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2005年の記録
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このページの本たち
タイムライン』マイクル・クライトン
ヴァート』ジェフ・ヌーン
ホミニッド −原人−』ロバート・J・ソウヤー
星屑のかなたへ』ジェイムズ・ブリッシュ
木星強奪』ドナルド・モフィット
 
宇宙のランデヴー』アーサー・C・クラーク
ターミナル・エクスペリメント』ロバート・J・ソウヤー
夏の夜の夢・あらし』ウィリアム・シェイクスピア
惑星キャリバン探査隊』スティーヴン・ポプケス
宇宙のランデヴー3』アーサー・C・クラーク&ジェントリー・リー

 
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2005年02月22日
マイクル・クライトン(酒井昭伸/訳)
『タイムライン』上下巻・ハヤカワ文庫NV

 アメリカ・アリゾナ州北部。砂漠で、倒れた一人の老人が発見された。彼の名は、ジョーゼフ・A・トラウブ。ITC研究所に勤める物理学者だった。病院に運ばれたトラウブは分裂症的な発言を繰り返し、やがて原因不明のまま死んでしまう。
 死因はいったい?
 ITC社長のロバート・ドニガーは、トラウブ死去の報を受け、謎めいた事件をありふれたものにするべく、工作を命じる。実は、トラウブの死因は極秘開発中の新技術によるもの。画期的なものだけに、まだ発表はできない。しかも、現在、資金不足に陥っているのだ。ドニガーは手っ取り早く、新しい取締役を迎えて資金を得ようとする。そのためには、多少なりとも、プロジェクトの成果を見せる必要があった。
 一方、フランス・ドルドーニュでは、ITCの全面的な支援のもと、14世紀の遺跡の発掘活動がつづけられていた。カステルガール城、水車場、サントメール修道院、そして、ラロック城塞。指揮をとるのは、エドワード・ジョンストン教授。助教授のアンドレ・マレクらを率い、慎重な調査を行っているところだ。
 そこへ視察に訪れたのは、ITCの上席副社長ダイアン・クレイマー。ジョンストン教授はクレイマーに、一部だけでも復元するように頼まれてしまう。断るジョンストンだったが、くいさがるクレイマーの言葉の端々に、ひっかかりを感じ取っていた。
 ITCは、遺跡の独自分析を行っているのか?
 ジョンストンは、ドニガーと対面することを決意し、クレイマーに働きかけて実現させる。残された者たちは、ジョンストン教授が心配でたまらない。
 数日後、サントメール修道院の発掘現場では、地下から新たな部屋が発見された。そこで見つかったのは、現代製の眼鏡と助けを求めるメモ。見覚えのある品に、動揺するマレク。現代の物が遺跡から発見されれば、発掘技術を問われかねない。しかし綿密な分析の結果、どちらも、600年ほど前からその場にあったものと判定された。
 驚愕する一同。
 まもなくドニガーから連絡が入り、マレクは、ジョンストン教授救出への協力を求められる。マレクは、混乱しながらもドニガーの言う通り、ドルドーニュ地方をよく知る3人を選びだす。
 飛行機で迎えにきたのは、上席副社長のジョン・ゴートンだった。教授の居場所は、14世紀フランス。ITCが開発中の新技術は、量子力学に基づく多宇宙移動技術だったのだ。
 14世紀に取り残されたジョンストン教授を助けるために、マレクらは旅たつが……。

 発掘地点は、対立するフランス・イギリス両国の最前線。現代に帰るための時間には限りがあり、戦端も開かれようとしている。しかも、元の世界でも深刻な事故が発生していて……という手に汗握る展開。
 残念だったのは、せっかく量子力学使ってるのに、その特性が感じられたのは生還の確率が云々されたところだけ。まぁ、行く前からたどりつけない可能性を云々してもお話にならないし、複雑すぎてつまらなくなるだけなんでしょうけれど。
 全体的に、エンターテイメントとして楽しめました。


 
 
 
 
