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2008年の記録
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このページの本たち
檻の中の人間』ジョン・H・ヴァンス
反逆者の月2 −帝国の遺産−』デイヴィッド・ウェーバー
クリプトノミコン』ニール・スティーヴンスン
ジャンパー グリフィンの物語』スティーヴン・グールド
チャリオンの影』ロイス・マクマスター・ビジョルド
 
イエスの遺伝子』マイクル・コーディ
ソングマスター』オースン・スコット・カード
略奪都市の黄金』フィリップ・リーヴ
封神演義』安能務/訳
デリラと宇宙野郎たち』ロバート・A・ハインライン

 
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2008年02月14日
ジョン・H・ヴァンス(ジャック・ヴァンス)
(丸本聰明/訳)
『檻の中の人間』
早川書房・世界ミステリシリーズ

 ノエル・ハトソンはエル・カジムを助手席に乗せ、モロッコを走っていた。現地の言葉はまったく分からず、傍らの男との意思の疎通は、相手の片言英語のみ。そして、トラックの荷台にあるのは、密かに持ち込んだ武器の数々。
 ノエルには金が必要だった。そのため、密輸商人のアーサー・アップショウの片棒を稼ぐことにしたのだ。不愉快な仕事で危険とも隣り合わせだが、報酬はいい。
 武器を無事に届けたノエルだったが、予定外の荷物を積み込まれ憤慨する。エル・カジムを問いつめるものの、逆にせき立てられてしまう。意固地になったノエルは弾みで、エル・カジムを殺害してしまった。
 ノエルは死体を隠し、エルフーの町へと向かう。
 ホテルについたノエルは、アップショウに連絡をとろうとするが果たせない。翌朝ノエルはホテルを出発し、それっきり、行方不明となってしまった。
 1ヶ月後。
 ノエルの兄ダレル・ハトソンは、モロッコのタンジールへとやってきた。ノエルからの手紙に、面倒なことに巻き込まれていると書かれてあったのだ。果たして、ノエルは失踪中。ダレルはその行方を捜し始めるが……。

 MWA処女長篇賞受賞作。
 ジョン・ホルブリック・ヴァンスは、ジャック・ヴァンスの本名。
 ノエルの登場は第一章だけ。物語を動かしていくのはダレルの捜査です。主な舞台はタンジール。利害関係者は、ダレルが持つノエルの手紙を見たがります。一方ダレルは、アップショウから情報を引き出そうとします。
 すべての鍵は、第一章にありました。
 ホテルを出発した後、ノエルはどこへ消えたのか?
 思い返せば、よく練られてあったなぁ……と。ミステリはこうでなくては。


 
 
 
 
2008年02月16日
デイヴィッド・ウェーバー(中村仁美/訳)
『反逆者の月2 −帝国の遺産−』
ハヤカワ文庫SF1649

反逆者の月』の続編。
 銀河第四帝国の巨大宇宙艦船〈ダハク〉は、謎の異星種族アルチュタニの侵攻を警戒するため、出航した。ところが、目的地に向かう途中で反乱が勃発。ダハクは帝国から遠く離れた星系で立ち往生してしまう。
 それから5万1000年。
 地球の月に偽装していたダハクはついに目覚め、かつての乗員の子孫、コリン・マッキンタイアを艦長として迎え入れた。反乱の首謀者は成敗され、眠っていた帝国人たちも復活。帝国人と地球人との共存が始まるが、アルチュタニの脅威は差し迫ったものとなっていた。
 ダハクのセントラル・コンピュータは、先遣部隊がやってくる時期を早くて2年後と計算する。それまでに防備を整え、援軍を呼んでこなければならない。
 地球総督となったマッキンタイアは、帝国の援助を求めて旅立つ。しかし、シェスカー星系の帝国軍事拠点は何者かに破壊された後。続いて訪れたデフラム星系も死んでいた。
 帝国滅亡説が濃厚になる中マッキンタイアは、バーハットの帝国艦隊司令部を目指すことを決める。バーハットは太陽系からおよそ800光年彼方。そこまで行ってしまっては、アルチュタニの襲撃前に地球に帰還することはできないのだが……。
 一方地球では、総督代理の元、世界がひとつになりつつあった。その動きに反発する者も現れていて……。

 三部作の第二部。
 マッキンタイアと地球と、さらに途中からはアルチュタニの視点も加わって物語は広がりを見せていきます。
 迫る脅威と、援軍が見つからないもどかしさはあるものの、全般的にご都合主義。でも、こういう話の場合、それがいいんでしょう。期待は裏切られず、安心して読めました。


