《パーンの竜騎士》シリーズ外伝。
銀河の辺境にある射手座区ルクバトの第三惑星には〈パーン〉という名前がついていた。この度、パーンに入植するのは、FSP(生命既存惑星連邦)のハイテク社会を捨てた人々。
彼らは大きくふたつのグループに分けられた。甚大なクレジットをかき集めた建国入植者と、雇われた専門家である契約入植者。パーンに対する第一選択権は建国組の方。そのために摩擦が生じてしまう。パーンでの成功は、真に個人の実力次第なのだが。
着陸地点には、南の大陸が選ばれた。
三隻の宇宙船は静止軌道上にとどまり、ポール・ベンデン提督に率いられた人々は荷下ろしを始める。新たな世界への期待が膨らんでいた。
ソルカ・ハランハンは獣医の娘。ショーン・コンネルは遊牧民の息子。ふたりは火蜥蜴の巣を見つけ、孵化に立ち会った。ふたりが手に入れた土着生物に、人々は興味津々。研究対象となる。
入植から8年。
パーンは、予期せぬ災害に見舞われてしまった。
不自然な雲が発生し、破壊的な物質が降り注いだのだ。この予期せぬ襲撃者は触れるものを焼き尽くし、甚大な被害をもたらした。パーン人になろうとしていた人々は、FSPに助けを求めるのではなく、闘うことを決意するが……。
シリーズの最初の時代を扱った作品。後に地名となる人々が活躍します。指導者ポール・ベンデン、『竜の挑戦』で帰還を果たしたサラ・テルガー、野望を内に秘めるエイヴリル・ビトラ……。
後年発見された、ケンジョウ・フサユキの隠れ家、フォート城砦となる発見……。
そして、火蜥蜴の遺伝子を操作することで産まれた竜。最初の竜騎士となった若者たちは、常に手探り。
空を飛ばす方法は?
火蜥蜴のように瞬間移動させるには?
火をふかせるには?
試行錯誤の最中にも糸胞がふりそそぎ、人々に試練を与えていきます。それだからこそ、正伝の時代につながっていくラスト・シーンには、じーんときちゃうんですよね。
《パーンの竜騎士》シリーズ外伝。
シリーズ概要・・・射手座区ルクバトの第三惑星を、人々は〈パーン〉と名付けた。入植者たちはFSP(生命既存惑星連邦)のハイテク社会を捨て、理想郷の建国に邁進する。ところが、思いもよらない災害に見舞われてしまった。
災害をもたらしたのは、ルクバトを奇妙な楕円軌道で巡る惑星〈赤ノ星〉。赤ノ星が近づくとき、パーンに銀色の糸胞が降りそそぐ。この予期せぬ襲撃者は触れるものを焼き尽くし、甚大な被害をもたらした。
糸胞は50巡年にわたって断続的に降りそそぎ、赤ノ星と共に去っていく。休息は200巡年ほど。すでに工学技術は捨てている。それに頼らない永続的な対策を立てる必要があった。
入植者たちは竜を作り出した。パーンの土着生物・火蜥蜴の遺伝子を操作したのだ。こうして生み出された竜は、瞬間移動と火焔を噴射する能力を発揮し、竜騎士と心を通わせあった。
竜騎士となれるのは、竜が誕生の際に選んだ者たち。彼らは大巌洞に住み、特権的な地位を与えられ、糸胞と戦う術を身につけ、伝えていった。
それから長い年月が流れて……。
パーンに入植が果たされてから1400巡年。糸降りもあと8年で終わるころ。
フォート大巌洞の洞母モレタは、ルアサの市で、ルアサ城砦ノ大守アレッサンと出会った。ふたりは、早駆け獣のレースを観戦し意気投合。大いに楽しむが、市では不可思議な事件も起こっていた。
出走していた早駆け獣が、突如として転倒したのだ。モレタはかけつけるが、もはや手遅れ。病気にかかっていた兆候はなく、人々は首をかしげる。
そのころイスタ城砦でも市が開かれていた。そこで見せ物にされていたのは、生け捕りにされた南ノ大陸の動物。猫のような珍しい動物は、おそろしい伝染病をまき散らしていた。モレタが目撃した早駆け獣も、この病気にやられていたのだ。
治療師ノ長キャピアムは検疫命令を出すが、自身も感染。隔離され、自らを治療することになってしまう。
