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2010年の記録
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このページの本たち
時の罠』キース・ローマー
星の秘宝を求めて』キース・ローマー
多元宇宙の王子』キース・ローマー
混戦次元大騒動』キース・ローマー
銀河のさすらいびと』キース・ローマー
 
ストーンハート』チャーリー・フレッチャー
ロボコップ』エド・ナーハ
失われし書庫』ジョン・ダニング
パーラ』ラルフ・イーザウ
ナイト・ムーヴズ』ウォルター・ジョン

 
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2010年07月03日
キース・ローマー(冬川 亘/訳)
『時の罠』ハヤカワ文庫SF310

 全世界は今、未曾有の危機に直面していた!第七次元からの侵略者の手によって、世界は104億494万1602の〈閉鎖空間〉に分断され人類はその〈時の罠〉の中に閉じ込められてしまったのだ。しかも時空の混乱によって、16世紀のガレオン船が20世紀のタンパ湾に入港したり、果てはすでに死んだはずのリンカーン大統領がアラブの小村に現われる始末。ふとしたことから、この奇想天外な時空犯罪に巻き込まれたロジャー・タイソンは、未来人の美女ク・ネルとともに〈時空〉を超える旅にでたが……。俊英キース・ローマーが、軽妙洒脱な筆致で描きあげた痛快冒険SF!
(以上、早川書房による内容紹介文より転載)

 物語のはじまりは、ロジャー・タイソンの車が壊れてしまったこと。
 ロジャーが、土砂降りの中、滅多に使われない道で途方にくれていると、オートバイが通りかかります。ロジャーは気がついてもらえたものの、オートバイは事故を起こしてしまい、乗っていた少女ク・ネルは投げ出されて瀕死の重傷を負います。
 責任を感じたロジャーは、ク・ネルの言葉に従い、彼女の耳にはめられていた金色のボタンをとりだし、自分の耳にはめます。ク・ネルは死んでしまいますが、ロジャーの頭の中にク・ネルの言葉が響き、ロジャーは指示に従います。
 ク・ネルの要望は、したためたメモを〈割れ目〉に投げ入れること。〈割れ目〉は町の化粧室に現れたのですが、ロジャーはそこに落ちてしまいます。
 その先にあったのは、閉じられた空間。あの声は聞こえなくなり、ロジャーはひとりきり。新たな〈割れ目〉を探して、空間から空間へと移動していきます。途中、仲間もできますが……。

 時空が混乱していることが分かるのは、物語の半ばにさしかかるころ。彷徨っていたロジャーは、未来人に捕らえられます。その中には、あのク・ネルの姿も……。
 そこから、ついに、ク・ネルとふたりで〈時空〉を超える旅が始まります。前半部分が余分な気がしますし、分かり辛いところもあるのですが、とにかくラストにはホッとしました。


 
 
 
 
2010年07月06日
キース・ローマー(冬川 亘/訳)
『星の秘宝を求めて』ハヤカワ文庫SF366

 土星の環を構成する無数の星間物質。そのひとつ、小さな岩石のかたわらに一人の男の体が浮かんでいた。前方に腕をつきだし開いたフェイスプレートからは浅黒い奇妙な結晶状の花が咲いている——それが、統一惑星海軍士官タールトンが見つけた友人の無惨な姿だった。誰が、何の理由で彼をこんな目にあわせたのか? 真相をつきとめるべく活動を開始したタールトンは、やがて全太陽系を席巻する陰謀の渦にまきこまれていった……見えない運命の糸に操られ、宇宙をさまよいながら冒険を重ねていく男の物語を、才人キース・ローマーがハードSFの味つけでえがいた傑作長篇。
(以上、早川書房による内容紹介文より転載)

 今や、世界を牛耳っているのは、イムボボ卿をはじめとする大企業。地下組織ハテニクスが反抗を続けているものの、大企業を揺さぶることはできていません。
 海軍士官のバン・タールトンは、土星の〈カッシーニの空隙〉のふちで、置き去りにされてしまいます。手元にあるのは、三隻の小型艇。一隻は、今や遠くに旅立ってしまった戦艦〈タイラント〉から自分が乗ってきたもの。もう一隻は、殺された友人ダントンが乗ってきたもの。そして、返り討ちにした大企業の手先ハッチャーの戦闘艇。
 タールトンは戦闘艇に乗り込み、地球を目指します。命からがらたどり着くものの、大企業と海軍、ハテニクスからも追われる身となっていました。
 大企業もハテニクスも、タールトンが重要なものを持っていると考えています。〈カッシーニの空隙〉のふちでダントンが見つけたものは、タールトンに託されたのだ、と。
 タールトンは逃げ回りますが、けっきょく捕まり、軍法会議にかけられます。タールトンは終身流刑を言い渡され、さいはての惑星ローズワールドへと送られますが……。

