異世界SF。
《ノウンスペース》シリーズ。
ルイス・ウーは探検家。200歳の誕生日を迎えた日に、パペッティア人のネサスにスカウトされた。パペッティア人たちはある建造物の調査を望んでいて、ルイス・ウーがメンバーの一人に選ばれたのだ。
旅に同行するのは、ルイス・ウーとネサスの他、クジン人の〈獣への話し手〉と、地球人にしてラッキー遺伝子の持ち主であるティーラ・ブラウンの4人。調査するのは、G2型恒星のまわりをとりまく、リング状の超巨大構築物。
4人はパペッティア人の船で、リングワールドへと向かう。そこで待っているものとは?
おバカ娘・ティーラの存在がポイント。
途中で、リングワールドの秘密より、パペッティア人のやってきたこと(その一つが、ティーラの存在)が焦点になってくるような、ちょっと中途半端な作品。
政治もの。
人々の興味が宇宙から離れていった1997年。宇宙探検計画は、火星と金星を調査した時点で頓挫していた。
マックス・アンドルースは、宇宙飛行士であった思い出を支えに日々を送っていた。宇宙を熱望しているが、ロケットは地球上の移動用のみ。宇宙にでられる見込みはない。
そんな最中、上院議員候補エレン・ギャラハーが、宇宙開発の再開を支持することが報じられた。狂喜するマックス。なんとかしてエレンを当選させようと、画策する。
書かれたのは1953年。
マックスに訪れる結末にはびっくりです。
文明崩壊もの。
ティム・ハムナーは、大金持ちのアマチュア天文学者。自分の天文台で、ついに新しい彗星を発見した。
ハーヴェイ・ランドルは、ジャーナリスト。パーティでハムナーと知り合い、彗星のドキュメンタリーを企画する。ハムナーはカルヴァ・ソープ社の跡継ぎであるため、スポンサーにもなってくれる。一石二鳥だった。
チャールズ・シャープスは、ジェット推進研究所の惑星科学者。ハーヴェイのインタピューを受け、これは好機と、予算獲得を画策する。
アーサー・クレイ・ジェリソンは、シャープスの古い友人にして上院議員。ティム・ハムナーに献金してもらったこともある。
彗星が地球に衝突する確率は、徐々に増していった。それを信じる者、信じないが対策をする者、まったく信じない者……人々はさまざまに活動し、ついに運命の日を迎えることとなる。
前半は、人々を追っていくために場面転換が多く、名前や人となりを覚えるだけで一苦労。後半では、徐々にジェリソン氏の別荘に集まっていくので、まとまってきます。
まぁ、よくある話といえば、よくある話。
最後の最後、生き残った人々がある選択をします。希望の持てるラストでした。
ミステリ連作短編集。
《ニック・ヴェルヴェット》シリーズの第二短編集。
表題作の「怪盗ニックを盗め」は……
ニック・ヴェルヴェットは、価値のないものだけを盗む泥棒。ある夜、仕事の電話が入り出かけたが、拘束されてしまう。
ニックを誘拐した男、サムの目的は、腕利きのニックに仕事をさせないこと。サムの憎むマックス・ソラーが、ニックにあるものを盗ませようとしていたのだ。
ニックはサムに、ある提案をするが……。
あっさりしていて、読後も、ある意味爽快感があるんですけど、あるんですけど、どうもニックが腕利きに思えない。とっとと仕事を片付けるプロだからこそ、なんでしょうけど。
陰謀小説。
石黒悠太は、ソフト開発会社のシステム開発室長。ある日突然、大学の先輩である滝本に不可解な用件で呼び出された。
滝本は、コンピュータ・セキュリティのコンサルタント。ファイアウォール破りの天才でもあり、世間の評判は芳しくない。しかし、ハッカー行為は彼の正義感に根ざしたものであることを知っている悠太は、滝本を慕っていた。
悠太は、滝本に1枚のMOディスクを手渡される。
直後、滝本は悠太の目前で倒れ、帰らぬ人となってしまった。そのショックも覚めやらぬ間に、悠太は、理解のない上司に辞職へと追いこまれてしまう……。
悠太は、滝本に譲り受けた暗号ソフト〈クロノス〉を完成させ、新たに事業を立ち上げることにした。〈クロノス〉は、世界最強の暗号システム。滝本の変死に関わりがあるらしい。そして、ソフトを狙う国際的謀略組織〈ビッグブラザー〉の魔の手は悠太にも迫っていた……。
