ポール・ギャリコ
『トマシーナ』
獣医の仕事に愛着を持てないマクデューイ氏は、動物に、愛情も、感傷も、関心も抱くことができずにいた。愛娘メアリ・ルーのかわいがっている猫トマシーナが病気になったときも、メアリ・ルーの懇願を退け、簡単に安楽死を決めてしまう。ショックを受けたメアリ・ルーは病気になってしまうが……。
さて、ここから先、ネタバレしている可能性があります。少し空白を入れておきますので、ネタバレを許容できない場合には、どうぞ引き返してください。
トマシーナの葬儀が営まれた後、ブバスティスの猫の女神バスト・ラーが登場します。自分のことを〈わらわ〉と呼ぶ女神さまは、かつての暮らしぶりを語ります。今は転生して、ただひとりの巫女に仕えられる身になっているけれども……。
物語は進んで、終盤近くになって気がついたのです。
バスト・ラーという存在は、転生というより、猫が脳内に所有しているご先祖さまの記憶なのではないかな、と。本来の自我がひっこんだために、表面化したのではないかなって。
猫って、砂漠出身だそうです。ひょっとしたらどの猫も(うちの猫も!)、バスト・ラーの子孫なのかもしれませんね。
そして、この話はここで終わりではないんです。ご先祖さまの記憶で、そういえば、と思い出したのが……
(やっぱりネタバレしてますので、ご了承ください〜)
ピエール・ブール
『猿の惑星』
メルーはペテルギウスへの旅に出発し、第二惑星で人間と遭遇した。人間たちは文明も言葉も持っておらず、惑星を支配しているのは猿たちだった。
メルーは囚われの身となり、なんとかして、猿たちと意思の疎通を図ろうとするが……。
メルーの試みは成功し、彼は知能がある者として扱われます。色眼鏡で見る猿もいましたが、友もできました。そして、ある実験に立ち会います。
被験者は、動物のように暮らしている知能のない人間たち。なんと、ある刺激を与えたところ、先祖が見聞きしたことを語ったのです。
映画の「猿の惑星」では、自由の女神を登場させることで、惑星の正体が明らかにされました。原作では、先祖の記憶を語らせることで、惑星がたどった歴史が明らかになるのです。
右脳=先祖脳は否定されているようですが、どこかにご先祖さまの記憶が眠っているとしたら、いったいどんなことを語るのでしょうね。