ときどき物語を読んでいて、他の物語と繋がっていることに気がつくことがあります。今回も、そういう類いのはなし。
先に書いておくと、ある意味、ネタバレしてます。
さすがに物語の結末は書きません。ですが、まったく予備知識がない状態で、その出来事と出くわしたことが衝撃だったため、同じく衝撃を味わいたい人は、物語を読んでからどうぞ。
今回、まず登場する物語は、
ポール・ギャリコの「スノーグース」。
燈台小屋に住みついたラヤダーは、野鳥たちを保護して暮らしていた。そこに、ひとりの少女が訪ねてくる。少女フリスは傷ついたスノーグースを見つけ、ラヤダーに託したのだった。 その日から、スノーグースを介して、ラヤダーとフリスの交流がはじまるが……。
ギャリコの代表作です。
個人的には、猫が好きな作家、という一面から知ったので、最初に読んだのは『ジェニィ』でしたが。(2010年の「猫語の教科書」に記述あり)
その後、いくつか作品を読んでから「スノーグース」にたどり着きました。実は、代表作だと知ったのは、読んでから。
たまたま手に入れて、薄くてすぐ読めそうだから、読んどくか、と。タイトルから、白雁が出てくるんだろうな、くらいの認識しかありませんでした。
で、読んでいて衝撃だった、というのは、
ダンケルク撤退が出てくるんです。
本文中に年号が明記されているので、第二次世界大戦が絡んでくるのは予測がつきそうなもんですが、そういう情報はスルーするたちで。エセックスの海岸というのがどのあたりなのかもよく分かってないし。
ところで、ダンケルク撤退とは?
時は、第二次世界大戦の開戦の翌年。
場所は、フランス北部の港町ダンケルク。
イギリス・フランスの連合軍はドイツ軍の侵攻に追い立てられて、ダンケルクで包囲されてしまいます。イギリスは、民間船を含めたあらゆる船舶を総動員して、追いつめられた彼らを海から救おうとします。
イギリスでの作戦名は、ダイナモ作戦でした。
で、なにが衝撃かといえば、脳裏にひらめいたのです。
コニー・ウィリスの『ブラック・アウト』が。
オックスフォード大学の航時史学生たち3人は、調査のため別々に1940年へと旅立った。それぞれ、第二次大戦下のロンドン大空襲を、郊外の領主館で疎開のようすを、ダンケルク撤退を調べていたが、トラブルが発生してしまう。
主要登場人物のひとりマイクル・デイヴィーズは、アメリカ人記者を装って、ドーヴァー(ダンケルクから撤退してきた兵士の受け入れ先)に行こうとします。知りたかったのは、歴史に書き残されなかった人物のこと。
民間人の英雄がいたはずだ!
と。
そうです。ラヤダーのことですよ。
マイクルが捜していたのは、ラヤダーのことだったのだと思い至って、感無量。
かたや、戦時中の児童文学。かたや、21世紀のSF大作。接点があるとは思ってもみませんでした。
こうして繋がっていくのですね、物語は。
(ウィリスが「スノーグース」を念頭に置いていたかどうかなんて、存じませんよ、もちろん)