 タールトンは、ギリギリのところでもがき、生き延びようとします。行動も起こしますが、受け身が多く、現状をすんまりと受け止めてしまいます。
 それが、謎の解明へとつながっていきます。秘宝を求めていたわけではないのに、秘宝へと近づいていたタールトン。それが運命ってやつなのかな、と、しみじみしました。


 
 
 
 
2010年07月10日
キース・ローマー(矢野 徹/訳)
『多元宇宙の王子』ハヤカワ文庫SF167

 若きアメリカ青年ラファイエット・オリアリイの運命は、“磁気催眠術・その正当な研究と実践。解明された古代人の秘密”なる面妖な本を手にした時から狂い始めた。そも、この奇書こそがかれをして異次元宇宙へいざない、中世と近代の渾淆する摩訶不思議な王国アルテシアへと導いたのだ。そして、右も左もわからぬままかれは権力争いの渦中にまきこまれ、はては竜退治から双頭の怪人との対決までやらかす破目になる。はたして、ヤンキー気質丸出しの好漢オリアリイの運命は? 才人ローマーがコミカルなタッチで描いた異次元宇宙を股にかける大冒険!
(以上、早川書房による内容紹介文より転載)

 《混戦次元シリーズ》第一巻。
 オリアリイは孤児で、ときどき、空想の世界に現実逃避します。その現実逃避の結果たどりついたのが、アルテシアでした。
 オリアリイは、アルテシアが自分の空想の産物だと勘違い。かなり大胆な行動をとります。アルテシアが現実だと認識するころには、魔法使として逮捕されてしまいます。
 審問会で裁かれようとするオリアリイを救ったのは、宮廷魔法使のニコデウスでした。
 オリアリイは処刑は免れたものの、竜退治をすることになったり、決闘するはめに陥ったり、王女誘拐事件の犯人にされてしまったり、いろいろな事件が矢継ぎ早に起こります。
 大冒険の果てにたどり着いた真相とは?

 単純に冒険するだけでなく、ミステリでもありました。事件の黒幕は誰なのか、謎解きも楽しめます。
 オリアリイが好漢かどうかは、やや疑問。小間使のダフネと仲良くしたり、王女アドレインにのぼせたり、行き当たりばったりな印象が残ってしまいました。


 
 
 
 
2010年07月25日
キース・ローマー(岡部宏之/訳)
『混戦次元大騒動』ハヤカワ文庫SF169

 アメリカはさる下宿屋の一室から、異次元の王国アルテシアにまよいこんだヤンキー青年ラファイエット・オリアリイ。とにもかくにもすったもんだのあげく、ようやく可愛い妻との愛の巣をそこに築いたかれは、なんとまたも見知らぬ世界に転移してしまった。おまけに小間使あがりの妻ダフネは、レディ・アンドラゴールと呼ばれる貴族となって、かれなど見たこともないという始末。一方、かれ自身は牢屋から出たりはいったり、また拷問台にのせられたりのていたらく ——オリアリイが愛する妻の住むアルテシアに帰るのはいつの日か、そも、この怪事件の真相は何か!?
(以上、早川書房による内容紹介文より転載)

 《混戦次元シリーズ》第二巻。
 ほんのちょっぴり歳をとったものの、オリアリイの度胸のよさと波瀾万丈ぶりは健在。今作もまた、見知らぬ世界で真っ先にするのは腹ごしらえでした。
 オリアリイが旅籠に入ると、女主人はアルテシアの王女アドレインにそっくり。アドレイン以外にも、まるでパロディのようにそっくりさんが出てきます。
 前作の出来事がかいつまんで紹介されていますが、少し違うような気がして、最後まで違和感が拭えませんでした。


 
 
 
 
2010年07月26日
キース・ローマー(伊藤典夫/訳)
『銀河のさすらいびと』ハヤカワ文庫SF1527

 凍死しかかっていたビリイ・デンジャーは、偶然異星からの訪問者に助けられた。だが地球を離れて彼らと旅する途中、未開の惑星で怪獣に襲われ、生き残ったのは美しいレア姫とビリイだけ。やがて一隻の宇宙船が降りてきた。救助されると思ったのもつかのま、中から現われた奇怪な小人族は、ビリイを光線銃で撃ち倒すとレア姫をさらって飛び去った…かくて最愛のレア姫を救うため、ビリイの果てしない探索の旅が始まる。
(以上、「BOOKデータベース」より転載)

