書的独話

 
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08月01日 移転しました
08月26日 《居眠り磐音江戸双紙》読本
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10月10日 幕末だったのか
12月27日 そして繋がっていく
12月31日 総括、2015年
 
※今年は未年というわけで、羊のシルエットを画像に利用してみました。
シルエットは、デザイングループ「TOPECONHEROES」によるものです。
公式サイト「Silhouette design(http://kage-design.com/)

 



 
 
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2015年08月26日
《居眠り磐音江戸双紙》読本
 

 6月から、佐伯泰英の《居眠り磐音江戸双紙》シリーズを読み始めました。

 すごく軽い本でした。重さではなく、書き方が。青少年向けのものを読んでいるような、そんな感覚で、時間をとられずに読み切れてしまいます。
 当初は、サクサク読めてしまうのが物足りないなどと言ってました。それから手に取り続けること23巻。さすがにそれだけ巻数を重ねてくると、奥深さが出てきたように思います。

 どのような物語なのかといいますと……
 はじまりは、江戸中期、明和9年(1772年)の春。
 豊後関前藩に、坂崎磐音(27)と、朋輩の河出慎之輔(28)、小林琴平(27)の3人が帰郷します。そのころ豊後関前藩は、大借金を抱えて藩政改革待ったなしの状況。3人は江戸で、剣術を鍛えたり経済を学んだりしてきていて、これから藩のために尽すのだと明るい未来を思い描いています。
 ところが帰郷したその日に、大事件が起こります。
 慎之輔に妻・舞の不貞を耳打ちした輩がいて、慎之輔は舞を手打ちにしてしまいます。舞というのは琴平の妹で、知らせを受けてかけつけた琴平は慎之輔を斬り殺して、さらに一悶着起こします。
 磐音は、琴平を成敗するはめに陥ります。
 上意だったとはいえ、親友を自らの手で殺めた磐音は豊後関前藩に暇乞いし、江戸に舞い戻ります。

 それが、初巻の第一章部分の出来事。

 磐音は、浪人として江戸の裏長屋で暮らすことになります。
 当初はその日暮らしで汲々としていた磐音ですが、中老の嫡男である故の育ちの良さや、人柄、剣の腕前もあって、人脈を広げて行きます。とりわけ大きいのは、両替商の今津屋から絶大な信頼を勝ち得たこと。
 今津屋は、江戸で両替屋行司を務める大店。通常なら、豊後関前藩なんて六万石のちっこい外様大名は歯牙にもかけません。それが、磐音を評価しているものですから、出身藩にもいろんな形で協力してくれるようになります。
 藩を出ているがために藩のために動けるようになるとは、なんとも皮肉なことです。

 もうひとつ重要なのが、江戸での剣術の師匠、佐々木玲圓の道場に復帰したこと。佐々木家は幕府と秘かな繋がりを持っており、将軍御側衆の速水左近などが出入りしています。
 子供のいない玲圓は、磐音を跡取りとして指名。晴れて佐々木磐音となったのが23巻、安永7年(1778年)のことでした。

 なお、磐音は豊後関前藩時代の剣術の師匠に、剣の構えが、まるで春先の縁側で日向ぼっこをしている年寄り猫だと、居眠り剣法だと揶揄されたことがあり、それがシリーズ名の由来になってます。

 《居眠り磐音江戸双紙》シリーズには、数巻ごとに区切りがやってきます。
 国許で、父の坂崎正睦が危機的状況に陥ったときにかけつけて、藩にはびこる利己的勢力をなんとかしてみたり。今津屋奉公人のおこんといい仲になってみたり。将軍の日光東照宮社参行事で大活躍してみたり。
 とりわけ大きい区切りが、23巻。
 そのためか、24巻と同時に読本が出版されてました。

 読本というものはいつも、読むべきなのか、読まなくてもいいものなのか、判断に迷うシロモノです。今回は、区切りなので手に取っておきました。

 内容は、地図とか図解とか、江戸時代テーマのコラムとか、登場人物紹介とか、用語解説とか、シリーズに関連した内容。23巻までの年表がついているので、1〜23巻をすっとばして読む方の役に立ちそうです。後で、あの話を読みたい、となったときに探すのにも便利かもしれません。
 当然、読本にはありがちの、書き下ろし作品も収録。
 今回は、150ページ程の中編でした。今後のために書き留めておくと……

「跡継ぎ」
 深川娘のおこんは、偶然知り合った両替商今津屋の筆頭支配人由蔵を頼り、今津屋への奉公を願い出ます。そのころ由蔵の前には、謎の男が現れてました。男は、由蔵が大阪での修業時代に成した子だと名乗ります。
 それを聞いた由蔵は真っ青。実は思い当たることがあるのですが……。

 舞台は、明和5年(1768年)。
 今津屋は、主が吉右衛門、嫡男が総太郎、老分は伴蔵、筆頭支配人が由蔵……という体制。今津屋の主の名前は世襲制なので、シリーズ本編の吉右衛門は、このときには総太郎を名乗ってます。
 総太郎はすでにお艶と祝言をあげてます。病死したお艶が、にこやかに会話に加わっているのが、なんとも哀しい。
 また、今津屋出入りの同心は、木下三郎助。本編で活躍する一郎太は、三郎助の嫡男として登場します。

 この「跡継ぎ」というタイトルは、本編で活躍している人たちが、誰かの跡継ぎという立場であったころの物語であることも兼ねているのかな、と。
 物語的には、読者サービスのために書きました、といった雰囲気。無理に昔の話にしなくても、ふだんの、一章で終わってしまうような小話でもよかったと思うんですけどね。

 今現在《居眠り磐音江戸双紙》シリーズは49巻まで刊行されていて、2016年の1月に2冊同時発売で完結だそうです。

 このシリーズでは、時代背景とか、当時の人たちの習慣とか、思考とかを考えると、ありえないだろう、という出来事が起こります。ですので、人には勧めません。
 とはいうものの、正確さを求められるようなタイプの物語ではありませんし、引き止めもしません。自分は最後までつきあう腹づもり。SF読みだったはずなのに、ずらずらずらと時代ものが並びますが、あと28巻、どうぞよしなに。


 

 
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