航本日誌 width=

 
2009年の記録
目録
 
 
 3/現在地
 
 
 
 
 
 
このページの本たち
ブレイブ・ストーリー』宮部みゆき
メトセラの子ら』ロバート・A・ハインライン
ヘミングウェイごっこ』ジョー・ホールドマン
ストーカー』アルカジイ&ボリス・ストルガツキー
サイレジア偽装作戦』デイヴィッド・ウェーバー
 
悪鬼の種族』ジェイムズ・H・シュミッツ
プラネットハザード』ジェイムズ・アラン・ガードナー
愛に時間を』ロバート・A・ハインライン
無伴奏ソナタ』オースン・スコット・カード
宇宙の孤児』ロバート・A・ハインライン

 
各年の目録のページへ…

 
 
 
 
2009年04月23日
宮部みゆき
『ブレイブ・ストーリー』上下巻/角川書店

 三谷亘は小学5年生。
 学校では、どこの誰から始まったとも知れない噂が広まっていた。
 神社の隣に、建設途中で放置されたビルがある。青いビニールシートに覆われたままのビルに、幽霊が出るというのだ。
 実は、途切れた階段の踊り場には異世界〈幻界(ビジョン)〉へとつながる扉があった。噂の真偽を確かめようと訪れた亘は、その扉から転校生ミツルが出てくるところを目撃。逃げたミツルを追って〈幻界〉へと足を踏み入れる。しかし、間もなく亘は追い返され、やがてその記憶も薄れていった……。
 同時期、亘の父・明が家を出て行く事件が起こる。明は離婚を考えていたのだ。母・邦子と亘は取り残され、明の説得に奔走するが、果たせない。ついに邦子は、亘と無理心中を計る。
 亘を助けたのは、ミツルだった。
 ミツルは亘に〈旅人の証〉を渡し、語りかける。
 〈幻界〉は、現実世界に住む人間の想像力のエネルギーが創り出した場所。あちらへの出入り口〈要御扉(かなめのみとびら)〉は、10年に一度だけ開く。幻界を旅し、どこかにあるという〈運命の塔〉にたどりつくと、人間の運命を司る女神にどんな願いでもかなえてもらえる。
 運命を変えることができるのだ。
 亘は、自分の運命を変える決心をする。〈要御扉〉をくぐり〈幻界〉をワタルとして旅することになるが……。

 偶然に知り合い、ワタルと行動を共にする仲間たち。常に先行しているミツル。両親に似た人たち。さまざまな経験を経て、ワタルは成長していきます。
 最後には、涙がホロリ。
 でも、物足りなかったです。
 以下自粛。


 
 
 
 
2009年04月26日
ロバート・A・ハインライン(矢野 徹/訳)
『メトセラの子ら』ハヤカワ文庫SF181

 ハワード・ファミリー財団の目的は、人間の寿命を延ばすこと。財団は、長寿の人々を互いに結婚させる手法をとった。科学的な延命法ではなく、遺伝によって目的を達成したのだ。
 そして、2136年。
 このころハワード・ファミリーは、ごく一部のメンバーが世間に正体を現し、反応をうかがっているところだった。結果はかんばしくない。遺伝だと信じてもらえなかったのだ。
 ついに時の政府は、ファミリーを狩りたて長寿の秘密を吐き出させることを決定した。
 いち早く察知したファミリーは潜伏を計る。もはや、地球上で共存することは不可能。恒星宇宙船〈ニュー・フロンティア〉号を使い、他の星系に移住することが話し合われる。
 そこへ、行政長官ストレイン・フォードから連絡が入った。財団の評議員長ザッカー・バーストウとの秘密会談が持たれ、フォードの意向が明らかにされる。
 フォードは行政長官だが、議会の決定には反対の立場。ただ、政権は長期にわたっており、議会における統制力に衰えが見え始めていた。フォードは密かに、ファミリーの力になることを約束する。
 バーストウは、最長老のラザルス・ロングと相談し、仲間たちにも秘密のまま、フォードと取引をした。ここはおとなしく捕まり、強制収容所で機会をうかがうことにしたのだ。
 計画は実行され警察が逮捕にやってくるが、ロングは反射的に脱出してしまった。そして計略を巡らし、〈ニュー・フロンティア〉号を乗っ取り、ファミリーを乗せて旅立つが……。