 ほんのささいなことから、死の寸前まで落ちぶれてしまったビリイ・デンジャー。暖を求めて入った建物が、なんと異星人の深宇宙ヨットで、奴隷として留まることを許されます。ビリイは懸命に働きますが、未開の惑星〈ガール28〉で災難に見舞われます。
 ヨットの所有者らが亡くなり、ビリイは〈ガール28〉に足止めされてしまいます。レア姫をつれてなんとか生き延びますが、ついにやってきた宇宙船に、散々な目に合わさせてしまいます。
 レア姫を連れ去られてしまったビリイは、2隻目の宇宙船に助けられます。そこで乗員として働き、レア姫をさらって行った謎の小人たちの足取りを追いかけますが……。

 ビリイには、〈ガール28〉で仲間ができます。猫のユリーカ。コリー犬くらいのでかい猫なのですが、この猫がすこぶる優秀なのです。ビリイの波瀾万丈の大冒険を、ときに離れながらも最後まで見守り(?)ます。
 そして、ビリイが実にさわやか。ひたむきで、潔さがあって、とにかく目標に向けて一直線。昔の作品ゆえの古さは否めませんが、何度でも読みたくなる作品でした。


 
 
 
 
2010年08月04日
チャーリー・フレッチャー(大嶌双恵/訳)
『ストーンハート』理論社

 舞台は現代のロンドン。亡き父親の面影を胸に、心満たされぬ思いで暮らす十二歳の少年が、校外学習先の自然史博物館で起こったあるささいな出来事をきっかけに、ロンドンじゅうの彫像に狙われるハメに。
 少年を助けに颯爽と駆けつける無名戦士の像・ガナーと、過去を見る能力のあるふしぎな少女・エディ。少年は出会ったばかりの二人とともに、彫像に追われることになった理由を探りはじめる。
 その謎を解く鍵はストーンハート〈石の心臓〉のありかをつきとめること——。
 少年たちは、さまざまな危機を乗り越え、ロンドンじゅうを必死に駆けまわる。本作はそのたった一日の物語を描いた冒険ファンタジー。
(以上、本書内容紹介文より転載)

 三部作の一作目。
 児童書です。
 主人公の少年は、ジョージ・チャップマン。すごく大人びてますが、まだまだ子供。もうひとつのロンドンにはまりこんで、途方にくれます。
 ジョージを助けてくれたのが、ガナー。そのふたりを目撃して、仲間になろうとするのが、謎の少女イーディ(紹介文ではエディ)。
 ガナーはイーディを〈グリント〉と呼んで、遠ざけようとします。自分の正体を知らないイーディは、ふたりの後をつけるのですが……。

 出だしはいいのですが、書きながら設定を考えて行ったかのような、ぎこちない話運びで、読むのがきつかったです。舞台となったロンドンの地理に詳しいと、もっとたのしめるのかもしれません。


 
 
 
 
2010年08月07日
エド・ナーハ(斎藤伯好/訳)
『ロボコップ』ハヤカワ文庫SF747

 マーフィーは死んだ、凶悪な犯罪者グループによって銃弾を体じゅうに射ちこまれて…。だが、優秀な警官であるかれを、オムニ社はそのままにしておかなかった。超合金製の肉体、高速反射能力、底知れぬ戦闘能力を持つサイボーグ警官−ロボコップとして、かれをよみがえらせたのだ。デトロイトの街を、怖るべき悪から守るために! 超話題映画、待望の原作!
(以上、「BOOKデータベース」より転載)

 連邦政府が地方都市への交付金を打ち切って20年。財政難にあえぐデトロイトはついに、社会福祉への支出をとりやめた。代わって市民の面倒をみたのは、民間企業のオムニ社だった。
 警察もオムニ社の傘下に入り、人員不足が加速。なかでもオールド・デトロイトでは警官狩りが横行し、パトロールも満足にできないありさまとなっていた。
 新たにオールド・デトロイトに配属された警察官アレックス・マーフィーは、最初のパトロールで惨殺されてしまう。その死体に目を付けたのは、オムニ社で新兵器を開発中のロバート・モートンだった。
 マーフィーは記憶を持たない自律機械へと改造され、ロボコップとして治安維持に当たるが……。

 データベースには「原作」とあるのですが、読んでみたらノベライズの方でした。
 文章と映像では、得意とする表現方法が違うと思うのですが、ノベライズの場合、映像に合わせて書くことになってしまうので、どうしても無理が出てきてしまいます。本作も、多少変えてあるらしいのですが、ぎこちなさがありました。
 ノベライズって、ちょっと苦手かもしれません。


 
 
 
 
