SF。
ジンとフィリスのカップルは、宇宙に帆船を浮かべて楽しんでいた。その最中、偶然にも手記の入った瓶を発見する。手記は、ユリス・メルーという人間のものだった。
メルーはジャーナリスト。アンテル教授と物理学者ルヴァンとの三人で、人類初の恒星間飛行に旅立つ。出発から二年。ようやく到着したペテルギウス星系の第二惑星は、地球によく似た星だった。
惑星には文明があった。チンパンジーとオランウータンとゴリラによる文明だ。そして、人間もいた。しかし、彼らは言葉を持っていなかった。
そうこうするうち、メルーたち三人は猿たちの人間狩りに出くわしてしまう。ルヴァンが殺され、アンテル教授の行方が分からないまま、メルーは囚われの身になってしまった。メルーは、なんとかして猿たちと意思の疎通を図ろうとするが……。
映画化され、衝撃のラストがあまりにも有名な作品。
知性とは?
栄華を誇る猿たちも苦悩しているのでした。名作。
SF中編集。
「火星人の方法」
「若い種族」
「精神接触」
「まぬけの餌」
以上、4作品を収録。
表題作の「火星人の方法」は……
火星に植民した人々は、水の供給を地球に頼って生活していた。水は、生活に欠かせないだけでなく、宇宙飛行にも用いられる重要かつ必要不可欠な資源だ。その水をめぐって地球では、政治家ヒルダーによる節水運動が高まり、火星の人々は“浪費者”呼ばわりされる始末。ついに輸出の制限まで受けてしまう。
火星のサンコフ長官は友人のテッド・ロングに、ある提案をされた。それは、火星を救う起死回生の策なのだが、危険な賭でもあった。
表題作の小気味良いこと。地球に住みながらも、火星人たちを応援してしまいます。名作。
時間SF。
リチャードは音楽家。音楽フェスティバルの帰りに、古い親友にして、今やノーベル賞受賞者でもある物理学者ジョン・シンクレアと再会した。
リチャードは、ジョンに誘われるがままにニューヨークに出かける。ジョンが目下研究しているのは、太陽からの輻射に関すること。何者かが太陽から、あるいは太陽を経由して情報を送信しているようなのだ。しかも、大容量の。
二人は、ハワイにあるアンテナを使うため、ホノルルに飛んだ。そして間もなく、戦争のためにロサンジェルスが壊滅したとの一報が入る。しかし現実は違った。世界は、各地がさまざまな時代に入れ替わった怪現象に見舞われていたのだ。
“現代”であるイギリスを拠点に、人々は崩壊した時間によって分断された各地域の調査を開始するが……。
リチャードが作曲家であることがポイント。リチャードの選びとった結末も、作曲家であればこそ。
ちょっと首をかしげたくなるところもあります。
ファンタジー的一人称小説。
《パーンの竜騎士》シリーズ、番外編。再読。
ネリルカは、フォート城砦ノ太守の娘。美人ではないが有能だ。父・トロカンプ大守のお供でルアサの市に行くつもりが、城に残ることになってしまった。両親や妹たちをむなしく見送るネリルカ。
そのルアサで疫病が発生した。検疫体制が敷かれる中ネリルカは、母と妹たちの訃報を受ける。そして不意に帰ってきた父は、愛人とその親族を呼び寄せた。
ネリルカは身分を捨て、身につけた技能を生かした人生を自分自身で切り開こうと決意する。
先に出版された『竜の貴婦人』のサイド・ストーリィ。そっちの内容の記憶が定かでないので、最初は思い出しながら……でした。でも、まぁ、主役のネリルカも、大筋が分かって行動しているわけではないので、それはそれで楽しめます。たぶん。
ファースト・コンタクトSF。
土星で発見された異星人のメッセージ。それは招待状だった。太陽から850億キロのところに、彼らの星へとつれていってくれる恒星船が置いてあるというのだ。
スペースコロニーと地球は共同で調査に乗り出し、問題の宇宙船を発見する。そして、精鋭22名を選び出し、彼らの星へと送り出した。
読み進むうちに“B級”という思いがちらつく内容でした。
実際にファースト・コンタクトが果たされるのは下巻に入ってから。上巻では、恒星船の調査のこととか出航準備のドタバタとか、航行中のいざこざが丹念に書かれてます。下巻になって、ようやく異星人〈ヘキシーズ〉が出てきますが、上巻の丹念さと比べると、ちょっとあっさりしているような……。
異質なヘキシーズの文明が興味深いだけに、ちょっと残念でした。
連作短編集。
「オルシニア」という架空の国を舞台に紡がれる、短編集。
「オルシニア」という国名が前面にでてくるわけでも、年代記風に並べられているわけでもない、ちょっと不思議な統一感。これを純文学系というのか……?