 《未来史》シリーズの一角をなす作品。
 一行は宇宙で知的生命体と出会いますが、ややオマケ的。キモは、迫害と、脱出と、そして結末。書かれてから68年の年月が流れていますけれど、不思議と古さは感じませんでした。


 
 
 
 
2009年04月27日
ジョー・ホールドマン(大森 望/訳)
『ヘミングウェイごっこ』ハヤカワ文庫SF1699

 1922年。
 ヘミングウェイの未発表原稿が失われた。夫人が、カーボン・コピーも含めてすべてを持ち出し、すべてを盗まれてしまったのだ。
 以来、原稿は見つかっていない。
 それから75年。
 ヘミングウェイ研究家のジョン・ベアドは、シルヴェスター・キャッスルメインに、もうけ話を持ちかけられた。ヘミングウェイの贋作をつくり、失われた原稿を発見したことにしようと言うのだ。
 拒絶するベアトだったが、家計は火の車。ベアトの妻リナは、キャッスルメインの話に大乗り気。ベアトを納得させる手法が考案され、ついに説得されてしまう。
 贋作と明記し解題をつけた研究書ならば詐欺ではないから、と。出版前の宣伝では、さも未発表作品が発見されたかのように見せかけて……。
 いつしかベアトものめり込んで行く。そんなベアトの前に〈ヘミングウェイ〉が現れた。
 ベアトは、〈ヘミングウェイ〉に殺されてしまうが……。

 ヒューゴー賞とネビュラ賞を受賞した中篇に手を加えて長篇化したものです。
 ベアトは憎めないお人好し、といったところ。抜群の記憶力を誇り、死んだ後に特異な体験をします。そこがSFたるゆえん。
 原稿盗難事件は、実際にあったことだそうです。ベアトが書いた贋作の一部も取り込まれ、ヘミングウェイに造形の深い人は、その点からも楽しめるでしょう。
 残念ながらヘミングウェイのことは名前くらいしか存じませんが、十二分に堪能できました。
 ダブルクラウンに輝いたのも納得。


 
 
 
 
2009年04月28日
アルカジイ&ボリス・ストルガツキー(深見 弾/訳)
『ストーカー』ハヤカワ文庫SF504

 13年前、地球は異星人の来訪を受けた。
 そのとき残されたのが、〈ゾーン〉と呼ばれることになる危険区域。異星人は、地球人のことなど見向きもしなかった。彼らの目的は分からない。あるのは〈ゾーン〉と、かろうじて〈ゾーン〉から回収できた人智を越えた品だけ。
 レドリック・シュハルトは、国際地球外文化研究所でキリール・パノーフの助手として働いていた。レドリックは、ストーカー(密猟者)として逮捕された経歴を持つ。〈ゾーン〉に入り込み、遺物を漁って売りさばくのだ。研究所は〈ゾーン〉境界区にあり、密猟は今でも続けていた。
 ここ一年キリールは〈空罐〉に取り組んでいるが、いまだ解明されていない。そんなキリールにレドリックはつい、〈ゾーン〉に中味が入っている〈空罐〉があることを教えてしまう。
 レドリックはキリールと共に、〈ゾーン〉に入ることになった。正式な許可証と最先端の装備を使うことはできるが、〈ゾーン〉が危険なことに変わりはない。
 任務は成功するものの、帰宅後間もなく、キリールが他界してしまった。レドリックは研究所を辞め、ストーカーとして密かに生きて行くが……。

 レドリックの物語。
〈ゾーン〉の解明とか、謎の異星人に関する考察はほとんどなし。キリールが研究していた〈空罐〉がなんだったのか、キリールを死に至らしめたあれはなんだったのか、その後話題に登ることもなく……。
 〈ゾーン〉の恐怖と、レドリックのいろんな思考で構成されてます。市井の人(レドリック)の視点はそういうことでしょうけど、もう少し教えてもらいたかったです。