2005年02月27日
ジェフ・ヌーン(田中一江/訳)
『ヴァート』ハヤカワ文庫SF

 スタッシュ・ライダーズの一員スクリブルは、リーダー・ビートルの運転するバンの中にいた。バンには、ビートルの彼女にしてシャドウガールのブリジット、ヴァート生物〈宇宙からの物体〉も乗りこんでいる。
 スタッシュ・ライダーズの面々は待っていた。終夜営業のドラッグ・ショップ《ヴァートUウォント》の店員セブが、海賊版ヴァートの横流しをしているらしいのだ。買い出し実行役は、セブにコネがあるという新入りのマンディ。
 ヴァートとは、羽の形をしたドラッグ。“飲む”ことで、非現実世界にトリップできる。青色の合法羽もあるが、スクリブルが心底熱望しているのは、死の色とされる黄羽の〈イングリッシュ・ヴードゥー〉だ。
 スクリブルの期待もむなしく、マンディが持ち帰ったのは、安物の青羽が五枚と、強烈な黒羽〈スカル・シット〉だった。落胆するスクリブル。そんな彼にマンディは、イカロス・ウィングが〈イングリッシュ・ヴードゥー〉を入手したらしい、と伝える。
 ビートルの旧友トリスタンなら、イカロスを知っているかもしれない……。
 スタッシュ・ライダーズのメンバーは、トリスタンに会うためにボトルタウンへと向かう。トリスタンは、ヴァートはやらない。彼は、ヴァート世界で誰かとはぐれたことがあるらしいのだ。スクリブルと同じように……。
 かつてスクリプルは、〈イングリッシュ・ヴードゥー〉で最愛の妹デスデモーナを失った。共にその世界を訪れ、しかし、帰ってこれたのはスクリブルだけ。デスデモーナの代わりに得たのが、ヴァート生物〈宇宙からの物体〉だった。
 現実世界とヴァート世界のバランスを保つため、ヴァート世界になにかを置いてくると、同等の価値のものが現実世界にやってくる。変換メカニズムの法則は明らかにされていない。デスデモーナを取り戻すため、スクリブルはこの高価な生物を手元に置き、〈イングリッシュ・ヴードゥー〉を捜しまわってきたのだった。
 けっきょく、イカロスに関する情報は得られず、その場を後にするスクリブル。停めていたバンへと向かうが、そのときにはバンは、炎に包まれていた。バンには、ブリジットと〈宇宙からの物体〉が残っていたのだが……。

 アーサー・C・クラーク賞(イギリス)受賞作。
 ヴァートは、ドラッグというよりサイバーパンクを思い起こさせる、トリップ世界。シャドウガールのブリジットは、どことなくディック的。
 スクリブルの一人称で進むため、全貌を掴むまでに時間がかかりました。助けになったのが、章間のコラム“ゲーム・キャット”。ヴァートの達人によるものなのですが、物語世界の理解を深めるためだけのものではないのは、読み進んでいくうちに分かります。
 よく錬られた一品。


 
 
 
 
