《スペルシンガー・サーガ》第五巻
ジョン・トムは、地球から召喚されたスペルシンガー。魔法使いのクロサハンプの元で暮らしている。
ある日の朝、ジョン・トムは不安にかられていた。なんだか妙な気分だか、原因は分からない。クロサハンプに指摘されて、ようやく気がついた。自分が青いカニになっていたことに。
おかしいのはジョン・トムだけではなかった。世界全体が変貌していたのだ。まもなくこの異様な現象は消えたが、クロサハンプの見立てでは、ペランビュレーターが原因であるらしい。
ペランビュレーターは、曲がりくねって進む素数。存在しうる無数の宇宙のあいだをあてもなくふわふわとうごきまわって、行く先々で変化をひきおこす。通常は、あっというまに通過してしまうので、混乱が気づかれることはない。
どうやらペランビュレーターは、何者かに捕らえられてしまったらしい。解放しないと、大変なことになるだろう。
ジョン・トムは、クロサハンプと共に旅立つが……。
今回の旅は、クロサハンプと、クロサハンプの弟子ソーブルとの三人連れ。途中、レギュラー・メンバーであるカワウソのマッジが合流します。それと、新顔の、運送業をいとなむドーマス、ルーン占い師のコリンが加わります。
軽快ではあるんですが、シリーズを重ねて、少しおもしろさがはげ落ちてきたような印象。
ハムレットは、アルゴンキン・ホテルで暮らす猫。
生まれは、バーモントにある農場。まだ仔猫だったころ、農場主で作家のバスキンの車に隠れていて、ホテルにやってきてしまった。
ハムレットの転機は、バスキンに連れられてホテルでエレベーターを待っていたとき。映画祭で滞在中の女優、カミラ・リプトンの目にとまったのだ。たちまち気に入られたハムレットは、リプトンの猫となる。
ところが、当時リプトンが付き合っていた男は猫アレルギー。ハムレットは、アルゴンキン・ホテルで暮らすこととなった。ハムレットにとって、ホテル暮らしは願ったり叶ったり。
アルゴンキン・ホテルは、とてもムルーンなところなのだ。
ホテルに来てからのハムレットは、居眠りばかり。というのも、いっしょうけんめい夢を見ているから。夢は、現実世界で起こる重要なできごとを教えてくれるのだ。
ハムレットは農場にいたとき、先輩のビルマ猫、プロスペロに教えを受けた。いまではいっぱしの夢見猫。ホテルで暮らすのはハムレットだけだが、時間にも場所にもしばられず、夢の中でさまざまな猫とつきあっている。
ハムレットは、自分の才能を用心深く隠していた。人間に利用されてはたまらない。今日も、お気に入りの場所で夢の世界に入っていくが……。
実在するアルゴンキン・ホテルの看板猫をモデルにした児童文学。
ホテルには、さまざまな人物が出入りします。俳優や作家や彼らの担当者、インタビューをとろうとする記者とかも。彼らが、ときにコミカルに、ときにシリアスに、物語を彩ります。
あくまで主役はハムレット。ハムレットは夢を見て、その場にいないプロスペロや、かつてホテル猫だったラスティと会話をしたり、失せものの行方を知ったりします。
キーワードは、ムルーン。読んでいくうちに、ムルーンとはなんなのか、分かってきます。
読み始めた当初は、雑音のようなエピソードの連続で、このままで物語になるのか、少し心配してました。けど、杞憂でした。
本当に、猫ほど素敵な商売はないです。
コール・ロスは〈道の民〉。
伝説では〈道の民〉は、その昔、星たちの中からさまよい下りてきたため、ひとつところにじっとしていられないのだという。そのため、春には〈ウィジィ領〉を、秋には〈ハンター領〉を旅している。
ある年一族は、冬を過ごすのに〈デルタ〉を選んだ。南の暖かい霧のたちこめた〈デルタ〉を。
一族が〈ウィジィ領〉を出たのは、秋のこと。ところが〈デルタ〉をどんなに旅しても、冬が追いついてこない。囚われてしまったのだ。そのことに気がついたのは、コールただひとり。
