書的独話

 
2008年のひとりごと
01月01日 展望、2008年
01月02日 2007年、ベスト
01月10日 『冒険の惑星』は全四巻か、四部作か
04月20日 続・本棚写真館
05月23日 活字と映画と歴史の『指輪物語』
07月13日 残された人びと、あるいは……
08月20日 選ばれた人たち
12月23日 時の流れと《ネシャン・サーガ》三部作
12月31日 総括、2008年
 

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2008年01月10日
『冒険の惑星』は全四巻か、四部作か
 
 1月6日、5日付け読了本としてジャック・ヴァンスの『冒険の惑星』を登録しました。扱いに迷ったものの、全四巻として。
 
 宇宙船エクスプロレイター4号は、未知の惑星の調査におもむいた。ところが何者からか攻撃を受け、宇宙船は破壊されてしまう。そのとき偵察艇に乗っていたアダム・リースは、惑星へと不時着。そこは、さまざまな種族が割拠する惑星だった。アダム・リースは帰還の道をさぐるが……。
 
 そう『冒険の惑星』こと《アダム・リース》シリーズは、偵察員という特殊訓練を受けた地球人のアダム・リースが、未知の惑星に不時着し、数々の冒険を繰り広げながら地球へと帰還するための宇宙船を渇望する物語。四巻を通しで読んで、
 これはつながっている……
 と思ったので全四巻としました。が、全四巻でまとめたために、ちと苦慮する結果に。
 当初“1〜4”として出ていたこのシリーズ、後に改題され、おのおの別のタイトルがつきました。こんな感じで。
 『偵察艇不時着!』
 『キャス王の陰謀』
 『ガラスの箱を打ち砕け!』
 『プニュームの地下迷宮』
 これらのタイトルの内何冊かは的外れに思えたため、当初、あまり深く考えてませんでした。でも、きちんと調べてみれば、原著でも《Planet of Adventure》シリーズとして、それぞれタイトルがついてました。ちなみに、こんな感じ。
 “City of the Chasch”
 “Servants of the Wankh”
 “The Dirdir”
 “The Pnume”
 それぞれのタイトルにつけられている名詞は、物語で登場する主な種族たち。すなわち、チャッシュ、ワンフ、ディルディル、プニューム。実は、内容もそれぞれの生態をクローズアップした形で書かれてます。
 
 話的にはつながっているけれど、主題は違う。
 
 ということに今になってようやく気がつきました。後から記録を直すのは異例のことですが、四部作として登録し直します。ごめんなさい。
 『冒険の惑星1(1908/1)
 『冒険の惑星2(1908/1)
 『冒険の惑星3(1908/1)
 『冒険の惑星4(1908/1)
 
 以下は、最初に書いた紹介文です。
 
ジャック・ヴァンス(中村能三/訳)
『冒険の惑星』全四巻
創元推理文庫

 人類は電波信号をチャッチした。ところが、電波は前ぶれなく途切れてしまう。
 調査に赴いたエクスプロレイター4号は、地球から212光年離れた恒星カライナ4269星系で、大気のある惑星を発見した。惑星の地表は雲におおわれ、様子を伺い知ることはできない。揺動磁場が捉えられ、偵察艇で探ることが決定された。
 偵察艇に乗るのは、アダム・リースとポール・ウォンダー。発進直後、母船が地上からの攻撃によって破壊されてしまう。まだ充分に離れていなかった偵察艇も、衝撃波をまともに受けることに。ふたりは惑星に不時着することを決め、寸前に脱出を計る。
 リースは脱出に成功するものの、樹にひっかかり重傷。一方ウォンダーは、原住民に殺されてしまった。地球に帰るために必要な偵察艇も、運び去られてしまう。
 リースを助けたのは、紋章遊牧民の首長トラズ・オンメールだった。リースはトラズから、言葉や、この惑星がチャイと呼ばれていること、さまざまな種族が危うい均衡のもとにそれぞれの地盤を築いていることを知る。
 チャイは元々、フング族、プニューム族の星だった。そこへ、宇宙航行種族のディルディル族、チャッシュ族、ワンフ族がやってきた。彼らは奴隷として人類をつれて来ており、やがて人類は、それぞれの種族に似た形で進化を遂げていった。今では、放浪民族や逃亡者、盗賊、いくつかの社会集団なども入り乱れている状態だ。
 ある日、チャイのふたつの月、ブラズとアズの合のときがやってきた。紋章人たちの宗教では、地獄の月ブラズに徳の月アズが重なるのはいい。しかし逆の場合、オンメールの紋章をつけるトラズは、一族の罪を贖うため、死んでアズへと行かなければならない。
 リースはトラズを説得し、ふたりは逃げだす。向かうは、偵察艇を運び去ったブルー・チャッシュたちの町ダディッシュ。道中、逃亡ディルディル人のアナコを助け仲間とし、〈地獄に堕ちた魂〉ペラへと向かうキャラバンに同乗するが……。

 推理文庫から出てましたが、当時はSF文庫がなかったため。中身は冒険SF。後日、『偵察艇不時着!』『キャス王の陰謀』『ガラスの箱を打ち砕け!』『プニュームの地下迷宮』と改題して出版されました。
 土着、外来の種族と、彼らに仕える人類の末裔たち、純粋な人類の末裔などさまざまな種族が入り乱れてます。さすがに覚えるまで混乱しましたが、それは些細なこと。次から次へと困難がやってきて、アダム・リースが小気味よく切り抜けていきます。
 偵察艇の不時着に始まり、紋章人の野営地からの脱出、キャラバンの旅と女人秘教の尼僧に囚われているキャスの姫君の救出、ペラの支配者ナガ・ゴホとの対決、ダディッシュへの潜入……と、これはただの巻頭部分。
 電波信号を発したのは誰なのか?
 なぜすぐに途絶えてしまったのか?
 アダム・リースは地球に帰ることはできるのか?
 古いタイプのSFですけどね、おもしろいです。


 

 
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