そういうつもりで読まなかったため、ちょっと大変でした。
連作SF中編集。
「たったひとつの冴えたやりかた」
「グッドナイト、スイートハーツ」
「衝突」
以上、三作品を収録。
表題作の「たったひとつの冴えたやりかた」は……
金持ちのはねっかえり娘コーティー・キャスは、16歳の誕生日に小型スペース・クーペをプレゼントしてもらった。大喜びのコーティーは、さっそく両親に内緒で大冒険にでかけてしまう。目指すは、未開の宇宙。連邦基地900のさらにむこう側。
航宙中のコーティーは、偶然にもメッセージ・パイブと遭遇する。行方不明になった宇宙船からのものなのだが、パイプが運んだのはメッセージだけではなかった。人の目には見えないほどに小さい異星生命体・イーアもついてきていたのだ。
イーアの名はシロベーン。彼らは、他の生物の内部に入りこみ、共存しながら生きている。最初は面食らうコーティーだったが、やがて意気投合。しかしシロベーンは、コーティーにすべてを語ったわけではなかった……。
物語の途中で、コーティーを追っていた視点が、コーティーの発信したメッセージ・パイプを聴くという事後の視点に切り替わるのがミソ。そこが泣ける点なんですけど、人が語るのをじっと聴くというのは、後々まで感動し続けるにはちと物足りない……。
でも、名作。
パラレルワールドSF。
ある地球で進化した“見者”の種族は〈輝き〉を発見した。〈輝き〉は、無数の平行地球を結んでいる未知の技術だ。
“見者”の一人であるジュイは人々を説得し、それらの地球を“門”でつなげる旅に出る。さまざまな地球を訪れ、人類をよりよく導くために。そして〈輝き〉の向こうにいると思われる謎の種族〈創建者〉に会うために。
それから100万年後。
科学に守られたジュイは、何者かに誘拐されてしまった。その者の目的とは?
段落の始めに、私記や講演の抜粋が載っているのですが、それがあるために間延びした印象に……。物語の理解には役立つんですけどね。ちょっと賛同できない。でも、最後の最後に登場する男の〈創建者〉に対する考察には賛同できる。この考察を得るために、分厚い物語に挑んだ気がしました。
それにしても、ジュイたちの旅を続けさせるためにジュイの世界の地球が支払った代償には愕然とさせられます。
パラレルワールドもの。
科学ではなく魔法が発達した20世紀の地球が舞台。
サラセン教主軍との“第二次世界大戦”を繰り広げているアメリカは、戦略要点トロールバーグを奪還する計画をたてた。そのためには、サラセン教主軍がソロモンの封印を解いて味方にひきいれた魔人アフリートを、再び封じなければならない。
情報部所属の狼男マチュチェック大尉は、特種任務を命じられる。それは、悪魔に対するスペシャリストの魔女グレイロック大尉を目的地に送りとどけ、連れ帰ること。
マチュチェックは狼に変身し、陽動作戦に打って出るが……。
4つの中短編をつなぎ合わせた一冊。魔法と科学が融合した社会……とはいえ、人間のやることは変わらない。楽しめますけど、ちょっと分からないところも。
SF
再読。
少年・リースは〈ベルト〉に生まれ育った。環境はリースを労働者として扱ったが、5Gの労働現場にあっても、リースの知的好奇心が失われることはない。ある日、リースは決断する。はるか上空に浮かぶ〈ラフト〉との唯一の交通手段である輸送木に密航したのだ。
世界そのものである〈星雲〉が死にかけている理由は?
ただ知りたいがために。
〈ラフト〉は、リースの故郷である〈ベルト〉に比べると、遥かに恵まれた世界だった。しかし、その〈ラフト〉にあっても物資不足は深刻で、ついに暴動が起こってしまう。
重力定数が10億倍という宇宙に迷いこんでしまった人類の、末裔たちの物語です。次々と居場所を変える(変えさせられる)リースにくっついて、〈星雲〉内を冒険することができます。そのめまぐるしさが、おもしろい。