2005年03月01日
ロバート・J・ソウヤー(内田昌之/訳)
『ホミニッド −原人−』ハヤカワ文庫SF

 ネアンデルタール・パララックス三部作の第一巻。
 カナダ、サドベリー・ニュートリノ観測所は、地下2キロの地底にあった。元はといえば、鉱山だ。2キロメートル分の岩盤に守られた環境は、ニュートリノの観測を行うのにうってつけ。アクリル製の球体に重水をつめ、まわりを純度の高い水で満たし、重水の中性子に衝突するニュートリノを観測している。
 博士研究員のルイーズ・ブノワは、制御室にいた。警報は一日10回程度鳴るものなのだが、その日はそれが鳴り続け、検出器のパネルはすべて点灯する始末。はじめは超新星の誕生かと思ったが、きしみ音まで聞こえてくる有様。この異変にルイーズは照明をつけ、重水タンクの中に男の姿を認めた。
 ルイーズは同僚と共に救出にあたる。密閉されたドアは、40本のボルトで止められた状態。彼は、どうやって入り込んだのか?
 男は病院に運ばれ、意外な事実が知れた。彼、ポンター・ボディットは、ネアンデルタール人だったのだ。
 一方、ポンターが所属していた世界でのポンターの立場は、量子物理学者。同僚にして男配偶者のアディカー・ハルドと共に、かつて鉱山だった地下で量子コンピュータの開発に当たっていた。結果を示せるところまであと一歩。しかし、実験中、ポンターは消え失せてしまう。代わりに残されたのは、大量の水だった。
 アディカーはポンターを探すが、発見されることはなかった。アディカーは、ポンターがこの世界から枝分かれした別の世界に行ってしまったのではないかと、仮説をたてる。そこは、水の中だったのではないだろうか?
 アディカーはふたたび実験しようとするが、ポンターの次女の保護者ダクラー・ボルベイに、殺人罪で訴えられてしまった。アディカーは、一人立ちしているポンターの長女ジャスメルに弁護を頼み、無実を訴えるが……。

 ヒューゴー賞受賞作。
 華々しい事件が起こるわけでもなく、最後まで淡々と進みます。クロマニヨン側のこの世界の出来事より、ネアンデルタール側の世界の出来事の方が主軸。徐々に社会の仕組みが明らかにされ、過去をあばかれ、じりじりと追いつめられていくアディカー。異世界に行ってしまったと思われるポンターを助け出したいが、訴えられているため実験装置に近づくことすらできない。
 三部作の第一巻だけあって、まだ風呂敷は半開き状態。それでも、この一冊だけで十分楽しめます。
 快作。


 
 
 
 
2005年03月02日
ジェイムズ・ブリッシュ(岡部宏之/訳)
『星屑のかなたへ』ハヤカワ文庫SF

 《宇宙都市》シリーズ(全四巻/『宇宙零年』『星屑のかなたへ』『地球人よ、故郷に還れ』『時の凱歌』)の第二巻。
 クリスピン・ディフォードは16歳。貧しい生活の中、唯一見たことのある町が、田舎町スクラントン。そのスクラントン市が今、放浪都市として宇宙に飛び立とうとしていた。星間航法スピンディジーの開発により、地域丸ごとの飛行が可能となったのだ。
 クリスは見物だけのつもりだったが、強制収容隊に見つかってしまう。もはや帰ることはできず、飛び立つスクラントン市に乗せられ宇宙へと旅立つことに……。もはや故郷に戻れる見込みはない。やがてクリスは、別の渡り鳥都市ニューヨークへと、トレードに出されてしまう。
 ニューヨークへと移ったクリスは、アンダースン保安部長の元に下宿することとなった。アマルフィ市長直属の重要人物だ。クリスは、市民の資格を得るために勉学に励むが……。

 若い人向けに書かれた一冊。やや物足りなさも漂うものの、《宇宙都市》シリーズで描かれる渡り鳥都市のありようを掴むのにはこれぐらいが適当か。
 すでに確立している人物の少年時代編、といった感じがするのは、おそらく結末から。実際にも最後に書かれたそうですが、クリスが他の作品で大活躍するようなことはないらしく、ちょっと消化不良に陥りそうな感じです。


 
 
 
 