コールは、仲間たちを脱出させるべく、〈黒い家〉の扉をくぐった。
コールを待っていたのは、〈ウィジィ領〉の〈象徴〉である〈黄金の王〉。コールは〈黄金の王〉に、取引を持ちかけられる。あるものを捜してくれれば、仲間たちを助けよう、と。
〈黄金の王〉が求めているのは、〈白鳥のひな〉の心臓だった。
〈白鳥のひな〉は、一帯を支配する〈ロウ王国〉の〈象徴〉。その心臓は、とても強い力を持っている。コールは〈黄金の王〉から心臓の在処のヒントを教えられるが、自分ひとりで見つけ出すことはできそうにない。
コールが頼ったのは、偶然出会った、沼地の魔女だった。魔女の正体は、〈ロウ王国〉の〈女王〉の末娘ニクス・ロウ。ニクスは、コールの捜すものに興味津々。
コールはニクスの助力を得て、心臓を捜し始めるが……。
コールとニクスの他、ニクスの遠縁であるメグエット・ヴァーヴァインが中心人物として活躍します。
〈黄金の王〉やら〈白鳥のひな〉は、星座でもあります。
かつて〈白鳥のひな〉は、〈黄金の王〉〈踊り子〉〈魔術師〉〈盲目の女〉と戦い、勝利を得ました。敗者は封じられ、機会をうかがっています。コールに接触した〈黄金の王〉のように。
とても美しい物語でした。
美しすぎて、どうも理解しづらいところがあるのも確か。イメージが先行しているような。
2013年08月10日
コニー・ウィリス(大森 望/訳)
『ブラック・アウト』新☆ハヤカワ・SF・シリーズ
ポリー・チャーチルは、オックスフォード大学の航時史学生。
史学生たちは、3年生になると現地調査が許されるようになる。時間旅行者として過去へ赴き、さまざまな出来事を直接観察するのだ。
ポリーは、多時代調査の真っ最中。ちょうど、ひとつの調査を終えたところ。次は、第二次大戦下のロンドン大空襲だ。
ロンドン市内で爆撃された場所と時間を調べあげ、ポリーの準備は万端。気がかりといえば、指導教官のジェイムズ・ダンワージー教授があまりに心配性なこと。ポリーは、ダンワージー教授に許可を取り消されてしまうことを怖れ、帰還報告をせずに1940年へと旅立ってしまう。
無事にロンドンに到着したポリーだったが、早朝に到着するはずが、すでに夕方。空襲警報がなりひびき、ポリーは、教会の地下の防空壕に避難する。
空襲が始まった当初、ロンドン市民は恐怖におびえていた。彼らは1週間ほどかけ、爆撃の恐怖を克服するすべを学んでいったらしい。
ところが、防空壕に集った人々は、すでに落ち着いている様子。いぶかしむポリーだったが、間もなくその理由が判明する。10日の火曜日に到着したはずが、すでに14日の土曜日になっていたのだ。
貴重な4日間を見逃し、落胆するポリー。気を取り直して、下宿と職場を捜し始める。住むところはすぐに決まったが、就職先がなかなか見つからない。18日になってようやく、タウンゼンド・ブラザーズで販売員の職を得た。
ポリーは、意気揚々と報告のために帰ろうとするが、トラブルが発生してしまう。降下点が開かなかったのだ。ポリーは、過去に閉じ込められてしまった。
一方、同じく1940年を訪問している学友、メロピー・ウォードとマイクル・デイヴィーズもまた、現代に帰れなくなってしまっていた。メロピーは、ロンドンにいるはずのポリーと合流しようとするが……。
《オックスフォード大学史学部》シリーズの長篇三作目。(第一作『ドゥームズデイ・ブック』第二作『犬は勘定に入れません あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎』)
現代である2060年、ポリーたちが訪れている1940年の他、1944年もちょこちょこと登場します。それぞれに登場人物がいて、最初は、読みこなすのがちょっと大変でした。大変な時期がすぎると、俄然、おもしろくなってくるのですが。
ただ、実は本書は、大長編の前半部分。
これって、どういうこと?
