書的独話

 
2008年のひとりごと
01月01日 展望、2008年
01月02日 2007年、ベスト
01月10日 『冒険の惑星』は全四巻か、四部作か
04月20日 続・本棚写真館
05月23日 活字と映画と歴史の『指輪物語』
07月13日 残された人びと、あるいは……
08月20日 選ばれた人たち
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12月31日 総括、2008年
 

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2008年07月13日
残された人びと、あるいは……
 
 6月2日から延々と、まだ読んでます
 ハヤカワの『80年代SF傑作選
 分厚い上下巻とはいえ、個人の長編ならここまで時間はかからない……。それが傑作選になると、いきなり時間がかかってしまうのはなぜなのか。
 実は、毎日だらだらと読み続けているわけではなく、手が出なくなってくるのです。傑作選だけに、続きが気になることもなく。本が同じなだけに、新たな世界と向き合う姿勢が芽生えることもなく……。

 でも、今日はその話ではなく、残された人の話。
 ちなみに、宮崎駿の初監督作品「未来少年コナン」の原作が、アレグザンダー・ケイ『残された人びと』。この物語の“残された”人たちではなく、まとめられて、ばらまかれて、そのまま放置されてしまった人々の話。

 まとめられて、ばらまかれて、そのまま放置されたのは、『80年代SF傑作選』の下巻の巻頭を飾る、マイクル・ビショップ「胎動」の人々。
 ロウソンが目覚めると、自宅のベッドではなく川べりの胸壁に寝ていた。しかもリンチバーグではない。着ている服もおかしい。あたりには人があふれ、皆、言葉も通じず恐慌にかられていた。

 解説によると「胎動」は、フィリップ・フォセ・ファーマー《リバーワールド》シリーズの出だしと似たところがあるんだそうな。ところがファーマーは全然読んでこなかったので、連想したのは、こちらの作品。

 チャールズ・ストロス『シンギュラリティ・スカイ
 新共和国の植民星ロヒャルツ・ワールドに、フェスティヴァルが到来した。彼らは携帯電話をばらまき、情報と引き換えに3つの願いを叶え始める。社会は大混乱に陥り、新共和国は艦隊を派遣することを決めるが……。

 この物語の背景になっているのは、最初のシンギュラリティ(特異点)。
 人類は、高次知性体エシャトンによって、さまざまな星系、まちまちな時代に強制移住させられてしまいます。予告も説明もなく……。
 消え失せた人間は、地球全体の実に九割。彼らは民族や心理的類縁性によって分けられていたため、それぞれの星系で特化した社会をつくっていきます。
 物語では背景説明だけにとどめて、当時の詳細はほとんど分かりません。もしかして「胎動」みたいな感じだったのかも。

 「胎動」では、人種や国籍などいっさいかかわり合いなく、ごった煮状態。家族とも離ればなれ。悲嘆にくれて自殺する者、言葉の通じる相手を見つけようとする者……。
 場所が地球上というのは、いいのか、悪いのか。

 まとめられて、ばらまかれて、そのまま放置されてしまったロウソンたちの行く末やいかに!?


 

 
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