2005年03月14日
ドナルド・モフィット(大西 憲/訳)
『木星強奪』上下巻・ハヤカワ文庫SF

 トッド・ジェイムスンは、今は準備段階にある木星探査船の副船長。アメリカ人だ。この時期、アメリカは内戦を克服したばかり。自国民を見張る信頼性委員会が活動し、ジェイムスンの元にも信頼性テストをするために役人がやってくる。
 というのも、木星探査計画がアメリカと中国の共同プロジェクトだから。両国は冷戦のまっただ中。お互いを監視しつつ、表面上は良好な関係を装うのが礼儀とされている。隊員たちは相手国の隊員と共に作業をするため、相手に通じているのではないかと疑われているのだ。
 さらに、交代要員エメット・クラインが派遣されてきた。その無能ぶりにジェイムスンは怒り心頭。上層部に提訴しようとするが……。
 一方、月の裏側にある天文観測所では、白鳥座の方角に、新しいX線源を見つけていた。所長のエルナンド・ルイスは、恐ろしい事実に直面する。謎の天体は、短時間で変化を観測できるほど、高速で進んでいたのだ。6ヶ月後には、太陽系に破滅をもたらすだろう……。
 だが、最悪の予測は回避される。どうやったのか、それは急速に速度を落とし、木星軌道に乗ったのだ。天体の正体はいったい?
 かくして、木星探査船は目標を変えて旅立つことになるが……。

 いわゆる、ファースト・コンタクトもの。異星人は音楽で会話をしていて、絶対音感を持っているジェイムスンは、シンセサイザーで会話をしようと悪戦苦闘。
 異星人がでてくるまでは、ちと退屈な一冊でした。こまかいところには目をつぶって、背景や設定を楽しむ作品……かもしれません。


 
 
 
 
2005年03月23日
アーサー・C・クラーク(南山 宏/訳)
『宇宙のランデヴー』ハヤカワ文庫SF

 2077年、地球は隕石の来訪を受けた。失われた人命は60万。その教訓から人類は、スペースガードを設立する。そして50年……。
 スペースガードのコンピュータは、太陽に近づこうとしている新たな小惑星を発見した。それは〈ラーマ〉と名付けられ、やがて、小惑星ではなかったことが判明する。ラーマは直径20kmの円筒形で、その質量は少なくとも10兆トン。超巨大な宇宙船だったのだ。
 ウィリアム・チェン・ノートン中佐は、太陽系調査局調査船エンデヴァー号の艦長。エンデヴァー号は、ラーマとの接触が可能な地点にいる唯一の宇宙船だった。ノートンは、ラーマとのランデヴーを命令され、ただちに追跡を開始する。金星軌道の内側でなんとか追いつき、内部に侵入を果たすが、ラーマは沈黙を守ったまま。ラーマ人らしき姿は影もない。
 ノートンたちに残された時間は、三週間少し。ラーマが近日点に達するまで40日。太陽から2000万km以内となるコースが予想されていた。あまりに太陽に近く危険なため、それより早くラーマを去らねばならないのだ。
 一方、月の〈惑星連合〉本部では、〈ラーマ委員会〉が発足していた。各分野の代表者たちは、ラーマとのランデヴーを果たしたノートンに助言すべく、各界の代表者たちが会議を行うが……。

 ネビュラ賞、ヒューゴー賞、ローカス賞、ジョン・W・キャンベル記念賞、英国SF作家協会賞、ジュピター賞、星雲賞受賞作。
 ノートンは2人の女性と結婚していて、それらに関連する内面的な描写もありますが、あくまで余興。〈ラーマ〉の不思議や科学的な考察が前面に押し出された内容となってます。そして、探検の合間にはさまれる〈ラーマ委員会〉のようす。
 最初に読んだときにはこの本のおもしろさがよく分からなかったのですが、再読して、考えを改めました。やはり賞を総なめにするような物語はちがいます。


 
 
 
 