 
 
 
 
2008年02月24日
ニール・スティーヴンスン(中原尚哉/訳)
『クリプトノミコン』全四巻
ハヤカワ文庫SF1398、1401、1404、1407

 アメリカ人のローレンス・プリチャード・ウォーターハウスは12歳のとき、壊れたパイプオルガンの修理を手伝い、その深淵に数学を垣間みた。プリンストン大学に通うようになったローレンスは、イギリスの数学者アラン・マシスン・チューリングと親しくなる。ドイツ人のルドルフ(ルディ)・フォン・ハッケルヘーバーも交え、3人は数学の問題を討論する仲間となった。
 時代は、第二次世界大戦直前。
 やがてローレンスは海軍に入隊し、軍楽隊を経て暗号解読施設に移る。扱う秘密区分は、ウルトラメガ級。海軍と陸軍の制服が与えられ、中佐に昇進し、重要人物となったのだ。
 ローレンスは連合国であるイギリスへと渡り、同じく暗号解読にとりくむアランと再会する。そしてまた、ルディも枢軸国ドイツの似たような部署にいるという。ローレンスとアランは、ルディの裏をかかねばならないのだ。
 暗号解読は強力な武器となりうるが、解読できたことをルディに見破られてはならない。そのために特殊部隊が編成され、さまざまな活動を行うが……。
 一方、現代。
 ランドール(ランディ)・ローレンス・ウォーターハウスは、親友のアビ・ハラビーから新事業への誘いを受けた。エピファイト社が設立され、ランディはフィリピンへと向かう。エピファイト社はそこで事業を展開するのだが、あくまで資金集めのため。最終的にアビがもくろんでいるのは、新たなるデータヘブンの構築だった。
 アビの計画は着々と進むが、共同事業者に嗅ぎ付けられてしまう。折しも、ランディが秘密協定を結んだ潜水作業会社が海底に、大戦中に沈んだと思われる潜水艦を発見したところ。しかも潜水艦には、金塊と、ランディの祖父ローレンスの名前が書かれたメモがあった。
 それらの意味するものとは?

 タイトルとなったクリプトノミコンとは『暗号書』のこと。ローレンスと孫のランディを主軸に展開される、暗号とそれが示すものにまつわる物語。
 ローカス賞受賞作。
 現代で視点となるのはランディだけですが、過去においてはローレンスの他、特殊部隊に所属するロバート・シャフトー、終盤で活躍する後藤伝吾にもスポットライトが当てられます。そのため文量的にも過去の比重が高め。ローレンスの天才ぶりや、シャフトーの狂気、後藤の果たすある重要な役回りなど、さまざまなものが代わる代わる登場します。
 最初の巻は、それぞれのエピソードのつながり具合がまったく分からず、ただ漠然と、過去と現代はつながっているのだろうと思ってる程度でしたが、読み進むにつれて徐々に絡んでいく過程は圧巻。ときに脱線もしますが、それすらも楽しめました。


 
 
 
 
2008年02月28日
スティーヴン・グールド(公手成幸/訳)
『ジャンパー グリフィンの物語』
ハヤカワ文庫SF1653

 グリフィン・オコナーには特殊能力があった。
 一度訪れ、記憶に刻み込んだ場所に瞬間移動することができるのだ。それが分かったのは、5歳のとき。ジャンプと名付けた能力は便利だが、同時に危険をももたらした。
 グリフィンは何者かに命を狙われる身となったのだ。
 以来、両親につれられ各地を転々とする日々。イギリスからアメリカに移住もした。それでも追跡はやまない。グリフィンは両親の決めたルールを受け入れ、大人びた子へと成長していく。
 9歳のときグリフィンは、ルールを破ってしまった。家の近所でジャンプしてしまったのだ。その夜、一家は謎の組織の襲撃を受けてしまう。両親は殺され、グリフィンも負傷し、どうにかジャンプで逃れた。
 グリフィンがジャンプしたのは、父親と、密かにジャンプの練習をした砂漠地帯。アメリカとメキシコの国境だった。倒れたグリフィンを保護したのは、サムとコンスエロ。グリフィンは、親切なふたりに能力を告白。コンスエロの姪アレハンドラとスペインで暮らすことになるが……。