2010年08月20日 
ジョン・ダニング(宮脇 孝雄/訳)
『失われし書庫』ハヤカワ文庫HM

 R・バートンの稀覯本を入手して一躍時の人となった古本屋クリフを、それは私の書庫から盗まれた本だと主張する老婦人が訪れた。彼女の祖父はバートンと交流があり、献本で埋め尽くされた一大書庫を持っていたが、祖父の死と同時に騙し盗られたという。彼女の頼みで失われた蔵書の探索を始めた矢先、クリフの周囲で強盗殺人が。だが元刑事のクリフの勘はこれは計画的犯行だと告げていた…本好き垂涎の古書蘊蓄ミステリ。
(以上、「BOOKデータベース」より転載)

 クリフを訪ねてきた老婦人は、ジョゼフィン・ギャラント。自分が相続するはずだった蔵書の数々を、今でも忘れられずにいます。そして唯一手元に残っていたバートンの初版本『東アフリカ初踏査』を託し、息を引き取ります。
 クリフは、ジョゼフィンの世話をしていたボランティア、ココ・ビュージャックを探し当て、ふたりで謎に挑むことになります。バートンの生涯には三ヶ月の空白時期があるのですが、ジェゼフィンの祖父チャールズ・ウォレンと共にアメリカを旅していたらしいのです。蔵書の中には、その時期に書かれたバートンの日誌が含まれているのですが……。

 クリフ・ジェーンウェイのシリーズ三作目。
 バートンをめぐるミステリと、蔵書の行方を追うミステリ、ふたつが折り重なって展開していきます。ジョゼフィンの『東アフリカ初踏査』を狙ったと思われる殺人事件が起こり、クリフも襲われてしまいます。
 犯人の目的とは?
 最後の最後まで、なにかがあります。ありますが、前二作もそんな感じでしたので、途中で展開が読めてしまいました。読んで損はなかったとは思いますが……。


 
 
 
 
2010年08月21日
ラルフ・イーザウ(酒寄 進一/訳)
『パーラ』上下巻/あすなろ書房

 語り部ガスパーレをおそった奇妙な「ことばの病」。詩人の町シレンチアはじわじわと病にむしばまれていく。ガスパーレを助けるため、ひとり果敢に謎に立ち向かうパーラを待ち受けていたものは…。
(以上、上巻「BOOKデータベース」より転載)
 近づくほどに遠ざかる謎の古城をめざし、不思議な庭園へと足をふみいれたパーラとジュゼッペ。呪われた庭で明かされていく「ソネットの花輪」に託された過去、そしてパーラ出生の秘密とは。
(以上、下巻「BOOKデータベース」より転載)

 児童書です。
 シレンチア市に暮らすのは、話好きな人々。パーラもそのうちのひとり。〈語り部〉だったガスパーレ・オラトーレから、さまざまな物語を聞いて育ちました。
 ある日、パーラがガスパーレの家に行くと、ガスパーレは口がきけなくなっていました。パーラは医者を呼びますが、原因は分かりません。病が伝染する可能性もあるため、ふたりは隔離されてしまいます。
 シレンチアの街には古城があり、今では大金持ちのジットが住んでいます。ジットはシレンチアの出身で、街をよりよくしようと、さまざまなことを行います。
 字を書くこともできなくなったガスパーレは、絵で、犯人はジットであると訴えるのですが……。

 パーラが、ガスパーレを助けようと、ひとり悪戦苦闘。途中から、ガスパーレの息子ジュゼッペが合流し、古城に住むジットに挑みます。
 人々に〈ことばの喪失〉が広がっていく過程は、ミヒャエル・エンデの『モモ』のようでした。他にもいろいろと趣向がこらされているのですが、どうも生かしきれていないような……。
 おもしろくはあるのですけれど。


 
 
 
 
2010年09月04日
ウォルター・ジョン・ウィリアムズ(大西 憲/訳)
『ナイト・ムーヴズ』ハヤカワ文庫SF804

 人類はついに星々を征服した。画期的なフォクナー・ジェネレータの開発で光速の90パーセント近い速度での宇宙飛行が可能になったのだ。だが発明者フォークナー博士は、人口の激減した地球で無聊の日々を送っていた。そこにはるかなアマテラス星から、テレポーテーションができる動物が見つかったという知らせが届く。博士はさっそく、物質転送の鍵を秘めたこの動物の調査に赴いたが、謎はますます深まるばかりだった! 遺伝子工学で生み出されたケンタウロスの奏でる竪琴のメロディにのせて、新鋭が情感ゆたかに紡ぎ出す神話的SF叙事詩!
(以上、「BOOKデータベース」より転載)

 フォークナーは、最終的にはアマテラス星に赴くのですが、たどり着くのは物語が半分を過ぎてから。テレポーテーションをする動物〈ラグ〉には、なかなかスポットライトが当たりません。
 主題は、テレポーテーションの謎ではなく、フォークナーが生み出した世界での人間模様のようです。一応、謎の解決はありますが……。

 
 

 
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