という謎は保留されたまま。まったく終わってません。下巻に相当する『オール・クリア』を用意してから読み始めたのは正解でした。
2013年08月11日
コニー・ウィリス(大森 望/訳)
『オール・クリア』全二巻
新☆ハヤカワ・SF・シリーズ
《オックスフォード大学史学部》シリーズ
『ブラック・アウト』続編。
ポリー・チャーチルは、オックスフォード大学の航時史学生。第二次大戦下のロンドン市民を観察するため、1940年にタイムトラベルしていた。
ポリーは、下宿を見つけ、デパートの販売員の職も得た。ところが、自分本来の時代である2060年につながる降下点が開かず、帰ることができなくなってしまう。間もなくポリーの元に、同じく1940年に閉じ込められてしまった学友たちが集った。
郊外の領主館でメイドをしていた、メロピー・ウォード。そして、アメリカ人記者としてダンケルク撤退の様子を取材する予定だったマイクル・デイヴィーズ。
3人は、同時代にきているはずのもうひとりの史学生、ジェラルドを捜すことを決意する。ジェラルドの降下点を使って帰ろうと考えたのだ。
まだ2060年にいたころジェラルドは、行き先をはっきりとは告げなかった。そのため居場所の特定に手間取るが、メロピーの記憶から、彼の目的地がブレッチリー・パークだと判明する。
ブレッチリー・パークは、最高機密の施設。ドイツ軍が誇るエニグマ機の暗号メッセージを解読したところだ。
早速、マイクルが侵入を試みるが……。
『ブラック・アウト』で未回収のままだった謎がさらに謎を生んで、本作の2冊目でついに解決。
とにかく長くって、読むのに必死でした。そのため、いまいち味わいきれず。後日、じっくりと再読したい作品となりました。
「侠骨記(きょうこつき)」
ときは春秋時代。魯は、東隣の大国、斉と対立していた。斉では宰相の管仲が辣腕をふるっているが、魯には優れた将がおらず対抗することができない。
そんな折り、首相の臧孫達(ぞうそんたつ)の元に、曹カイと名乗る男が自分を売り込みにきた。曹カイは臧孫達に目をかけられ、魯公との謁見を許されるが……。
短編ですが、曹カイ以外にもスポットライトが当たります。長篇にするほどエピソードが集まらなかったため、短いまま終わらせました、といった印象。
なお、曹カイのカイは表示できなかったため、カタカナにて代用しました。また、タイトルの「侠骨記」も、本来は異なる「侠」が使われてます。
「布衣(ふい)の人」
俊の父は目が不自由だった。継母は父の世話にあけくれ、ろくに家事もしない。異母弟は仕事せず、俊はひとりで一家を支えていた。
ある日俊は、羌由(きょうゆう)という男にであった。羌由が言うには、西北に、どんな穀物でもとれる肥えた土地があるらしい。俊は、家族をつれて移住するが……。
中国神話を知っている人なら、おなじのエピソードで構成されているので、俊の正体を早い段階で見抜けるはず。逆に、神話を知らないと、ラストで俊の正体が明かされても、感慨深くなれるのかどうか。
「甘棠(かんとう)の人」
周は、殷に対して反旗を翻そうとしていた。周は西方の一大勢力だが、殷に対抗するには力不足。周の軍師、太公望は、召(しょう)に協力を求めるが……。
殷周革命を、召を中心にして書いた作品。
同氏の『王家の風日』や『太公望』と同時代の物語なので、そちらも読んでいると多角的に楽しめると思います。
「買われた宰相」
百里奚(ひゃくりけい)は、許の国の人。許は、鄭(てい)と魯の連合軍に滅ぼされてしまった。許の人々は機会をうかがい続け、15年後、許邑を奪還して再建を果たす。百里奚は許の復興を見届けると、国を出て、諸国を渡り歩き始めるが……。
百里奚の人生が、もう波瀾万丈。なのに短編。濃縮されているというより、もうちょっとまとまった文量で読みたかったです。いずれ長篇化されればいいんですけど。
