ロズウェル・エイリアンそっくりの外見で生まれてきたアレグザンダーは、宇宙飛行士を志し、自らの故郷(?)火星を目指すようになる。有人火星探査と少年の成長物語を情感たっぷりに描き、星雲賞を受賞した表題作。巨匠アーサー・C・クラークの書籍初収録作「電送連続体」、ソ連の知られざる宇宙開発史を綴ったダンカンのスタージョン賞受賞作「主任設計者」ほか、人類永遠の夢である宇宙開発テーマの名品全7篇を収録。
(引用:「BOOK」データベース)
アンディ・ダンカン(中村 融/訳)
「主任設計者」
アカデミーを卒業したエヴゲニー・アクショーノフは就職先に、バイコヌール宇宙基地を選んだ。アクショーノフは主任設計者と共に、ソヴィエト連邦の宇宙開発に関わっていくが……。
シオドア・スタージョン記念賞受賞作。
主任設計者ことセルゲイ・コロリョフは実在の人物。他に、宇宙飛行士のガガーリンなども出てきます。
宇宙開発にかかわる苦難だけでなく、特殊な社会体制ゆえの苦悩もありました。いかんせん知識が乏しく、どこまでが現実でどこからが空想かは判断つきませんでしたが、濃厚で、実に興味深い作品でした。
ウィリアム・バートン(中村 融/訳)
「サターン時代」
アメリカのアポロ計画が、1972年の17号で終了にならなければ辿ったかもしれない物語。
1974年のアポロ21号から始まります。既知の人物が多数登場して、その点はとてもおもしろいのですが、あまり文量もなく、架空の歴史を語る方向性が前作「主任設計者」と重なる分、やや二番煎じな印象が残ってしまいました。
アーサー・C・クラーク&スティーヴン・バクスター(中村 融/訳)
「電送(ワイア)連続体」
電送技術が実用化されると、地球表面では距離が意味をもたなくなった。ワイヤ・プラットフォームさえあれば、どんなものでも瞬時に移動させることが可能。それは地球表面にはとどまらず……。
テスト・パイロットだったヘンリー・フォーブズを中心に、ちょっと違った宇宙開発が展開していきます。「主任設計者」がソヴィエト、「サターン時代」がアメリカなら、こちらはイギリスもの。ただし、前二作にくらべ、より創作の度合いが大きいです。
ジェイムズ・ラヴグローヴ(中村 融/訳)
「月をぼくのポケットに」
11歳のルーク・ウェザビーは、アメリカの月探査に熱烈な興味を抱く月着陸狂い。そんなルークに、いじめっ子のバリー・グリフィンが声をかけてきた。月の石をいらないか、と。ルークは、言い値の10ポンドを支払うべく、奔走するが……。
子供世界が舞台ながらも、ルークの、半端じゃない月にかける思いがひしひしと伝わってくる作品。現実にいそうです、ルークやバリーのような子供たちが。
なおラヴグローヴは、ジェイ・エイモリー名義でも著作があるそうです。
スティーヴン・バクスター(中村 融/訳)
「月その六」
宇宙飛行士のバドは、同僚のスレイドと共に月に降り立った。目的は、ワイルドウッド・クレーターに降下した無人探査機サーヴェイヤー7号。サンプルをいくつか回収する予定だ。
ところが、バドが陽炎のような光を目撃したつぎの瞬間、状況は一変。スレイドも、月着陸船も消えてしまった。バドは途方にくれるが……。
バドの現在と未来が、平行して語られていきます。それがなかなか巧みで、当初はわけが分からなかった未来の出来事の意味が、徐々に明らかになっていきます。
エリック・チョイ(中村 融/訳)
「献身」
アレース4号は、4人の男女を乗せて火星に降り立った。この遠征計画に批判がないわけではない。そのうえ後続のアレース5号は、機械的な不調から出発が遅れていた。
指揮官のクリストファーは、一般大衆うけするようにテレビ撮影を行うが、エンジニアリング・スペシャリストのソロヴィリョフは、自分の仕事に邁進しようとする。
アイザック・アシモフ記念賞受賞作。
チームワークがいまひとつなままの、アレース4号のクルーたち。そんな彼らが予期せぬトラブルに見舞われます。地球から遠く離れ、指示や助言を得られない中、生命の危機に立たされる4人。
真面目なソロヴィリョフの視点から、淡々と語られます。
アダム=トロイ・カストロ&ジェリイ・オルション(浅倉久志/訳)
「ワイオミング生まれの宇宙飛行士」
