書的独話

 
2019年のひとりごと
01月01日 展望、2019年
02月03日 2018年、ベスト
05月02日 ダイジェスト感
05月08日 夢想の研究
06月07日 予期せぬつながり
06月30日 中間報告、2019年
07月22日 知ったことでも全部はいわない
07月27日 そして物語へ・・・
08月22日 サハラとナイルと冒険と
09月11日 宇宙船のAI問題
12月04日 知れば知るほど
12月25日 クリスマスの奇跡
12月31日 総括、2019年
 

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2019年06月07日
予期せぬつながり
 

 次に読む本を決めるとき、どういう基準で選ぶか。
 同じテーマの、アプローチの違うものを選んだり、まったく雰囲気の違うものにしてみたり。ジャンルを変えてみたり、小難しい本を読んだ後は軽めのものにしてみたり。

 たとえば2018年でいえば、初旬には、リリアン・J・ブラウンの《シャム猫ココ》シリーズを読んだ後、同じ猫ものだけど、かなり雰囲気の違うポール・ギャリコの『トマシーナ』を手に取りました。その後、ケン・リュウの『蒲公英王朝記』2冊をはさんで、猫SF傑作選 の『猫は宇宙で丸くなる』で一区切り。

 夏には、ラフィク・シャミの『蠅の乳しぼり』でアラブな世界を散策したあと、J・R・R・トールキンの『シルマリルの物語』で神話的世界にひたり、朝井まかての『(くらら)』で日本の江戸時代にタイムスリップ。

 冬には、レイ・カーソンの《炎と茨の王女》で異世界にどっぷりはまった後、ロバート・クレイスのミステリ『容疑者』で現実に立ち返り、チャイナ・ミエヴィルの『ジェイクをさがして』で崩壊した世界へ。

 さて、今回の予期せぬつながり。
 本当は、まったく違う物語を読もうと思っていたのですよ。

 6月。ついに、ウンベルト・エーコ『薔薇の名前』を読みました。
 イタリアの僧院を舞台にした、連続殺人事件のミステリ。教皇と皇帝の対立問題も絡んで、知識が試される、試される。
 おもしろいけれど難解、というのがもっぱらの評判。
 時代背景が複雑なので、どうしてもそうなるんでしょうね。おもしろかったけど、疲れもしました。

 疲れた読書の後には、やさしいもの、もしくは原点回帰。
 というわけで選んだのが、古い時代のSFでした。

 ふれこみでは「タイムトラベルSF史に残る傑作にしてキャンベル記念賞受賞作」という、ウィルスン・タッカーの『静かな太陽の年』。1983年に翻訳されたものの絶版になってしまい、2018年に復刊されました。
 で、読んでみると、冒頭で
 主人公のブライアン・チェイニイは未来学者だけれども、聖書の研究もしていて、黙示録の元ネタらしき巻物を翻訳出版したために、世間から大バッシングされている
 という状況。

 黙示録といえば、読み終えたばかりの『薔薇の名前』ですよ。『薔薇の名前』では、遺体発見の場が「ヨハネの黙示録」に描かれた世界終末の描写と酷似しているのです。

 そんなところで、つながっていたとは……。

 なお、『静かな太陽の年』が展開していくと、第一目標が未来である一方、過去も候補にあがっていることが知れます。
 まずは、1963年のケネディ大統領暗殺事件の現場。(原書は1970年の発表)。
 もうひとつは、キリストの磔の現場。

 まさにそこへタイムトラベルしようとした話が、マイクル・ムアコックの 『この人を見よ』です。
 まさか『静かな太陽の年』も同じところへ行って同じ展開になるのかと、ヒヤヒヤしました。予備知識なしで読んでいたもので……。

 ちなみに『この人を見よ』が発表されたのは、『静かな太陽の年』のわずか2年前。ネビュラ賞受賞作なので、作者も内容を耳にしていたと思います。
 すでに書いた後になって知ったのか、当時、そういう風潮があったのか、あえて入れたのか。
 いろいろ考えてしまいます。


 

 
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