
アポロ11号が打ち上げられたのと同時刻。北極海の孤島からひっそりと宇宙船が飛び立った。
ゴースト1号。
アメリカの秘密組織〈セクター7〉に所属するゴースト1号は、未知の科学技術を元に開発された。それをもたらしたのは、凍りついた人型の巨大機械、通称〈アイスマン〉だ。
今も凍りついたままの〈アイスマン〉は、ゴースト計画と平行して移送することになっていた。万全の準備が整えられるが、ロシアのスパイが入り込んでいるという情報がもたらされる。
一方、地球を出発したゴースト1号は、太陽を利用したスイングバイで予想外の事態に巻き込まれていた。特殊なエンジンは予測をはるかに超える性能を示し、どことも知れない宇宙空間まで飛んでいってしまったのだ。しかもゴースト1号は、未知の宙域で〈アイスマン〉に似た宇宙船と遭遇。防衛機能を発動するが……。
実は〈アイスマン〉は、惑星セイバートロンの機械生命体。セイバートロン星は、〈サイバトロン〉と〈デストロン〉とに分かれた熾烈な戦争で荒廃し、両派は今も戦争状態にある。〈アイスマン〉の正体は、デストロンたちの首領メガトロンだったのだ。
デストロンたちは、メガトロンの行方を捜していた。ただし、メガトロンの代理を務めるスターストリームにとって、メガトロンは消えてもらいたい存在。ゴースト1号を奸計にはめて始末しようとするが……。
映画の「トランスフォーマー」の前日談。
物語をなんとかしようとして失敗しちゃった感じの作品。前日談なので制約が多かったんでしょう。やらない方がよかったかも……と同情してしまいました。
つづきは『トランスフォーマー』にて。
カタール西部にあるアメリカ中央軍特殊作戦司令部の前線基地が何者かの攻撃を受けた。目的は、軍事ネットワークへのハッキングらしい。軍部には謎の信号が残され、解析のために専門家たちがペンタゴンに呼び集められる。
基地にいたレノックス大尉は、かろうじて生き残ったうちのひとり。部下のエプスが赤外線カメラで敵を撮影しており、なんとかして情報を届けようと画策するが……。
一方、アメリカの高校生サミュエル・ウィトウィキーは、曾々祖父の遺品をネット・オークションにかけていた。曾々祖父は、氷男を発見したとされる北極の冒険者。その眼鏡やらを売り、車を買おうとしたのだ。
出品物は売れなかったものの、サムは、父の援助をとりつけることに成功する。ところが、サムが父に連れられて行ったのは、中古屋だった。
サムの失意は、カマロに出会うまで。サムは1975年式のカマロに一目惚れしてしまう。実はこのカマロ、地球外機械生命体の偽装だったのだが……。
地球には〈サイバトロン〉と〈デストロン〉という二派の機械生命体がやってきていた。最初にサムとの接触を計ったのは、サイバトロンたち。基地を壊滅においやったのはデストロンだった。
両派の闘いの鍵を握るのは、サムが売り払おうとした曾々祖父の眼鏡。サムは、否応無しに事件に巻き込まれていくが……。
映画「トランスフォーマー」のノベライズ。
映画は観ていませんのでどの程度自由にやったかは不明ですが、やはり小説としてはうまくいってないかなぁ、と。
機械生命体が変形していく重要なシーンとか、アクションとか、映像になっているものをひきずってる感じでした。活字ならではの表現って、あると思うんですけどねぇ。
同時刊行の『トランスフォーマー ゴースト・オブ・イエスタデイ』は、この話の前日譚です。時間的にはつながっているのですが、微妙なところで断絶してます。それでますます混乱してしまうのだな、たぶん。
ローマ法王ヨハンナが暗殺された。
ヨハンナに仕えていたシルヴェスター神父は、メキシコの娼館で少女マイをひろう。そのときシルヴェスター神父が隠し持っていたのは、法王の魂。マイの身体を使ってヨハンナの復活を目論んだのだ。
神父は、なにも知らないマイをサムサーラへと連れて行く。
