ナナガダ半島と大陸部とは、ウィキッドハイ山脈によって遮断されていた。ナナガダの人々は、唯一の通行口であるマフォリー峠を常に監視していたが、恐ろしい知らせが舞い込む。
山のむこうは、宗教国家アステカの支配地域。彼らは長い年月をかけ、山にトンネルを掘っていたのだ。ナナガダの人々を、神への生け贄とするために。
予期せぬ全面侵攻にナナガダは大混乱。キャピトルシティの首相ディハナとハイダン将軍は防衛に追われるが……。
そのころジョン・デブルンは、ウィキッドハイ近くの村で暮らしていた。過去の記憶を失い、漁師となっていたが、アステカの神に狙われてしまう。
デブルンは、マー・ウィー・ジュンを解放する秘密の合い言葉を知っているらしいのだが……。
ある事情により科学技術を失った人類の末裔の物語。シューパンクのような雰囲気になってます。
一枚岩ではないキャピトルシティの面々。徐々に明らかになっていく、植民地の過去。二重スパイのオアシクトル。デブルンの失われた物語と、北への旅。
アステカの神が狙っている、マー・ウィー・ジュンとは?
いろいろとおもしろくはあるのですが、なぜアステカなのかは語られず、釈然としないまま終わってしまいました。
惑星セント・ヘレンズでは入植から200年がたち、超能力者が産まれるようになっていた。超能力は、いかに強力であろうとも単独行使は難しい。〈プリズム〉と名付けられた触媒者が補助をして始めて使いものになるのだ。
ルーカス・トレントは、ロードスター開発の社長。
西諸島において大成功を治め、一角の人物となっていた。そんなルーカスを悩ましているのは、広報部長ミランダ・ロッキングの裏切り。
ミランダは、3年前に不慮の死を遂げた、共同経営者ジャクソン・ライの婚約者だった。ルーカスは信頼していたのだが、企業秘密をライバル社に売り渡しているらしい。内部監査の結果、メリック・ビーチなる男と定期的に接触していることも判明。しかし、ルーカスはその事実を受け入れることができない。あり得ないこととは知りながら、催眠能力者に暗示をかけられてしまったのではないかと疑う。
ルーカスは、プリズム派遣会社として業界トップクラスのシナジー社を訪問した。自身が持つ探査能力を使い、犯人が超能力を使っている現場をおさえる腹づもりだ。紹介されたのが、全能力幅を持つプリズム、アマリリス・ラークだった。
ルーカスは、論理観に固まったアマリリスに辟易しながらも契約を結ぶ。そして、チャンスを捕らえて探査するものの、あぶり出されたのは別種の予期せぬ能力だった。
ハーレクインものです。
SF的な設定にはなってますが、そういった説明はおざなり気味。必要な情報が少なく、不必要なことが多い印象でした。
とはいえ、物語の運び方はきちんと練られてあるので、あまり頭を使わない、軽いものが読みたいときには、いいかもしれません。
九惑星連邦ではいまだ奴隷制度があり、ソービーが競りにかけられたのは、主星サーゴンでのことだった。そのときソービーは、薄汚く、病気のようで、痩せぎす。しかも反抗的。なかなか買い手は現れない。
そんなソービーを買い取ったのは、乞食のバスリムだった。ソービーは、自身の息子として接するバスリムを慕い、解放された後もバスリムのために働くようになる。
ソービーはある日バスリムから、秘密のメッセージを授けられた。バスリムに万が一のとき、ある五人の男たちのいずれかを見つけ出し、メッセージを渡すのだ。彼らは、星間宇宙船の船長たち。ソービーは言葉の意味も分からないまま、メッセージを丸暗記する。
五人の内のひとりは、自由貿易船シス号のクラウサ船長だった。そのシス号が入港し、ソービーはバスリムに知らせに走る。ところが、家は警察隊に包囲されていた。
バスリムは処刑され、ソービーはクラウサ船長と共に旅立つこととなるが……。
少年ソービーの波瀾万丈の成長物語。
奴隷市場で売られ、乞食の息子となり、シス号に乗って宇宙へ。クラウサ船長はバスリムの伝言を聞き、ソービーを息子として迎え入れます。
ソービーは、次々と異なる環境に放り込まれ、さまざまなことを学び取っていきます。しかし、奴隷になる前の出自については不明なまま。ついに明らかになるとき、ソービーの最後の“冒険”が始まります。
名作。
4月。
メスのユタラプトル、ラプトル・レッドはパートナーと共に、オスのアストロドンを追いつめていた。二匹は息のあった攻撃で見事しとめるものの、ほんのちょっとした隙から、事故が起こってしまう。
一瞬にして、ラプトル・レッドはパートナーを失った。