ワイオミングにある田舎町で、ひとりの男の子が誕生した。ドライアー夫妻は赤ん坊にアレグサンダー(アレックス)と名付けるが、アレックスは産まれる前から顔を知られていた。映画や本やタブロイド紙で、ロズウェル・エイリアンの顔として。
アレックスは好奇の目にさらされながら成長し、宇宙飛行士を志すようになるが……。
星雲賞受賞作。
物語は、コリン・フォーサイズの語りで展開していきます。コリンは重症の筋ジストロフィーを患っており、身体を動かすことができません。ですが、知能は抜群で、宇宙への熱い思いはアレックスに引けをとりません。
コリンから見たアレックス、というスタンスがあるため思いは熱くとも、一歩引いた感があります。ただ、後日ふりかえって書いた、という設定のためか、結末がばれてしまうような言葉もあります。そこがちょっと残念。
表題作に選ばれるだけはあるな、とは思いますが。
水素の大気にメタンの海、重力は赤道付近で3G、極地では700G近くにも達する惑星メスクリン。この惑星を調査すべく、地球人は多額の費用をついやし、探測ロケットをその極地に着陸させた。だがロケットは故障して発進せず、せっかく集めたデータも回収不能に……。そこで地球人はメスクリンの知的生命にその捜索を依頼した。船をあやつり、地球人と意思疎通できるほどの知能を持つ異星人たち——体長15インチ、直径2インチのムカデのような生物に託された使命の成否は!? 科学的データに裏づけられた高重力惑星に展開される冒険をいきいきと描きだすハードSFの金字塔
(以上、早川書房による内容紹介文より転載)
惑星メスクリンのバーレナンは船長にして商売人。ある日〈空の人〉と出会い、その言葉を学んだ。そして、彼らのために極地への旅にでることに同意するが……。
ときどき〈空の人〉こと地球人視点もありますが、主にバーレナンの思考や体験を中心に展開していきます。メスクリンの住人とはいえ、バーレナンにとってもはじめての地。聞いたこともないものや、さまざまな苦難が待ち受けています。
地球人の目的はロケットですが、バーレナンの目的は?
何度読んでも楽しめます。
地上での大災害の後、生存者たちは上空にそびえたつ巨大な柱の上にいくつもの都市を建設し、天使のような翼をもつ姿に進化した。だが、天空人の世界を支える地上からの物資の供給システムが妨害されているらしい。スカイシティの一大事を調査する使命を帯びて地上に派遣されたのは、生まれつき翼のない少年アズだった。天空と地上、ふたつの世界の相克を描く冒険ファンタジー。
(引用:「BOOK」データベース)
《翼のない少年アズの冒険》第一巻
アザレル・ガブリエルサンは、天空人には珍しく、翼を持たずに生まれてきた。他に翼のない住民と言えば、80歳を越える老婆がひとりいるくらい。
アズにとって、誰もが簡単にできることが難しい。幼いころから差別され、心は屈折し、友だちもいなかった。
そんなある日、アズの家にレディ・セリーナからの使者がやってくる。レディ・セリーナは、エアボーン界でもっとも権力のある指導者。アズが秘密裏に依頼されたのは、地上の調査だった。
スカイシティは、地上からの物資の供給で成り立っている。資源は自動機械によりエレベーターで引き上げられているのだが、それらが滞ってきているのだ。
アズはまだ16歳だったが、翼がないために調査員として選ばれた。地上に興味を持っていたアズは承諾し、エレベーターで地上へと向かうが……。
地上には、ほとんどの天空人が滅びたと思っている地上人がおり、宗教国家を築き上げています。人々は亡くなると、新しい体と翼を得て天空都市で生まれ変わる、と信じられてきました。一方で、搾取されるばかりの現体制を覆そうとする勢力が存在しています。
設定はしっかりしているのですが、物語そのものはあっさりめ。印象としては、児童書のようでした。もうちょっと、つっこんでくれてもよかったような……。
「ぼくの記憶は80分しかもたない」博士の背広の袖には、そう書かれた古びたメモが留められていた——記憶力を失った博士にとって、私は常に“新しい”家政婦。博士は“初対面”の私に、靴のサイズや誕生日を尋ねた。数字が博士の言葉だった。やがて私の10歳の息子が加わり、ぎこちない日々は驚きと歓びに満ちたものに変わった。あまりに悲しく暖かい、奇跡の愛の物語。第1回本屋大賞受賞。