ジェシー・ラムは、16歳の女子学生。
父のジョーは、不妊治療を行うクリニックで胚をつくる研究にたずさわっている。かつては、子供を産みたい女性のために。いまでは、MDS研究のために。
MDSウイルスは、バイオテロにより世界中にまき散らされた。すべての人類が感染し、例外なく、誰もが保菌者となっている。発症する条件は、妊娠すること。
MDSは、妊婦の脳を破壊してしまう。これにより人類は、子孫を残すことができなくなった。
社会が殺伐とする中、ジェシーは幼なじみのバズに誘われ、少年少女の集会に足を運んだ。集まった子どもたちは一様に、行動を起こさなければならないと考えている。活動家イアンの手引きで、独立青年団(YOFI)が結成された。
ただ、彼らも一枚岩ではない。MDSの原因となった科学を否定する者がいる一方、科学による解決策を期待する者もいる。動物実験に反対する者や、容認する者も。
ジェシーは、活動にかかわっていくが……。
ジェシーの回顧録として展開していきます。
冒頭、ジェシーは何者かに監禁されています。その最中に執筆された、というのが本作の設定。監禁したのは何者なのか、なぜそういう事態になったのか、誰のために回顧録を書いたのか、追々明らかになります。
なお、MDSは蔓延してますが、赤ちゃん誕生を成功させた例はあります。妊娠初期の女性を眠らせ、胎児が成長させるまで生き長らせるという手法です。最終的に母体は死に至りますし、成功率もかなり低いようです。
ジェシーの決断がクライマックスになってますが、どうも結末ありきのような印象でした。飛躍しすぎのような。啓蒙されてるというより、洗脳されてるような。
決断に共感できた人は、感動もできるのでしょうね。残念ながら、日本なら親権者の同意がいるだろうなぁ……なんてことを考えてしまいました。
ガイ・モンターグは、焚書官。
この時代、本の所持は禁止されていた。たいてい密告によって発覚し、所有者は逮捕され、本は始末される。モンターグの仕事は、本が発見されたとき、家ごと燃やしてしまうこと。
本は、善良な市民に有害な情報をもたらすのだから。
市民には、テレビやラジオといった、画像や音声の感覚に訴える情報源が提供されている。
モンターグは、模範的な役人だった。だが、徐々に焚書への疑問を抱くようになる。
本は、本当に有害なのか?
本当に、無意味なことしか書かれていないのか?
仕事柄、本を収拾するのはたやすい。モンターグは、禁じられた書物に手を出してしまうが……。
モンターグの反抗のきっかけは、となりに越してきた少女、クラリス・マックルラン。17歳のクラリスは、自由奔放。他の市民たちにない感性を持っています。
実は、クラリスと出会う前から、モンターグはひそかに書物を隠し持ってはいました。本を持っていそうな人を見逃したりもしてます。
でも、心の中はモヤモヤしたまま。
いろいろなことが積み重なって、ついに反抗に至ります。
以前、読んだときには、ずいぶん苦労しました。それが、今回はすんなり入っていけて、びっくりしてます。やはり本には、読むべきタイミングがある、と。
《ミス・メルヴィル》シリーズ第一巻。
スーザン・メルヴィルは、ニューヨークの名家のお嬢様だった。それが今では、日々の生活にもこと欠くありさま。それもこれも、父が財産を抱えたまま出奔してしまったから。
失踪してすぐは、堅実な信託財産もあり豊かでいられた。だが、母が亡くなってからは急転直下。投資先がぐらつきはじめ、インフレに追い討ちをかけられた。
唯一の収入は、美術教師としての給料のみ。
ところが、アカデミーが閉鎖されることになり、ミス・メルヴィルは失業してしまう。縁故採用だったため資格があるわけでもなく、美術教師の需要もない。そのうえ、賃貸アパートが買い取り式に転換することになってしまった。