一方フォート大巌洞では、イスタの市に出かけていた大巌洞ノ統領シ−ガルと、モレタも病に倒れてしまった。
病は、パーン中を席巻し……。
正伝に登場する「モレタの飛翔のバラード」を書いた作品。
この時代の人々は、植民当時の記憶を、伝説としてとはいえ受け継いでいます。
2007年06月20日
アン・マキャフリイ(幹 遙子/訳)
『ネリルカ物語』ハヤカワ文庫SF
《パーンの竜騎士》リーズ外伝。
シリーズ概要・・・射手座区ルクバトの第三惑星を、人々は〈パーン〉と名付けた。入植者たちはFSP(生命既存惑星連邦)のハイテク社会を捨て、理想郷の建国に邁進する。ところが、思いもよらない災害に見舞われてしまった。
災害をもたらしたのは、ルクバトを奇妙な楕円軌道で巡る惑星〈赤ノ星〉。赤ノ星が近づくとき、パーンに銀色の糸胞が降りそそぐ。この予期せぬ襲撃者は触れるものを焼き尽くし、甚大な被害をもたらした。
糸胞は50巡年にわたって断続的に降りそそぎ、赤ノ星と共に去っていく。休息は200巡年ほど。すでに工学技術は捨てている。それに頼らない永続的な対策を立てる必要があった。
入植者たちは竜を作り出した。パーンの土着生物・火蜥蜴の遺伝子を操作したのだ。こうして生み出された竜は、瞬間移動と火焔を噴射する能力を発揮し、竜騎士と心を通わせあった。
竜騎士となれるのは、竜が誕生の際に選んだ者たち。彼らは大巌洞に住み、特権的な地位を与えられ、糸胞と戦う術を身につけ、伝えていった。
それから長い年月が流れて……。
パーンに入植が果たされてから1400巡年。糸降りもあと8年で終わるころ。
ネリルカは、フォート城砦ノ太守トロカンプの娘。両親や妹たちがルアサ城砦で開かれる市にでかけてしまい、自身は留守番。トロカンプは、独身のルアサ城砦ノ太守アレッサンと娘のいずれかを結婚させる腹づもり。ネリルカは、容姿ではじかれてしまったのだ。
落胆するネリルカ。そこへ、伝染病発生の知らせが舞いこんだ。検疫がひかれ、ルアサ城砦は閉ざされてしまう。誰も出入りはできない。ところが、トロカンプは家族を置いて帰城する。自室にこもり、指示を出し始めた。
まもなく、母や妹たちの死の報がもたらされる。ところがトロカンプは、喪に服するどころか、愛人アネラを呼び寄せた。ネリルカは反発し、身分を捨てる覚悟を決めるが……。
『竜の貴婦人』と同じ時期を扱ったサイドストーリィ。
『竜の貴婦人』と話を合わせるためか、ぎこちなくなってしまった部分も……。ネリルカは、アレッサンの亡き愛妻の乳姉妹。ついにたどりついたルアサ城砦の荒廃に愕然としつつ、身分を隠してアレッサンを助けます。
《パーンの竜騎士》シリーズ外伝。
シリーズ概要・・・射手座区ルクバトの第三惑星を、人々は〈パーン〉と名付けた。入植者たちはFSP(生命既存惑星連邦)のハイテク社会を捨て、理想郷の建国に邁進する。ところが、思いもよらない災害に見舞われてしまった。
災害をもたらしたのは、ルクバトを奇妙な楕円軌道で巡る惑星〈赤ノ星〉。赤ノ星が近づくとき、パーンに銀色の糸胞が降りそそぐ。この予期せぬ襲撃者は触れるものを焼き尽くし、甚大な被害をもたらした。
糸胞は50巡年にわたって断続的に降りそそぎ、赤ノ星と共に去っていく。休息は200巡年ほど。すでに工学技術は捨てている。それに頼らない永続的な対策を立てる必要があった。
入植者たちは竜を作り出した。パーンの土着生物・火蜥蜴の遺伝子を操作したのだ。こうして生み出された竜は、瞬間移動と火焔を噴射する能力を発揮し、竜騎士と心を通わせあった。
竜騎士となれるのは、竜が誕生の際に選んだ者たち。彼らは大巌洞に住み、特権的な地位を与えられ、糸胞と戦う術を身につけ、伝えていった。
それから長い年月が流れて……。
ロビントンは、竪琴師ペティロンと歌唱師メレランの一人息子。
