18世紀末。
ヨーロッパ諸国の植民地となっていた北米大陸には、いまだ開かれていない土地が残っていた。多くのアメリカ人が新しい土地を目指し、西へ西へと移動する。待ち受けているのは、頭皮を狙う先住民ばかりではない。
ミラー家も、移住を決めた家族のひとつ。
アルヴィン・ミラーは、全財産を幌馬車に積み込み家族を率いて旅を続けていた。アルヴィンは、父の七番目の息子。そのアルヴィンに、七番目の息子が産まれようとしていた。
七番目の息子のさらに七番目の息子は、奇跡の子。七番目の息子にはすばらしい才能が宿り、そのさらに七番目の息子は最強の産まれつきと言い伝えられている。それゆえ水に憎まれ、一行は災難に見舞われる。
突然の嵐に難儀する旅人たちを見つけ助けたのは、透視者のリトル・ペギーだった。
リトル・ペギーは、アルヴィン・ジュニアの誕生に立ち会い、その未来を見通すが……。
大長編の序章のような雰囲気で、主役は奇跡の子、アルヴィン・ジュニア。
アルヴィン・ジュニアには創造する力が宿っているのですが、それゆえ、破壊者から命を狙われています。そんなアルヴィン・ジュニアを助ける動きもあり、それらの超自然的な力が、いろんな形で展開していきます。
かつてデルトラの地が統一されていなかったころ、影の大王が攻めこんできた。この危機に立ち向かったのは、鍛冶屋のアディン。
アディンは、7つの部族の力を結集。それぞれの部族に伝えられていた力ある宝石を用い、ベルトを造った。輝かしいベルトを前に、影の大王は敗退。
こうして、アディンを戴くデルトラ王国が誕生した。
しかし、影の大王はデルトラを諦めてはいなかった。宮殿に手下を送り込んでいたのだ。国王は代を追うごとにベルトから遠ざけられていく。そして、エンドン国王の御代、ついにデルトラのベルトは破壊された。
デルトラは、影の大王の手に落ちたのだ。
それから16年。
城下町デルが〈影の憲兵団〉によって牛耳られる中、鍛冶屋の息子リーフは、16歳の誕生日を迎えていた。デルトラの歴史を教えられて育ったリーフは、この日始めて、父から真相を知らされる。父ジャードは、かつて宮殿に暮らし、エンドン国王の遊び相手を務めていたのだ。
ベルトが破壊されたあの日、ジャードは国王夫妻を助け出した。混乱の最中も城下町に留まり、持ち去られた宝石に関する情報を集める日々。ベルトを復活させ、ふたたびデルトラに平和をもたらすために。
リーフは、修復されたデルトラのベルトを渡される。リーフの使命は、事故で身体が不自由となってしまった父に代わって、ベルトを完成させること。そして、デルトラ王家の直系の子孫にベルトを託すのだ。
リーフと共に旅立ったのは、デントンの乳母ミンの息子バルダ。〈沈黙の森〉で知り合った少女ジャスミン。
ベルトは完成するのか?
隠されたお世継ぎはどこにいるのか?
1巻にひとつずつ宝石を手に入れていきます。
毎回、宝石を手に入れる前の段階で、いろいろとあります。そのいろいろが、宝石を手に入れるための伏線。さらに、結末に向けての伏線も仕込まれてます。
一定のパターンや、児童書ゆえのあまいところもありますが、よく練られているな、と。二転三転する結末も、騙されかけました。
イギリスを動かしているのは、魔術師たちだった。彼らは妖魔を呼び出しては命令を与え、さまざまに使役している。
ナサニエルは5歳のとき、雇用省に売られた。
雇用省は子供を買い取っては、官吏たちに分配している。それぞれの弟子として、立派な魔術師となるべく育てさせるために。
ナサニエルの師匠となったのは、国家保安省に勤める中流クラスの魔術師、アンダーウッドだった。ナサニエルは勉学に励むが、なかなかアンダーウッドに認めてもらえない。それどころか、弟子を信じず、貶める始末。
師匠に不信感を募らせるナサニエルは、自分を叱責したエリート魔術師サイモン・ラブレースに仕返しすることを画策。師匠に内緒で、妖霊バーティミアスを召喚した。
バーティミアスは、ジン族のサカル。強者ヌゴーソにして銀の翼を持つヘビ。5010年生きてきて、さまざまなことを目の当たりにしてきた。
そのバーティミアスが小僧に呼び出され、受けた命令にびっくり仰天。ナサニエルは、ラブレースの家から〈サマルカンドのアミュレット〉を盗んでくるように言ったのだ。
本物の魔術師から盗みを働こうとは!
