている短編を集めた一冊。
 表題作の「時の顔」は……
 時間管理局調査部長の息子・カズミが、原因不明の奇病に侵された。カズミの幼馴染みであるタケは、病気の正体を探るために19世紀の日本へ時間を跳んだ。カズミは、19世紀から連れられてきた子供だったのだ!
 やがて明らかになるカズミ出生の秘密。そして、伏線を存分に生かした結末。かなりポイント高いです。短編のため、詰め込んだ印象は拭えませんが。


 
 
 
 
2003年07月28日
アーサー・C・クラーク(山高 昭/訳)
『2061年宇宙の旅』
ハヤカワ文庫SF

 宇宙SF。
 天文学者ヘイウッド・フロイドは、75年ぶりに接近してきたハレー彗星の調査団に加わることになった。他の乗客たちと共に、最新型の宇宙船ユニバース号に乗りこみ、ハレー彗星に向かう。
 数々の発見を行う一行だったが、まもなく、地球帰還命令が届いた。姉妹船・ギャラクシー号が事故に遭い、木星の衛星エウロパに不時着したというのだ。
 50年前。木星を小さな太陽ルシファーに変貌させた謎の存在が、けっして着陸してはならぬと警告したエウロパに。

2001年宇宙の旅』『2010年宇宙の旅』につづく、宇宙の旅三作目。
 謎は、謎のまま……。


 
 
 
 
2003年08月03日
ハリイ・ハリスン(浅倉久志/訳)
『銀河遊撃隊』ハヤカワ文庫SF

 おバカSF。
 学生にして天才科学者のジェリーとチャックは、ある実験を行った。その実験では、お手製の粒子加速器でルビジウムを叩く予定だったが、ジェリーのきまぐれで、代わりにヴァン・チダー・チーズを叩いてしまう。結果は、新物質チェダイトの出来上り!
 チェダイトは、どんなものでも瞬間的に転送することができる画期的な物質だった。
 二人はこの新物質から、航法装置チェダイト放射器を完成させる。そして実験のために、ジャンボ・ジェット機につみこむが……。

 スペースオペラのパロディ満載の一冊。元ネタは知らなくっても問題なし。ただし、元ネタを知らない人が、おつむの弱い女やら、ラジオ受信機で英語を勉強した異星人やらがでてくることに耐えられるのかどうかはあやしい。

 
 

 
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