書的独話

 
2009年のひとりごと
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01月10日 復讐するは我にあり
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2009年01月10日
復讐するは我にあり
 
 復讐もの、けっこうありますよね、いろいろと。
 カール・シュレイダーの『太陽の中の太陽』を読んでいて、他の作家の作品ではどうだったとか、考えてしまいました。と、言うのも『太陽の中の太陽』って……
 
 地方都市エアリーに生まれ育ったヘイデンは、移動型都市スリップストリームのファニング提督を憎んでいた。スリップストリームによってエアリーは滅ぼされ、両親も殺された。ヘイデンは提督夫人ベネラの従者として潜入し、提督殺害の機会をうかがうが……。
 
 こんな感じの、復讐譚。
 なのですが、ときどき復讐のことを忘れてるんじゃないかと思ってしまう展開で。せっつくわけじゃないですけど、一本、通ったものがないなぁ、と。
 アルフレッド・ベスターの『虎よ、虎よ!』なんて、すべてを犠牲にして復讐しようとがんばっているのに〜。
 
 ガリヴァー・フォイルは〈ノーマッド〉号と共に宇宙を漂流していた。船の残骸から少しずつ物資を運び、なんとか生きながらえる日々。そして171日目、ついに宇宙船が通りかかる。ところが、相手の船は素通りしてしまった。
 フォイルは唖然とし、落胆し、そして復讐を誓った!
 
 怒りによって才能を開花させたフォイル。どんどん突き進んでいきます。この復讐のために、あらゆるものを犠牲にして。だからこそ、フォイルを見捨てた人物の正体が明らかになったときの哀しさたるや……。
 
 あるいは、ジャック・ヴァンスの『復讐の序章』とか。
 
 人口5000人の小さな町マウント・プレザントは、〈魔王子〉と呼ばれる海賊たち5人の要求を拒絶したため壊滅させられた。運良く悲劇から逃れた少年カース・ガーセンは、生涯をかけた復讐を誓う。
 
 誓ってからいろいろと準備を進めて、ついに復讐劇を開始したのが34歳のとき。もう悪鬼のような執念で、追いつ追われつ。少し脱線もしますけど。
 復讐を遂げるためにさまざまな技能を身につけていただけに、大活躍を演じてくれます。
 
 あとは?
 ポール・アンダースンの『折れた魔剣』とか。
 
 ヴァイキングのオルムに赤子が産まれた。それを聞いたエルフ族の大守イムリックは、トロール族の女に産ませた赤子と取り替えてしまう。
 イムリックによって育てられたスカフロクは、エルフの戦士として大切に育てられた。一方、オルムの子として育てられたヴァルガルドは、無法者に育つ。やがてふたりの運命は交錯するが……。
 

 イムリックに取り替え子の好機を伝えた魔女こそ、オルムによって一族を滅ぼされた先代地主の母。復讐のため、取り替え子をそそのかすだけではなく、さまざまな計略をめぐらします。
 スカフロクの物語なのですけど、動かしているのはこの復讐に燃えた魔女。復讐って、原動力になりますよねえ。
 
 他にもいろいろ。
 それらと比べてしまうと、カール・シュレイダーの『太陽の中の太陽』は、ちょっと物足りない。たぶん、復讐ものですよ〜なんて宣伝されているせいなんでしょうけど。
 
 ちなみに、表題にした「復讐するは我にあり」は、新訳聖書に出てくる言葉で、『主いい給う。復讐するは我にあり、我これを報いん』
 復讐は主が引き受けますよ、と。

 

 
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