バーティミアスは異議を唱えるが、正しい手続きで呼び出された以上、命令は絶対だ。さまざまな防御をかいくぐり、アミュレットを盗み出してくるが……。
《バーティミアス》シリーズ。
バーティミアスとナサニエルの両者が主役。
呼び出されたバーティミアスから物語は始まります。皮肉たっぷり。
ナサニエルの過去が少しずつ語られ、〈サマルカンドのアミュレット〉を盗み出そうと思いついた経緯が明らかにされます。ナサニエルはまだ12歳。後先は考えられておらず、当然のことながら大事件に巻き込まれていきます。
ナサニエルには魔術師の弟子ならではのエリート意識があって、ナサニエルの視点だけで語られていたら読むのがつらかったと思います。バーティミアスがいてくれて助かりました。
『サークル・オブ・マジック 魔法の学校』続刊。
15歳になったランドルは、親友のリースと共に、駆け出し魔法使いとして修行の旅を続けていた。
自由都市シンゲストーンについたランドルは、瀕死の男ブライスから彫像を預かる。杖にすがっている老婆の像なのだが、強い魔力があるようだ。
ランドルは、頼まれた通り、デイゴンを捜し出して彫像を渡そうとするが、フェス卿の兵士たちが乱入。魔法でなんとか逃げ切る。
デイゴンが言うには、彫像は魔法使いバーナードのもの。バーナードから依頼を受け、フェスの金庫にあったそれをブライスが盗み出し、デイゴンを通じてバーナードに渡す契約だったらしい。
彫像の魔力の強さを懸念したランドルは、デイゴンに同行することにした。ところが、待ち合わせ場所に現れたのは、バーナード本人ではなく、使いの者。しかも殺されそうになってしまう。
ランドルは、なんとか返り討ちにするが、懸念は深まるばかり。ターンズバーグの魔法学校に持ち込むことを提案するが……。
ふたつの話の合本。
一冊にふたつの物語が入っているわけですが、二倍おいしいというより、物足りなさの方が強かったです。
月の裏側にあるダイダロス・クレーターで異常が発生した。
クレーターに設置した超長波アンテナからのデータが途切れてしまったのだ。ただちに人が派遣されるが、修理に向かった3人にトラブル発生。消息を絶ってしまう。
事故現場では、巨大な建築物がこつ然と現れていた。付近の表土が乱れた形跡はなく、まるでただ置いたかのようだった。
調査の結果、現場には無数のナノマシンがいることが判明。地球のものではない。ただちに、ナノマシンの第一人者、ジョーダン・パーヴ博士に声がかかる。ところが博士は、高齢を理由に月行きを拒否。代わりに助手のエリカ・トレイスが現場に向かった。
月についたエリカは研究にいそしむが、万全の予防策を講じていたにもかかわらず、ナノマシンに汚染されてしまう。連合宇宙局は、月の封鎖を決定するが……。
ナノテクSFというより、パニックSF。
未知のナノマシンの解明。エリカを心配するあまり先走ってしまうパーヴ博士。予知夢に怯える連合宇宙局の局長。いろいろと詰まってます。
なにを期待して読むかで評価が分かれそうです。
8歳のピーターは猫が大好き。物心ついて以来、猫が飼いたくて仕方がない。
ところが、面倒を見てくれているばあやは大の猫嫌い。密かにのら猫をつれこんでも、ばあやに発見され次第、つまみ出されてしまう始末。
そんなある日ピーターは、かわいい子猫を発見。思わず道路に飛び出し、事故に遭ってしまう。はげしい痛みと共に気がつけば、大きな白猫になっていた。
困惑するピーターは、ばあやにつまみ出されてしまう。
