書的独話

 
2011年のひとりごと
01月01日 展望、2011年
01月09日 2010年、ベスト
01月15日 Dreamweaverの襲来
02月04日 今ひとたびの…
02月06日 ある相撲人の生き方
02月19日 過去との遭遇
02月26日 伝承の行方
04月28日 満中陰
05月28日 いやー!な人
09月16日 『見上げてごらん。』
10月09日 何度も読みたくなる本
11月14日 不具合本顛末記その2
12月31日 総括、2011年
 

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2011年01月09日
2010年、ベスト
 
 児童書を多めに……と思って、いどんだ(?)2011年。収穫もあるにはありましたが、途中から、だんだんと大人向けの本にシフトしていきました。やはり児童書は、児童のうちに読まなきゃねぇ。
 そんなこんなで、2010年に読んだベスト本は、こちら。
 
ジョージ・R・R・マーティン
ガードナー・ドゾワ
ダニエル・エイブラハム
ハンターズ・ラン
 辺境の植民星サン・パウロで、ラモンは謎の異星種族に襲われてしまった。捕らえられたラモンは、強制的に人捜しの手伝いをさせられてしまう。その人物は、彼らのもとを脱走した何者かなのだが……。
 著者によるあとがきによると……
 この物語の発端は、1976年のドゾワの思いつき。数千語書かれた後お蔵入りし、1980年、ドゾワはマーティンに合作しないかともちかけます。承諾したマーティンとドゾワは、交互に書き続けることにします。が、やっぱり行き詰まってしまったドゾワ。20年間放置した後、若手のエイブラハムにも声をかけます。エイブラハムは、若かりしころのドゾワとマーティンの作品に、徹底的に手を加えます。その後、ドゾワが修正して2007年、ついに完成。2010年、日本語訳されました。
 経緯からも分かる通り、やや古いSFの雰囲気もあります。交互に書いたであろう箇所は、趣が違っていたりもします。それらが混ざりあって相乗効果が生まれたのか、古めかしくて新しい、一風変わった作品でした。
 
ポール・ギャリコ
ジェニィ
 思いがけず猫となってしまった少年ピーターは、人間たちの町をさまよったあげく、負傷してしまう。倒れたピーターを助けたのは、雌猫ジェニィだった。ピーターは、猫であるにも関わらず、毛繕いひとつ満足にできない有様。ジェニィから猫のことを学ぶが……。
 猫好きで知られるギャリコの、猫視点小説。猫になったピーターが、ジェニィと共に、さまざまな冒険を繰り広げます。そうそう、猫ってそうなんだよね、と、うちの飼猫を見ながら思ったものでした。
 
ポール・ギャリコ
トマシーナ
 獣医の仕事に愛着を持てないマクデューイ氏は、動物に、愛情も、感傷も、関心も抱くことができずにいた。愛娘メアリ・ルーのかわいがっている猫トマシーナが病気になったときも、メアリ・ルーの懇願を退け、簡単に安楽死を決めてしまう。ショックを受けたメアリ・ルーは病気になってしまうが……。
 ジェニィの親戚筋の猫トマシーナの飼い主メアリ・ルーの父マクデューイ氏の物語。『ジェニィ』が猫視点だったのと対照的に、こちらは人視点。猫視点な章もありますが、基本は人。マクデューイ氏が中心で、その娘メアリ・ルー、親友で牧師のアンガス、マクデューイ氏が商売敵と思っている魔女のローリ、と、多彩な人物たちが登場し、結末へとなだれ込みます。読み応えがありました。
 なお『トマシーナ』に関しては、2010年12月05日の書的独話「ご先祖さまの記憶」でもふれてます。
 
エミリー・ロッダ
ローワンと魔法の地図
 ある日、リンの谷に流れる川の水が減り始めた。村人たちは原因を探るため、水源である〈禁じられた山〉に登ることを決める。屈強な者たち6人が名乗り出るが、〈賢い女〉のシバが山の地図を渡したのは、内気で臆病なローワンだった。ローワンは仲間たちと共に、頂を目指すが……。
 児童書です。〈リンの谷のローワン〉のシリーズ一作目。短い中にもしっかりと、起伏と謎がちりばめられて、これはおもしろい、と続編まで読みました。ただ、続編も同じパターンになってまして……。さすがに目新しさが消え去って、3巻目で挫折しました。
 
ジョナサン・ストラウド
バーティミアス》三部作
(『サマルカンドの秘宝』『ゴーレムの眼』『プトレマイオスの門』)
 12歳のナサニエルは、魔術師の弟子。師匠には秘密のままこっそりと、妖霊バーティミアスを召喚した。目的は、憎たらしいエリート魔術師ラブレースに仕返しすること。以来、出世欲の強いナサニエルと、口の悪いバーティミアスの奇妙な関係が続くが……。
 児童書です。脚注がたくさんついている、少し変わった本。子供はそれらも熟読するのでしょうね。
 第一部は、ナサニエルとバーティミアスの物語。その2年後の第二部では、特殊な能力を持っているキティが主役の一員として加わります。第二部はキティの過去が語られるため、ややもたつき気味。第三部は、さらに3年後の物語。今まで名前しか出て来なかったプトレマイオスの実像を明らかにしつつ、これまでの伏線もきっちり消化。バーティミアスもびっくりの結末が待ってました。

 

 
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