 映画化された『ジャンパー』の補足作品。
 自分の特殊能力のせいで両親を殺されてしまったグリフィン。それに懲りて「もうジャンプしない!」となるかと思いきや、能力使いまくり。子供とはいえ、ジャンプすると察知されるのは身に染みて分かっているでしょうに。
 他にも腑に落ちないところがいろいろと。映画の内容に合わせる都合があったのでしょうけど、ちょっともったいなかった感じ。


 
 
 
 
2008年03月01日
ロイス・マクマスター・ビジョルド(鍛冶靖子/訳)
『チャリオンの影』上下巻
創元推理文庫

 ルーペ・ディ・カザリルは無一文だった。深手を負い、後遺症に苦しみ、35歳にしてすっかり老け込んでしまった。
 カザリルは、元はと言えば荘侯だった。廷臣として仕え、隊長として兵を率い、城代を務め、特使として駆けた。だが、海向こうのロクナル人との戦に破れ、ガレー船の奴隷として海賊に売られてしまったのだ。
 逃れられたのは、海賊船がイブラ国主の艦隊と遭遇したため。海賊は制圧され、奴隷は解放された。そのとき瀕死の重傷を負っていたカザリルは、神殿病院にて治療を受け、歩けるようになると故国チャリオンへと帰還した。
 すべてを失ったカザリルが頼ったのは、ヴァレンダの町。先代藩侯のころに小姓を務め、今では、故郷と呼べる唯一のところだ。カザリルはバオシア藩太后に謁見し、境遇を語り新たな職を願った。
 やがてカザリルに与えられたのは、国姫イセーレの教育係兼家令だった。
 イセーレはバオシア藩太后の孫娘。娘のイスタ国太后は国主亡き後体調を崩し、ふたりの子供をつれて帰郷していたのだ。国主には、イセーレ国姫とテイデス国子の異母兄オリコが就いている。
 穏やかな日々がすぎ、イセーレとテイデスに、カルデゴスの宮廷に出仕する命が下された。オリコ国主はついに、世継ぎを諦めたらしい。
 カルデゴスで権力を振るうのは、ジロナル宰相とその弟ドンド。カザリルが奴隷として売られるに至るそもそもの元凶は、ドンドにあった。ふたたび命を狙われるのではないかと危惧するカザリル。かつて彼らが施した策略に気がついていない素振りをするが……。

 《五神教シリーズ》三部作の第一作。
 人々は四季を司る、姫神、母神、御子神、父神と、庶子神とを崇めています。それらの神々は実際に存在しているのですが、意思を汲み取ることは聖者にさえ至難の業。神々もまた、人間世界に直接関与することはできません。
 そんな世界が舞台のファンタジー。
 辛酸をなめ尽くしたカザリルの、重々しい視点から物語は語られます。
 ヴァレンダに向かう旅路で目撃した死の魔術がもたらすもの。イセーレの家令となり、イセーレ付きの女官ベトリスに恋心を抱くこと。イセーレを無理矢理娶ろうとするドンドへの怒り。
 チャリオンの影の正体とは?
 それらすべてが結末へとなだれ込みます。
 傑作。


 
 
 
 
2008年3月09日
マイクル・コーディ(内田昌之/訳)
『イエスの遺伝子』徳間書店
(文庫化時のタイトル『メサイア・コード』)

 トム・カーターはジャスミン・ワシントンの協力を得て、〈ジーン・スコープ〉を完成させた。この画期的な装置は、たったひとつの体細胞から人間の遺伝子すべてを解読することができる。遺伝子を調べることで、発病の可能性や寿命すら知ることすらできるのだ。
 ノーベル生理学医学賞を受賞し、妻子と共に式典に出席したトム。喜びの中、何者かに命を狙われてしまう。しかし、凶弾に倒れたのはトムではなく、妻のオリヴィアだった。
 オリヴィアの死後、脳に多形性膠芽腫が見つかった。それは複雑な遺伝的要因が絡むもの。トムは、愛娘のホリーに欠陥のある遺伝子が受け継がれているのではないかと心配する。直ちに遺伝子が調べられ、出てきた答えは余命1年。
 治療法が見つからない中、ホリーは発病してしまう。トムが最後にすがったのは、奇跡の治癒能力を伝説として残したイエス・キリストの遺伝子だった。
 一方、トムの命を狙ったキリスト教系秘密結社のブラザーフッドは、方針転換を余儀なくされていた。
 34年前。ブラザーフッドは、新たなる救世主誕生のしるしを受け取った。以来、捜索が続けられているが、成果はあがっていない。
 統率者エゼキエルは救世主を見いだすため、トムの持つ技術と情報が必要と判断した。たとえトムが不正の徒で粛清の対象者だとしても。そして、ブラザーフッドの元には、トムが探し求める本物の聖遺物がある。
 エゼキエルはトムに取引を持ちかけるが……。