2005年03月28日
ロバート・J・ソウヤー(内田昌之/訳)
『ターミナル・エクスペリメント』ハヤカワ文庫SF

 ピーター・ホブスンは、生物医学工学部の大学院生。実習課目の用件を満たすため、臓器摘出手術に立ち会う。処置の最中、死んでいるはずのドナーに反応が!
 もしや、死んでいなかったのでは?
 それから16年。ピーターは、生物医学用機器を扱う会社を興していた。脳死判定に関わる悪夢は見るが、おおむね幸せな人生。しかし、愛する妻キャシーに浮気を告白され、世界は一変する。
 親友サカール・ムハマドにも打ち明けられず、平静を装うピーター。心の葛藤をつづけながらも、超高感度EEGの試作機を開発。このスーパー脳波計を使い、人が死ぬ瞬間の計測に成功する。脳波計は、魂としか呼べない電気フィールドがまっすぐにこめかみをめざし、外へと向かう瞬間をとらえていた。
 さらにピーターは、“死後の生”と“永遠の生”をさぐることを思いつく。サカールがニューラルネットワークの研究をしており、その研究は人間の精神を複製できる段階にまで達していたのだ。脳全体のデータをとり、特定の要素を削除することで、通常と異なる“生”のシミュレーションは可能となる。被験者は、ピーター自身。
 二人は早速実験にとりかかるが、まもなく殺人事件が報じられた。殺されたのは、キャシーの浮気相手ハンス・ラルセン。どうやら、ピーターの複製人格のうちの一人が犯人らしいのだが……。

 ネビュラ賞受賞作。
 ソウヤーは、風呂敷をひろげて見事にたたんでくれる作家ですが、これは、ちょっと、ひろげっぱなしのような読後感。事件には結末がおとずれ、ピーターの問題も解決するものの、通常とは異なる“生”のありようや、チラリと話題になった“魂”のその後については示されず。
 おもしろいし楽しめるんですけど、ソウヤーなら、あと一歩あっても……と思うのは強欲すぎるか。エンターテイメントとしては上質。


 
 
 
 
2005年04月03日
ウィリアム・シェイクスピア(福田恆存/訳)
『夏の夜の夢・あらし』新潮文庫

「夏の夜の夢」
 ハーミアは青年ライサンダーと愛し合っていたが、父親にはデメトリアスとの結婚を迫られていた。切羽詰まった二人は、駆け落ちをすることに……。待ち合わせは夜の森。
 ハーミアは友人ヘレナにだけは打ち明けるが、デメトリアスを愛しているヘレナは、ハーミアしか見えていないデメトリアスにふりむいてもらうため、駆け落ちの件をばらしてしまう。
 一方森では、妖精王オーベロンと女王タイターニアが喧嘩の真っ最中。原因はタイターニアのかわいいお小姓。オーベロンはお小姓を譲ってもらいたくて仕方がない。
 オーベロンは策略を巡らし、妖精パックに命じてタイターニアに惚れ薬を使用する。と同時に、ハーミアを追って森にやってきたデメトリアスとヘレナを両想いにしてあげようと考えた。しかし、早合点なパックは、ライサンダーに薬を使ってしまう。
 ヘレナを見て、たちまち恋に落ちてしまうライサンダー。ヘレナはデメトリアスにも告白されるが……。

「あらし」
 かつてミラノ大公だったプロスペローは、実弟アントーニオの策略にかかり、孤島へと流されていた。一緒に暮らすのは、島での生活しか知らない娘のミランダ。家来は、妖精エアリエルと、怪物キャリバン。
 島流しに遭ってから12年。プロスペローは、絶好の機会を得た。ミラノ大公となったアントーニオとナポリ王アロンゾーの乗った船が近くの海を通りかかったのだ。プロスペローは習得した魔術を駆使し、嵐を巻き起こす。
 ナポリ王子ファーディナンドは、嵐のために王たちとはぐれ、ただ一人島へと流れ着いた。島に着くとエアリエルの導きがあり、ミランダと遭遇。二人はたちまち恋に落ちてしまう。
 一方、アロンゾーと共に島に流れ着いたアントーニオは、アロンゾーの弟セバスティアンをそそのかし、アロンゾー暗殺を企てる。しかし、エアリエルによって阻止され、改心するように諭されるのだった。

 イギリスの劇作家による戯曲。戯曲は読みつけていないのですが、どちらも短めなので助かりました。とはいえ、やはり戯曲は劇場で出会いたいもの。セリフには心の内面が映っているものの、役者の表情を見たいような……。


 
 
 
 
