書的独話

 
2005年のひとりごと
01月01日 展望、2005年
01月04日 まるで映画を観るように
02月05日 レムの異質生命体との遭遇(仮)三部作
02月22日 さらば、Cube
03月27日 パーセク
05月01日 1997年ベスト
05月02日 1998年ベスト
05月03日 1999年ベスト
05月04日 2000年ベスト
05月05日 2001年ベスト
05月06日 2002年ベスト
05月07日 2003年ベスト
05月08日 2004年ベスト
06月05日 冒険者たち
07月21日 深いぞ、トリポッド
08月17日 ハンチントン病
09月07日 記録による不死世界
09月21日 世界のおわり
10月13日 鼻づまりに効く本
11月03日 宙色堂、オープン
12月11日 宙色堂、1ヶ月
12月31日 総括、2005年
 

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2005年05月08日
2004年ベスト
 
 図書館通いが復活した2004年。と言っても、けっきょく2回しか利用できなかったんですけど。まぁ、工夫すれば利用できることが判明しただけでも……。

フィリップ・プルマン『黄金の羅針盤
 ライラ・ベラクア11歳の冬。オックスフォードではゴブラーが子供たちをさらっているという噂が広がり、ライラの親友ロジャーも行方不明になってしまう。心配するライラだったが、オックスフォードをはなれ、ロンドンに移り住むことに。ライラはロンドンでゴブラーの正体を知り、さらわれた子供たちが北極に送られていることをつかんだ。ライラはロジャーを助けることを誓うが……。
 ライラの冒険三部作の第一巻。(『神秘の短剣』『琥珀の望遠鏡』)三部作を代表して……と言いたいところですが、このベストはあくまで第一作に対して。二作目以降もけっしてつまらなくはないけれど、第一作でギャフンとやられた身としては、やや物足りない。

ハル・クレメント『重力の使命
 高重力惑星メスクリンは水素の大気とメタンの海を持つ星。メスクリン人バーレナンは人類と出会い、その言葉を学んだ。バーレナンは船長であり、商人でもある。人類に頼まれ、極地への旅にでることにするが、心の奥底にはある計画が……。
 古典的名作。古書店で偶然手に入れて、うきうきしながら読みました。いくつかのSFの解説で内容は知っていたものの、なかなか読む機会に恵まれなくって……。読んだ後もうきうき。現在は、創元SF文庫から『重力への挑戦』というタイトルで刊行されてます。

飯嶋和一『始祖鳥記
 江戸時代中期、岡山城下に暮らす幸吉は天才的な表具師。誰もが認める腕を持っていたが、空を飛ぶことにとりつかれたがために、所払いの刑に処せられてしまう。乞食同然となった幸吉は、いったんは空を飛ぶ夢から遠ざかるが……。
 傑作。
 天才の、意識してない存在感のすさまじさ。いろんな人の心に残り、行動を駆り立てていきます。名作『雷電本紀』(1994年刊行)を書き始めたのが1989年で、きっかけが、この幸吉を書くための資料集めからだそうです。書きたくても書けなかった人物をようやく書けた……。そんな肩肘はった感じはまったくありません。

スタニスワフ・レム『エデン
 惑星エデンに不時着した宇宙船“防御号”。6名の乗組員は、宇宙船を修理するかたわら、エデンを探索する。見つけたオートメーション工場は、まったくの無人。生産物が示す意味も汲み取れない。そして別のところでは、エデン人と思われる生物の死骸でできた壁を発見する。エデンとはいったい?
 未知なるものとの遭遇を突き詰めた、レムの三部作(『ソラリスの陽のもとに』『砂漠の惑星』)のうちの一冊。3作品の中で一番長く、また唯一交流らしいものが生まれるので、とっつきやすさでは一番好きな作品です。
 2月5日づけの書的独話「レムの異質生命体との遭遇(仮)三部作」でもちょこっと書きました。

ジョナサン・レセム『マザーレス・ブルックリン
 ライオネル・エスログは、トゥーレット症候群を持つ青年。言葉と運動のチックに悩まされている。仕事は探偵事務所の使いっ走り。ある日、ボスにして恩人のフランク・ミナが殺されてしまった。ライオネルは調査にのりだすが……。
 ハードボイルド。ただし、語り手のライオネルがトゥーレット症候群。地文にも現れる他意のない言葉遊びの数々。もちろん、ライオネルはいたってまじめなのですが……。おどろきでした。

 ベストに入れるかどうかで悩んだのが、
カート・ヴォネガット・ジュニア『タイタンの妖女
 大富豪のマラカイ・コンスタントは、未来を知っているウインストン・ナイルス・ラムファードに、告げられた。コンスタントは火星で、ラムファードの妻と番わせられる運命にある。コンスタントは予言に抵抗し、火星に赴く可能性を抹殺しようと画策する。〈ギャラクティック宇宙機〉の持ち株を売り払ったのだ。しかし、酔った勢いで油田の大盤振る舞いをした結果、無一文になってしまった。やむなく軍隊に入り火星に向かうコンスタント。
 ラムファートの意図とは?

 名作。それでも年間ベストに入れなかったのは、ただ単に表紙に書かれたタイトルが手書き風だったから。苦手なものはしょうがない。
  11月11日づけの書的独話「『タイタンの妖女』と手書きタイトルそして『分解された男』」でも触れてます。

【追記−2007年07月】
 当時は存在した「愛読書」コーナーに掲載した本は年間ベストから外していました。当年は、下記の本がそれに当たります。
 『天の筏』スティーヴン・バクスター
 『さよならダイノサウルス』ロバート・J・ソウヤー 


 

 
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