2009年01月02日
2008年、ベスト
ちょっぴり長めのものをメインにしてた2008年。
骨太なものを読んで、合間に軽い物を挟んでみたり、お薦めいただいたものに手を出してみたり、映画を観てから読み返してみたり。いろいろやってみました。
その結果がこのベストたち。
ニール・スティーヴンスン
『
クリプトノミコン』
アメリカ人のローレンスは海軍に入隊し、第二次世界大戦を迎えた。暗号解読の任に就いたローレンスは連合国イギリスへと渡り、敵国ドイツの裏をかく活動を始めるが……。
一方現代では、ローレンスの孫のランディが新事業に乗り出していた。その過程で、大戦中に沈んだと思われる潜水艦を発見する。潜水艦にあったのは、金塊と、ローレンスの名前が書かれたメモだった。
現代と過去が交錯する、全四巻の大長編。現代で潜水艦が発見されて、なぜそこにそれがあるのか、金塊にはどんな意味があるのか、過去のパートが明らかにしていきます。
ローレンスの常軌を逸した天才ぶりが、またいい感じ。本編とは関係ないミニ知識も満載。
ロイス・マクマスター・ビジョルド
『
チャリオンの影』
奴隷に貶められていたカザリルは、無一文ながらもついに帰郷。縁あって、国姫イセーレの教育係兼家令となった。平和な日々が過ぎ、イセーレに、異母兄の国主オリコからカルデゴスの宮廷に出仕する命が下される。カザリルも共にカルデゴスに赴くが……。
骨太ファンタジー。かなりくたびれたカザリルによる、知略と忠義と恋愛とその他諸々。神々のあれこれやら宮廷の陰謀やら、盛りだくさんでした。
続編で『
影の棲む城』がありますが、こちらのすごさを味わってしまうと、なかなか……。
マイクル・コーニイ
『
ハローサマー、グッドバイ』
政府高官を父に持つ少年ドローヴは、夏休暇で訪れる港町パラークシの宿屋の娘、ブラウンアイズのことが忘れられずにいた。今年も夏になり、一家はパラークシへとやってきた。ドローヴはブラウンアイズと再会し、両想いであったこ とを知る。念願だった交際が始まるが……。
人類はまったくでてこない異世界SF。SF的な設定を借りただけ? と思いきや、とんでもない方向に話がころがっていきます。続編があるらしいので、そちらもぜひ読みたいところ。
スティーヴン・キング
『
ドラゴンの眼』
デレイン王国で、王様が暗殺されてしまった。容疑者となったのは、王となる筈だったピーター王子。ピーターは終身刑を言い渡され幽閉されてしまう。代わって王位に就いたのは、トマス王子。トマスは魔術師フラッグの言うがまま。実は、王様暗殺の真犯人はフラッグだった。トマスもこの事実を知っていたのだが……。
キングが愛娘のために書いた、というふれこみの児童書です。語り手がいるので、一歩引いたところから物語を眺めている感じでした。
キングの《暗黒の塔》シリーズの外伝でもあるらしいですが、そちらは未読。
ジャンニ・ロダーリ
『
猫とともに去りぬ』
イタリアの作家による、ユーモアあふれる短編集。常識では考えつかないような展開や、ちょっとした軽口満載で、笑ったり、唸ったり。
表題作は“猫と一緒に去る”のかと思ってましたら、“猫になって去る”でした。猫となった元駅長さん、人間の靴の泥を猫世界に持ち込みたくなくて、後ろ足をペロリとなめます。仕草を想像してしまいます。他の物語も暖かみがあって、雰囲気全体を楽しめます。
ラルフ・イーザウ
《ネシャン・サーガ》三部作
『
ヨナタンと伝説の杖』
『
第七代裁き司の謎』
『
裁き司 最後の戦い』
伝説の杖〈ハシェベト〉の運び手として選ばれたヨナタンは、敵国の将軍ゼトアの追跡をかいくぐり、親友ヨミと共に〈英知の庭〉を目指して旅を続ける。杖を正当な持ち主に届けるために。ヨナタンは使命を果たすことができるのか?
設定の数々がすべて斬新かと問われれば、そういうわけでもなく、取り入れ方がうまいな、と。
危機の連続と、育まれる友情と、信仰と。異世界が主な舞台ですが、地球も出てきます。児童書にしておくのがもったいないくらい。
そして、ベストに入れるかどうか迷ったのが、こちら。
デイヴィッド・ブリン
『
キルン・ピープル』
私立探偵モリスは、人捜しの依頼を受けた。捜すのは、人々が享受している複製テクノロジーの基礎を築いたマハラル博士。不可解なことに、博士の複製が現れ博士の無事を報告してきたが、肝心の博士が自動車事故で亡くなってしまう。依頼人である博士の娘リツは他殺を主張するが……。
いろんな事件がひとつになって、真相へとなだれ込みます。こんなにおもしろいのに、なんでベストに入れなかったのか、自分でも不思議なのですけど……。おそらく、タイミング?