どことなく低調だった、2011年。
読書に楽しみを見いだしつつも、おもしろいんだけど……と、口ごもってしまうのは、目が肥えてきたからか、他の要因があるのか。
この年のベストは残念ながら、文句なしのおもしろさ、とか、イチオシ、ではないです。読んでいるうちにだんだんおもしろくなってきたり(出だしはいまいち)、但し書き付きでおもしろい、といった本たち。
おもしろさの基準なんて人それぞれ。
読むタイミングによっても違いますから、あまり深く考えずに……。
ジェフ・ヌーン
『花粉戦争』
黒タクの運転手コヨーテの死体が、異様な姿で発見された。捜査にあたるシャドウ・コップのシビルは、被害者の記憶をさぐり、ボーダという名を見つけだす。ボーダは、過去を持たないXタクシーの運転手にしてコヨーテの恋人。コヨーテ殺害の犯人を突き止めようとするが……。
変容した世界を舞台に、多彩な登場人物が、それぞれの想いを抱えながら活躍してます。あっちにこっちに話がとびつつも、きっちりひとつの世界になっていて好感度高し。
おそらく読み返すと、また別の印象が引き出されてくると思います。それが、良い方面なのか、悪い方面なのか……。
アダム=トロイ・カストロ
『シリンダー世界111』
独立ソフトウェア知性集合体〈AIソース〉によって創られたシリンダー型世界111で、殺人事件が発生した。被害者は、知性体ウデワタリを調査している人類の外交団の一員。法務参事官アンドレアが駆けつけ調査に着手するが……。
SFというより、ミステリ。ただ、SFに慣れてないと、おそらくきついだろう世界観。閉ざされた世界が舞台とはいえ、登場人物の多さときたら……もう苦労させられました。
ブランドン・サンダースン
『エラントリス 鎖された都の物語』
かつて光り輝いていた〈神々の都市〉エラントリスの崩壊から10年。アレロン王国の王子ラオデンは、無作為に訪れる〈シャオド〉と呼ばれる現象によって、呪われたエラントリス人となってしまった。王子は亡き者とされ、エラントリスに閉じ込められてしまうが……。
実は、1年の内に2回も買ってしまいました。
王子ラオデンと、王子と結婚するはずだったサレーネと、布教にはげむホラゼン大主教の三者が、それぞれに悪戦苦闘。エラントリスの謎と、崩壊しつつある王国と、せまりくるデレス教の侵略軍。張り巡らされた伏線にはうなるばかりでした。
正直に告白すると、ネーミングセンスが好みじゃない、とそれだけです。但し書きは。
パトリシア・A・マキリップ
『妖女サイベルの呼び声』
魔術師の娘であるサイベルは、白い館で、書物と想像を絶するけものと共に暮らしていた。あるときサイベルは、甥に当たる赤児タムローンを預かる。タムローンは、現エルドウォルド王ドリードのひとり息子。サイベルは愛情を込めて育て上げるが……。
マキリップの代表作で、世界幻想文学大賞をとった名作。
寒々としたサイベルが主役だけに、話の展開も淡々としていてます。
過去にあったことで、今では神話となっている
そんな、突き放した感じに書かれてあるので、おもしろいけれども、熱くはなれないなぁ……と。
そして、ベストに入れるかどうか迷ったのが、こちら。
キャサリン・フィッシャー
《サソリの神》三部作
『オラクル 巫女ミラニィの冒険』
『アルコン 神の化身アレクソスの〈歌の泉〉への旅』
『スカラベ 最後の戦いと大いなる秘密の力』
神殿の巫女は神の言葉を取り次ぐことで〈ふたつの国〉を支配していた。最上位の巫女〈語り手〉のハーミアは、将軍アルジェリンと結託。自分たちの都合のいいように宣託をくだしてしまう。その状況を知った〈運び手〉のミラニィは、不正を正そうとするが……。
ミラニィ自身、巫女になれたのは親の賄賂によるもの。とにかく臆病で、第二位の地位である〈運び手〉になれたのも、ハーミアに操りやすかろうと思われたから。
そんなミラニィに、神が語りかけます。その神サマも万能ではなく、悪いことをして別の神様に罰せられたりしてます。
第一巻は、児童書のような気分で読んでました。
物語がすすんでいくにつれ、良質であることに気がついたものの、やはり児童書気分は抜けきれず。児童書がだめなのではなく、児童書と思わせてしまうところがちょっとなぁ……という感じです。