書的独話

 
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2010年05月06日
守られた世界
 
 オースン・スコット・カードの《ワーシング年代記》読みました。
 
 第一巻『神の熱い眠り(1910/5)
 あらゆる苦痛が瞬時に癒され、不幸や恐怖の存在しない世界−少年レアドが暮らすその世界に突如「苦痛」が蔓延した朝、人々の前に不思議な男が現われた。男はジェイスン・ワーシング、伝説の神と同じ名の持ち主だった。その日からレアドは、一万五千年以上にわたるジェイスンの波瀾の人生を何度も夢に見るようになる。夢が進むにつれ、やがて明かされる宇宙創造の秘密とは。人気作家カードの原点といえる傑作SF長篇。
(引用:「BOOK」データベース)

 第二巻『キャピトルの物語(1910/5)
 伝説の男ジェイスン・ワーシングがこの世に生まれる遙か以前−銀河帝国の首都キャピトルでは、人工冬眠薬ソメックが人々の関心を集めていた。ソメックを投与された人間は数年ごとに睡眠と覚醒を繰り返し、ほとんど永遠に生き続けることができるのだ。だがこの偽りの不死が、大いなる悲劇をもたらすことになろうとは…。長篇神の熱い眠りの背景となった壮大な宇宙史の全容を、数々の逸話を通じて描きあげた名品集。
(引用:「BOOK」データベース)

 第一巻の舞台となるフラット・ハーバーの村では「苦痛」がありませんでした。
 誰かが事故で命を落とすようなことは起こりませんし、人の心を傷つけるような罵りあいもなし。老衰で亡くなるような人がでてくると、悲しみの記憶はすぐさま遠ざけられる徹底ぶり。
 この、ありえない世界が誕生することになった経緯と、その顛末が語られるのが《ワーシング年代記》でした。

 見守られている世界というと、その昔、佐々木淳子の漫画で『ブレーメン5』というものがありました。
 ヒロインが暮らしていたのが、神様に見守られている世界だったのですが、実は、科学者の実験だったんです。閉じた楽園を人工的にこしらえ、人間を育てて実験していたんです。
 そういった世界を《ワーシング年代記》でも想像してしまったのですが、全然ちがいました。どちらかというと、スクエア・エニックスが携帯ゲーム機で出したロールプレイングゲーム「ドラゴンクエストIX」に近いような……?

 物語の発端となるのは、なんと天使界! あなたは天使のひとりとして、地上の人々の感謝の気持ちの結晶「星のオーラ」を集めるのが使命。それを「世界樹」にささげることで「女神の果実」がなり、神への道が開かれるというのですが——
(以上、公式サイトよりストーリー抜粋)

 守られているという世界のありようを比べてみると、意外と似ているな、と。《ワーシング年代記》には天使は出てきませんが……。

 ゲームにはさまざまな制約があるのでしょうけど「ドラゴンクエストIX」は、少し設定に無理があるように思ってました。そんな記憶があるうちに《ワーシング年代記》を読んで、「守られた世界」をきっちり書き上げたカードって、すごい作家なんだな、と改めて思いましたよ。
 もっと早く読めばよかったです。


 

 
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