 トムが物語の中心ですが、もうひとりの重要人物が、ブラザーフッドの粛清実行役マリア・ベナリアク。マリアはトムの暗殺が正しいことだと信じているので、延期に納得がいきません。そこで、独自に動いたりします。
 キリストの持つ遺伝子とは?
 救世主は存在するのか?
 ホリーは救われるのか?
 科学的に解明されないままの箇所もいくつか。でも、よくまとまっていて、なるほど、という感じ。


 
 
 
 
2008年03月11日
オースン・スコット・カード(冬川 亘/訳)
『ソングマスター』ハヤカワ文庫SF550

 ソングハウスは、惑星テユにあった。その惑星テユが、ついに帝国に屈服する。間もなくソングハウスに、恐怖皇帝ミカルがやってきた。
 ソングハウスは、音楽にあふれたところ。音楽性に優れた孤児たちをひきとり、ソングトークで意思を伝え、節制を学ぶ。そして、ごく稀に、特別な能力のある者がソングバードとなった。
 ソングバードでいられるのは、思春期前の短い時間。ソングハウスは貴重なソングバードを育て、これはと思った人物に招待状を出す。貸し出す相手は、真の愛好者のみ。
 ミカルは、ソングバードを所望した。
 本来、ソングハウスは力に屈したりはしない。しかし、ソングマスター・ヌニヴは、ミカルがソングバードを真から理解していることに気がつき、要求を呑むことにする。ただし、ソングバードは誰にでもなれるものではないし、簡単に育てられもしない。
 ミカルにふさわしいソングバードが見いだされたのは、ミカルの要望から79年後のことだった。
 ミカルのソングバード・アンセットは、誘拐事件の被害者。両親はみつからず、ソングハウスに引き取られたのは3歳のとき。すぐさま才能を示すが、心は固く閉じられていた。すばらしい歌声にアンセットの魂が入ることはない。
 ソングマスター・エステは、アンセットの心をなんとかして開かせようとするが……。

 アンセットの波瀾万丈の物語。
 ソングバードとなるべく訓練し、ついに皇帝ミカルに謁見。ミカルを愛し、ミカルのために歌う幸せな日々を送るものの、皇帝の座を狙う者たちの陰謀に巻き込まれてしまう……。
 そして、晩年。
 涙、涙でした。


 
 
 
 
2008年03月13日
フィリップ・リーヴ(安野 玲/訳)
『略奪都市の黄金』創元SF文庫

移動都市』の続編
 世界は荒廃し、人々は生き延びるため都市に移動手段を持たせた。やがて、移動都市を喰らう都市が出現。弱い都市は次々に大都市に飲み込まれていった。
 まもなく18歳になるトム・ナッツワーシーは、運び屋。かつては、壊滅したロンドンで見習い史学士だった。現在は、恋人のヘスター・ショウと共に飛行船〈ジェニー・ハニヴァー〉号に乗っている。
 トムとヘスターは、空中公益都市エアヘイヴンで、ニムロッド・B・ペニーロイヤルに声をかけられた。ペニーロイヤルは、ベストセラーを連発している冒険家。帰宅途中で、飛行船に乗せてほしいという。
 トムはペニーロイヤルの冒険談に興味津々。申し出通り乗客として迎えるが、ヘスターはおもしろくない。運賃をとり渋々了承するものの、ペニーロイヤルは追われる身だった。
 〈ジェニー・ハニヴァー〉は、反移動都市同盟の過激派〈グリーンストーム〉の襲撃を受けてしまう。なんとか対処するものの、もはや航行不能。氷上をひた走るアンカレジに降り立った。
 アンカレジを率いているのは、年若い辺境伯のフレイア・ラスムッセン。ペニーロイヤルの著書を愛読し、故郷アメリカを目指しているところ。トムを気に入ってしまい、なんとかしてヘスターを追っ払おうとするが……。

