第二巻『キャピトルの物語』(1910/5)
伝説の男ジェイスン・ワーシングがこの世に生まれる遙か以前−銀河帝国の首都キャピトルでは、人工冬眠薬ソメックが人々の関心を集めていた。ソメックを投与された人間は数年ごとに睡眠と覚醒を繰り返し、ほとんど永遠に生き続けることができるのだ。だがこの偽りの不死が、大いなる悲劇をもたらすことになろうとは…。長篇『神の熱い眠り』の背景となった壮大な宇宙史の全容を、数々の逸話を通じて描きあげた名品集。
(引用:「BOOK」データベース)
第一巻の舞台となるフラット・ハーバーの村では「苦痛」がありませんでした。
誰かが事故で命を落とすようなことは起こりませんし、人の心を傷つけるような罵りあいもなし。老衰で亡くなるような人がでてくると、悲しみの記憶はすぐさま遠ざけられる徹底ぶり。
この、ありえない世界が誕生することになった経緯と、その顛末が語られるのが《ワーシング年代記》でした。
見守られている世界というと、その昔、佐々木淳子の漫画で『ブレーメン5』というものがありました。
ヒロインが暮らしていたのが、神様に見守られている世界だったのですが、実は、科学者の実験だったんです。閉じた楽園を人工的にこしらえ、人間を育てて実験していたんです。
そういった世界を《ワーシング年代記》でも想像してしまったのですが、全然ちがいました。どちらかというと、スクエア・エニックスが携帯ゲーム機で出したロールプレイングゲーム「ドラゴンクエストIX」に近いような……?
物語の発端となるのは、なんと天使界! あなたは天使のひとりとして、地上の人々の感謝の気持ちの結晶「星のオーラ」を集めるのが使命。それを「世界樹」にささげることで「女神の果実」がなり、神への道が開かれるというのですが——
(以上、公式サイトよりストーリー抜粋)
守られているという世界のありようを比べてみると、意外と似ているな、と。《ワーシング年代記》には天使は出てきませんが……。
ゲームにはさまざまな制約があるのでしょうけど「ドラゴンクエストIX」は、少し設定に無理があるように思ってました。そんな記憶があるうちに《ワーシング年代記》を読んで、「守られた世界」をきっちり書き上げたカードって、すごい作家なんだな、と改めて思いましたよ。
もっと早く読めばよかったです。