読んだり、読まなかったり、波のあった2015年。
振り返ってみれば、自分の中で中心だろうと思っているSFとは、少々離れたところにいました。
そんなこんなで、2015年に読んだ本ベストは、こちら。
ジェフリー・ディーヴァー
『コフィン・ダンサー』
四肢麻痺の科学捜査専門家リンカーン・ライムに持ち込まれた案件は、殺し屋〈コフィン・ダンサー〉の捜索。ライムには〈コフィン・ダンサー〉に部下を殺された苦い経験がある。狙われた男女を守りつつ、殺し屋を罠にかけようとするが……。
《リンカーン・ライム》シリーズの2作目。最初の『ボーン・コレクター』は途中で「あれ?」となってしまったのですが、今作の息のつげなさたるや。予測しながら読み進めていくと、裏切られてしまうという。
なお、本作の後『エンプティー・チェア』も読みましたが、冊数を重ねるごとにおもしろくなっていく……のはやはり難しかったようで。現在、11作まで出版されてます。今後が楽しみです。
ブランドン・サンダースン
『ミストクローク −霧の羽衣−』
支配王が倒れた後、解放されてしまった悪しき力は、世界を滅亡へと駆り立てていた。降灰が激しさを増し、立ちこめる霧は人々を殺し始める。大地は頻繁に振動し、植物は育たない。人々を生き延びさせるため、新皇帝のエレンドは、支配王の遺した貯蔵庫を手中に収めようとするが……。
《ミストボーン・トリロジー》の完結編。
第一部の『ミストボーン −霧の落とし子−』では圧政をしいていた支配王が倒され、こんなに早く亡くなってしまうのか!とびっくりしたものでした。支配王がいなくなって平和な世の中になったはずの『ミストスピリット −霧のうつし身−』では、相変わらず世界は暗いまま。
そして迎えた完結編の『ミストクローク −霧の羽衣−』。
ついに秘密が明らかになります。なぜ、こういう世界になったのか、答えが待ってます。
きちんと収まったので、それだけで満足。
横山秀夫
『64』
昭和64年、D県警史上最悪の誘拐殺害事件が起こった。この未解決事件を、警察庁長官が視察する。準備を命じられたのは、広報官の三上義信。関係が悪化している記者クラブからは視察取材のボイコットを告げられ、遺族は長官訪問を拒否。D県警内部では刑事部と警務部が対立。三上は、四面楚歌に陥るが……。
実は、この物語、ちゃんと完結してないんです。
三上の心の中でわだかまっているのは、家出した娘のあゆみのこと。それは、ロクヨンの符丁で呼ばれる過去の事件とは、一切関係ないことだったりする。あたりまえですけど。
そんなあゆみの存在が、三上の心にくらーい影を落としていて、三上の言動に影響を与えます。でも、事件とは関係ないし、解決もしない。
そういうところに不満を覚える人もいるようです。ただ、ひとりの人間、それも中間管理職の物語として読むと、すごくおもしろいんです。
そして、ベストにするかどうか迷いに迷って、外してしまったのが、こちら。
ラフィク・シャミ
『夜と朝のあいだの旅』
年老いたサマーニ・サーカスの団長は、大富豪となっていた旧友からの招待を受け、ウラニアへとやってきた。余命宣告を受けている旧友の望みは、サーカスに生き、サーカスで死ぬこと。そして団長の夢は、空前絶後の恋愛小説を書くこと。再会したふたりは、互いの夢を語り合うが……。
なんとも美しい物語。
団長のヴァレンティンは旧友ナビルと、ナッハモルグのひとときを共にします。ナッハモルグとは、夜と朝のあいだ。夜は去りつつあるけれど、まだ朝がやってきていない、つかの間。
秘密を分かち合うナッハモルグのとき、ヴァレンティンはナビルに、母と実父をモデルにした空前絶後(となる予定)の恋愛小説のことを語ります。
一見すると児童文学で、途中まで確かに児童文学なんですけど、児童のころに読みたかったというと、ちょっと考えてしまう。そのためらいが、ベストから外させたのでした。
すごくいい物語だとは思うんですけど。