

D・R・ベンセン『天のさだめを誰が知る』
宇宙探査隊の統合員ヴァルミスは、宇宙船ウォンダラー号が調査対象の惑星に墜落する寸前、可能性転移装置を使った。それによって乗組員4人は助かったものの、宇宙船は修理が必要な状態。原住民の教化が急務となった。一行は銀河帝国の使節団を装い、アメリカ合衆国大統領ローズヴェルドと会談するが……。
SF評論家(その他兼業)の大森望が自身のサイト(※)で、ある書評系個人サイトの紹介文に『いきなり「天のさだめを誰が知る」とか読んでるので仰天』と添えていたのを見たのが読むきっかけ。タイトルが頭に残っているうちに目の前に現れたのは幸運でした。
異星人の目から見た地球人たちが笑えます。文句なしにおもしろいわけでも、ましてや傑作なんて、とてもとても言えないのですが、心に残る1冊となりました。
(※当該サイトはその後、閉鎖されたようです)
アーサー・C・クラーク『渇きの海』
月の遊覧船〈セレーネ〉号は遊覧中、月震に巻き込まれ塵の海に沈んでしまった。幸いにも、22名の乗員乗客は全員無事。一行は救助を待つ。一方、異常事態をつかんだ月の交通管制所では救助活動が始められていた。しかし、遭難地点への物資の輸送は2人乗りのダスト・スキーだけ。遭難者たちは無事救出されるのか?
運良く古書で手に入れて、興奮した後、新装版となって復刊されました。迷わず、買い直し。必死にパニックを遠ざけようとする〈セレーネ〉号の奮闘、救助しようと最善をつとめる関係者たち。事件を嗅ぎ付けるジャーナリスト……。月世界にのめり込んでしまいました。
この年、クラークは『楽園の泉』にも興奮させられました。こちらは今月下旬に新装版がでます。実は、クラークはあんまり得意でなくって、なんとなく敬遠してました。もっと早く読んでおけば……と思わなくもないですが、若い自分が楽しめたかどうか確信は持てません。
ジョン・クリストファー『トリポッド・2 脱出』
地球に、巨大な三本足の機械・トリポッドが君臨して、およそ100年。人々はかれらを崇拝し、科学技術を忘れ、大都市を遺棄してきた。人は若くして戴帽式を迎え、トリボッド機内でキャップを装着される。それは人の考えをコントロールするもの。ウィンチェスターの郊外に住むウィルは自由を求め、村を後にするが……。
当初は読むつもりはありませんでした。他の本を買うつもりでショッピングセンターにでかけていったのですが、未入荷で、でも、駐車チケットをもらうにはなにか買わなければ! そこでやむなく購入。児童文学ながらも重い重い内容で、涙がホロリ。
全四部作(『襲来』『脱出』『潜入』『凱歌』)であえて第二巻を挙げたのは、第二巻がすべての始まりだから。第一巻は、時系列こそ最初ですが、初期三部作に後日付け足されたものです。登場人物も、作品の重たさもちがいます。これから手にするなら、第二巻から読むことをお薦めします。
コニー・ウィリス『ドゥームズデイ・ブック』
中世史科の大学生キヴリンは、はじめて中世へとタイムトラベルする人となった。数々の予防接種をし、知識の準備も怠りない。しかし、到着直後、病に倒れてしまった。一方、キヴリンを送りだしたダンワージー教授は、その安全を危惧していた。ところが、現代でも伝染病が発生し、一帯は封鎖。無事についたかどうか確認することすらできない状況に陥ってしまう。
分厚くてしかも上下巻、という長さに怖じ気づいて2年以上ほったらかしにしてました。ところが、いったん読み出すと一気呵成。予断を許さない展開に、ハラハラドキドキしながらページをめくることに……。
21世紀と14世紀双方で発生する危機。各々、相手の状況はまったく分からない。そんな中でのユーモア。お互いに、相手は元気だと信じていて……。長さを感じさせない傑作でした。
オースン・スコット・カード『消えた少年たち』
フレッチャー夫妻は熱心なモルモン教徒。夫ステップはプログラマ。今まではフリーだったが、金のために就職することになり、ストゥベンへとやってきた。上司とうまくいかないステップ。一方、息子のスティーヴは学校でいじめを受けていた。ついには空想の友だちと遊ぶようになってしまうが……。
オースン・スコット・カードは、代表作である『エンダーのゲーム』があんまり好きになれなくって、敬遠してました。そこへ、偶然『第七の封印』が転がり込んできて、これがおもしろかった〜。勢いで、ついに名作の誉れの高い本作を読むことに。
淡々とつづられる日常。ステップは仕事をがんばり、妻ディアンヌは教会のボランティア活動をがんばり、スティーヴは……。SFレーベルからでてますが、SFではありません。少々長さが気になりましたが、でも、涙なしには読めない名作。
ベストに入れるかどうかで悩んだ本はたくさんありますが、中でもこの1冊。
飯嶋和一『黄金旅風』
徳川家光が三代将軍となり、時代は鎖国へと傾きつつあった。長崎代官の末次平左衛門茂貞は、長崎町民のために立上がることを決意するが……。
わずか5年の物語を濃密に書きつづった傑作。これだけ読んでいれば文句なしにベスト。実際には他の飯嶋和一作品も読んでいて、その類似性が気にかかりました。スポットライトを当てられている人物が違うんですから、同じ話にはなりません。それでも、同じような気質を持っておいでで、濃厚な分、どうも気になってしまうのです。
でも、飯嶋和一はこうでなくっちゃ、とも思うんですから、人間って……。