メレランは、3巡歳になったロビントンが笛を奏でるのを聴き、その才能に気がつく。絶対音感を持つ息子を誇りに思うものの、心配なこともあった。ロビントンにまるで無関心なペティロンのことだ。
ペティロンはすばらしい作曲家なのだが、年少の徒弟にはつとに厳しい。完璧主義者で、もしロビントンの才能を知ったら、いきなり厳しい修練に狩りたてるだろう。あまりに強い衝撃から、逆に音楽嫌いにさせてしまうかもしれない……。
メレランは、ペティロンには隠したまま、他の竪琴師たちの協力を得て、ロビントンの才能をのばしていく。ロビントンは、工舎をあげて育てられることになったのだ。
やがて、ペティロンもロビントンの才能に気がつく日がやってくるが……。
正伝で大活躍、竪琴師ノ長ロビントンの半生記。時代的には、シリーズ第一作『竜の戦士』へとつながる作品。
父と子の葛藤が、繰り広げられます。
父親に怯え気味なロビントン。
なかなか素直になれないペティロン。
両者にはさまれて奮闘するメレラン。
ペティロンは『竜の歌』にて、メノリの師匠として登場したことがあります。いろいろと反省したんでしょうね、ペティロンも。
『光の塔』続編
中山弓ノ助は、かつてあった光侵寇での英雄の遺児。相応の振る舞いを求める周囲に反発し、ゴロつきとなっていた。あるとき、その縁で知り合った刑事長に、国際警察へとスカウトされる。
国際警察が求めているのは、家柄ではない。人間の善と他者の幸福のために、たったひとりででも戦う真の勇気のある男。今はヤクザのようになってはいるものの、中山は基準にぴったりだったのだ。そして、国際警察が緊急に人員を必要としたのには理由があった。
地球政府は、脳髄共和国から通告を受けていた。すべての武力を破棄しなければ、地球を破壊する、と。期限は1年。
脳髄共和国のはじまりは、博士たちによるアヴィラク思想。当時の活動は、軍事科学への協力を拒否したり、宣伝冊子を出したり、講演会を開く程度。おだやかな文化団体による、開放的な抵抗運動だった。発展した組織は、ソプコ博士が暗殺されることで事実上崩壊。それがにわかに復活し、新たに「脳髄共和国」と名乗りをあげると地球政府を弾劾しはじめたのだ。
彼らはなぜ、過激な秘密結社のようになったのか?
中山は、通常3年行う訓練を3ヶ月でしごかれ、脳髄共和国があるらしい月へと送りこまれる。派遣員は、中山で18人目。いずれも選りすぐりの国際刑事たちだったが、12人が殉職し、5人は消息不明というありさま。中山自身も襲われてしまう。
難を逃れた中山だったものの、月には、根強い地球政府への反発があった。地球は月に、身勝手な政策を押しつけるだけでなく、核廃棄物のゴミ捨て場としても利用しているのだ。そのために月人たちは、潜在的に共和国の味方。地元警察も、表面上は否定しても例外ではない。
中山は、数々の危難を乗り越え、脳髄共和国へと近づいて行くが……。
明治生まれのいなせな旦那が放つ、冒険活劇。
連載開始時(1987年)75歳ゆえ、文体は古めかしく一文は長め。隅から隅までとことんやり合う覚悟で、じっくり読みました。
主役の中山は、粋がっているとはいえさすがに30代。それなりに人生経験を積んできて、誘拐されたり、果たし合いをするハメに陥ったり、海賊に襲われたり、さまざまな窮地に立たされるものの、切り抜けていきます。より上の世代からすれば、30代なんてまだまだ腕白小僧。その微妙な立ち位置が、また絶妙。
その中山に協力することになる新聞記者の乃田光二郎、中山とやりあうギャングのジドマーク、中山に恋してしまう脳髄共和国の科学者ユディット、その他、大勢。さまざまな人物がそれぞれの理由から中山に絡み、活躍します。
長いこともあって軽く読み流すことはできませんけど、ヅシンとくる物語。