(引用:「BOOK」データベース)
交通事故で、記憶する能力に障害を負ってしまった博士。そんな博士の面倒をみているのは、兄嫁の未亡人。未亡人は博士を離れに住まわせ、家政婦を雇います。
こうして雇われることになった主人公は、実は10人目の家政婦。みんな、クレームによって交代させられたのですが、主人公も、博士の記憶の壁に戸惑います。
状況が一変するのは、主人公に10歳の息子がいることを博士が知ったとき。博士は子供が大好きで、つれてくるように命令します。
母子と博士、3人の時間が穏やかに流れていくのですが……。
物語は、主人公である「わたし」の独白でつづられていきます。すべての登場人物が肩書きやあだ名で呼ばれているためか、なにかで包んだような雰囲気。
数字の美しさが、また格別。
元数学者である博士の、数字にかける熱くて優しい想いが、全編を通じてきらめいてました。何度読んでも美しい話です。
赤道上の同期衛星から超繊維でできたケーブルを地上におろし、地球と宇宙空間を結ぶエレベーターを建造できないだろうか? 全長四万キロの“宇宙エレベーター”建設を実現しようと、地球建設公社の技術部長モーガンは、赤道上の美しい島国タプロバニーへやってきた。だが、建設予定地の霊山スリカンダの山頂には三千年もの歴史をもつ寺院が建っていたのだ…みずからの夢の実現をめざす科学者の奮闘を描く巨匠の代表作。
(引用:「BOOK」データベース)
宇宙エレベーターに懸けているヴァニヴァー・モーガンの物語に、古代タプロバニーの国王カーリダーサのエピソードと、異星人の恒星間宇宙探査機と人類との交信が絡まりあって展開していきます。そのため、主題である宇宙エレベーターにはなかなか集中できません。が、読了すると気づかされます。
歴史はつながっているのだな、と。
いろんなことが起こりますが、クラークらしく、すっきりとまとめられてました。何度でも読みたい作品です。
アメリカ南部の町、バスコム。ここでは古い家系について信じられていることがある。ホプキンス家の男は必ず年上と結婚する、クラーク家の女は床上手、そして、ウェイヴァリー家の者には不思議な才がある——園芸に秀でたクレアが今は独り暮らすウェイヴァリーの家に、10年前家出した妹が幼い娘を連れて帰ってきた。奇妙な共同生活はやがてすべてを変えはじめ…。絆を取り戻してゆく姉妹とそれぞれの恋愛を中心に、田舎町の人間模様をマジック・リアリズムの香り豊かに描き、口コミから全米ベストセラーになった美しくも繊細な物語。
(引用:「BOOK」データベース)
クレア・ウェイヴァリーは、裏庭で草花を育て、食品の販売と出張調理サービスで生計をたてていた。ひとり暮らしで、遠い親戚のエヴァネルがときどき訪ねてくるくらい。
家と仕事だけで満足していたクレアだったが、隣に越してきた美術講師のタイラー・ヒューズの出現で状況が一変。クレアは、タイラーをなんとか遠ざけようとするが……。
一方、10年前に町を出たシドニー・ウェイヴァリーは、同棲しているデイヴィッド・レオーニに怯えていた。ふたりの間には5歳になる娘ベイがおり、かつて母親に捨てられたことのあるシドニーは、自分はよい母親になろうとしてきた。しかし、デイヴィッドの暴力はとどまるところを知らず、シドニーは監視される日々。
シドニーは、たびたび嗅ぐ故郷の香りに、バスコムに帰る決心を固める。協力者の助けで夜中に脱出したシドニーは、安物の車を10日間走らしつづけ、ようやく帰郷した。
こうして姉妹と幼子の生活が始まるが……。
クレアとタイラーのロマンスのあたりは、ハーレクインのよう、と思ったら、やはりそちら系の作品を書いていた作者さんだそうで、なるほど、と。
主役はクレアですが、物語を動かしているのは、妹のシドニーの存在です。シドニーは、故郷に戻って心の傷をいやしていきますが、徐々にデイヴィッドの陰がしのびよります。そして、昔の恋人ハンター・ジョンとの再会や、ハンター・ジョンと結婚したエマ・マトソンの嫉妬など、さまざまなことが起こります。
田舎の町を舞台にした、少し不思議な物語でした。
