ミュージカル映画「オズの魔法使」が公開された1939年は、白黒からテクニカラーへの移行期。冒頭のカンザスのシーンが白黒で始まり、竜巻に襲われた少女ドロシーが不思議なオズの国についた途端、世界に色がつきます。
現実とオズを強烈に比較する、過渡期ゆえの演出に思えたものでした。そして久しぶりに、原作を読みました。
ライマン・フランク・ボーム
『オズの魔法使い』
カンサスの灰色の世界で暮らしていた少女ドロシーは、竜巻に巻き込まれて異世界に飛ばされてしまった。懐かしいカンサスに帰るため、オズの偉大な魔法使いに頼るが……。
すっかり忘れていましたが、原作でも、冒頭のカンサスは灰色なんです。緑色である草までも。というのも、
お日さまが、長い葉先を焼いて、どこかしこと同じ、灰色にしてしまったから
景色だけでなく、ヘンリーおじさんも、エムおばさんも沈んだ灰色。ちがうのは、みなしごのドロシーだけ。小さな黒い犬のトトが、ドロシーを笑わせてくれるおかげで。
ドロシーはそんな沈んだ世界にいたのに、美しいオズの国を目の当たりにしても、なお「うち」に帰りたがります。
故郷ってやつは……。
ドロシー役のジュディ・ガーランドがその思いを語ったセリフは、アメリカ映画協会によって、名セリフ・ベスト100に選ばれました
There's no place like home.