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2012年の記録
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 7/現在地
 
 
 10
 
このページの本たち
イルカの日』ロベール・メルル
インテグラル・ツリー』ラリイ・ニーヴン
スモーク・リング』ラリイ・ニーヴン
最後の一球』マイクル・シャーラ
アルフハイムのゲーム』ジャスティナ・ロブソン
 
アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う』ゲイル・キャリガー
スターフォース 最強の軍団、誕生!』B・V・ラーソン
策謀のイェンディ』スティーヴン・ブルースト
バジリスクの魔法の歌』パトリシア・A・マキリップ
黎明の王 白昼の女王』イアン・マクドナルド

 
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2012年08月06日
ロベール・メルル(三輪秀彦/訳)
『イルカの日』ハヤカワ文庫NV

 セヴィラ教授は、イルカに言葉を教える研究をしていた。
 セヴィラの実験対象は、牡イルカのイワン。産まれてすぐ母イルカを亡くし、セヴィラが母親がわりとなって育ててきた。
 イワンは語彙を蓄積していくが、発音できるのは単音節語のみ。しかも、単語と単語をつなげて文章にすることができない。
 イワンに限界を超えさせるためセヴィラは、牝イルカを連れてくることを思いつく。実験は成功し、海で捕獲された牝イルカのベシーはイワンにイルカ語を教え、イワンはベシーに英語を教えた。
 セヴィラの挙げた成果は一般に公開され、世界中で話題となるが……。

 とにかく読み辛いです。
 一応の筋となっているのは、セヴィラのイルカ研究。その研究を軍事目的で利用しようとたくらむ組織が登場します。セヴィラの研究は国家機密になっているのですが、助手の中にはスパイが紛れ込んでいます。
 だだでさえ読みにくい文章のうえ、本筋とは無関係なエピソードがてんこもり。ジャンルにとらわれない小説を目指しすぎて、収拾がつかなくなった印象が残ってしまいました。


 
 
 
 

2012年08月07日
ラリイ・ニーヴン(小隅 黎/訳)
『インテグラル・ツリー』ハヤカワ文庫SF693

 人々は、インテグラル樹の支幹で暮らしていた。
 インテグラル樹は、スモーク・リングの中にある。中性子星ヴォイを取り囲む、居住圏であるスモーク・リングの中に。
 ギャヴィングは、クィン一族の少年。
 クィン一族のインテグラル樹がスモーク・リングの中心から外れはじめ、一族は飢餓に陥りつつあった。一族を率いる〈議長〉は、新たな食料を得るために探検隊を送り出す。ただ、それが名目であることは誰もが承知していた。
 選ばれたのは不具者と厄介者ばかり。探検隊の指揮をとる〈議長〉の娘婿クレイヴは、一族の人気も高く随一の狩人だが、妻とは別居中。ギャヴィングは、〈議長〉の息子が事故に遭ったときに居合わせたため、他のメンバー同様、追い出されてしまったのだ。
 一行はインテグラル樹を登っていき、やがて樹の中心へとたどりついた。その向こうは、かつて袂を分かったドールトン=クィン一族の縄張り。クレイヴは、探検を打ち切って成果を持ち帰ることに決める。
 ところが、一行はドールトン=クィンに見つかってしまった。戦闘になるが、世界の異変もほぼ同時だった。インテグラル樹がふたつに裂けたのだ。
 インテグラル樹も生き物。スモーク・リングを外れれば生きていくことはできない。そのため、ふたつに分かれて片方を捨てることで、もう片方を中心に引き戻していたのだ。そして、捨てられた片方に暮らしているのは、クィン一族だった。
 クィン一族となった探検隊は投げ出され、漂う樹皮へと避難するが……。

 インテグラル樹に暮らす人々は、播種ラム・シップ〈紀律(ディシプリン)〉号の乗組員の子孫。彼らがやってきたのは、512年前。持ち込まれた科学技術が、ほんのちょっぴり残ってます。
 実は、〈紀律(ディシプリン)〉号のマスター・コンピュータ人格である〈監督官〉ケンディは、スモーク・リングの外で、まだ活動しています。ある事件があって乗組員たちと断絶したのですが、その子孫たちと交信しようと、努力しているところです。なお、そのときの事件については、続編『スモーク・リング』に持ち越されてます。

