書的独話

 
2004年のひとりごと
03月28日 はじめに〜読書歴について
04月10日 本のえり好み
05月04日 本よみ中の思考(『悪魔のハンマー』篇)
05月23日 逢坂剛《御茶ノ水署》シリーズ
07月01日 読了本のなかった6月をふりかえり…
08月10日 再登場・本棚写真館
08月20日 第四次大改造について
08月29日 『インテグラル・ツリー』と『天の筏』
08月30日 再読・指輪物語
09月19日 感想を書くということ
09月20日 ちょっぴり古い新聞の切り抜き
10月03日 幼少時の読書
10月12日 中島敦「名人伝」あるいは「不射の射」
10月13日 今週のPickUp! Vippies
11月02日 超能力と異世界と
11月07日 初心者にすすめるSFって…
11月11日 『タイタンの妖女』〜『分解された男』
11月15日 ハヤカワ文庫SF・リスト
12月31日 総括、2004年
 

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2004年11月07日
初心者にすすめるSFって…
 
 聞かれて一番困る質問がこれ、
「初心者におすすめなSF教えて!」

 初心者限定じゃなく、最近読んだおもしろいの、とフツーに聞かれて答えたことは何度かあります。それが“初心者”限定になると、ちょっと困ってしまう。自分にとっておもしろかったものなら、いくらでも挙げられるけれども。

 乱読でなんでもかんでも読んできたので、そもそもジャンルを意識したことがありませんでした。気がつくとSF中心の読書になっていて……。おかげさまで、SF初心者だった時期の記憶がない。記憶がないから、初心者像を想像するのが難しい。
 こんなの読むといいんじゃない?
 というのが思い浮かばない。読む順番を決めたこともないし。ということは、どれから読んでもいいってことか。

 今にして、読んでおいてよかったな〜と思えるのは、

ポール・アンダースン『タウ・ゼロ
 50人の男女を乗せた恒星船レオノーラ・クリスティーネ号は、おとめ座ベータ星の第三惑星に向かっていた。主観時間で、片道5年の旅。しかし、地球を飛び立ってから3年後、予期せぬ事故で減速システムが壊れてしまった。船は止まることができずに加速しつづけ……

 ハードSF(※)だと知ったうえで読みました。すでにSFは読んでいましたが、いわゆるコアなハードSFを意識して読んだのははじめて。ハードSFも小難しくはないんだなぁ〜と思ったのを覚えてます。
 ※ハードSF:科学性がより強いSF。科学技術と、その技術が存在しえる理由が明らかにされている。(人によって定義がちがう)

 とはいえ、今考えると“初心者”にはどうなんでしょうね、この作品。よく覚えてないのになんですけど。意識しないで読んでいたハードSFもあるので、実は、はじめての出会いではなかったですし。

 おそらく“読みやすさ”という点を考慮すると、ジュブナイルでしょうか。最近の和製ジュブナイルSFは全然読んでないんですけど、翻訳物ならいくつかは……。

ロバート・A・ハインライン『ラモックス
 は好きな作品の一つ。
 ジョンのペット、ラモックスは、ある日、庭を抜け出して町に遊びにでかけた。しかし、ラモックスはただのペットではなく、ジョンの曾祖父が宇宙冒険で連れ帰ったスタービースト。見慣れぬ巨大な姿に、町中大パニックに陥ってしまう。やがてジョンによって保護されるが、被害者たちから裁判を起こされて……

 これは、おもしろい。とりあえず主役は少年少女なものの、宙務省次官のキク氏が主役級に活躍して、この人がまたいいんです。ですけど、オトナがいきなりジュブナイルっていうのも、楽しめない要因になるかもなぁ。SFなんて子供向け、なんて変に悟った気になられてもねぇ。
 同じく宇宙人が裁かれる仕掛けでも、もうちょっと高い年代向けなのが

ロバート・J・ソウヤー『イリーガル・エイリアン
 ついに人類は、宇宙人とのファースト・コンタクトを果たした。しかし、その立会人であった天文学者カルフーンの惨殺死体が発見され、宇宙人ハスクが逮捕される。かくして、宇宙人を被告とする裁判が開始されるが……

 エンターテナーな作者だけに法廷ミステリとして楽しめるんですけど、事件が起こるまでが少々退屈なのが弱いところ。1997年(翻訳は2002年)と、かなり新しめの作品なので感覚的にはとっつきやすいでしょう。たぶん。

 もちろん、古くってもおもしろい作品はたくさんあります。オールタイム・ベストで常に名前の挙がるハインライン『夏への扉』は1957年の作品ですし、今年新装版が出たばかりのアイザック・アシモフ『われはロボット』は1950年。認知度が一番ありそうなアーサー・C・クラーク『2001年宇宙の旅』は1967年。
 現代とズレている点は否めないですけど。

 人様はどんなものをすすめているのだろう?
 と、ちょっとだけ調べてみたのですが、初心者にすすめるSFとして、

 ダン・シモンズ『ハイペリオン
が挙がってることが多いみたいです。
 辺境惑星ハイペリオンにある遺跡〈時間の墓標〉では、殺戮者シュライクが封じこめられている。その〈時間の墓標〉が開き始め、宇宙連邦に激震が走った。時を同じくして、蛮族アウスターがハイペリオンへと侵攻を開始。宇宙連邦は、〈時間の墓標〉の謎をアウスターより先に解明するため、七人の男女を送りだしたが……。

 七人の男女の語りで構成された物語。SF的手法が何種類も登場するので、いろんなバージョンのSFを知るのに手っ取り早い利点があります。かなり長いのですが、短編の寄せ集めと思えば読み切るのも苦ではない……なんてことはないか。
 個人的には好きになれなかったんですけど。

 ところで、いわゆる“初心者”を自認する方は、いったいどんなのをすすめてもらいたいのでしょう?
 教えてください。


 

 
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