書的独話

 
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2011年02月26日
伝承の行方
 
 1月に、パトリシア・A・マキリップの『冬の薔薇』を入手しました。今年は、前々から気になっていたマキリップをできるだけ読もうと考えていまして、その一環で。
 読む前にふと、あとがきを覗き見しましたら、どうもこのお話、スコットランドの民間伝承バラッドのひとつ「タム・リン」が下敷きになっているようです。と、言われでも「タム・リン」がどういう伝承だったか、そもそも知らないんだか思い出せないんだか……。
 そこで、まずは「タム・リン」を調査してみました。

 スーザン・クーパーとウォリック・ハットンが絵本『妖精の騎士タム・リン』を著してます。その「BOOK」データベースに掲載の紹介文が、こちら。
 マーガレットは、毎日朝から晩まで、お城の塔のてっぺんの部屋で、ししゅうをしていました。ししゅうなんか、大きらいでした。お城の外に行って、思いきり走ったり大きな声で笑ったり、わくわくするような冒険がしてみたかったのです。けれど、マーガレットはスコットランドの王女様でしたから、おぎょうぎよくおとなしくすわって、ししゅうをしていなければなりませんでした。どこかの王子様が結婚を申しこみにきてくれるまで、だまってじっと待っているのです。ある日マーガレットは、お城をとびだして、緑の牧場をどんどん走っていきました。「カーターヘイズの森に行って、赤いバラをつもう」と、マーガレットは心に決めていました。でもカーターヘイズの森は、おそろしいところでした。妖精の騎士タム・リンがあらわれて、入った者に呪いをかけ二度とでられないようにしてしまうと、だれもが知っていました。タム・リンは、美しい若者でした。金色の巻き毛が風にゆれ、日に焼けた肌も金色にかがやいていました。夏の空のように青い目で、タム・リンは、じっとマーガレットをみつめました。そして、マーガレットは…。愛する人を救うためにたたかう王女様の愛と勇気の物語。

 タム・リンは、妖精の女王に捕らわれている若い騎士。彼を救うためにヒロインは……というお話。『妖精の騎士タム・リン』は絵本としてアレンジされてますが、元々のバラッドは子ども向けではありませんので、念のため。

 そして、この伝承が下敷きになっている物語がもうひとつあるんだとか。
 それが、ダイアナ・ウィン・ジョーンズの『九年目の魔法』。そうと知ってしまったら、ちょこっと読み比べてみたくなるじゃないですか。ただし、ジョーンズの方は「吟遊詩人トーマス」も混ぜられているので、まるきり同じ土台、というわけではありません。

 というわけで、まずはダイアナ・ウィン・ジョーンズの『九年目の魔法』を、続けてパトリシア・A・マキリップの『冬の薔薇』を読んでみました。
 ジョーンズを先にしたのは、個人的に、マキリップへの評価の方が高いため。実際に読んでみて、この順番で大正解だったかな、と。

 ジョーンズ作品は現代が舞台で、9年に渡る長いスパンの物語。現実に幻想を織り込ませてあります。子ども視点が大半だからそう感じるのか、若い読書向けに書かれたのでしょうね、きっと。
 マキリップ作品は、どことなく中世風な村が舞台で、1年にも満たない短い期間の出来事。主人公の生きざまそのものが現実的なのに幻想的。妖精の女王が関わるバラッドにぴったりな雰囲気でした。

 同じ「タム・リン」が使われているため、両作品には共通点が多いですが、調理法はまったく別。雰囲気も素材の使い方もまるで違いました。伝承はさまざまに形を変えて、引継がれていくのですね。

 なお、マキリップの『冬の薔薇』には続編『夏至の森』があります。


 

 
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