 冒険につぐ冒険で、一難さってまた一難。
 ギャヴィングと仲間たちは、知恵と度胸と結束力で乗り切っていきます。ときどき、登場人物たちが自分たちの道のりを振り返ってしみじみするのですが、そうするに相応しい物語でした。


 
 
 
 
2012年08月08日
ラリイ・ニーヴン(小隅 黎/訳)
『スモーク・リング』ハヤカワ文庫SF788

 『インテグラル・ツリー』続編。
 中性子星ヴォイは、居住可能なスモーク・リングに取り囲まれていた。スモーク・リングには、インテグラル樹と共に多くの原生生物が棲息している。
 クィン一族を中心とした市民たちがシチズン・ツリーに住みついて14年。彼らはインテグラル樹をはなれることもなく、平穏に暮らしていた。
 ある日〈科学者〉ジェファーは、〈監督官〉ケンディからの接触を受ける。
 ケンディは、播種ラム・シップ船〈紀律(ディシプリン)〉号のコンピュータ人格。かつてシチズン・ツリーの市民たちと交信した際には良好な関係を築けず、ひそかに見張っていたのだ。
 ジェファーはケンディの目的をいぶかしむが……。
 そのころシチズン・ツリーには、燃えた木が接近しつつあった。木は〈きこり〉のサージェント一家の持ち船。彼らは市民たちによって救助される。
 サージェント一家によると、無人だと思われていたラグランジュ・ポイント〈クランプ〉に、アドミラルティという街があるという。住民たちは組織され、軍隊を擁し、さまざまなものが交易されている。スモーク・リングの原産種だけでなく、地球産の植物もあるらしい。
 ジェファーは新しい知識や植物に興味を抱くが、〈議長〉のクレイヴは訪問に消極的。表立って動けないケンディは、アドミラルティの様子が知りたくてたまらない。ジェファーの工作に望みをつなぐが……。

 前作『インテグラル・ツリー』で主人公だったギャヴィングは、今回は脇役。けっきょく、クレイヴを筆頭に数人で、アドミラルティを訪問することになります。ただし、シチズン・ツリーの持つ科学遺産は内密にして。
 今回は、冒険らしい冒険はないです。
 新たにこしらえた木の船が賊に襲われたり、軍隊とひともんちゃくあったり、いろんな出来事はあります。その合間に紹介されるのが、人類がスモーク・リングにやってきた当初のエピソード。
 ケンディと乗組員たちが断絶した真相が、ついに明らかになります。文量的には少なくても、市民たちによるアドミラルティ訪問の方がオマケのようでした。  


 
 
 
 
2012年08月09日
マイクル・シャーラ (浅倉久志/訳)
『最後の一球』ハヤカワ文庫NV

 ビリー・チャペルは、メジャー・リーガー。いくつもの記録を持っている大投手だ。17年間、ずっとホークス一筋に投げてきた。
 シーズンもあと数日で終わるという日、チャペルは特ダネ狙いのスポーツキャスターから、ある決定を教えられる。
 ホークスが、チャペルをトレードに出すという。
 チャペルをスカウトしてくれたのは、先代のオーナーだった。彼とは絶対的な信頼関係が結ばれていたが、新しいオーナーとなった息子たちは、チャペルを商品としか見ていない。衰えてきたチャペルに高値がついているうちに、と考えたらしい。
 チャペルとしては、当然、来シーズンもホークスで投げるつもりでいた。まさか、ホークス以外のチームで投げるなど。
 動揺するチャペルだったが……。

