ウェン・スペンサー
『ようこそ女たちの王国へ』
男女間の極端な出生率のちがいは、男を財産と見なす価値観を生み出した。姉妹たちは兄弟を守り、他家の姉妹たちに婿入りを命じる。田舎地主ウィスラー家の長男ジェリンも成人を間近に控え、婿入り先をやきもきしはじめたところ。成り行きから助けた王女らに気に入られ、王宮に招待されるが……。
手に取ったとき頭に浮かんだのが、長いこと古書店にあって、いつも購入を迷っていたこの作品。
シェリ・S・テッパー
『女の国の門』
核戦争により既存の国家は滅亡。生き残った女たちは〈女の国〉を建設し、政治や経済活動を行った。それを守護するのは、街に隣接する〈戦士の国〉の男たち。やがて男たちは、女がなにか隠しているのではないかと疑うが……。
どちらも、舞台装置としては中世的なものを取り入れながらも、女たちの国という特殊な環境を使った作品でした。
『ようこそ女たちの王国へ』の世界では、必然から女が中心的役割を担うようになりました。軍隊も警察も国家元首も、全員女。男がひとりで表を歩くなんてとんでもない! そんな環境で繰り広げられる王家転覆計画と、婚姻制度のあれこれ。
SFレーベルから出ているものの、その実、ファンタジー。エンターテイメントとしてはおもしろいものの、ファンタジーとして出した方が、より多くの人に読まれたのではないかと……。
ちょっと残念かも。
『女の国の門』の世界は、人為的に作られたもの。〈女の国〉でもふつうに男が産まれてきます。少年たちは幼くして〈戦士の国〉へと引き渡され、やがて、戦士となるか、女たちの従僕となるか選択を迫られます。その制度の背景にある秘密とは?
地味な話なんですけどね、SFでした。派手なアクションはありませんが、主張していることは過激。賛同できない人も少なくないはず。でも、SFを読んでる気になれました。
迷わずとっとと読めばよかった……。
そういえば、ラリイ・ニーヴンも『時間外世界』で、少女の国を登場させてます。
癌に冒されたコーベルは冷凍睡眠装置に入り、治療を未来の人々の手にゆだねた。そうした目さめた未来世界で病からは脱したものの、その代償としてひとりで繁種ラムシップ船に乗ることになったコーベル。反旗を翻し彼らの計画を打ち砕くが、地球に帰還したとき300万年の時が流れていた……。
300万年後の地球では、決して成長しない子供たちが少女と少年とに分かれて対立。その対立の果てに大惨事が起こり、地球は崩壊の危機を迎えます。
そうそう、ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアの有名な作品でも、女だけが生きながらえた世界が描かれていました。
現代は、男女が一緒にふつうに生活している世界。だからこそ、女ばかりの世界をオチや種明かしや非日常として使うことかできるのでしょう。かつては(?)男ばかりの世界なんてのが存在していましたが。