 
 
 
 
2009年04月29日
デイヴィッド・ウェーバー(矢口 悟/訳)
『サイレジア偽装作戦』ハヤカワ文庫SF1447

紅の勇者オナー・ハリントン》シリーズ第六巻。
 マンティコア王国とサイレジア連邦との通商航路に、海賊が出没していた。マンティコアの商船が次々と襲撃され、莫大な被害が発生。しかし、マンティコアはヘイヴン人民共和国と戦争の真っ最中。護衛艦をつける余裕はなかった。
 クラウス・ハウプトマンは、自社の商船の度重なる被害に業を煮やし、航宙軍に圧力をかける。得られた助力は、仮装巡洋艦が4隻。大型商船を改造した偽装艦で海賊たちを誘い出し、一挙に殲滅する作戦だ。
 作戦の指揮者として白羽の矢を立てられたのは、オナー・ハリントンだった。
 そのころハリントンは、マンティコアの航宙軍からは半給休暇を命じられていたものの、友邦国グレイソンで提督の地位にあった。復職すれば上級宙佐へと降格になるが、後々を考え承諾する。
 一行は、寄せ集めの人員でサイレジアへと向かうが……。

 いつものとおり、サイレジアにもヘイヴンの影があり、ハリントンが死力を尽くして戦います。ハウプトマンは変わらずワガママですけれど、今回はちょっと同情。
 ハリントンが、提督から降格とはいえ艦長復帰してイキイキしていたのが印象的でした。


 
 
 
 
2009年04月30日
ジェイムズ・H・シュミッツ(冬川 亘/訳)
『悪鬼の種族』ハヤカワ文庫SF383

 ナンディ=クラインは、人類が築き上げたハブ連邦の辺境に位置する海洋惑星。
 ナイル・エットランド博士はナンディ=クラインにおいて、海洋性浮漂木の森について研究活動を行っていた。ナイルは、長寿法の研究をしている野外生物学者ティコス・ケイ博士と連絡がとれなくなっていることを心配し、捜索に当たるが……。
 そのころケイは、ナンディ=クラインに再侵入していた異星種族パラファンに捕らえられていた。
 パラファン族は70年前、ハブ連邦を侵略しようとし、撃退された過去を持つ。パラファン族にとって人類は陸棲劣等種族。破れてしまったことが信じられず、侵攻の失敗を研究し、ツーベラ理論へとたどり着いていた。
 神秘の超人類ツーベラこそ、ハブ連邦の隠れた支配者なのだと。かれらの指導があったからこそ、パラファン族は敗北するに至った。それもこれも、ツーベラという存在を知らなかったため。
 ケイは、捜しにやってくるであろうナイルを助けるため、守護者エットランドについて語るが……。

 とてもおもしろい作品でした。
 パラファン族が思い込んだツーベラという存在。守護者(ツーベラ)に試されているところだったと語る、ケイ博士。ケイの残したメッセージを発見し、守護者エットランドの演技をするナイル。
 人間とパラファンの腹の探り合いが、ナンディ=クラインの独特な生態系のもと、繰り広げられます。欠かせないのが、狩猟カワウソたちの存在。彼らには知性があって、カタコトの言葉をしゃべり、ナイルを助けます。
 読み応えがありました。


 
 
 
 
2009年05月02日
ジェイムズ・アラン・ガードナー(関口幸男/訳)
『プラネットハザード −惑星探査員帰還せず−』
上下巻/ハヤカワ文庫SF1260〜1261

