ショート・ショート集。
表題作の「月よ、さらば」は……
舞台は、ある組織の「役員室」。不景気の嵐が吹き荒れる中、彼らは倒産を回避すべく、オリオン物産に社員を派遣した。オリオン物産に色よい返事をもらわないと、倒産の憂き目にあってしまうのだ。そうしてかかってきた電話。組織はいったいどういう運命をたどるのか?
まとめて読むより、ときどき、適当なところを一遍ずつ読みたい一冊。ショート・ショート集はそういうものですが。
連作SF。
感情というものを知らない少年・宥現は、砂漠で旅賊の娘・魔姫と出会った。折しも砂漠では、発掘中の戦闘機械が数百年の眠りから目覚めたところ。居合わせた宥現はターゲットにされてしまう。
過去で、未来で、魔姫と出会い、戦闘機械に狙われ続ける宥現。
闘いの結末は?
宥現の感情の在処はいずこに?
感情を持たないにしては、か、それとも持たないが故か、どんよりとした宥現が重苦しい。
スラップスティックSF。
南北戦争前のアメリカ・ヴァージニア州。
殺人を犯してしまったメイスン・アルジャーズ・レナルズは15歳。その首に100ドルの懸賞金を懸けられ、生まれ故郷を後にした。逃亡の最中に出会ったのは、メイスンが崇拝する作家、エドガー・アラン・ポウ。
ポウは〈空洞地球〉の存在を信じていた。〈空洞地球〉とは、地球の内側のこと。シベリア最北端の沿岸から氷原を越えて北へ進むと、到達することができるという。
メイスンは、ポウと、ポウの友人のジェレマイア・レナルズと共に、架空銀行・ケンタッキー州立銀行をでっちあげる。極地地球探検の装備を買いあさるためだ。こうして、ポウたちと共に冒険の旅に出ることになったメイスンだったが……。
ポウ唯一の中編『ナンタケット島のアーサー・ゴードン・ピムの手稿』をベースにした一冊。ラッカー風味になっているとはいえ、筋の通ったストーリィがあります。
戦争SF。
神経接続による遠隔歩兵戦闘体を使った戦争が行われている近未来。連合国では、神経を繋げあった10人が操作するソルジャーボーイ小隊を戦場に投入し、戦果をあげていた。
小隊長であるジュリアン・クラスの本職は物理学者。戦場から戻ると、ジュピター計画に取りかかる。ジュピター計画とは、木星の軌道上にかつてない規模の粒子加速器を設置し、宇宙の始まりを再現しようとするもの。
ジュリアンのパートナー・アメリアは、その危険性に気がつくのだが……。
戦争の現場から、兵士を送り出してはいるが日常的な国へ。この視点の移り変わりが、絶妙。精神を繋げるもの、繋げないもの、とにかく盛り沢山の内容。
それにしても、長い……。
直木賞受賞作『無間人間』の同一シリーズもの。
ハードボイルド。
西新宿のホテルで、貿易商の外国人が射殺体となって発見された。部屋にコカインがあったため、一匹狼の刑事・鮫島にもお呼びがかかる。しかし、なぜか公安警察が事件の引き渡しを要求し、鮫島たちは追い出されてしまった。殺された外国人・ブライドは、元CIA職員だったのだ。
鮫島は、別件で窃盗品密売グループを追っているところで、故買屋のハギモリという男を突き止めていた。ハギモリに接触したのは、渋谷を縄張りとする暴力団・平出組。そして、殺されたブライドの所有していたコカインは、平出組の扱ったものだった。
ハギモリとブライドは線でつながるのか?
不思議な美女・杉田江美里が、事件と鮫島に関わっていきます。要所要所に置かれた人物たち、数々の事件、からみあう出来事。
一気に読んでしまいたい一冊。
《銀河帝国興亡史》第七巻・最終巻。
“ファウンデーション”の設立者ハリ・セルダンの物語。
銀河帝国は衰退しつつあった。首都トランターの大学で心理歴史学の研究をするセルダンには、未来予測の理論・心理歴史学を持ってしても帝国の滅亡を防げないことが分かっていた。しかし、その影響を和らげることならできる。その答えが“ファウンデーション”なのだ。
やがて、帝国に一つの危機がやってくる。首相エトー・デマーゼルを追放しようと、野心家・ジョラナムが策動していたのだ。デマーゼルはセルダンの友人でもあり、心理歴史学を支援してくれていた。セルダンは、ジョラナムの過去を見破るが……。
第一巻の『ファウンデーション』へと直接つながる一冊。おもしろい反面、無理矢理、アシモフの別のシリーズと融合させようとしている感が……。この巻で始まったことではありませんが。
『明日泥棒』の姉妹編。諷刺SF集。
ゴエモンという名の宇宙人が、日本の不可思議を辛口に指摘する。1966年の雑誌掲載ものなので、内容は古いです。古いけど、うならせるところもあれば、古くて、ちょっとピントの外れているものも……。
批評ものは、その時期に読みたいものですね。
惑星探査ものSF。
無人探査機が、バーナード星系で珍しい二重惑星を発見した。たった80キロの間隔で互いに回転しあう、二重惑星・ロシュワールドだ。
人類は、恒星間宇宙船・プロメテウス号をバーナード星系に派遣する。6光年の距離にあるバーナード星系までは片道40年。乗員は寿命延命剤を服用するが、ふたたび地球に戻ることはない。
こうして訪れたロシュワールドで、調査隊は奇妙な異星人を発見するが……。
科学的な検証あり、政治的なドタバタあり、ユニークな異星人の描写あり。しかし満点とは言いがたい一冊。部分、部分はおもしろいけど、全体は……となると、ちと難しい。
『鳥姫伝』『霊玉伝』の続編。中国的ファンタジイ。
酒呑みの老賢者・李高(リーカオ)と、弟子の十牛(ジュウギュウ)。彼らの前に、人間の首を持った屍鬼が現れた。被害者は大官の馬(マー)。そして、馬の最期の姿を目撃していたのは、道教界の頂点にいる天師だった。
李高と十牛は天師の白紙委任状を受け、事件の捜査に乗り出す。事件の鍵と思われるのは、大官の持っていた不思議な鳥かご。鳥かごは全部で八つ。他の鳥かごを持つ大官を探し出した二人だったが、その大官もまた、妖怪に殺されてしまう。
捜査の過程で出会うのは、傀儡師の最高峰・燕熙(イエンシー)と、その娘で巫女の玉蘭(ユーラン)。
そして、次々に現れる妖怪たち。
八つの鳥かごの秘密とは?
途中で展開が読めてくるのは、困りもの。
でも、二人に訪れる結末に、涙。
冒険小説。
犯罪組織“クライン”のボスの愛人・はつみが、警察に保護を求めてきた。隠密に迎えに行くのは、刑事・明日香。しかし、“クライン”の手のものによって、二人は襲撃に遭ってしまう。はつみは脳を撃たれ、明日香は脳だけが生き残った。
明日香の上司・芦田は、はつみの身体に明日香の脳を移植することで、“クライン”を追い詰めつつ、明日香を救おうとする。
こうして誕生したアスカは“クライン”を壊滅させるため、自ら囮となることを決意した。しかし、護衛の警官たちは全滅し、芦田も襲撃されて重体。アスカの孤独な闘いが始まる。
組織と内通してるのはいったい誰なのか?
再読。
最初に読んだときとちがって、数々の疑問が浮上してきて、純粋には楽しめませんでした。
でも、名作。