もつれた人間関係が徐々に明らかになり、そして、納得のラスト。日本の一民間人の選択として妥当ではないかと、好感持てました。
快作。
冒険SF。
デニス・ヌエルは、サハラ工科大学の若手科学者。一時期、阻害されていたが、ついに、ジーヴァトロニクス・プロジェクトを任されることになった。予期していたとおり、無条件ではなかったが。
ジーヴァトロンは、未知の世界をつなぎとめる脅威の装置。異世界とつなげることに成功はしたものの、帰還装置の故障で一方通行となってしまっていた。
新しい責任者デニスは、準備万端整えて異世界へと出発する。そうして目にした帰還装置は、何者かによって修理不能なほど破壊されていた。仲間に現状を伝えることができない以上、帰れる望みはない。
デニスは探検を開始する。そこは、中世を思わせる世界だったが、特殊な「プラクティス」が存在していた。プラクティス効果を用いると、あるものをよりよいものに変えることができるのだ。
たどりついた町でデニスは、領主であるクレマー男爵に捕われてしまう。魔術師と誤解される中、クレマー男爵に幽閉されているルトフ国の王女リノラを救出しようと奔走するが……。
明るい冒険活劇。
プラクティス効果がまさに効果的に働いて、うさんくさい世界が徐々に生彩を放っていきます。傑作とは言いにくいけれどもおもしろい。
ファースト・コンタクトものSF。
宇宙巡洋艦コンドル号が消息を絶った。それから6年。無敵号は83名の乗組員と共に、砂漠に覆われた惑星に降り立った。コンドル号を捜索するために。
ほどなく、コンドル号は発見される。攻撃を受けた形跡はないが、艦内は混乱し、機械や日常品や人間の骨が散乱していた。
都市を思わせる廃墟。
異常に明るい雨雲。
コンドル号のクルーが書き残した「大量のハエ」。
砂漠の惑星には、いったいどんな秘密があるのか?
調査という第三者的な視点から、淡々と進む物語です。とはいえ、途中から無敵号のクルーたちも当事者になっていくわけで、恐怖もじわじわと。
そして、たてられた“仮説”と、結末。
コンタクトものとはいえ、宇宙人がでてきてコンニチハ、などと想像してはいけない。
快作です。
タイム・ラインものSF。
ダンカン・マケルロイは、大学生で、親友の家に下宿している。ある夜、下宿では〈UFO追跡クラブ〉の会合が開かれていた。ビールを買いに、ちょっと変わった女の子ジェーンと共にでかけるダンカン。しかし、下宿を見張る謎の陰があり、ジェーンがそれを不思議な銃で撃ち殺してしまう。
なんとジェーンは、別の併存時空からやってきていた時空監視官だったのだ。
そして、ジェーンが撃ち殺したのは、ダルギル人。彼らは、ダンカンを狙ってきたらしい。
ダンカンは、時空監視官になる道を選ぶが……。
ちょっと低年齢層向け。
若いときに読まないと、楽しむのが難しい。
連作ユーモア・ミステリ短編集。
御茶ノ水署・生活安全課保安二係で、不仲ながらも仲良くやってきた斉木と梢田。このたび、新しく人員が配置されることになった。
本庁からやってきた、巡査部長の五本松小百合。
階級が上の後輩に頭が上がらない梢田。一方の斉木は、古書店アルバイトの女に一目惚れ。その女こそ、五本松小百合のもう一つの姿なのだが……。
斉木と梢田のコンビだけでも笑えるのに、個性的な五本松が加わって、おもしろさに広がりがでてきた一冊。出世の道を閉ざされている梢田には申し訳ないですが、このまま続いてほしい関係です
連作ミステリ短編集。
「情状鑑定人」
「非常線」
「不安なナンバー」
「都会の野獣」
「死の証人」
「逃げる男」
「暗い川」
以上、7作品を収録。
表題作の「情状鑑定人」は……
立花文代は家庭裁判所の調査官。精神医学教室の教授・祝田卓と共に、刑事被告人の情状鑑定を行うこととなった。情状鑑定は、責任能力を問う精神鑑定とはちがい、刑の量定に資するための鑑定だ。
二人が担当するのは、雇用主の娘を誘拐し身代金を要求した井原信三の審理。井原には、殺人犯として実刑を受けた過去があった。
暗いんです、とても。
少しずつ味わいたい一冊。