2015年に入って4ヶ月近くが経過し、ようやく、2014年分の航本日誌を書き終えました。ある1冊の本との出会いが、いろんなところに影響を及ぼしてしまったのですが、それについては、後程また……。
2014年に読んだ本ベストは、こちら。
アンディ・ウィアー
『火星の人』
NASAの有人火星探査も3回目。だが、31日を予定していたミッションは6回目に中止となった。想定をうわまわる砂塵は収まる気配がなく、クルーたちの身に危険がせまっていた。だが、撤退中に事故が起こってしまう。吹き飛ばされたアンテナが、クルーのマーク・ワトニーを直撃したのだ。行方知れずとなったワトニーは死んだものと思われたが、実は生き延びていた。しかし、帰還手段も通信装置もなく、本当に死ぬのも時間の問題。ワトニーはさまざまな方策を考えるが……。
これまで火星を読みたくなったときには、ジェフリー・A・ランディスの『火星縦断』(2006年、ベスト)を読んでました。今後はそこに『火星の人』も加わるな、といった一冊。
どちらも火星が舞台で、その火星がまた厳しいのなんの。両書の決定的な違いは、暗いか明るいか。火星で暗いのが読みたいときには『火星縦断』でいいけれど、もうちょっとなんとかならないか、というときには『火星の人』で。
火星じゃなくてもいいから、サバイバルしたいときにも、あり。
ジェラルディン・ブルックス
『古書の来歴』
戦火で行方不明になっていたサラエボ・ハガダーが再発見された。ハガダーとは、ユダヤ教徒が過ぎ越の祭で使う書物。それを守ったのは、イスラム教徒だった。古書鑑定家のハンナ・ヒースは、修復のためにサラエボ・ハガダーに接し、その来歴をさぐっていくが……。
一冊の書物の歴史をさかのぼっていくミステリ。伝えられて、守られて、守られて、作られて、描かれて、発見されて……。実質的には連作短編集。
人生の、わずかな一時期を切り取った、まったく関係のない人たちの短い物語が、サラエボ・ハガダーをつうじてつながっていくさまは、連綿と続く人類の歴史のよう。誰もが、なにかを通じて、見ず知らずの人とつながっているのでしょうね。
ヴィクトル・ペレーヴィン
『宇宙飛行士 オモン・ラー』
オモンの夢は、宇宙飛行士になること。そして航空学校に入学するが、そのときの面接試験が功を奏して、ソヴィエトKGB第一課付属機密宇宙学校に引き抜かれる。かくして宇宙飛行士になることの訓練が開始されるが……。
ソ連ってやつは!
世の中には、ネタバレが許せない物語と、結末が分かっていても楽しめる物語の2パターン存在すると思います。本書は前者だと思います。
分かった上で読むのは、あり。でも、人から聞いてから読むなんて、もったいなさすぎる。
畠中 恵
『しゃばけ』
一太郎は、廻船問屋兼薬種問屋、長崎屋の若だんな。齡三千年の大妖を祖母にもつ。一太郎の世話をあれこれと焼くのは、手代の佐助と仁吉。ふたりの正体は、犬神と白沢。祖母によって送り込まれてきた。というのも一太郎が、商売よりも病に経験豊富であるほど病弱であったから。
両親も手代たちも、遠方まで噂になるほどの過保護ぶり。そんな一太郎が殺人事件に巻き込まれて……。
2014年から今日にいたるまで、ばたばたしてしまっている元凶。第13回日本ファンタジーノベル大賞の優秀賞受賞作。好評ゆえにシリーズ化されて、今でも続いてます。
おもしろくて、おもしろくて、読みまくりました。悪いことに、サクサク読めてしまう。しかも、このシリーズ、短編が基本なんです。
私事ですが、短編って、航本日誌に書くのにすごく時間かかるんですよ。あの短い1作品に、長編と大差ない時間がかかっちゃう。というのは言い過ぎですが、気分的にはそのくらいかかる。
それなのにどんどん読んでしまうから、未処理本が山となり、その山を前にして、新しい本を読むのをためらってしまう始末。おかげさまで、読書ペースが乱れまくって今にいたってます。
つまり、ペースがかき乱されるほど、おもしろんです、この本は。
では、ここで、ベストに入れるかどうか迷った挙げ句に見送った本を2冊、ご紹介。どちらも歴史もの。内容については「BOOK」データベースから引用しました。
冲方丁
『天地明察』
江戸時代、前代未聞のベンチャー事業に生涯を賭けた男がいた。ミッションは「日本独自の暦」を作ること−−。碁打ちにして数学者・渋川春海の二十年にわたる奮闘・挫折・喜び、そして恋! 早くも読書界沸騰! 俊英にして鬼才がおくる新潮流歴史ロマン。
和田 竜
『のぼうの城』
時は乱世。天下統一を目指す秀吉の軍勢が唯一、落とせない城があった。武州・忍城。周囲を湖で囲まれ、「浮城」と呼ばれていた。城主・成田長親は、領民から「のぼう様」と呼ばれ、泰然としている男。智も仁も勇もないが、しかし、誰も及ばぬ「人気」があった−−。