サムサーラは、中空の帯のような小惑星。人々の死骸によってテラフォーミングされた。AIのツォンカパによって管理され、チベット仏教の聖地であると同時に、難民収容所でもある。
一方、殺し屋のアクスル・ボルハは、メキシコでの仕事でドジを踏んでいた。目的は果たしたものの、警察に捕まってしまったのだ。メキシコの法律では、殺人は抗弁なく死刑。
アクスルは、かつて雇用関係にあったサント・ドゥケ枢機卿との接触を図る。枢機卿は、メキシコにおけるカトリック教会唯一の代理人。事実上、メキシコを支配していた。
アクスルは、枢機卿に条件を提示される。
実はヨハンナは、ヴァチカンの膨大な資産を横取りしていた。かつてない利益をあげている法王庁の資産は、いまではからっぽ。アクスルは、サムサーラに潜入し、シルヴェスター神父かヨハンナの妹ケイト・メルカルデレスを連行してくることを条件に死刑を免れるが……。
中心となるのが、アクスルの物語。そこにマイの現状と、アクスルの銃コルトの活躍がはさまります。コルトには高性能なAIが搭載されていて、持ち主を変えつつもアクスルを追いかけます。徐々に明らかにされる、アクスルの過去。
通常、バラバラにされたピースが次々と浮上してきて徐々に全体像が見えてくると、ぴしっとはまっていくものですが、それがきちんとはまってない感じ。個々の設定やエピソードはおもしろいものの、全体で見ると不可思議。
どうもすっきりしない話でした。
かつて、美酒〈星ぼしの涙〉をめぐる悲劇があった。その舞台となったのが、惑星ダミエムだ。
ダミエム人は昆虫から進化した。知性と羽を持ち、妖精のように美しい。その背中からにじみ出た体液を原料として〈星ぼしの涙〉はつくられる。
密造団はダミエム人を捕らえ、より高価なヴィンテージものをつくるため、残虐な手段で分泌液を採取した。この秘密も連邦の知るところとなり、ついに密造団は一網打尽。以来、惑星ダミエムは厳しい監視の元に置かれている。
現在ダミエムに駐在しているのは、行政官のコーリー・エストリエル、保護連絡官のキプルゲット・コルソ、医療保護官のバラムジ・アプ・バイの三人。
そんなダミエムに、ノヴァ前線が近づきつつあった。
〈最終戦争〉終了直後のこと。巡洋艦デネブ号は、惑星ヴリラコーチャで超兵器が建造中との噂をききつけていた。実は、超兵器ではなく芸術の記念碑なのだが、デネブ号は、太陽もろともヴリラコーチャを破壊してしまう。
惑星ダミエムの空を通過するノヴァのガス殻は、ヴリラコーチャの名残。それらは、膨張しながら時間揺動と、オーロラの景観とを生み出す。
ダミエム駐在の三人は、ノヴァの見物人を迎えることとなった。通常観光客は、セントラルでの厳しい通関手続きを得て、ダミエムへと降り立つ。ところが、なんらかの手違いから、惑星グルニョンズ・ライジングに行く予定の研究者と水棲人が、ダミエムで降りることになってしまった。
コーリーは疑念を抱くが……。
どことなく戯曲のような24時間のドラマ。
ダミエムとヴリラコーチャの悲劇。観光客たちそれぞれの思惑。美しさを演出するノヴァのもたらすものとは?
あらゆるものが伏線となって、ラストの結論へとつながります。よく錬られている作品を読むのは、実に気分がいい。
ルウ・コルランは、〈曼荼羅〉オーソリティの高位統括官。
〈曼荼羅〉とは、人工天体〈中院〉から、マンダラのように伸びる特殊なエネルギーに満たれた星域。人類は、このエネルギーを利用する航法によって、ついに超光速航行を手に入れた。〈中院〉を作り上げたものたちのことは分かっていない。
コルランは休暇中、謎の怪物にでくわした。統括官だけが持つことを許される最強の武器、ラングストロム・クラッシャーで対抗するものの、負傷してしまう。
怪物は死んだが、その正体は分からない。しかも、怪物の出現はこれだけに留まらなかった。姿を変えつつ、さまざまなところに現れる怪物たち。
それらを放った者の正体とは?
その目的とは?
