世の中には、犬派と猫派がいるそうで。
といって読んだのが、ノンフィクションの『マーリー』でした。(書的独話/5月20日『マーリー』参照)
それではお次ぎは、猫もので……というわけで、
ヴィッキー・マイロン
『図書館ねこデューイ 町を幸せにしたトラねこの物語』
凍えるようなある冬の朝、アメリカ中西部にある田舎町の図書館長ヴィッキーは、返却ボックスの中でふるえている子ねこを見つける。デューイと名づけられたその雄ねこは、人なつこい性格と愛らしいしぐさでたちまち人気者になり、やがて町の人々の心のよりどころになってゆく。ともに歩んだ女性館長が自らの波瀾の半生を重ねながら、世界中に愛された図書館ねこの一生をつづった大感動のエッセイ。生きる元気をくれる一冊。
(文庫版の「BOOK」データベースより転載)
舞台となったのは、アメリカはアイオワ州スペンサー。
アイオワ州は五大湖の南西で、北海道とだいたい同じくらいの緯度。夜に零下15度まで下がった翌朝、ヴィッキーは、凍えるような図書館の返却ボックスの中で、薄汚れてすっかり冷えきった子猫を見つけました。
それが、図書館猫として一躍有名になる、デューイ・リードモア・ブックス。
ちなみにデューイというのは、デューイ図書十進分類法から。(デューイが有名になると、11名もの人間がデューイを捨てたことを白状したんだそうな……。)
デューイに一目惚れしたヴィッキーは、彼を図書館で飼うことに決めます。とはいえ、いくら図書館長でも、一存で猫を飼うことはできません。図書館は図書館理事会に監督されているので、彼らの同意が必要なのです。
幸いデューイは人懐っこい猫で、理事たちにも気に入ってもらえました。
そこでデューイは、地域社会デビューします。
地域紙の記事になって、市民の知るところとなったのです。それによって、猛反対に遭ったり、不安を訴えられたり、マイナス面もでてきます。大多数の市民は、デューイを受け入れるか、黙認してくれたのですけど。
というわけで、出だしは猫の話。そこに、ヴィッキーの図書館哲学が入ってきます。それと、スペンサーや図書館の歴史と現状なども。
話が進むと、ヴィッキーの個人的な事情について書かれ始めます。これがまた、波瀾万丈な人生なんです。それだけに、心の中でデューイの存在がすごく大きくなっていったんだろうなぁ……と想像。
とにかく猫が読みたいんだ!
というだけの人は、がっかりするみたいですね、この本は。
そもそも猫って習慣の動物だから、日々の暮らしの変化なんてほんのちょっと。テレビ取材(なんとNHK!)があったとか、遠方からデューイに会いに来たとか、外的要因による変化があるくらい。
文字だけの本にしては、猫が中心になった方ではないかな、と思います。少なくとも、実は家族の話だった『マーリー』より、よっぽど猫度が高い、と思ったのでした。