 ほぼ1日だけの、短い物語。
 すでに最下位が確定しているホークスと対戦するのは、ワールドシリーズ進出がかかっているヤンキース。舞台はヤンキー・スタジアム。
 その朝チャペルは、恋人のキャロルに別れを告げられています。チャペルは集中してマウンドに立ちますが、ベンチに戻るとさまざまなことを回想してしまいます。キャロルとの出会いとか、野球にかける想いとか、亡くなった両親のこととか。
 チャペルの精神統一のおかげで、大歓声のヤンキー・スタジアムも静寂につつまれているようでした。もうこうなってくると、結果は明らか。感動はするけど、ひとひねり欲しかったかも。
 ルールの説明などはありません。野球を知っている人だけが楽しめる逸品。


 
 
 
 
2012年08月10日
ジャスティナ・ロブソン(和爾桃子/訳)
『アルフハイムのゲーム』ハヤカワ文庫SF1857

 《特務探査官リーラ・ブラック》シリーズ第一巻。
 2015年。
 事故によって時空間が損傷し、かつて地球と呼ばれていた〈オートピア〉世界は、5つの異界とつながった。
 元素の支配する〈ズーメノン〉。魔物たちの暮らす〈デーモニア〉。未知の〈タナトピア〉。もっとも友好的な〈フェアリー〉。そして、エルフと自称する者たちが住まう〈アルフハイム〉。〈アルフハイム〉は元々排他的だったが、最近、その傾向が強まっている。
 リーラ・ブラックは、国家安全保障局の特務探査官。表向きは、要人ボディガードとしてダブルセーフ社に勤務している。
 今度のリーラの仕事は、エルフのロックスター、ザルの身辺警護。高度な魔法が駆使された脅迫状が届いたのだ。リーラを雇ったのは、ザルと契約しているレコード会社。そのためザルは、リーラの存在を容認しつつも協力的ではない。
 リーラには、エルフによる忌わしい記憶があった。淡々と仕事をこなそうとするが……。

 前半は〈タナトピア〉、後半は〈アルフハイム〉で展開します。
 ウリは、リーラがサイボーグであること。体内に収納庫があったり、ジェットで空飛んだり、ちょっと、すさまじいです。軽率な行動が多いのは、機能がすごすぎるせいでしょうか。
 そういったリーラの能力も含めて、きちんと練らなかったんじゃないかという印象。それとも、読み手側が伏線を見落としたか。
 トールキンの《指輪物語》を意識した箇所がいくつもあるのですが、逆に、できばえの落差を印象づける結果になってしまった気がします。残念。


 
 
 
 
2012年08月11日
ゲイル・キャリガー (川野靖子/訳)
『アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う』
ハヤカワ文庫FT

 《英国パラソル奇譚》シリーズ第一巻。
 19世紀ロンドンでは、昼間族とも呼ばれるふつうの人間だけでなく、異界族も共存していた。彼らが、社会的地位も得て堂々と暮らしているのは、数がきわめて少なく、異界管理局(BUR)がきちんと管理しているためだ。
 さらに数が少ないのは、反異界族。かつて吸血鬼を狩っていた〈魂なき者(ソウルレス)〉たち。反異界族は、触れるだけで異界族の力を消滅させてしまう。
 アレクシア・タラボッティは、ロンドンで唯一の反異界族。容姿がすぐれないうえ、イタリア人の血が半分入っていることもあり、婚期を逃してしまった。オールドミスとなると、個人主催の舞踏会はたいしておもしろくない。
 ある夜、招かれた舞踏会に退屈したアレクシアは、ひとり図書室でお茶をしていた。そこに現れたのは、はぐれ吸血鬼。
 通常、吸血鬼たちは、女王吸血鬼のもと群をつくっている。彼らは取り巻き(ドローン)を従えていることもあり、一般人の血を求めることはない。それに、由緒正しい吸血鬼なら、アレクシアのことは知っていてしかるべき。
 ところが、アレクシアは襲われてしまった。
 吸血鬼を返り討ちにしたアレクシアは、かけつけたBURのコナル・マコン卿に捜査協力を申し出るが、マコン卿はにべもない。そんなアレクシアに、ナダスディ伯爵夫人から招待状が届いた。
 ナダスディ伯爵夫人は、ウェストミンスター吸血鬼群の女王。あの謎の吸血鬼の死臭は、ウェストミンスター群のにおいがしていた。そのことを知ったナダスディ伯爵夫人は、当事者であるアレクシアから情報を得ようとしたらしい。
 アレクシアは、こっそりと伯爵夫人を訪問するが……。