統括官とは、いわば広域警察のようなもの。絶大な権力をもっていて、人々から嫌われています。彼らは一般人とはちがって、不死者でもあります。コルランは最年長の部類で、ただいま413歳。300年以上生きたものに現れるという幻覚に悩まされてます。
銀と黒の上衣とクラッシャーが彼らのトレードマーク。
売り文句は「SFアクション」で、さまざまな形態の怪物とのバトルが繰り広げられます。が、どうもコルラン、そういった訓練受けてないような……。あまりに昔のことで、戦術なんて忘れてしまったんでしょうかね。
〈曼荼羅〉の秘密は謎のまま放っておかれますが、犯罪者の正体や目的は、きちんと明らかにされます。
世界を二分する〈西半球民主圏〉と〈太平洋人民圏〉。戦争の火ぶたが切って落とされたのは、火星でのことだった。火種は地球をも襲い、市民たちは地下に作った塔に退避。地上では人型ロボット〈要員(レッディ)〉による戦闘が繰り広げられ、核兵器が使われた。
それから15年。
ニコラス・セントジェームズは、地下塔トム・ミックスの塔長。塔では主任技術員のモーリー・スーザが病の床にあり、人工臓器がなければ助からない重体。しかし、人工臓器は野戦病院でしか使用を認められていない。
ニコラスは、地上の闇市場へと向かうことになるが……。
一方地上では、地下管理局補佐官のジョゼフ・アダムズが苦悩の日々を送っていた。アダムズの仕事は、タルボット・ヤンシー護民官のために声明原稿を書くこと。
ヤンシーは、西半球民主圏の最高指導者。その正体は、メガ電子脳6Vを搭載したお人形。
実は、戦争は13年前に集結。西半球民主圏と太平洋人民圏は結託し、大衆を地下に留めつづけてきた。地下塔の住民たちに流されている戦火の映像や、ヤンシーの演説は作り物だったのだ。
アダムズは、管理局のボス、スタントン・ブロウズの特別プロジェクトに加わることになった。ブロウズは、高層集合住宅の開発業者ルイス・ランシブルを罠にはめるつもり。アダムズは計画をランシブルに漏らそうとするが……。
ディックは、暗い世界でも一生懸命生きようとする人間がうまい。彼らの予測不可能な行動も人間らしさの一環として、受け入れられます。単にディックの作風に慣れてるだけかもしれませんが。
追いつめられて地上に行き、真相を知ってしまったニコラス。
突出した才能を持つ若者に出会って落ち込むアダムズ。
人工臓器を独占しているブロウズ。
動いているところを目撃された、人形のはずのヤンシー。
地下塔の人々が日の目を見る日はくるのか?
ブーダイーンはアラブの退廃した近未来都市。危険だが、魅惑的な暗黒街だ。この街を仕切るのは、パパことフリートレンダー・ベイ。パパは敬虔なイスラーム教徒だが、自分と神とを同列に考えていることも珍しくない。
マリード・オードラーンは、独立したチンピラ。パパの傘下には入らず、一匹狼でうまく立ち回ってきた。ブーダイーンを熟知し、恋人も友だちもおり、満ち足りた生活を送っている。金以外は。
マリードは、ロシア人のボガティレフから息子捜しの依頼を受けた。息子が行方不明になったのは、3年前。マリードは前金の3000キアムを受け取るが、ボガティレフはその場で射殺されてしまった。
気分のすっきりしないマリードは、ボガティレフの息子について調べる。彼は、3年前に他界していた。警察のファイルの中に、身元不明者として登録されていたのだ。
さらに、マリードの元に別の依頼が舞い込む。性転換した娼婦ニッキーが、雇用主のアブドル・ハイイから独立したがったのだ。アブドル・ハイイはパパの子分のひとり。マリードは、パパの代弁者であるハサンに仲介を頼むことにした。
ハサンの力により、ニッキーは足抜けすることができた。ところが、示談金を払わずに失踪してしまう。ニッキーの過激なルームメイト、タミコとその仲間たちからリンチされ、アブドル・ハイイには金を払わされることになったマリード。
やがて、タミコの惨殺体が発見された。次いで、タミコの仲間の射殺体が。アブドル・ハイイも惨殺体となって発見される。
マリードは、パパから犯人ではないかと疑われてしまう。疑惑は晴らしたものの、今度は、パパの援助の元、一連の事件の捜査をすることになってしまった。独立しているために、仲間たちとうまくやってきたマリードだったのだが……。
アラブが前面にでている、ハードボイルド。
人々は脳に配線して、人格や知識のカセットをさすことで、実在架空のあらゆる人になりきったり、学んでいない知識を己のものにしたりしてます。そのため、サイバーパンクというジャンル分けをされることがありますが、それほど電脳ではありません。語り手のマリードが消極派ってこともありますが、メインは連続殺人事件。それと、ブーダイーンという街そのもの。
一般の人々の間でもイスラーム教が浸透していて、マリードも例外ではありません。敬虔な信者ではないのですが、社交辞令あり定型問答あり。地文でも神への感謝がささげられます。
アラブな世界が楽しめます。
『重力が衰えるとき』の続編。
ブーダイーンはアラブの退廃した近未来都市。危険だが、魅惑的な暗黒街だ。この街を仕切るのは、パパことフリートレンダー・ベイ。