実はメルヴィル家は、大家のサンダーソン家とは旧知の仲。ミス・メルヴィルは恥を忍んで社長に直談判するが、現在の社長はやさしいマークおじさんではなく、いけすかないマーク・ジュニア。軽くあしらわれてしまう。
もはや、アパートから追い出されるのは時間の問題。ミス・メルヴィルは自殺を決意する。それも、マーク・ジュニアの目の前で拳銃自殺してやるのだ。
ミス・メルヴィルは、マーク・ジュニアがスピーチする予定の夕食会に潜入した。準備は万端。覚悟を決めたものの、その瞬間、自分ではなくマークを撃ち殺していた。
実は夕食会には、マークを暗殺するため、アレックス・テイバーが潜り込んでいた。アレックスは目立たない中年女性に先を越されてしまったのだ。
ミス・メルヴィルは勧誘され、殺し屋家業に足を踏み入れるが……。
ユーモア系ミステリ。
ミス・メルヴィルは殺し屋ですが、少しずれてます。殺しの報酬を税務申告するにはどうすればいいか、とか考えてます。
ちょっとしたエピソードが積み重なって、最終的に、それらが伏線だったのだと気がつく構成になってます。最初から大きな謎があるのではなく、行間に大きな謎が隠されている感じ。流れが自然で好感が持てます。
ただ、殺し屋を主役にしつつもユーモアで仕上げる、となると仕方ないのか、ファンタジーだなぁ、と。けっこうリアリティのあるところもあるんでしょうけど。
2013年08月25日
ブランドン・サンダースン(金子 司/訳)
『ミストスピリット −霧のうつし身−』全三巻
ハヤカワ文庫FT
《ミストボーン・トリロジー》三部作、第二部。
ヴィンは〈霧の落とし子〉と呼ばれる合金使い。合金術用の金属を体内に取り込み、燃やすことで数々の能力を発揮する、稀な存在。
ヴィンが支配王を倒してから1年。〈終の帝国〉は崩壊し、ヴィンの仲間たちは〈中央領〉を支配下に置いた。王として治めるのは、ヴィンの恋人エレンド・ヴェンチャー。
理想に燃えるエレンドは法を整備し、議会政治をめざす。だが、なかなかうまく機能しない。
そんな時分、首都〈ルサデル〉は、ストラフ・ヴェンチャーの5万からなる軍勢に包囲されてしまう。
エレンドにとってストラフは実父。その性格はよく分かっている。権力を渡せば、議会など無視し、支配王以上の圧政をしくことだろう。
エレンドが動かせるのは、未熟な2万の兵。〈ルサデル〉の堅固な城壁があっても、防衛は容易ではない。怖じ気づいた議会は、ストラフに〈ルサデル〉を明け渡そうとするが……。
一方〈たもちびと〉のセイズドは、本来の義務をはたすべく
〈東領〉を旅していた。無学な人々に知識を授けようとするが、彼らは支配王の時代をなつかしがってばかり。
そんなセイズドの元に、〈鋼の尋問官〉となったマーシュが尋ねてきた。マーシュが言うには、シーランの修道院がもぬけの殻になっているのだという。
シーランの修道院は、南部地方における聖職省の根拠地。支配王が倒された後、高位の義務官や尋問官が退却していた。だが、彼らの姿が消えてしまったらしい。
マーシュと共に修道院に入ったセイズドは、地下で、鋼の板に彫られた文書を発見する。あまりに重要な内容に、セイズドは〈ルサデル〉へと向かうことを決意するが……。
前作は、ヴィンの成長物語でした。
今作は、エレンドの成長物語です。一応、王ではあるものの、まだ若く、なかなか認めてもらえないエレンド。そんなエレンドに力を貸したのは、セイズドと同じテリス族の〈たもちびと〉ティンドウィルでした。
ヴィンの前にも、新たな登場人物が現われます。正体不明の〈霧の落とし子〉ゼイン。敵か、味方か?
3分冊なのでけっこうな文量があるのですが、もうあっという間。
かつて支配王が我がものにした力の源〈即位の泉〉の謎、とか。仲間たちの内の誰かがスパイと入れ替わっている疑惑、とか。てんこもり。
ただ、前作『ミストボーン −霧の落とし子−』と違って、明らかに終わってません。そこが要注意。