 ヴィクトリア朝ロンドンを舞台に、アレクシアが大活躍。なお、オールドミスというのは当時の基準なので、実際は四半世紀ほどの年齢です。
 アレクシアとは犬猿の仲、という感じに登場するのが、BURのマコン卿。ウールジー城人狼団のボスでもあります。実は、アレクシアのことが気になって仕方ありません。

 登場人物たちの個性が前面に出てきているのですが、ちょっとした出来事が伏線になっていたり、ストーリーもしっかりしてました。ロマンスが多すぎると思うか、適度と思うかで評価が分かれそうです。


 
 
 
 
2012年08月12日
B・V・ラーソン(中原尚哉/訳)
『スターフォース 最強の軍団、誕生!』
ハヤカワ文庫SF1862

 カイル・リグズは、コンピュータサイエンスが専門の大学教授。ある夜、謎の宇宙船に襲われてしまう。
 宇宙船はリグズだけでなく、世界中で人々をさらっていた。
 宇宙船の内部ではテストが実施され、不合格者は容赦なく廃棄処分にされてしまう。取り仕切っているのは、コンピュータ。合格者は指揮要員として、船に命令する立場になる。ただし、命令が拒否されることもある。
 指揮要員となったカイルは、船を《アラモ》と名付けた。
 《アラモ》は、指揮要員に危害が加わる可能性を徹底的に排除しようとする。また、製造者について語ることも許されていないらしい。カイルは、プログラムの抜け道をさがすようにして《アラモ》から情報を得ようとする。
 《アラモ》の同型機は無数にあった。
 カイルは、同じく指揮要員となった人々と連絡をとりあうようになる。そんなカイルに、オーストラリア人のジャック・クロウ大佐が声をかけてきた。クロウは、自分をリーダーにした組織を築こうとしているらしい。
 カイルは返答を保留するが……。

 インディーズの電子書籍として発表された作品。
 謎の宇宙船の目的は、敵対する宇宙船を撃破すること。唐突に始まった最初の戦闘で、カイルは徒党を組んだ方がいいと判断します。そして組織化が始まり、既存政府との交渉なども始まります。
 前半は、カイルのプログラミングのスキルが生かされる場面が多々ありました。そのあたりは新鮮かな、と。
 後半では地上戦に入って、ミリタリSFのようになってます。そうなってもなお、カイルは指揮系統まったく無視のスタンスでいます。こういう人が組織にいたら、困りそう……。
 テンポはいいです。でも、プロの編集者を通してない作品なんだ、と割り引いて読むべきなのでしょうね。


 
 
 
 
2012年08月14日
スティーヴン・ブルースト(金子 司/訳)
『策謀のイェンディ』ハヤカワ文庫FT

 《暗殺者ヴラド・タルトシュ》第二巻。
(第一巻『勇猛なるジャレグ』)
 世界はドラゲイラ族によって支配されていた。ドラゲイラ族は17の家柄に分かれ、順繰りに帝位についている。一方、人間たちは〈東方人〉として蔑まされていた。
 ヴラド・タルトシュは、ジャレグ家の身分を金で買った東方人。
 組織に加わって3年。用心棒から始まったキャリアは、帝都アドリアンカで自分の縄張りを持つまでになった。
 ところが、同じ大ボスの元で縄張りを持っているラリスが、ヴラドの縄張りに侵入してきた。話し合いでは解決せず、ヴラドとラリスの闘争はエスカレート。双方の店に火を放つまでになってしまう。
 ヴラドは大ボスに自粛を要請されるが、そのころには、フェニックス家の女帝ゼリーカのご機嫌も損ねてしまっていた。女帝の通告により、さまざまなことが禁止され、店を開くこともままならない。それはラリスも同じこと。
 ヴラドはラリスの動向を探りつつ、こっそりと営業を再開していく。そんなとき、どうしたわけか〈フェニックス警備兵〉が一斉に引き上げ、ヴラドは二人組の暗殺者によって殺されてしまった。
 駆けつけたドラゴン家の帝位継承者アリーラ・イ=カイロンによって生き返ったヴラドだったが、アリーラは、同じく命を落としていた暗殺者たちをも蘇らせていた。
 暗殺者の一方が、ドラゴン家の者だったのだ。
 暗殺者はなにも語ろうとしないが……。