ピーターは、見慣れているはずの町で恐怖に陥り、人に踏まれ、逃げ惑う。へとへとに疲れはてた末、たどり着いたのはボス猫の縄張り。情け容赦ない攻撃を受けてしまう。
負傷したピーターを助けてくれたのは、ジェニィ・ボウルドリンだった。
ジェニィは、痩せてはいるものの雄々しさのやどる雌猫。ピーターは自分の境遇を話すが、信じてもらえない。しかし、猫なら絶対に知っている知識が欠けていることが露呈し、力になってくれることに。
ピーターは、ジェニィに猫の生き様を学んでいくが……。
猫好きで有名だった…らしいギャリコによる、猫小説。
猫が好きだけれども、猫のことをなにも知らないピーターは、さまざまなことをジェニィから学びます。毛繕いの仕方や、町の歩き方。ネズミの捉え方。
一方のジェニィは、かつては人間に飼われていたものの、裏切られ、今では人間のことを憎んでいます。そのため、人間にやさしくされても信じることができません。
ピーターと行動を共にすることで、ジェニィも変わっていきます。
猫好き大絶賛、という謳い文句も納得の物語でした。
レイチェルと弟のエリックは不思議な夢を見た。黒っぽい雪が降りしきり、ヘビのネックレスをした女性がいる。背後には、年老いた子供たち。
夢を見たその日、ふたりは地下室で、黒い化け物に襲われてしまう。地下室にはあるはずのないとびらが存在し、抵抗もむなしく、闇に放り出されてしまった。
レイチェルは、落下している間に、意志の力で自分の身体を支えることを学んだ。落ち続けるエリックを助けるが、上に向かうことはできない。やむなく底を目指し、ついた先は、あの夢でみた世界だった。
ふたりを出迎えたのは、魔女のドラグウェナ。
レイチェルは、ドラグウェナに操られてしまうエリックを目の当たりにするが、どうすることもできない。宮殿に連れていかれるが……。
そのころ宮殿の奴隷たちは、レイチェルが伝説の希望の子ではないかと、知らせが届いていた。皆、ドラグウェナによって地球からさらわれ、大きくならないまま年老いていった小さな人たち。レイチェルに期待を寄せるが……。
行き当たりばったりに書いたのではないかと思ってしまうような作品。おもしろい点がないわけではないのですが……。
三部作の第一作目なので、いろいろなことが後で明らかになるのかもしれません。
ソフィー・ハッターは、帽子屋の三人姉妹の長女。帽子屋は、インガリーの国の〈がやがや町〉にあった。
ソフィーは努力家だったが、長女ゆえ、成功しないことは目に見えている。どの物語を読んでも、そういう筋書きだ。家業を継ぎ、地味に暮らすのだろう。
ちょうどソフィーが学校を終える年、ハッター氏が急死した。今まで通りの暮らしは維持できず、三人姉妹はバラバラに暮らすことになる。
次女のレティーは、パン屋〈チェザーリ〉で奉公。
三女のマーサは、魔女のフェアファックス夫人のところで見習い。
そして、長女のソフィーは予想通り、帽子屋に残る。
ソフィーは、若い娘らしい装いなどせず、来る日も来る日も帽子作り。将来を悲観し、いつしか帽子に話しかけるようになっていた。その帽子が売れに売れ、店の経営は順調そのもの。
そこへ、荒地の魔女がやってきた。
ソフィーの作る帽子が魔女の怒りを買っていたのだ。ソフィーは呪いをかけられ、老婆にされてしまう。
ソフィーは鏡を見て、落ち着いて考えた。このまま店にいることはできない。即座に家出するが、行くあてがあるわけでもない。
ソフィーが荒野に出ると、悪名高い魔法使いハウルの動く城が近づきつつあった。歳をとり、すっかり怖いもの知らずになったソフィー。ハウルの留守中に城を停めさせ、一休み。