あたしはトマシーナ。毛色こそちがえ、大叔母のジェニィに生きうつしと言われる猫。あたしもまたジェニィのように、めったにない冒険を経験したの。自分が殺されたことから始まる、不可思議な出来事を…。スコットランドの片田舎で獣医を開業するマクデューイ氏。動物に愛情も関心も抱かない彼は、ひとり娘メアリ・ルーが可愛がっていたトマシーナの病気に手を打とうともせず、安楽死を選ぶ。それを機に心を閉ざすメアリ・ルー。町はずれに動物たちと暮らし、“魔女 ”と呼ばれるローリとの出会いが、頑なな父と孤独な娘を変えていく。ふたりに愛が戻る日はいつ? 『ジェニィ』と並ぶ猫ファンタジイの名作、新訳決定版。
(引用:「BOOK」データベース)
アンドリュー・マクデューイは、かつて外科医になることを夢見ていた。ところが、獣医で暴君の父親に猛反対され、しぶしぶ獣医の道を選んだ過去を持つ。
マクデューイの親友で牧師のアンガス・ペディは、妻アンに先立たれ傷心のマクデューイを、インヴァレノックに誘う。ちょうど、獣医が引退するところだったのだ。
愛娘のメアリ・ルーとインヴァレノックに移り住んだマクデューイは、誠実で、率直で、公正な人間だという評判を勝ち得る。同時に、動物をすぐに安楽死させてしまうことでも有名になった。何しろ、自分がなりたかったのは外科医であって、動物には、愛情も、感傷も、関心も抱いていないのだから……。
メアリ・ルーは、父親が大好きだった。そして、飼猫のトマシーナを愛していた。
ある日トマシーナは、汽船見物に出かけたメアリ・ルーの肩に座っていた。運動神経には自信があったが、突然の汽笛にびっくり仰天。肩から無様にころげ落ち、身体を打ち付けてしまう。身体が動かせなくなったのは、その翌日のこと。
メアリ・ルーが、様子のおかしいトマシーナを父親の元に連れていったとき、診療所には、事故に遭った盲導犬のブルースが運び込まれてきた。マクデューイは、ブルースにかかりきり。立てこむ中トマシーナに下ったのは、髄膜炎の診断と安楽死の判断だった。
トマシーナを失ったメアリ・ルーは悲しみにくれ、病気になってしまうが……。
前作『ジェニィ』は猫の視点からの物語でしたが、今作は、さまざまな人(と猫)の視点から語られます。
外科医に未練があるマクデューイと、マクデューイを心配しているアンガス、魔女と噂されるが実体はうら若い娘ローリ。そのローリがタリタと名付けた猫は、ブバスティスの猫の女神バスト・ラーの生まれ変わりだと主張します。バスト・ラーは、マクデューイに破滅をもたらそうとしますが……。
とにかく、涙、涙。
バスト・ラーの登場には当初びっくりしましたが、真相が判明して、納得。
探偵稼業は女には向かない。ましてや、22歳の世間知らずの娘には——誰もが言ったけれど、コーデリアの決意はかたかった。自殺した共同経営者の不幸だった魂のために、一人で探偵事務所を続けるのだ。最初の依頼は、突然大学を中退しみずから命を断った青年の自殺の理由を調べてほしいというものだった。コーデリアはさっそく調査にかかったが、やがて自殺の状況に不審な事実が浮かび上がってきた…可憐な女探偵コーデリア・グレイ登場。イギリス女流本格派の第一人者が、ケンブリッジ郊外の田舎町を舞台に新米探偵のひたむきな活躍を描く。
(引用:「BOOK」データベース)
バーニイ・プライドが亡くなり、探偵事務所の共同経営者だったコーデリア・グレイは、ひとりで探偵稼業をつづけていくことを決めた。
バーニイの葬儀の日、事務所にエリザベス・レミングと名乗る女性が訪ねてくる。彼女の雇い主は、ロナルド・カレンダー卿。自然保護論者として有名な微生物学者だった。
コーデリアは、カレンダー卿から調査の依頼を受ける。カレンダー卿は、自殺した息子マークの死の理由を知りたがっていた。
マークは21歳。ケンブリッジの大学を突然中退し、マークランド少佐の庭師として就職していた。安い賃金で勤勉に働き、マークランド邸の敷地内のカテージにひとり住み、そして、ある日首をくくって亡くなった。
コーデリアは、マークランド少佐に面会し、あのカテージに泊まり込み、新聞社、警察、大学と飛び回る。やがて、真相が明らかになるが……。
女流作家による、女私立探偵のミステリ。
好みが分かれそうな作風でした。一人称ですが、コーデリアが見ているであろう景色がこと細かく記されていて、読んでいて食傷気味。その細かさの中に伏線がちりばめられていて、
うまい!
