中井紀夫『山の上の交響楽』
天才作曲家・東小路耕次郎は、自身の作品は一度だけ演奏されるべきと考え、生涯、長大な曲を書き続けた。その長さたるや、演奏に1万年を要するほど。山の上の奏楽堂で演奏がはじまって200年。楽団員たちは、昼も夜も交代で演奏をつづけていた。写譜作業が遅れつつある中、難所中の難所〈八百人楽章〉がせまる。……他5篇収録の短編集。
初版が出たまま絶版扱いになっていたものが、ファン投票だったかでめでたく復刊された1冊。復刊されたくらいだから、と軽い気持ちで手に取りました。そんな買い方ができるなんて、このころはまだ本棚に余裕があったんですよねぇ。今でも所有してますから、その判断にまちがいはなかったわけですが。味わいのある語り口と奇想天外な設定が絶妙。
逢坂 剛『しのびよる月』
御茶ノ水署・生活安全課保安二係は、2人だけの小世帯。斉木警部補と梢田刑事は小学校の同級生で、いじめられっ子といじめっ子の関係にあった。斉木はかつての恨みをはらすべく、梢田はこき使う斉木をやりこめようと、画策するが……。
事件の謎もさることながら、二人の漫才のような掛け合いがおもしろいのです。文句なしにベスト……どころか、いずれは「愛読書」に入るでしょう。すごくおもしろいから。
続編に『配達される女』があります。また、『情状鑑定人』には斉木&梢田コンビの原型がでてきます。5月23日づけ書的独話「逢坂剛《御茶ノ水署》シリーズ」でもちょこっと書きました。
ロバート・J・ソウヤー『占星師アフサンの遠見鏡』
恐竜(キンタグリオ)のアフサンは見習い占星師。危険な巡礼の船旅にでかけたおり、遠見鏡で天体観測を行った。それがもたらした真実は、キンタグリオ族が傾倒している宗教の教えと真っ向から対立していた。しかも、一族の存亡にかかわるものだったのだ。アフサンは一族を救おうとするが……。
1994年に初版が出て、早川書房主催の年間ベストSFでは第6位にランクイン。その後も、たびたびいい評判は耳にするものの、実物と出会うことはかなわず。ようやく復刊されたのが2001年でした。高まる期待のただ中に読みましたが、やっぱりいい本はいい。
実は、三部作の中の一冊です。復刊されたときには、あと二冊もすぐに訳されるんじゃないかと思ったのですが……。
飯嶋和一『神無き月十番目の夜』
関ヶ原の合戦から2年。常陸の山里・小生瀬は半農半士が集っていたため、ある程度の自由が許されていた特殊な村。時代は転換期を迎え、小生瀬もただの村となることが要求される。高いプライドを持つ村人たちは反発するが……。
再読。おそらく、最初に読んだのは1998年。図書館で借り読み。どこかで作家・飯嶋和一の紹介を読んでいて、その名が頭の片隅にひっかかってました。それが最初の出会い。
その後文庫版がでて購入はしたものの、再読することもなくしばらくそのままにしてました。人に「おもしろい本」を聞かれたときに勧めたのですが、そういえば自分もしばらく読んでなかったと思い出し、再読した次第です。
飯嶋和一はこの作品で、直木賞候補を辞退しました。
アイザック・アシモフ『ファウンデーション』
銀河帝国は繁栄を極め、崩壊の兆しが見えつつあった。心理歴史学を開発したハリ・セルダンは、計算でもって帝国の滅亡を算出する。滅亡後にやってくるのは、3万年におよぶ暗黒時代。セルダンは密かに、暗黒時代を1000年に短縮することを目的として“ファウンデーション”の建設を計画するが……。
シリーズ第一作。初期三部作(『ファウンデーション対帝国』『第二ファウンデーション』)を代表して、第一巻をベストにいれました。この時期にはまだ三部作以降の続編を読んでなかったのですが、読んだ今でも、初期三部作(のみ)をベストに入れる考えは変わらず。
ベストに入れるかどうかで悩んだのが、
アン・マキャフリイ『竜の戦士』
惑星パーンでは200地球年ごとに兄弟星が接近し、「糸胞」がふりそそぐ。糸胞は、パーンの大地に死をもたらすやっかいな生物。この厄災に立ち向かうべく、人々は竜を進化させてきた。ところが、平穏な歳月が400年もつづいたため、竜騎士の地位は失墜。厄災は忘れ去られてしまう。そこへ糸胞襲来の予兆があらわれるが……。
おもしろいんですけどね、まだまだ続きのある物語なので、躊躇してしまいました。なかなか進まない翻訳……。結末、読めるのかしら。ちょっと心配してます。
同シリーズで、正伝に『竜の探索』『白い竜』『竜の歌』『竜の歌い手』『竜の太鼓』『竜の反逆者』『竜の挑戦』番外編に『竜の夜明け』『竜の貴婦人』『ネリルカ物語』があります。
【追記−2007年07月】
当時は存在した「愛読書」コーナーに掲載した本は年間ベストから外していました。当年は、下記の本がそれに当たります。
『キリンヤガ』マイク・レズニック
『大誘拐』天藤 真
『光の帝国 常野物語』恩田 陸
『がんばれチャーリー』アンダースン&ディクスン
『ノービットの冒険』パット・マーフィー