2005年04月05日
スティーヴン・ポプケス(高林慧子/訳)
『惑星キャリバン探査隊』ハヤカワ文庫SF

 地図製作の仕事を請け負った宇宙船〈シェナンドー〉は、惑星キャリバンへと向かった。
 乗組員は、船長のメガン・スジー。パイロットのルース・テデスチ。ナビゲーターのサトー・スパーリング。エンジニアのバーティニ・ランフト。生物学者兼医者で〈センシティヴ〉のアントニア・ブローベック。センシティヴは直感能力者。テレパシー能力とちがい、知能に感応する能力がある。
 予備調査チームの報告では、キャリバンには知能のある生物は皆無。しかし〈シェナンドー〉が星系にたどりつくと、キャリバンは無線通信で満たされていた。これはいったいどうしたことか?
 一行はパイロットのルースを残し、着陸船でキャリバンへと降り立った。アントニアは早速、近隣に知能を持つ存在がないことを認定する作業に入る。アントニアは、なにかを感じていた。そして、最初の接触。しかしその直後、事故があり、原住民を殺してしまった。
 知能に関する条文に従えば、ただちに地球の出入国管理委員会に出頭しなければならない。そして〈知能の法廷〉で裁かれるのだ。絞首刑は必至。
 メガンは、惑星キャリバンにとどまることを選ぶ。キャリバン人と外交的関係を樹立し、殺人ではなく事故だったと納得してもらおうとするのだが……。
 一方、キャリバン人女性タレイアは、恋人トラヴァースと共に〈シェナンドー〉の着陸船が降下してくるのを感知していた。それは色あざやかな閃光。あまりに強烈な姿だった。
 タレイアは、事故でトラヴァースを失ってしまう。彼は、着陸船を悪魔の降臨と勘違いしていたが、タレイアは疑問をいだいていた。しかし、彼の死が、その軽率な行為によることを理解してはいるものの、心にはわだかまりが……。

 ジャンル分けすれば、異種間交流もの。でも、合間にはさまる乗組員たちの過去によって、それぞれの心の旅が本題になってます。メガンが封印した記憶とは? 
 惑星の名となったキャリバンは、シェイクスピアの『あらし』の登場人物。作中サトーが読んでる『テンペスト』がそれです。無人島にいた魔女の息子で、追放されたミラノ大公がやってくるまで、言葉を知らなかった怪物。
 登場人物たちの過去が少しずつ盛り込まれているので、やや物足りなさはありますが、最後まで貫く雰囲気が良質。


 
 
 
 
2005年04月06日
アーサー・C・クラーク&ジェントリー・リー
(山高 昭/訳)
『宇宙のランデヴー3』上下巻・ハヤカワ文庫SF

宇宙のランデヴー』『宇宙のランデヴー2』の続編。
 前作で、太陽系を通り過ぎようとしている異星人の船に調査のために渡り、そして取り残されてしまった、ニコル、リチャード、マイケルの3人。ニコルとリチャードは結婚し、娘シモーヌが生まれた。やがて家族が増え、マイケルの子供も生まれるが、宇宙船の行き先はようとして不明。目的地はどこなのか?
 出発から13年。
 ニコルたちの乗った宇宙船は、巨大構造物〈中核点〉に到着した。そこで家族は鳥の頭を持ったイーグルと出会い、アパートメントでの豊かな暮らしが始まる。と同時に、人間に関するさまざまなデータをとられることに……。
 やがてニコルは、ふたたび宇宙船に乗って地球への旅を要請される。巨大宇宙船内部に2000人の居住スペースをもうけ、地球人をつれてきて欲しいと言うのだ。ニコルたちはそこを“ニュー・エデン”と名付けるが……。

 前作と次作の橋渡し的作品。クラークの作風を期待していると、ちょっと肩すかし。巨大構造物や神のごとき宇宙人の存在はクラーク風かもしれませんが。
 つづきがあることが前提となっている作品なので、結末は中途半端なまま。

 
 

 
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