 25世紀。
 宇宙へと進出した人類は、〈種族同盟〉に迎え入れられていた。同盟の考える知的生命体とは、他者を傷つけない者のこと。この簡単なルールを破った種族は〈非知的生命体〉の烙印を押され、惑星系に封じこめられてしまう。
 絶対的な力を前に、人類は戦争を放棄するに至った。植民のできる惑星をさがす際も、知的生命体に出会えば友好的にファーストコンタクトを果たさねばならない。
 フェスティナ・ラモスは惑星探査員。
 産まれたとき、顔の半分が痣によって覆われていた。その容姿が、フェスティナを惑星探査員に決定づけた。未知の惑星を調査する惑星探査員の死亡率は高く、探査員には、死んでも顧みられることにない外見を持つ者が採用されるようになっていたのだ。
 ある日フェスティナに、一つの命令が下される。部下ヤーランと共に、惑星メラクィンに降下するチー提督に付き添うことになったのだ。
 メラクィンは地球によく似た惑星。自然豊かで、危険など感じさせない。しかし、何度となく探査員が降り、誰ひとりとして帰ってきていない星だった。
 フェスティナは絶望的な任務に抵抗するが……。

 フェスティナの独白として書かれて行きます。細かく章立てされているので、読みやすくはあるのですけれど、細切れになっている分乗りにくい作品だな、と。
 納得いかないところもあれば、予想外な事件もあり。


 
 
 
 
2009年05月06日
ロバート・A・ハインライン(矢野 徹/訳)
『愛に時間を』全三巻
ハヤカワ文庫SF581〜583

 ラザルス・ロングは、ハワード・ファミリーの最長老。すでに4000年を越えて生きてきた。
 ラザルスが体験していないのは、もはや「死」のみ。ラザルスは、かつて自身が植民した惑星セカンダスに帰ってきた。密かに「死」を体験するために。
 ところが、ラザルスの入国はお偉方の知るところとなってしまう。セカンダスはハワード・ファミリーの惑星で、議長職はラザルスのために常に空席。そして、お偉方はラザルスの子孫たち。臨時議長アイラ・ウエザラルも例外ではない。
 安宿に隠れていたラザルスは発見され、若返り病院に軟禁されてしまった。怒り心頭のラザルス。ウエザラルに、「死」あるいは「何か新しいこと」を要求した。
 ラザルスは、要求が叶えられるのを待つ間に、昔話を記録することになってしまう。
 そうして語り始めたラザルスだったが……。

未来史》シリーズの集大成的な作品。
 他の作品のその後が、ラザルスの語りによってチラホラとお目見えします。


 
 
 
 
2009年05月09日
オースン・スコット・カード
(野口幸夫/冬川 亘/山田和子/訳)
『無伴奏ソナタ』ハヤカワ文庫SF644

 SF系短編集
 短い分、どれもこれも、ストレートでシンプル。余計な要素はほとんどなく、よく締まってました。
 後に長篇版『エンダーのゲーム』となる処女作「エンダーのゲーム」の空虚感。「王の食肉」で果たされる復讐劇。童話調に書かれた「陶器のサラマンダー」の、哀しさ。表題作「無伴奏ソナタ」での音楽の調べ。
 いろんな味わいを楽しめます。
 
「エンダーのゲーム」(野口幸夫/訳)
 人類は異星種族と交戦状態にあった。11歳のエンダーは、小隊を率いての訓練に明け暮れる。訓練は過酷を極め、それでもエンダーは勝ち続けた。やがて〈司令科〉へと引き抜かれ、シミュレーターを使っての演習が始まるが……。
 
「王の食肉」(冬川 亘/訳)
 王と王妃に仕える羊飼いは、彼らの要求を満たすため、村に出かけて行った。きょうの夕食は、乳房のバター焼き。羊飼いは若い女に狙いを定め、両乳房を持ち帰った。いつもと同じ日々だったが、城が天空船の襲撃を受け、王と王妃は自害してしまい……。
 
「呼吸の問題」(冬川 亘/訳)
 デイルはある日、妻子の息遣いがぴったりと一致していることに気がついた。その日妻子は、交通事故で他界してしまう。次にデイルは、飛行機を待っている乗客たちが同時に呼吸していることに気がついた。その飛行機は、着陸に失敗。呼吸が合っていた人々は亡くなった。デイルは立ち寄ったレストランでも、この不気味なユニゾンに気がつくが……。
 
「時蓋(タイムリッド)をとざせ」(冬川 亘/訳)
 現在では完全に生きて経験することのできない事態を、過去において経験する。それを可能としたのが、時蓋(タイムリッド)だった。若者たちは時蓋を使い、過去に存在しているトラックの前に飛び込み「死」を楽しんでいたが……。
 
