書的独話

 
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2014年01月25日
惜しい!
 

 偶然、手に入れたんです。
 宮部みゆきの『楽園』を。

 ライターの前畑滋子は、萩谷敏子から奇妙な相談を持ち込まれた。亡くなった息子の等が、超能力者かもしれないというのだ。等の死後、すでに時効が成立している殺人事件が発覚した。茜という不良娘を、実の両親が殺害し自宅の床下に埋めていたのだ。等は、その様子を絵に描いて遺していた。等はどうやって、その事件のことを知りえたのか? 滋子は調査を開始するが……。

 直木賞を受賞したこともある作家さんですし、もちろん、宮部みゆきの名前ぐらいは知ってます。一時期読んでましたし。
 読まなくなってしまったのは、異世界ものを読んでから。
 要するに、合わなかった、と。

 風向きが変わったのは、昨年あたり。
 ここのところ翻訳ものばかり読んでましたが、日本人作家もとりいれていこうかと考え始めていたのです。でもね、いきなり日本人作家を、なんていっても誰を読めばいいのか分からない。そうなると、じゃあ、知ってる作家さんで……ということになり、自然とまた手にとるようになったわけです。

 読むことにしたとはいえ、疎遠になってましたから、情報を追っかけることもしてませんし、どんな作品を発表しているのか、まったく分からない。ひとまず、異世界が舞台ではなさそうなものを……という基準だけで、何冊か購入してみました。
 そのうちの一冊が、『楽園』でした。
 予備知識は、まったくなし。どういう物語なのか、判断材料になったのは、下巻のあとがきと、不正確かもしれない帯のあおり文句のみ。
 そんな状態で読み始めたのです。

 主人公の前畑滋子は、なにやら過去の事件で苦しんでます。なんでも、女性を標的とした連続誘拐殺人事件に深く深く関わってしまったんだそうで。それが9年前のこと。
 犯人は残忍な野郎で、捕まったのち裁判にかけられて、滋子も証言台に立った、と。一審判決は死刑。もちろんそこで終わることなく、控訴しているところ。
 そんな情報が語られて、滋子の、苦しんできた心の軌跡が綴られていきます。でも、肝心の、どういう事件だったのかは明確に書かれない。
 そこにモヤモヤしつつ、読み進んでいくと、なんだかその事件を知っているような気がしてきたんです。

 もしかして!

 と思って、犯人の名前を手がかりに調べてみたら、滋子の心の重しになってる9年前の事件って『模倣犯』でした。
 それなら読んでる。だから、どこかで聞いたことがあるような事件だな、と思ったわけだ。
 で、航本日誌を当たってみたら……読んだのは2004年1月11日でした。

 10年前だ!
 惜しい!

 あと1年早く『楽園』を手に取っていれば、ちょうど9年前だったのに〜。惜しいことをしました。
 でも、まぁ、作中で、滋子と会った人たちの、

 あれ、この人、どこかで……?
 あっ
 あの時のジャーナリストね!

 という反応と似たような印象を抱けたかもしれませんね。
 あのとき滋子が出演したテレビ番組のことは、それなりに覚えてました。作中の登場人物たちも、きっとそんな感じだったはず。
 なんとも得難い読書体験でした。

 それにしても、惜しかった。
 あと1年早かったら……


 

 
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