とは思うのですが……。
10歳のバスチアンは本を読んでいた——ファンタージエン国は、正体不明の〈虚無〉におかされ滅亡寸前。その国を救うには、人間界から子どもを連れてくるほかない……。映画化された大長編ファンタジー
(以上、岩波書店による内容紹介文より転載)
バスチアン・バルタザール・ブックスは、いじめられっ子。背は低く、太っちょで、弱虫で臆病者で落第生。11月の寒い雨の朝、いじめっ子たちから逃れるため古書店に逃げ込んだ。
バスチアンは古本屋で、あかがね色の本に出会った。それはそれはすばらしい本で、本きちがいのバスチアンは一目惚れ。どうしようもなく、盗んできてしまう。
すでに授業は始まっており、家に帰ることもできないバスチアンは、学校の屋根裏部屋に忍び込んだ。盗んできた本『はてしない物語』を読むために……。
ファンタージエン国は正体不明の〈虚無〉に蝕まれ、滅びつつあった。ファンタージエンそのものである女王幼ごころの君のご病気も重く、それらは互いに関連があるらしい。しかし、ご病気の原因は名医たちにも分からなかった。
幼ごころの君は、緑の肌族の勇士アトレーユに、救いの道の探索を依頼した。アトレーユは全権を委ねられ、いつ終わるともしれない旅に出る。苦難の末、外国(とっくに)に住む人の子によって、幼ごころの君の病は完治するとつかむが、外国(とっくに)に行くことができない。
物語を読み、アトレーユと共に冒険をしてきたバスチアンは、自分なら幼ごころの君を助けられると確信するが……。
物語の途中まで、アトレーユの冒険で展開していきます。バスチアンも一緒になって冒険してはいますが、それだけでは変われません。
物語が大きく転換し、視点が完全にバスチアンに定められてからが、真の物語だと思いました。もちろん、アトレーユも最後までバスチアンに関わっていきます。
臆病なバスチアンがどう変わり、どのようにして結末を迎えるのか。なんとも深い物語でした。
表紙に二匹の蛇が描かれたあかがね色の本は、どうやって街の古本屋にたどりついたのか。古本屋の老主人がファンタージエンでしてきた冒険とは…。「はてしない物語」から20余年、ファンタージエンの新たなる物語。
(以上、「MARC」データベースより転載)
カール・コンラート・コレアンダーは、24歳。大学を退学処分になり、古本屋の求人広告に目をとめた。
古本屋のオーナーは、タデウス・ティルマン・トルッツ。カールは気に入られるが、喜びも束の間、トルッツは姿を消してしまう。
古本屋の奥には、外観では予想もつかない数の部屋があり、まるで迷宮。カールは、トルッツが隠れている可能性にかけて、迷宮に踏み入る。そこで、鉛筆のような小人アルファベータガンマに出会った。
アルファベータガンマの話によると、ここはファンタージエン図書館で、本が消えて〈虚無〉が出現する現象に襲われているという。図書館長のトルッツは原因をさぐりに出かけたまま音信不通となっている。
カールは、いかれた夢だと思いながらも、不思議なファンタージエン国へトルッツ探索の旅に出るが……。
〈ファンタージエン〉は、ミヒャエル・エンデ『はてしない物語』の内なる世界を舞台に、いろいろな作家が続編を書いているシリーズです。今作は、ファンタジー作家であるラルフ・イーザウによる『はてしない物語』前史、といったところ。
『はてしない物語』で登場した場所や人物、小道具など、さまざまなことが織り込まれてます。うまい使い方をした、と思えるものがある一方で、違和感があるものもありました。
かなり以前に『はてしない物語』を読んで、内容がうろ覚えになっている人の方が楽しめるのかもしれません。