「憂鬱な遺伝子(ブルー・ジーンズ)を身につけて」(野口幸夫/訳)
 人類が、微生物戦争まっただ中の地球から逃げ出して800年。先祖の地を訪れた4人組は、数少ない残留組が、いまだに戦争をしていることを発見するが……。
 
「四階共同便所の怨霊」(冬川 亘/訳)
 ハワードは諸事情から、エレベータもない安アパートに引っ越した。アパートでは、トイレもバスルームも四世帯共同で使っている。ある日ハワードはトイレの便器のなかに、押し込められている赤ん坊を発見。助けようとするが……。
 
「死すべき神々」(野口幸夫/訳)
 地球は、異星人の訪問を受けた。彼らの望みは、地球上に建物を造築してそこを訪れること。異星人たちは人類に、いくらか進んだテクノロジイをもたらすが、それらは革新的な技術ではなかった。異星人の贈り物は途切れ、ただ訪問を受けるばかりとなった人類だったが……。
 
「解放の時」(山田和子/訳)
 会社社長のマークは残業続きの日々を送っていたが、突然、家に帰るべきと悟り帰宅した。妻のメリー=ジョーは迎えにも出てこず、困惑し、狼狽している様子。そして、書斎には死体入りの棺桶があり……。
 
「猿たちはすべてが冗談なんだと思いこんでいた」(山田和子/訳)
 幼いアグネスの故国ビアフラは滅び、アグネスはアメリカ人の夫妻に育てられた。やがてアグネスはスキップシップの優秀なパイロットとなった。そして、地球軌道前方に発見されたトロヤ物体の調査隊パイロットとして選ばれるが……。
 
「磁器のサラマンダー」(山田和子/訳)
 キーレンは、産まれると同時に母を失い、父からは呪いの言葉を受けてしまった。そのおかげで、キーレンは身体の不自由な身となってしまう。大いに後悔し罪悪感に捕われたキーレンの父は、旅先で、治療を果たしてくれるという陶器のサラマンダーを手に入れるが……。
 
「無伴奏ソナタ」(冬川 亘/訳)
 クリスチャンは、リズムに対する天分とするどい音感を持って生まれてきた。2歳のとき、クリスチャンは神童と判定される。両親と音楽とから切り離され、手ぢかにあるのは〈楽器〉ただひとつ。クリスチャンは自然を題材にして演奏していたが、他人の音楽を耳にするという大罪を犯してしまい……。

 他に、詩「ブリキ細工の偶像」(野口幸夫/訳)および序文である「序」(野口幸夫/訳)を収録。


 
 
 
 
2009年05月10日
ロバート・A・ハインライン(矢野 徹/訳)
『宇宙の孤児』ハヤカワ文庫SF281

 ヒュウ・ホイランドは、ネルスン中尉という指導者を得、〈科学者〉への道を歩み始めた。ヒュウはさまざまな書物を読み、学び始める。
 ある日ヒュウは、上層に棲むミューティの偵察に赴き、捕らえられてしまう。ヒュウを奴隷として引き取ったのは、2つの頭を持つジョウ=ジム・グレゴリイだった。ジョウ=ジムにつれられ、〈主操縦室〉や〈船長のベランダ〉で外の世界を垣間見たヒュウ。世界は不動のものではなく、恒星間宇宙船として今でも航行を続けていることを知る。
 かつて船は植民を目的とし、ケンタウルスを目指していた。ところが、船内で大規模な反乱が発生。主要乗組員たちは他界し、操船技術を持たない人々だけが生き残った。世代が進むと人々は、自身の来歴すらも忘れ去ってしまったのだ。
 真実を知ったヒュウは〈科学者〉たちを説得し、操船しようとするが……。

 《未来史》シリーズの一端をになう作品。
 巨大な世代宇宙船や退化した人類など、その後の作品群に影響を与えたものがこの中にありました。

 
 

 
■■■ 書房入口 ■ 書房案内 ■ 航本日誌 ■ 書的独話 ■ 宇宙事業 ■■■