書的独話

 
2009年のひとりごと
01月01日 展望、2009年
01月02日 2008年、ベスト
01月10日 復讐するは我にあり
02月01日 この猫を見よ
03月25日 猫のいる世界
04月07日 宇宙への切符
05月10日 旅の寄り道
05月14日 クローンたち
08月16日 SF ATB
10月11日 すべてはタイミング
12月31日 総括、2009年
 

各年のページへ…

 
 

 
▲もくじへ
2009年04月07日
宇宙への切符
 
 まずご紹介するのは、こちら。
 
アーサー・C・クラーク
宇宙島へ行く少年
 コンテストで優勝したロイは、世界中のどこへでも旅行させてもらえる権利を獲得した。ロイが望んだのは、低位ステーション。夢は実現し、ロイは宇宙へと旅立つが……。
 
 出だしはもちろん、ロイが優勝する場面。ロイのがんばりが、ついに実を結びます。そして、いよいよ言うぞ。
「低位ステーションに行きたいんです」
 と、ここでちょっと頭をかすめたのは、同じく努力によって宇宙へのなにがしを手に入れた少年の話。
 
ロバート・A・ハインライン
大宇宙の少年(スターファイター)
 月にあこがれを抱いているキップは、〈月世界旅行無料御招待!!!〉という懸賞にかけていた。キップの不断の努力は実り、応募したキャッチコピーは受賞したものの、規定により一等賞を逃してしまう。落胆するキップに代替品として送られてきたのは、本物の宇宙服だった。
 
 その後キップも、宇宙へと旅立つことになります。そして、キップを待ち受ける大冒険の数々ときたら! クラークの方が現実的かもしれませんけど。
 さて、クラークとハインラインとくれば、自称SF三大巨匠の残りひとり、アシザック・アシモフの作品を挙げたいところですが、残念ながら思い浮かびません。忘れてしまったのか、そういうものは書いていないのか……。
 
 代わりに、ロイやキップと同じように、他人の手によって宇宙へと旅立った人たちをご紹介。でも「同じように」と言っても、ふたりのような不断の努力はしてませんけど。いずれにせよ、一般市民にとっての宇宙は遠い存在、という時代に地表を離れた一般市民、という姿を見せてくれます。
 
ジェフリー・A・ランディス
火星縦断
 第三次火星探検隊は火星に降り立ったが、到着2日目にして帰還船〈ダルシネア〉にトラブルが発生してしまう。一行はやむなく、かつてブラジル隊が遺した〈ジェズス・ドゥ・スル〉を使うことを決意するが……。
 
 本作では、火星くじが登場します。実は、第三次火星探検隊のうち、ひとりはずぶの素人でした。資金集めのため、火星探検隊への参加権をくじにしてしまったのです。
 この幸運なのか不幸なのかを射止めたのは、トレヴァー・ホイットマン。21歳の青年なのですけれど、実は……という驚きの設定あり。
 作者のランディスは、NASAの現役研究者だそうです。現実にも宇宙開発にからむくじってありえるのでしょうか? 買ってみたいですね。
 
ジョン・J・ナンス
軌道離脱
 キップは、宇宙商業飛行を運営するASA社のキャンペーンに当選し、地球脱出のチケットを手に入れた。訓練も経てついに旅たつが、事故が発生し、パイロットが死んでしまう。通信手段も断たれ、宇宙船の中で立ち往生してしまったキップだったが……。
 
 こちらのキップは、ハインラインのキップと違ってかなりオトナ。しかも、ロイの行った低位ステーションよりさらに地球寄りの低軌道。SFではなくNVレーベルから出たのも納得な内容でした。
 そして、こういうキャンペーン、実際にありましたよね。かつてペプシがやってました。
 
 2001年宇宙の旅キャンペーン
 
 もし計画が失敗した時は当選者に1,000万円を支払う、という但し書きがついてましたが、その後どうなったのでしょうか。もしかして、いまだに延期中?
 宇宙空間で宙ぶらりんはOKですが、地球の上で宙ぶらりんは嫌なものです。

 

 
■■■ 書房入口 ■ 書房案内 ■ 航本日誌 ■ 書的独話 ■ 宇宙事業 ■■■