 『勇猛なるジャレグ』の1年程前の物語。
 ヴラドがまだ独身で、支配地域もそれほど大きくなく、アリーラは帝位継承者を降りようと必死に努力してます。前作では、暗殺者としてのヴラドが前面に出てましたが、今作は、抗争を繰り広げる中ボスとして手下たちを動かしています。
 一作目より時期的に先なので、再読するときには時系列順に読みたいところ。ただ、一作目を読んでいることを前提として書かれているので、いろんな説明が省かれてました。


 
 
 
 
2012年08月16日
パトリシア・A・マキリップ(原島文世/訳)
『バジリスクの魔法の歌』創元推理文庫

 ベリロンの都は、四大公家によって治められてきた。ところが、筆頭だったトルマリン家が、ペリオール家に滅ぼされてしまう。焼き尽くされたトルマリン宮で生き残ったのは、幼い少年ただひとり。密かにカラドリウスと名付け直され、遠い辺境のルーリーへと逃げ延びた。
 ルーリーは、岩の上に建つ詩人たちの学校。カラドリウスには音楽の才能があったが、何年経とうと竪琴だけは弾こうとしなかった。みずから封印した過去が蘇りそうになるのだ。
 ある日ルーリーに、グリフィン・トルマリンを名乗る若者がやってくる。
 トルマリン家が滅んだとき、ペリオール公は遠縁を何人か見逃した。彼はそうした者の息子で、自分で名前を選んだのだった。亡きトルマリン公の世継ぎの名前を。都からはるかに離れたルーリーならば、トルマリンを名乗れると考えて。
 しかし、ペリオール公はトルマリンの存在を許しはしなかった。カラドリウスは奥地で過去を取り戻すが、ルーリーは焼き尽くされてしまう。
 カラドリウスは生まれ故郷に戻るが……。

 都は、ベリロン大公を名乗るペリオール公に牛耳られてます。そのペリオール公の生まれ変わりのように生きるのは、世継ぎのトールではなく、公女のルナ。ルナは、ペリオール公からあらゆることを教え込まれてます。
 トルマリン宮が焼け落ちて37年。廃墟はそのままに放置されてます。ペリオール公を倒そうとしているのは、カラドリウスだけではありません。見逃されたトルマリンの遠縁の者(の子供)たちが、廃墟に集まっては計画を練っています。

 とにかく濃厚。濃厚すぎて、ちょっと理解するのに手間取った、というより、理解しきれなかったかも、といったところ。じっくりと、ひとことひとこと、味わって読むべきなのでしょうね。


 
 
 
 
2012年08月18日
イアン・マクドナルド(古沢嘉通/訳)
『黎明の王 白昼の女王』ハヤカワ文庫FT

 15歳の少女エミリー・デズモンドは、〈十字架と受難〉校の寄宿生。妖精の世界に憧れている。
 エミリーはグレイグダラホに帰省したおり、ブライドストーンの森で妖精を目撃した。写真撮影にも成功し、大人たちに見せるが……。
 一方、エミリーの父、エドワード・ギャレット・デズモンドは、ある発見をしていた。
 エドワードは天文学者。世間は〈ベル彗星〉に沸きかえっていたが、なかなか観測できないでいた。気象条件がおりあい念願叶ったのは、他の天文学者の熱気が退いたころ。
 彗星は尋常ではない発光現象を見せ、エドワードは彗星が、異星人の宇宙船ではないかと考えた。彼らにメッセージを送るため、私財をなげうって、投光通信機を造り始めるが……。

 ほぼ三部構成。
 それぞれ主人公を変えて、異なる手法で展開していきます。読む人によっては名作なのでしょうが、残念ながら合いませんでした。

 
 

 
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