『光の塔』の話が少しでてくるものの、大筋ではつながってません。昔、こういうことがあって……といった程度。
世界は、60分戦争によって滅んだ。
かろうじて生き残った人々は、都市を可動式にすることで襲いくる自然災害を乗り切る。こうして始まったのは、移動都市同士が喰らい合う、生存競争の時代だった。
トム・ナッツワーシーは、移動都市ロンドンに住む史学ギルドの三級見習い。両親はすでになく、史学ギルド長サディアス・ヴァレンタインに憧れている。
トムは、ロンドンが岩塩採掘都市を捕獲した夜、ガットへ降りることになった。最下層のガットには消化作業所があり、捕獲した都市の解体消化が行われている。史学ギルドは、解体後のがらくたの中に逸品を捜しているのだ。
今夜のガットの作業に現れたのは、ヴァレンタインだった。ヴァレンタインの愛娘キャサリンも一緒だ。トムはヴァレンタインに声をかけられ有頂天。さらに、キャサリンに一目惚れしてしまう。大嫌いなガットの作業が一変するが、予期せぬ事件が起こった。岩塩採掘都市の住民の中に、ヴァレンタインの命を狙う少女がいたのだ。
トムは尊敬するヴァレンタインを守り、単独で謎の少女を追いつめる。顔に醜い傷を持った少女はヘスター・ショウと名乗り、ダスト・シュートから逃亡した。そしてトム自身も、駆けつけたヴァレンタインにダスト・シュートへと投げ込まれてしまう。
ロンドンから落ちたトムは、ヘスターと共にロンドンを追いかけることになるが……。
さまざまな謎が絡み合う冒険小説。殺したり殺されたり、おどろおどろしい場面が連発されますが、基本はジュブナイル。不思議と爽やかに、意外と分かりやすく物語は展開していきます。
移動都市と対立する反移動都市同盟。空を駆け巡る飛行船乗りたち。ロンドン市長クロームの命令でヘスターを追いかける、〈復活者〉のシュライク……。
工学ギルドのプロジェクト、ディビジョンKとは?
隠された〈メドゥーサ〉とは?
ヴァレンタインの真の姿とは?
なかなか楽しめます。
1999年。
ニューヨークの人口は3500万人に達していた。人々が求めているのは、住むところや食べるもの。水不足も深刻だ。さらに熱波が何日も何日も襲いかかる。
アンディ・ラッシュは、ニューヨーク署の刑事。
安い給料でこき使われるが、それもこれも生きるため。民間人も刑事も、生活に必死だった。
ある日、高級マンションのチェルシー・パークで殺人事件が発生した。
殺されたのは、ビッグ・マイク・オブライエン。
第一発見者は、ボディガードのタブと、マイクの愛人のシャール。
アンディは、すでにいくつもの案件を抱えていたが担当となってしまった。ニューヨークでは、一日平均7件の殺人事件が発生している。アンディはいつものように、調書をとり、書類をまわしてお蔵入りにしようとするが、どこかからか圧力を受けてしまう。
アンディは、渋々捜査を継続するが、やがて、シャールと深い仲に……。
犯人は、貧しい青年のビリー・チュン。それは最初からあきらかにされてます。逃げるビリーと、やがてビリーへとたどりつくアンディ。人口が多いがゆえに起こるさまざまな障害と日常。
こうはなりたくないものだな、というのが正直なところ。
レオ・ガーフィールドは、物理学者。専門の研究は、素粒子の時間逆行性について。つまり、タイムマシンの研究だ。
レオはすでに名声を手にしていたものの、研究は行き詰まり、打開策は見当もつかない。そこで休暇をとり、アリゾナの砂漠に囲まれた避難所へ、親友のブライアント夫妻の家で生気を養うことにした。ところがレオが閉じこもっている間に、世間では、とんでもないことが起こっていた。
1000年先の未来人と主張する若者が、突然ローマに出現したのだ。それも12月25日という日付に。
彼の名は、ヴォーナン19。折しも、西暦2000年を前にして、終末信仰が広がりつつあるところ。
ヴォーナンは本物か、偽物か?
