ナイプは宇宙を航行中、事故に遭ってしまった。
仲間たちはあまりに遠く、助けを求めることはできない。ナイプの選択肢はただひとつ。行く手にある恒星系の、文明があるらしい第三惑星への不時着だけだ。
惑星に降り立ったナイプは八ヶ月間潜伏し、地球人たちの言葉を習得すると人間社会に接触するが……。
一方、ナイプの接触を受けた人類は、対処法を誤ってしまう。相手の思想を知らないままに宗教を語り、ナイプを激怒させてしまったのだ。会談していた人々は殺され、骨までしゃぶられてしまった。
それから10年。
ナイプはいまだ野放しのまま。だが、マンハイム大佐率いる地球中枢機構は、ナイプと対決させるために改造人間をつくりあげていた。
ナイプに対峙するのは、バート・スタントン。5年の歳月をかけて、肉体と神経組織を限界近くまで引きあげられている。その代償は、記憶の空虚な欠落。
バートは失われた記憶を追い求めるが……。
侵略テーマを大筋にした、超人スタントンの物語。
人々を震え上がらせているナイプには、確固とした倫理観があります。帰還の準備を進めつつ、真の知性体に、自分がいかに紳士であるか、訴えかけようと努力しています。
地球中枢機構は、6年前からナイプの居所を把握していて、密かに監視を続けています。それもこれも、より大きな目的のため。犠牲を覚悟のうえ、生け捕りしようとしています。そのために造り上げられたのがスタントンです。
発表されてからほぼ半世紀。古いんですけど、まだ人類は、ギャレットの書いた世界に追いつけてないんですよねぇ。そういう意味では古くないんです。
マックス・アンドルースはロケット技術者。宇宙に魅入られていた。
人類の宇宙探検計画は頓挫し、ロケットは地球上の移動で使われるばかり。かつてのように、火星や金星を訪れることもなくなった。マックスはそんなご時世を苦々しく思っている。
そんなとき、上院議員候補エレン・ギャラハーが宇宙開発の支持を表明した。木星にロケットを飛ばすと公言したのだ。その発言は、マックスのような者たちを喜ばせたものの、逆に、多くの票を失う結果に……。
マックスはエレンを当選させるため、対立候補レイトンの秘密帳簿を手に入れる。それはレイトンが、サクラメントの市長在任中、公共事業の工事契約にリベートをとっていた決定的な証拠。レイトンは失脚し、エレンははれて上院議員となった。
エレンと面会したマックスは、木星行きの計画が始動するとき、ある重要ポストに就かないかと打診される。ただし、その時期までに工学の学位をとり、管理する側の仕事に就いていることが条件で。
マックスは、夢の実現へ向けて走り出すが……。
マックスは、一人称、ということもありますが、かなり自己中心的。でも、慕われるタイプの人なんでしょうね。友達が多くて、みんなが、マックスのために一肌脱いでくれます。
再読で、ほとんど忘れてしまっていましたが、マックスに訪れる結末だけは鮮明に覚えてました。そのくらいの衝撃。
《スペルシンガー・サーガ》第一巻
ジョナサン・トマス・メリウェザーは、UCLAの学生。法学部に在籍している。ロックが好きで、ミュージシャンになろうとした時期もあった。
ある日、自分の足にカワウソが蹴つまずき、状況が一変。自室でマリファナ・タバコを楽しんでいたはずが、見知らぬ世界に来ていたのだ。
五フィート半の、洋服を着たカワウソの名前はマッジ。メリウェザーは、マッジによってジョン・トムと名付け直され、魔法使いのクロサハンプの元へと連れていかれる。
実は、亀のクロサハンプこそ、ジョン・トムをこの世界に転移させた張本人。とほうもない悪が世界を歩きまわっていることを感じ取り、別の世界から魔法使いを呼び寄せようとしたのだ。この悪と対峙できる、エンジーニアと呼ばれる魔法使いを。
ジョン・トムは魔法使いではなく、エンジニアでもない。どうやら間違えられたらしいが、今すぐ返してもらうこともできず、この世界で暮らすことになってしまう。
マッジの案内で、町へと向かうが……。
シリーズの第一巻ですが、実は、大長編の前半部分。そのため(残りページ数に対して)展開が遅く、変なところで終わってしまいます。
ジョン・トムが実はスペルシンガーだと知れるのは、本書の半ばほど。スペルシンガーは、音楽を通じてしか魔法が使えない魔法使いです。それもジョン・トムの場合、かなり不安定。
洋楽の知識があれば、ジョン・トムの選曲で楽しめるんでしょうけど。残念ながら……
《スペルシンガー・サーガ》第二巻
温暖地人たちに警告するため、ジョン・トムは魔法使いクロサハンプらと共に、都市ポラストリンドゥに入った。
はじめ人々は、〈装甲人〉たちによる世界征服の企てをまったく信じていなかった。彼らは過去にも攻めてきたことがあるが、たいした相手ではなかったのだ。
クロサハンプが魔法で敵国の様子を見せることで、ポラストリンドゥの代表者たちはようやく納得する。武装した〈装甲人〉たちの隊列は果てしなく続き、かつてないほど自信満々で、草原は彼らによって埋め尽くされていた。
ジョン・トムは、ポラストリンドゥが戦う準備に入ったことで胸をなで下ろす。ところが、クロサハンプはそうではなかった。
魔法使いがなにより危惧しているのは、〈装甲人〉の魔術師イージャクラットが見いだした邪悪な魔法の存在。その性質すら、いまださだかでない。
ジョン・トムと仲間たちは、新たな味方を求めて旅立った。ソーズワードを越え、スルーマザヨーレ・ウィーントリ川を下り、〈地の喉〉を通って〈織人(しょくじん)〉の助力を得るために。川をくだって帰ってきた者は誰もいないというが……。
シリーズ第二巻ですが、実は、大長編の後半部分。
ストーリーは第一巻から引継がれてます。一方、雰囲気はまるで違っていて、異質な世界の冒険ものになってます。ようやく面白くなってきた、といったところ。
ただ、第一巻のプロローグが、どうにも解せないのです。本編と微妙にずれてるんです。まるで、途中で設定を変えたかのように。あるいは、クロサハンプの夢だったとか?
気になる……