書的独話

 
2005年のひとりごと
01月01日 展望、2005年
01月04日 まるで映画を観るように
02月05日 レムの異質生命体との遭遇(仮)三部作
02月22日 さらば、Cube
03月27日 パーセク
05月01日 1997年ベスト
05月02日 1998年ベスト
05月03日 1999年ベスト
05月04日 2000年ベスト
05月05日 2001年ベスト
05月06日 2002年ベスト
05月07日 2003年ベスト
05月08日 2004年ベスト
06月05日 冒険者たち
07月21日 深いぞ、トリポッド
08月17日 ハンチントン病
09月07日 記録による不死世界
09月21日 世界のおわり
10月13日 鼻づまりに効く本
11月03日 宙色堂、オープン
12月11日 宙色堂、1ヶ月
12月31日 総括、2005年
 



 
 

 
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2005年09月21日
世界のおわり
 
 劇場版“ルパン三世”第一作「ルパン三世 ルパンVS複製人間(クローン)」で、敵の親分マモーがルパンに問いかけます。

 世界のおわりについて考えたことがあるかね?

 自らを“神”と名乗る謎の男・マモー。神の実験を1万年つづけてきたと主張し、ルパンが盗んできた“賢者の石”をぶんどっていく。その正体は?
 ……ではなくって“世界のおわり”が今回のテーマ。
 なんでこのテーマになったかというと、この本を読んだから。

 カート・ヴォネガット『猫のゆりかご
 ボコノン教に入信したジョーナは、世界の終末に立ち会っていた。思えば、ここにいたったのも『世界が終末をむかえた日』の執筆にとりかかったから。原爆をつくったハニカー博士について調べるうち、博士の遺児たちとその発明品を知るようになって……。

 ヴォネガットの作品は、SFとはいいがたいものが多いけれど、これもその内の一つ。ただし、世界のおわりはほぼSFの独擅場。SFとは言いがたいものもとりあえずSFになっちゃう。その終末ぶりはすざまじい光景でした。
 ところで、ヴォネガットには他にも、終末が取り上げられたものがあります。(“ジュニア”の有無は出版時期によるもので、親子ではなく、同一人物です。)

 カート・ヴォネガット・ジュニア『ガラパゴスの方舟
 人類は100万年をかけて進化をとげた。“わたし”は100万年前に死んだ男の幽霊。あれは、豪華客船バイア・デ・ダーウィン号造船中の事故だった。“わたし”は、進化のきっかけとなった出来事を回想する。

 こちらの終末は、終末を通り越した後(100万年後)から現在をふりかえっているため、終末感はうすめ。というのも、そもそもの目的が人類の進化にあったから。彼らを進化させるために島を隔離する必要があり、そのために島民以外の人類を滅ぼすことに……。終末は副産物だったのです。

 ここまでに挙げた2作品も、冒頭のルパン三世でマモーが提起する“世界のおわり”も、それでも地球はまわってる状態。『猫のゆりかご』の地球はやがて死の星となるだろうけれど、依然として存在はしているわけだ。
 もっと大きな終末といえば……地球の滅亡?

 ダグラス・アダムス『銀河ヒッチハイク・ガイド
 アーサー・デントは、バイパス建設のために自宅から立ち退きを要求されていた。抵抗するアーサーだったが、実は地球そのものも、銀河ハイウェイ建設のために立ち退きを要求されていた。地球は破壊され、なんとか難を逃れたアーサーは銀河をさすらうことになるが……。

 元はといえば、イギリスのラジオ・ドラマ。ブラック・ユーモア満載ながらも、やや支離滅裂な印象はぬぐえません。映画化されましたけと、通しで最後まで一気に駆け抜けるより、一話ずつ、小出しに楽しみながら観たい気がします。
 それにしても“世界”とはどこからどこまで?
 人類が“世界”なのか、地球が“世界”なのか、銀河が“世界”なのか、宇宙が“世界”なのか。

 ラリイ・ニーヴン&ジェリイ・パーネル『悪魔のハンマー』は、彗星が地球に衝突する話。おわりを迎えるのは、人類の文明。生き残った人々は協力しあい、文明の復興に当たります。いったんは崩壊した文明だけれど、けっして消え去ったわけではない。
 大石 圭『出生率0』では、世界中で子供が産まれなくなり、ついには出生率が“0”となってしまった世界が舞台。あれから7年。地球は変わらないけれど人類は滅びゆくしかない。
 ブライアン・W・オールディス『グレイベアド 子供のいない惑星』も同様の設定。あれから50年。こちらにはかすかな“希望”があったような気もしますけど、なにぶん記録が残ってないほど昔に読んだので内容はあやふや。
 ラリイ・ニーヴンの《ノウンスペース》シリーズでは、臆病で慎重で狡猾なパペッティア人が、銀河の滅亡を知って逃走します。太陽系も含むこの銀河で生物という生物が死に絶えるまで、あと2万年。
 文明の終焉、地球の破壊、銀河の衝突、いろいろあるけれど、宇宙そのものがおわってしまうのが、

 スティーヴン・バクスター『虚空のリング
 人類は、太陽が死につつあることを発見した。この謎をさぐるうち、暗黒物質である生命体フォティーノ・バードの存在が見出される。彼らは太陽だけでなく、宇宙そのものをも滅ぼそうとしていたのだ。

 暗黒物質と通常物質の正面衝突。もう世界は滅びるしかない。
 ところで、この作品はバクスターの《ジーリー》シリーズの集大成。宇宙が消滅するところまではいかないんですが……と書くとネタバレのような気もしますが、ストーリーを読ませる作品じゃないので、ご容赦ください。
 そして、もひとつ。

 バリントン・J・ベイリー『時間衝突
 考古学者ロンド・ヘシュケは、異星人・アムラックとの戦争で破壊された遺跡を調べていた。その過程でヘシュケは、逆行する時間を目の当たりにすることに。世界でなにが起きているのか?

 時間が巻き戻されている世界と、正常な流れを持った世界とが正面衝突。もう世界は滅びるしかない。実は、結末覚えてないんですが。
 最後に、もひとつ。 

 ジェイムズ・ブリッシュ『時の凱歌
 星間航法スピンディジーの開発によりニューヨーク市は地球を飛び立った。数多の冒険の果て、ニューヨーク市はある惑星に腰を落ちしかせる。しかし、そこへとんでもない知らせが舞い込んできて……。

 正物質世界と反物質世界の正面衝突。それによって時間は終焉を迎えるのでした。もう世界は滅びるしかない。
 当書は《宇宙都市》シリーズの最終巻。なんで宇宙都市の物語の最後がこれなの? というのが正直なところでした。

 宇宙のおわりは、だいたい、なにかとなにかの正面衝突が原因のようで。それ以外の原因といえば……ポール・アンダースン『タウ・ゼロ』では、正面衝突なしに宇宙がおわってましたっけ。たしか。そうだったよなぁ……。
 また再読したい本が増えてしまいました。<


 

 
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