 さまざまな利害関係と勘違いが入り組んで、物語は揺れ動きます。
 アンカレジに潜入している盗賊団〈ロストボーイ〉の面々。〈グリーンストーム〉の秘密。アンカレジを付け狙う掠奪都市アルハンゲリスクの影。そして、ペニーロイヤルの真実とは?
 なかなかの暗さなんですけど、最後は明るくまとまってくれて、ホッとしました。当作が四部作の二作目。残り二作が楽しみです。


 
 
 
 
2008年03月24日
安能務/訳
『封神演義』全三巻/講談社文庫

 紀元前11世紀。
 王朝交代の天意は定まった。600余年続いた殷王朝は滅亡へと突き進む。西岐では新たな天子が誕生した。
 天界の動きに呼応して仙界では、神界を創設する計画を進めていた。これから起こる易姓革命で、戦没した者たちを天地の神々に封じる。その裏には、ある陰謀が隠されていた。
 実は仙界には、人間出自の仙道たちからなる〈闡教〉と、動物や植物出身の〈截教〉の二大勢力がある。封神は両教主が同意した事業だが、闡教の上仙たちは、この機会に截教関係者を神界に追い払おうと画策していたのだ。
 闡教教主・元始天尊は、直弟子の姜子牙に封神の司祭を命じる。
 姜子牙は、人界では兵法家だった。崑崙山にやってきて40年。下山せよとの命令はすなわち、仙人にはなれないということ。落胆する姜子牙だったが……。
 一方殷王朝では、名君であった紂王が暴君へと豹変していた。紂王をかりたてるのは、絶世の美女・妲己に化けた〈千年の女狐〉。妲己は天界の天女より、紂王を惑乱せよとの密命を帯びている。姜子牙との連携も命令されているのだが……。

 古代中国の殷周革命を舞台にした奇想天外な物語。
 作者は不明。この本の原典は陸西星の編纂によるものだそうですが、さらに変えられているようです。
 序盤で書かれるのは、妲己の登場と紂王の変わりっぷり。だいぶたってから主役の姜子牙が登場し、紂王に仕えることになります。しかし妲己と対立。西岐へと逃げ出し、あるエピソードから〈太公望〉と呼ばれるようになります。
 そして、ついに出陣。
 封神があるため登場人物が多く、相当数が死んでいきます。そのため、展開がややマンネリ気味になっているところも。それだけがもったいない……。


 
 
 
 
2008年04月12日
ロバート・A・ハインライン(矢野 徹/訳)
『デリラと宇宙野郎たち』ハヤカワ文庫SF670

「生命線」
 ヒューゴー・ピネロが発明したのは、人の寿命を計測する機械だった。アカデミーの科学者たちはピネロを相手にしないが、ピネロは商売を始めて……。
 ハインラインのデビュー作。

「道路をとめるな」
 自動車に取って代わった流通スタイルは、コンベア。道路都市では、人も物も、商店までもコンベアで運ばれていく。その運転に関わる道路技師は神聖な職業なのだが、ある日ストライキが起こってしまい……。

「爆発のとき」
 原子力発電所で採用された体制は、技術者2人につきひとりの心理分析監視係。技術者は、事故が起きたときの恐怖感と闘うと同時に、監視対象としての圧迫感ともつきあわなければならない。所長は、体制が抱える問題解決のために、環境的精神調整の専門家レンツ博士を呼ぶが……。

「月を売った男」
 大金持ちのデロス・D・ハリマンは、ついに夢に向かって疾走を始めた。それは、月に行くこと。ハリマンは月ロケットの開発に情熱のすべてを注ぐが、必要な資金は、ハリマンの持つ資産をはるかに上回る膨大なもの。ハリマンは、さまざまな手段で資金を集めていくが……。

「デリラと宇宙野郎たち」
 人類はついに宇宙へと進出し、宇宙ステーションの建設が始まった。ある日現場に、新たな無電技師が送り込まれてくる。総監督のタイニイは、やってくるのは男であると考えていたが、現れたのは女だった。男ばかりの閉鎖空間にあって、タイニイは彼女を隔離しようとするが……。

 《未来史》シリーズ第一巻。
 同じ時間軸を持つ作品たちです。
 まとまった文量があり、もっとも印象的なのが「月を売った男」のハリマン。あの手この手で“月”を売り、資金を獲得していきます。それもこれも、自分が月に行くため。
 ハリマンの試みは成功するのか?
 ハインラインは、哀しい場面を実に美しく書く作家だと思うのですが、ハリマンにも哀しい場面が……。
 内容的には古くても読み応えがあります。

 
 

 
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