レオは、大統領からの要請で、アメリカにやってくるヴォーナンの随行員となった。専門的見地から、彼の真偽を確かめるのだ。チームには、各界の専門家が集められるが……。
レオの関心は、ヴォーナン19のタイムマシン。ヴォーナンは射出されて降り立ったので、実物はなし。彼から話を聞き出すしかない。それなのに、いつもはぐらかされてしまいます。
ヴォーナンは、タイムマシンだけでなく、未来のこともあまり語りません。専門家たちは少ない情報から、ヴォーナンの真偽を推理していきます。
作中で書かれるのは、人間模様。ヴォーナンが本物なのかどうか、意見の分かれる専門家たち。観光に来ただけというヴォーナンに振り回される政府。気ままなヴォーナンを崇め奉る人々。
この物語の結末は、意外な形で訪れます。
傑作ではないけれど、秀作。
コーベルは癌におかされていた。今のところ、治る見込みはない。コーベルが選択したのは、冷凍睡眠。病身を液体窒素で冷凍し、治療を未来の人々の手に委ねたのだ。
コーベルが長い眠りから目覚めたとき、もはや病気ではなかった。自分の身体ですらなかった。病が治癒したのではなく、他人の、記憶や人格が抹消された身体に入っていたのだ。
コーベルが蘇生の代償として〈国〉に突きつけられた要求は、ラマーとなること。ラマーとは、恒星間宇宙船のパイロットだ。〈国〉が立てた計画では、繁種ラムシップ船で200年をかけて十箇所の恒星をめぐる。その間地球で流れる年月は300年。船に乗り込むのは、コーベルただひとり。
コーベルはRNA学習法でパイロットに必要なことを習得し、ついに宇宙へと旅立つ。しかし。言いなりになるつもりはなかった。宇宙に飛び出したコーベルはコースを変更し、銀河の中心へと向かうが……。
最終的にコーベルがたどりつくのは、もはや〈国〉など存在しない、300万年後の地球。そこまではほんの序盤。変わり果てた太陽系の姿、滅亡した文明、末裔たち……。
コーベルを待ち受けるものとは?
宇宙での冒険をぎゅぎゅっと閉じこめた後に、地球での冒険を地道に展開。ある意味贅沢なのですが、少しバランスが悪いかな、と。
なお、この作品ででてくる〈国〉は、同氏の『インテグラル・ツリー』とその続編『スモーク・リング』のものと同一です。
ジェイスン・テニスンは、惑星ガットショットでダヴェントリイ辺境伯の侍医を務めていた。ところが、辺境伯が急死。テニスンは政争に巻き込まれそうになってしまう。
テニスンは密かに、宇宙港から飛び立つ寸前の船に飛び乗った。後で知った行き先は、エンド・オブ・ナッシング。銀河の最奥にある惑星だ。乗客たちは、ヴァチカン17を訪れる巡礼者たち。そして、ジャーナリストのジル・ロバーツだった。
ヴァチカンの創立は1000年前。名称は、旧地球の宗教からの借り物にすぎない。実体は、複数の宗教の総合体だ。そこではロボットたちが、己の機能を向上させつつ〈法王計画〉を進めているらしい。
テニスンは、ヴァチカンのことなど聞いたこともなかった。ジルも、取材の申込を無視されつづけてきており、詳しいことは分からない。
ヴァチカンが隠れたがる理由とは?
テニスンが到着したとき、ヴァチカンではちょうど人間の医師を必要としていた。重要な人物が病の床にあるというのに、唯一の嘱託医が亡くなってしまったのだ。テニスンは診療を引き受け、さらに専属医となることを要請される。
テニスンは、ジル共々エンド・オブ・ナッシングに留まることになるが……。
ロボットたちが進める〈法王計画〉とは、信仰を指導する至高の神官をつくること。コンピュータに膨大なデータを入力することで法王は形作られていきます。
データ入力のために、特に重要な役割を担っているのが、人間の幻視者たち。一種の霊媒者で、テニスンが診たのもそのひとり。瀕死のメアリーは、天国に行ってきたと主張するのですが……。
メアリーの話す天国という存在が、ヴァチカンに大きな影を落とします。それを利用しようとするロボットと、阻もうとするロボットと。おかげで、伏線らしき設定は忘れ去られ、政争の集結が物語の結末になってます。
なんだか消化不良。