目標の100冊には到達しなかったけれども、いくつかの興味深い本と出会えた2017年でした。
これまで苦手だった映画のノベライズもの。新たな面を見せてくれるのだと考えを改めました。読んだ後に映画を観れば、きっと注目ポイントが変わっているはず。
それはさておき、2017年に読んだベスト本はこちら。
ガブリエル・ゼヴィン
『書店主フィクリーのものがたり』
島で唯一の書店の主フィクリーは、島出身の妻ニックを亡くし孤立していた。そんなころ、書店に幼児が置き去りにされる事件が発生する。名前はマヤ。フィクリーは、マヤを引き取って育て始めるが……。
本屋大賞(翻訳部門)受賞作。
単なる舞台説明のような一言が、実は深い深い意味のあるエピソードで、その見事さにただただ感嘆。
本屋大賞って注目度が高いと思うので、受賞をきっかけに、あまり翻訳物を読まない人にもぜひ読んでもらいたい! と思うのですけれど。本屋で平積みされているのは日本人の作家の受賞作ばかりなんですよねぇ。
書店にもよるんでしょうか。
田牧大和
『鯖猫長屋ふしぎ草紙』
拾楽は、猫の絵ばかりを描いている売れない絵描き。実は拾楽には秘密があった。弟分のようにかわいがっていた以吉の遺言で、三毛猫を手掛かりに訪ねてくる相手を待っているところ。新たに家移りしてきたお智がその相手ではないかと疑うが……。
猫につられました。
ただただ猫ものが読みたかったとき、予備知識もないままに読みはじめました。そうしたら、猫以外のところでもおもしろくって!
短編集なのに、読み終わってみると長編になっているのがふしぎ。ひとつひとつはよくある設定や出来事なのに、それらが色あせずにしっくりはまっているのが、ふしぎ。
まさに、ふしぎ草紙でした。
ピーター・ディッキンソン
『ザ・ロープメイカー 伝説を継ぐ者』
ウッドボーンの谷は、偉大なるファヒールが与えてくれた魔法によって守られていた。その魔法が、今まさに消えようとしている。代々、ファヒールの教えを伝えてきた一族の者たちは、ふたたびファヒールの助けを得ようと旅立つが……。
たまたま手にして読んでみた物語。
失礼ながら、おもしろみのないタイトルで、まったく期待してませんでした。そうしたら予想外の展開で。こんなところで、美しく、骨太で、壮大なファンタジーと出会えるとは! といったところ。
期待せずに読んでいたのも、よかったのかも?
この物語の11ヶ月後、ネビュラ賞を受賞した、ナオミ・ノヴィク『ドラゴンの塔』を読みました。残念ながら楽しめなかったのですが、その理由は、先にディッキンソンを読んでいたから。
いろんなことが符合していて、気になって仕方ありませんでした。読む順番が逆だったら、正反対の印象になっていたかもしれませんねぇ。
読書はタイミング。
リリアン・J・ブラウン
『猫は殺しをかぎつける』他、
《シャム猫ココ》シリーズ
ひげがトレードマークのクィラランの家族は、シャム猫のココとヤムヤム。クィラランは、ココに特別な力があると信じている。今日もココはクィラランに、なにかを伝えようと、本棚から本を落としたり、足で踏みつけたタイプライターで文字を打ったりする。クィラランはメッセージを読み解こうとするが……。
第一作『猫は手がかりを読む』を読んだのは2016年でしたが、出版されたシリーズ29冊の内、大半を、この2017年に読破しました。
正直なところ、あまりおもしろくない巻もありました。過去作と同じ展開だったり、伏線らしきエピソードが置き去りにされていたり。それでもこのシリーズを推すのは、ミステリであってミステリでない、という一風変わったところが魅力的だから。
猫好きだったら、ココにもヤムヤムにも、きっとメロメロになるはず。主人公クィラランはさておき。
エミリー・ロッダ
『ローワンと白い魔物』
いつまでも終わらない冬に、リンの谷は飢えつつあった。生き残るため、ほとんどの村人は海岸へと避難する。一方ローワンは、村の家畜バクシャーのために残った。数人となった村は、ついにアイス・クリーパーの群れに襲われてしまう。なんとか撃退したローワンたちは、〈禁じられた山〉へと移動をはじめたバクシャーを追っていくが……。
《リンの谷のローワン》シリーズの第五巻。
児童書はときおり、あまりに深くてやるせなくなるのですが、本書もそのうちのひとつ。物語の展開の仕方が、すでにひとつの様式美。ワンパターンと言ってしまえばそれまでではあるものの。
子ども向けですが、ここまで読んできてよかったと思わせるシリーズ最終巻でした。