ソフィーの呪いを即座に見抜いたのは、城の暖炉に居着いた火の悪魔だった。火の悪魔は、ハウルと契約を結んでおりハウルのために働いている。しかし、今では後悔していた。なんとかして契約を反故にしたいと考えているのだ。
ソフィーは悪魔との取引きに応じ、城に居座ることになるが……。
何と言っても、老婆になり、大胆になったソフィーが見物。数々の伏線とエピソードと、いろいろと詰まって結末まで飽きさせません。
ただ、子供向け故か、おどろおどろしさは今ひとつ。全体の雰囲気がやさしいので、起伏が欲しくなりました。
カイラーラ・ヴァッタは、ヴァッタ航宙会社の経営者を父に持つご令嬢。士官学校で優秀な成績を収めていたが、お人好しな性格があだとなり、退学処分を受けてしまった。
傷心のカイは、父から航宙貨物船〈グレニーズ・ジョーンズ〉の船長になるように言い渡される。
〈グレニーズ・ジョーンズ〉は廃棄処分にする老朽船。これが最後の航宙で、しかも片道。辺境宙域へ荷物を運び、船も売り払ってくる予定だ。カイは同意するものの、道中の商売で儲けて修理費を稼ぎ出す腹づもり。
カイは最初の寄港惑星ベリンダで、耳寄りな情報を得た。開発途上のベリンダでは農業機械を必要としているのに、注文した機械が届かなかったのだ。惑星スロッター・キーからの運搬を請け負ったのは、パヴラティ航宙。ヴァッタ航宙のライバルだ。
カイは個人の権限で契約を結び、サビーネ星系へと向かった。ところが、途中で船が故障してしまう。
〈グレニーズ・ジョーンズ〉はなんとか目的地に着いたものの、交換するための部品が手に入らない。最後の手段で父の助けを得ようとするが、戦争が勃発。通信機能が麻痺してしまった。
カイたちは身動きがとれなくなってしまうが……。
カイは、若さ故に侮られてしまうのですが、士官学校にいただけあって、度胸は満点。さまざまな困難を克服していきます。でも、退学処分の原因にもなったお人好しなところは相変わらず。
カイが優秀すぎるきらいはあるものの、安心して読める作品でした。
《リンの谷のローワン》第二作
リンの谷に〈旅の人〉がやってきた。
子供たちにとっては、〈旅の人〉の滞在中はお祭りのような楽しい日々が続く。しかし、大人たちの中には、〈旅の人〉を歓迎しない人もいる。
果樹園係のストロング・ジョンは、〈旅の人〉たちのミツバチに受粉を手伝ってもらえるので、大喜び。一方、菜園係のブリーとハンナにとっては迷惑な話。丹精こめて育てた野菜が、〈旅の人〉の滞在中、消えてしまうことが多いのだ。とりわけ今年は、まだ秘密にしておきたい新種を育てているだけに尚更だ。
村人たちは集会を開き、〈旅の人〉には村に入ってきてほしくないと伝えるが……。
一方、〈賢い女〉のシバは、濃くなりつつある闇に恐れおののいていた。シバにも詳しいことは分からない。ただ、敵が迫っているらしいのだ。
シバは、バクシャー係のローワンに謎の詞を伝える。
ローワンは、信頼のできる大人に話すが、そのころ村では異変が起こっていた。
前作『ローワンと魔法の地図』の冒険のすぐ後の話。菜園係が育てている新種というのが、パン屋のアランが山から持ち帰ったヤマイチゴ。リンの谷の特産品にしたいと考えていたのですが……。
村に異変が起こるのが、物語もだいぶ進んでから。それまで、村人と〈旅の人〉の関係が、さらりと丹念に書き込まれてます。
書き方は好感が持てるのですが、邦題になってる黄金の谷の謎が、やや駆け足になっているかな、と。