単独で放浪することとなったラプトル・レッドは痩せこけ、新たなパートナーを得る望みが薄らいでいく。そんな最中、偶然にも姉と再会することができた。
レッドの姉は3匹の子供を連れており、子育ての真っ最中。レッドは本能に従い、子育てを手伝うことになるが……。
白亜紀の、恐竜たちの物語。
学説発表小説なため、筋から外れる話題もたびたび。とはいえ、恐竜たちの、過酷だけれども本能に従ったシンプルな暮らしを楽しめます。
地球を一基の宇宙船が旅立った。
目指すは、約500光年かなたのペテルギウス。乗員は、この旅を計画したアンテル教授、弟子のアルチュール・ルヴァン、そしてジャーナリストのユリス・メルー。
出発から2年。一行はペテルギウスに到着し、地球によく似た第二惑星に降り立つ。人間と遭遇するが、彼らは文明はおろか言葉すら持っていなかった。
野蛮な彼らに着陸艇を壊されてしまい、立往生する一行。それだけでなく、人間狩りの騒動に襲われてしまう。
人間を狩っていたのは、猿たちだった。この惑星の猿たちは、服を着て、言葉を話し、都市を築き上げていたのだ。
メルーは囚われの身となり、ルヴァンの死体を目の当たりにする。教授の行方は分からない。メルーはなんとかして、猿たちと意思の疎通を図ろうとするが……。
映画「猿の惑星」の原作。
始まりは、帆船スタイルの宇宙船で宇宙を旅行中のカップル。瓶詰めの書き物を拾い、興味津々で読み進んでいきます。その書き物こそ、ユリス・メルーの手記。
一連の出来事が、ジャーナリストの目を通して語られます。
アンテル教授の行方は?
メルーは解放されるのか?
結末は、映画とは違います。
ベン・トールチーフは、博物学者。神への祈りが叶い、つまらない在庫管理の仕事から異動することとなった。行き先は、デルマク・Oという惑星の入植地。
異動できるならどこでもよかったトールチーフは大喜び。任務の詳細も分からないまま、ノーザーでデルマク・Oへと向かう。
デルマク・Oで待っていたのは、10人の男女だった。誰ひとりとして、なにをするために集められたのか知らされていない。
間を置かずして、海洋学者のセス・モーリー夫妻が到着。予定の13人が揃い、指令を聞くこととなった。指令は、衛星上のオーディオ・テープに収められているらしい。ところが、機械トラブルが発生してしまう。
テープは、再生しきれないまま消去されてしまった。集団は善後策を話し合うが、ひとりになったトールチーフが死んでしまう。
デルマク・Oとは?
集められた目的は?
謎の建築物や、予定されていなかった14人目の登場。次々と死んでいく仲間たち。神学とか死後体験とか、オチも含めて、ディックを感じさせる作品でした。
『彷徨える艦隊 −旗艦ドーントレス−』『彷徨える艦隊2 −特務戦隊フュリアス−』『彷徨える艦隊3 −巡航戦艦カレイジャス−』続編。
アライアンス(星系同盟)艦隊は、シンディック(惑星連合)の罠にかかり、帰還するため放浪の旅を続けていた。率いるのは、救命ポッドで100年ものあいだ漂っていたジョン・ギアリー大佐。
艦隊は、ラコタ星系で多大な損傷を受け、命からがら超空間に逃げ込む。ギアリーは、イクシオン星系に着くやいなや、ラコタ星系へと取って返すことを決断。
果たして、ラコタ星系の守りは手薄な状態となっていた。ギアリーは、シンディックの追跡艦隊がやってくる前に、策を弄するが……。
全6巻らしいのですが、本当に終わるのだろうか、とだんだん心配になってきました。いろいろと進んではいるものの、残された謎の方が大きいような……。
ロレンゾ・スマイズは、売れてない俳優。“非凡なるパントマイム・模写アーティスト”として誇りは持っているものの、今日の金にもこと欠く有様。そんなロレンゾが目をつけたのが、ダク・ブロードベントだった。
たいていのスペースマンは、金離れがいい。ロレンゾは、ダクがホテルのバーに入ってきた瞬間、スペースマンであることを見て取った。彼と近づきになり、ディナーをごちそうになり、小額の借金をさせてもらう腹づもり。
ところが、目をつけていた点では、ダクの方が先だった。
ダクは、ジョン・ジョーゼフ・ボンフォートの専属パイロット。ボンフォートは、元太陽系帝国首相にして、現在は野党党首、拡大派連合を率いるカリスマ・リーダーだ。そのボンフォートが誘拐され、どうしても替え玉が必要となった。そこで、体格の近いロレンゾに白羽の矢が立てられたのだ。
ロレンゾがそのことを知ったのは、あわただしく地球を出発した後。替え玉を演じるとは聞いていたが、まさかボンフォートとは!
