航本日誌に「特集」として掲載していたJack Vanceのページを、本日削除しました。
ジャック・ヴァンスは、特別にコーナーを作ったほど好きな作家なのですが、そちらの更新まで手が回らず。嘆かわしいことに、2013年7月を最後に更新が止まってました。
そこで、内容の一部をこちらに移籍することにしました。その上で、追記の必要がでてきたら、その都度書くことに改めました。
さて、ジャック・ヴァンスとは?
1916年8月28日、アメリカはサンフランシスコ生まれ。
本名、John Holbrook Vance(ジョン・ホルブリック・ヴァンス)。SF作家。
デビューは29歳のとき。デビュー後もいろんな職業を経験し、とりわけ水夫として世界中を巡ったことが、その作風に反映されていると言われています。異郷作家と称される所以です。
流行に左右されることもなく、変わらない独特のスタイル。影響を受けたSF作家も少なくなく、そこかしこでヴァンス的なものをかいま見ることができます。
残念ながら、2013年5月26日に永眠。
ジャック・ヴァンスは死なない人だと思ってました!
「特集:Jack Vance」では、ジャック・ヴァンスの翻訳されている作品をご紹介していました。シリーズもの、アンソロジーに収録されているもの、雑誌に掲載されたもの、などなど。
今回拾ったのは、航本日誌に載せていない雑誌掲載作品の概略です。ちょっとした補足つき。今後、航本日誌にあがってくるはずの『奇跡なす者たち』に収録されている短編は除外してあります。
タイトル後の年号は、本国での発表年です。
■《切れ者キューゲル》シリーズ
このシリーズは『終末期の赤い地球』(1950年)と同じ世界を舞台にしたもの。
時代は、数十億年の未来。太陽は輝きを失い赤く鈍く照りつけています。滅びゆく地球で活躍しているのは、貴公子や魔法使いたち。もはや科学は遺物でしかなく、ファンタジー色が強くなってます。
他に「天界の眼」(1965年、『不死鳥の剣』に収録)が翻訳されています。
S-Fマガジン1980年07月号掲載
「十七人の乙女」(1974年、浅倉久志/訳)
キューゲルはグンダーの町にやってきた。グンダーには、古風な建物群と奇妙な機械仕掛けがある。キューゲルは興味津々。ところが、路銀はわずかに5タース。金持ちを装い宿屋に泊まるが……。
■ 《マグナス・リドルフ》シリーズ
私立探偵マグナス・リドルフが活躍するSFミステリ。
ジャック・ヴァンスは、本名で書いた『檻の中の人間』(1960年)でエドガー賞(処女長編賞)を受賞したり、エラリー・クイーン名義(3作品のみ)で推理小説を書いていたりもするのです。
S-Fマガジン2012年4月号掲載
「蛩鬼(きょうき)乱舞」(1949年、酒井昭伸/訳)
マグナス・リドルフはネイアス第五惑星に滞在中、ブランサムと名乗る男から投資を持ちかけられた。物件は、おとなり第六惑星でのみ採れるティコラマの農場。2年で元がとれる捨て値だった。
ブランサムが言うには、資金が必要になったため、自身の農場を半分売るのだという。あまりの好条件にマグナス・リドルフは疑いを抱くが、どう調べても魅力的な物件としか思えない。ブランサムと契約を結ぶが……。
S-Fマガジン1989年2月号掲載
「ココドの戦士」(1952年、米村秀雄/訳)
マグナス・リドルフは、資産を委託していた〈外縁帝国不動産投資協会〉が破産してしまい、貧乏人に転落してしまった。そこへ、〈女性連盟道徳保護委員会〉の書記を名乗る人物からの依頼が舞い込む。惑星ココドの文化は戦争。そして、旅行者のために〈影の谷〉に用意されているホテルでは、戦争を対象に賭博が繰り広げられていた。それをやめさせてほしいというのだ。マグナス・リドルフは、ホテル経営者が倒産した〈協会〉の役員であることを知り……。
他に「とどめの一撃」(1958年、『SF九つの犯罪』に収録)があります。
■その他の短編
S-Fマガジン2004年4月号掲載
「新しい元首」(1951年、浅倉久志/訳)
5つのエピソードと、ある元首の物語。
素っ裸でパーティ会場に立っていたケイヴァーシャム。
ブランド族に復讐を誓う剣士ベアウォルド。
主君のために死都テルラッチを探索するケイスタン。
イマジコン競技で創造的発想をぶつけるダクサット。
敵将につかまり、拷問にかけられるベラクロウの使節エルガン。
彼らと、銀河系元首との関係とは?
S-Fマガジン1993年3月号掲載
「アバークロンビー・ステーション」
(1952年、中村融/訳)
孤児のジャンは100万ドルを稼ぐため、ある広告に応募した。雇うのは、フォゼリンゲイ氏。その仕事とは、18歳のアバークロンビー伯爵と結婚し、伯爵の死後、相続財産をフォゼリンゲイ氏に100万ドルで売却する、というもの。伯爵は不治の病だという。ジャンは報酬を200万ドルにつり上げさせ、メイドとしてアバークロンビー・ステーションへ向かうが……。
S-Fマガジン1992年11月号掲載
「光子帆船二十五号」(1962年、中村融/訳)
8人の士官候補生が会議室に集められた。彼らを導く教官は、悪名高きヘンリー・ベルト。候補生たちが一人前の宇宙船乗りになれるかどうかは、ヘンリー・ベルトにかかっている。やがて8人は6人に減り、ついに訓練航宙にでかけることになった。乗り込むのは、旧式の光子帆船二十五号。古さ故か、宇宙で候補生たちを襲うトラブルの数々。彼らは無事に帰還できるのか?
別冊・奇想天外1980年3月号掲載
「緑魔術」(1963年、米村秀雄/訳)
ハワード・フェアは、故人となった伯父の形見から興味深い手記を発見した。伯父は60年前に、すでに知られている白魔術、黒魔術、紫魔術だけでなく、緑魔術をも見出していたらしいのだ。フェアは、徹底的な調査を行い、ついに緑魔術界の妖精を呼び出すことに成功する。フェアは妖精に忠告されるが……。
S-Fマガジン1990年9月号掲載
「エルンの海」(1965年、浅倉久志)
エルンは海で生まれた。水の子たちは、ほぼ2種類に分けられる。頭にひとすじの肉冠があるもの、それが複冠になっているもの。エルンは後者に似ていたが、少々違ってもいた。エルンは年長者から言葉を習い、自分らの運命が陸地に、"人間"と呼ばれる生き物にあることを知るが……。