マリード・オードラーンは、かつて一匹狼だった。それがパパに気に入られてしまい、一緒に住み、パパの仕事をするハメに。お目付役の奴隷クムーズをあてがわれ、警察官として出勤する日々。おかげで、かつての仲間たちからも他の警察官からも嫌われている。
マリードは、シャクナヒーとパートナーを組みパトロールすることになった。やがてふたりは打ち解け合うが、シャクナヒーが何者かに殺されてしまう。どうやらシャクナヒーは、単独で極秘捜査をしていたらしい。マリードはシャクナヒーから手帳を預かるが、その意味するところは分からない。
一方、パパにも悩みはあった。パパの娘だと主張する女が、息子をつれて押しかけてきたのだ。
マリードはパパから、女と息子について調査し、排除するように命令される。なんとか追い出すにとどめたいマリード。実はマリード、パパが実の父親ではないかと疑っているのだが……。
アラブが前面にでている、ハードボイルド。
前作で、不本意にも電脳装置をつけられてしまったマリード。今作では積極的に活用しようとしますが、使えばうまくいくわけではないところが現実的。
パパの本来の仕事は、国際コンサルタント。同じ事業を営んでいるリダー・アブー・アーディルが初登場します。
マリードはシャクナヒーから「フェニックス・ファイル」という存在を知りました。どうやらパパとアブー・アーディルが関わっているらしいのですが……。
続編に『電脳砂漠』あり。
『重力が衰えるとき』と『太陽の炎』の続編。
ブーダイーンはアラブの退廃した近未来都市。危険だが、魅惑的な暗黒街だ。この街を仕切るのは、パパことフリートレンダー・ベイ。
マリード・オードラーンは、かつて一匹狼だった。それが今ではパパのお気に入り。後継者候補の筆頭だ。命を助けたこともあるし、実の曾孫でもある。
ある日マリードとパパは、総督の祝賀会に招待された。マリードはパパの一声で意中ではない女性と結婚させれられてしまったのだが、それを祝ってくれるというのだ。
会場には、パパと世界の権力を二分するリダー・アブー・アーディルも来ていた。両家は和解するものの、マリードとパパは帰宅途中に逮捕されてしまう。身に覚えのない罪に憤慨するマリード。だが、誘拐同然につかまり、どうすることもできない。
マリードとパパは抗弁できないまま裁きを受け、ルブー・アルハーリーに追放されてしまった。ルブー・アルハーリーは、アラビア砂漠の南東部。サハラ砂漠よりも厳しく荒れ果てたところ。いわゆる空白の区域、大いなる悪地。
ふたりは運良く、通りかかりのバニー・サーリム族に助けられた。彼らは、砂漠を放浪するベドウィンの部族。ふたりは賓客として、近くの街まで同行することになる。しかし、一族は決して一枚岩ではなく、殺人事件が起こってしまう。
アラブが前面にでている物語。
前半は砂漠の大冒険。後半は復讐劇。
砂漠の出来事は、チンピラだったマリードが大きく変わる転機。その変化が実に自然。権力者への階段を登っていきます。
実は、著者のエフィンジャーはすでに他界していて、もはや続編は読めません。それだけが残念無念。
大生部多一郎は民俗学者。おもに東アフリカの辺境で数年に渡りフィールドワークを行い、共感呪術と民俗医療に関する論文を著した。
学会の反応は冷たかったが、マスコミは別。一般向けに書き直した論文は『呪術パワー・念で殺す!』とタイトルをつけられ、30万部近くの売れ行き。もはや大学の看板教授だ。
それでも予算は削られるばかり。開き直った大生部は資金獲得のために売れる本を書き、テレビに出、タレント教授と呼ばれるようになってしまった。
そして、ここ8年は酒に溺れる日々。
8年前。
アフリカに連れて行った娘の志織が、遊覧気球で事故に遭った。コントロールを失い風に流された気球は、国境を越えて墜落。3日後に捜索隊が発見したのは、気球の残骸と、同乗者たちの遺体。それらはハイエナに食い荒らされていた。当時、志織は7歳。小さな身体はなにひとつ見つからなかった。
大生部の妻・逸見も、事件を境に精神的に不安定になっていた。カウンセリングは受けているものの、ついに新興宗教にとりこまれてしまう。大生部は、逸見を正気に戻そうとするが……。
一方テレビ局では、秋の改編時の特番にとりかかるところだった。プロデューサーの馬飼は、大生部一家に白羽の矢を立てる。部族の習俗、呪術、野生動物を撮りまくり、大生部の息子・納の成長物語を絡める。今の世の中、センセーショナリズムだけでは視聴率はとれない。
アフリカに行きたがらない大生部だったが……。
日本推理作家協会賞受賞作。
ページ数は多いものの、ほとんどが会話。あっさり読めてしまいます。
大生部家族の過去と、新興宗教を題材に超常現象のトリックが語られる第一部。大生部家族たちがアフリカに行き、とんでもない目に遭ってしまう第二部。大生部や関係者が呪術師バキリに追われる第三部。の、三部構成。
第一部、第二部はとてもおもしろいです。おそろしいことも起こりますが、呪術師の存在も含めてリアルに思える。それが第三部になると……。
ちょっとひいてしまいました。そこにいたるまで、さまざまなトリックが語られてきたのにって。