ロレンゾは、火星へと向かう道中にボンフォートを研究し、完璧に演じきるが……。
ヒューゴー賞受賞作。
火星には火星人がいて、独特の文化を築き上げてます。
火星の風習が、ボンフォート誘拐を公にできない理由。ボンフォートが火星に肩入れしている一方、ロレンゾは火星人が大嫌い。ボンフォートを演じるうえでの大きな障害となってしまいます。
他にも、苦難は次々と。
そして、なんとも哀しい結末。
ハインラインは一時期、政治家を志していたそうで、それゆえか、SFというより、政治小説という雰囲気でした。
月世界に一隻だけある船は、遊覧船〈セレーネ〉号だった。
〈セレーネ〉号と船長のパット・ハリス、ガイドのスー・ウィルキンズは、〈渇きの海〉のあたりを4時間ほどかけて巡り、観光客たちに月世界を楽しませている。それは今日も同じ。ところが、月震が起こり、船は塵の海に飲み込まれてしまった。
幸いにも、22名の乗員乗客は全員無事。しかし、特殊な月の塵は〈セレーネ〉号から、一切の通信手段を奪い取ってしまっていた。
望みは、月の交通管制所。〈セレーネ〉号はたえず監視されているので、行方不明になったのはすぐに分かるはず。問題は、酸素だ。〈セレーネ〉号の乗員乗客は、一週間しか待つことができない。
一方、月面では、〈セレーネ〉号の捜索が開始されていた。指揮するのは、アースサイドの技術部長ロバート・ローレンス。
当初〈セレーネ〉号は、月震による山崩れに遭ったものと思われた。そこへ、はるか上空から月を赤外線捜査した物理学者トマス・ローソン博士から一報が入る。
〈セレーネ〉号のものと思われる軌道が見つかったのだ。軌道は、山崩れ現場ではなく〈渇きの海〉でふつりと途切れていた。
ローレンスはただちに救助隊を組織するが、遭難地点への物資の輸送は、2人乗りのダスト・スキーのみ。彼らをどうやって救助するか、挑戦が始まるが……。
閉じ込められて、救助を待つばかりの遭難者たち。なんとしてでも彼らを救おうとする人たち。この世紀の大事件を追いかけるジャーナリスト。
さまざまな視点から、物語は進んでいきます。
船内の気温上昇、空気の汚染、士気を維持する難しさ。危機はひとつに収まらず、最後の最後まで、ハラハラしどおしでした。
銀河系にその名をとどろかせている泰平ヨンは、数々の偉大な発見をした。それらの記録は「日記」にまとめられている。すなわち、87巻におよぶ四つ折り版と旅行地図、辞典、収集品が収まった箱が多数。
本日ご紹介するのは、泰平ヨンの「日記」の中から、興味深く、かつ偽物ではないものたち。
では、まずは第七回の旅から……。
ペテルギウスの近くを飛行しているとき、ヨンの船に隕石が当たり、操舵不能となってしまった。
ヨンは船外で修理にいそしむが、予備の推進力調整器をとりつけるには、ふたりの人間が必要。ところが、船に乗っているのは自分ひとり。ヨンは果敢にもひとり修理に挑んだものの、すごすごと船内に戻ることとなった。
その夜、ヨンの元を男が尋ねてくる。船内には自分ひとりのはず。ヨンは男を追い返すが、それは火曜日の自分だった。
以降、ヨンの目の前に、水曜日の自分や木曜日の自分が現れて……。
故・深見弾の訳した本書を、大野典宏が手を加えた改訳版。
ヨンは14種類の旅の中で、惑星連合に新規加入しようとしている地球の代表者として出席したり、コンピュータ植民地にロボットに変装して潜入したり、地球史改変を試みたり、いろんなことをしたり、巻き込まれたり、遭遇したりします。
旧い版では、ヨンは自分のことを「吾輩」と呼んでいたそうです。改訳版では「私」になっていますが、「吾輩」の方がしっくりくるような、奇想天外な物語でした。